ワンルームマンション投資は、初期費用が少なめであるなどの理由で手軽に感じやすいです。ただし特有のデメリットもあるため、リスクへの対処法まで理解して投資を始めましょう。
今回はワンルームマンション投資について、向かないケースや物件を選ぶポイントも解説します。ぜひ参考にしてください。
\ 区分投資と一棟投資、徹底比較! /
ポイント
- ワンルームマンション投資は、自己資金が少なくても始められる投資の1つ
- 若い世代の方からも注目を集める始めやすい不動産投資
- 不動産投資には、空室・家賃変動・価格変動などのさまざまなリスクがあるため、始めやすくてもしっかりとリスクの対処をしておくことが重要
- ワンルームマンション投資を始める際は、物件の立地のチェックや入居者ニーズの把握が大きなポイントとなる
ワンルームマンション投資とは
ワンルームマンション投資とは、マンションの1部屋を購入し、その部屋を賃貸物件として入居者に貸し出すという不動産投資方法です。購入したマンションの1部屋を貸し出すことにより、大家さんとして毎月の家賃を収入として得ることで利益をあげます。ワンルームマンション投資は、一気に利益を得ようとするのではなく、時間をかけることで安定的に収入を得られる投資方法なのです。
ワンルームマンション投資では、単身者向けのワンルーム(実際には1Kなども含み、単身者向けの部屋への投資の総称)のマンション一室を購入します。1部屋単位で購入することや購入する対象がワンルームマンションであることから、ほかの不動産投資の方法と比べて必要な金額が少なくて済み、手軽に始められる投資として人気です。
近年、老後に必要なお金が2,000万円以上だといわれるようになりました。この問題により、「今の生活に必要なお金もあるのに、2,000万円以上も準備できるのか」「資産を形成するにはどうすれば良いのか」など、将来への不安を抱えるようになった方が多いといわれています。
手軽に始められるワンルームマンション投資は、こういった不安のある方が検討する投資の1つとして注目されています。
一般的なワンルームマンション投資では、マンションの1部屋を購入する際に銀行などの金融機関から融資を受けることが多いです。そして実際に不動産投資を始めた後に、入居者から受け取る家賃収入のなかから借り入れた金額を返済していきます。
つまり、入居者から毎月受け取る家賃収入から、月々の銀行への返済額などを差し引いた金額が、ワンルームマンション投資における利益です。ワンルームマンション投資をする際に必要となる費用は、以下のとおりです。
- 銀行への月々の融資返済額
- 入居者募集のための手数料
- 不動産会社に管理してもらう管理費用
- 退去が出た際の原状回復費用
- 火災保険などの各種保険料
- 固定資産税、都市計画税
これらの費用のうち、場合によっては必要ではない費用もあります。たとえば、部屋を不動産会社に管理してもらわずに自分で管理できるようであれば、不動産会社への管理費用はかかりません。また、ワンルームマンションを手に入れる際に現金で一括購入していれば、融資元本や金利の分を月々返済していく必要もありません。
ワンルームマンション投資で収入となる項目には、先述した入居者から毎月受け取る「家賃」以外にも、「礼金」や「更新料」があります。
そのほか、手に入れた物件を売却する際に、物件購入時よりも高値で売れた場合には、その差分を利益にできます。
ワンルームマンション投資のメリット
ワンルームマンション投資という不動産投資手法を選択するメリットは、以下のとおりです。
- 比較的少ない初期費用で始められる
- 運用の手間をかけずに収益を見込める
- 回転率が高い
- 景気に影響されにくい
- 節税効果を期待できる
- 生命保険のような役割を果たせる
ワンルームマンション投資は不動産ローンが活用しやすく、比較的少ない費用で始められて、運用の手間をかけずに収益を見込めます。これらのメリットなどにより、若い世代からも注目を集めていて、副業として始める方が増えているのが特徴です。実際に、ワンルームマンション投資を行う方の年齢は幅広く、会社員や主婦などさまざまな職業の方が取り組んでいます。
それでは、ワンルームマンション投資のメリットについて、さらに詳しくチェックしていきましょう。
比較的少ない初期費用で始められる
ワンルームマンション投資は、ほかの不動産投資の手法よりも比較的少ない初期費用で始められることが大きなメリットです。このように小さめの規模から始められるという特徴があるため、投資を始める際のハードルが低く、投資初心者の方からも非常に注目が集まっています。
そもそも投資対象となるのは、ワンルームマンションの1部屋単位です。そのためアパート一棟や一戸建て、ファミリータイプのマンションなどを対象とするほかの不動産投資での経営を行うよりも、少ない自己資金で運用を始められます。
また、ワンルームマンション投資を始める際は、不動産投資ローンを活用できます。金融機関から融資を受ける際に、本人の属性が高くて社会的信用力のある方であることや、収益性の高い物件であることが認められた場合には、10万~15万円ほどの初期費用からのスタートが可能な場合もあります。
マンションを一棟購入する場合であれば、物件価格の10~30%ほどの自己資金が必要となります。運用を開始するためには多額の資金が必要となり、ワンルームマンション投資の開始時と比べて、不動産投資を行うハードルが高くなってしまいがちです。
もちろん、このような規模の大きな投資にも違ったメリットがあります。しかし、不動産投資に関して「手元に多くの自己資金がないと投資を始められない」というイメージがあるのは、一棟投資のことを指す場合が多いのではないでしょうか。
先述のとおり、不動産投資のなかでもワンルームマンション投資であれば、少ない自己資金でも運用を始めることが可能です。不動産投資ローンによっては頭金なしで受けられるものもあるため、このような融資を受けられた場合には自己資金がなくても不動産投資を始められるといわれています。
ワンルームマンション1部屋であれば、東京都内にある物件であっても、1,000万円台から購入可能です。少額の自己資金額で始められるワンルームマンション投資は、万が一の場合の損失も最小限に抑えられるというメリットもあります。また、借入金額が少なくてすむ分、不動産ローンの審査が通りやすいこともメリットでしょう。
運用の手間をかけずに収益を見込める
ワンルームマンション投資には、運用の手間をかけずに収益を見込めるというメリットもあります。
基本的に、不動産投資を行うのであれば、物件や家賃などの管理を自分で対応しなければなりません。しかし、不動産管理会社に管理を委託することでオーナー自ら対応しなくてもよくなります。そのため、本業が忙しい方であっても、副業として無理なく取り組める投資方法だといえます。
管理会社に不動産の管理を委託した場合に任せられるのは、以下のような業務です。
- 入居者の募集
- 賃貸契約の締結
- 家賃の回収
- クレームへの対応
- 物件の設備などの修繕・管理
このように、管理会社を活用すれば、業務をすべて対応してもらえるため、運用の手間がかかりません。必要な手間は、毎月の入金を確認したり、確定申告を行ったりすることぐらいでしょう。
確定申告についても、サポート体制を整えている不動産会社が多くあります。また、2年目以降は確定申告の対応にも慣れ、自身で行えることが多いです。
回転率が高い
ワンルームマンションタイプの物件のメリットは、入居者の入れ替わりが激しく、比較的回転率が高い傾向にあることです。
ワンルームマンションは、学生や単身赴任の方など一人暮らしの方をターゲットにしています。一人暮らしの方には利便性が重視されやすいため、駅近や都心部にある物件が多いです。
物件が便利な立地にあることにより、入居者が退去して空室になってしまったとしても、次の入居者を募りやすいというメリットがあります。
ただし、次の入居者を募りやすいとはいえ、空室リスクがなくなるわけではありません。空室リスクがあることを理解したうえで、しっかりと入居者募集に力を入れてもらえるような不動産会社を探しましょう。
また、学生や単身赴任の方など一人暮らしの方を主なターゲットにする分、ファミリータイプの部屋とは異なり子どもが入居する可能性は低いです。部屋の傷みが比較的少なくなること、修繕すべき部屋の広さが狭いことなどにより、退去時に、リフォーム費用を抑えられるメリットもあります。
景気に影響されにくい
投資を行うか検討する際、景気による影響で収入減少を懸念する方もいるでしょう。しかし、ワンルームマンション投資であれば、景気に影響されにくいメリットもあるといわれています。
不動産投資の収益性へ影響が大きいのは、「毎月いくらで貸し出せるのか」という点です。入居者から受け取れる家賃が下がってしまうと、収入減少に直結します。
しかし、不動産の賃料に関しては、物件のエリアにはよるものの、基本的に景気に影響されにくい傾向があるようです。たとえば、2008年にリーマンショックが起こって景気が悪化してしまったときであっても、東京都心の賃料は比較的小幅な下落にとどまりました。結果論ではあるものの、このときもしも日経平均株価やJ-REITに投資していた場合には、さらに大きく下落していました。
新型コロナウィルス感染症の影響に関しても同様です。この感染症対策による景気への影響にかかわらず、「都心ワンルームマンションでは、この状況下でも空室になりにくい」と感じる不動産投資オーナーが多いようでした。
またワンルームマンション投資は、売却時の不動産価格によっても利益を得ることができます。この価格自体も、新型コロナウィルス感染症による影響がある状況下であっても上昇しています。
売却時の不動産価格の相場変動に関しては、国土交通省が発表する住宅の不動産価格指数などで確認が可能です。2022年5月31日に発表されたデータによると、コロナ禍にあるにもかかわらず、区分所有マンションのマンションの不動産価格は、全国のどの地方でも近年大きく上昇し続けています。
実際には購入時の物件価格よりも高く売却することは難しいです。とはいえ、このように世の中でさまざまなことが起きて景気が悪化しているときであっても、ワンルームマンション投資などの不動産投資なら、影響を受けにくいといえるでしょう。
節税効果を期待できる
ワンルームマンション投資を含めた不動産投資を行う場合は、節税効果が期待できることもメリットの1つだといえます。
不動産投資による節税効果は、とくに相続や贈与の際に高い効果があります。現金を相続するよりも、不動産として相続するほうが、税金を抑えられるのです。
不動産投資は、始めるときに不動産の購入費用や手続き費用などがかかります。そのため、基本的に始めた当初は赤字として計上するケースがほとんどです。
副業として不動産投資を行う場合には、投資にかかったコストを経費として計上できます。本業の収入と不動産投資のために必要となったコストとを損益通算することにより、所得税の減税や源泉所得税の還付につながる可能性があることもメリットです。
本業での所得が多い方は減税効果が高い可能性があるため、不動産投資による税金対策を検討してみると良いでしょう。
ただし、ワンルームマンション投資には節税によるメリットがあるものの、節税のために取り入れることには注意すべきポイントもあります。節税に関する注意すべきポイントの詳細は、また後述します。
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生命保険の代わりになる
また、毎月収益を確保しつつ、万が一の場合には生命保険のような役割を果たせるという点も、ワンルームマンション投資を行うメリットの1つです。
先述のとおりワンルームマンション投資では、投資対象であるマンションの1部屋を購入する際に、金融機関から融資を受けることが一般的です。そして、金融機関から融資を受けるためには、多くの場合で「団体信用生命保険」への加入を義務付けられます。
団体信用生命保険とは、もしも保険加入者が死亡してしまった場合に、対象の物件に対するローンの残債をゼロにできるという保険です。この団体信用生命保険に加入してワンルームマンションを購入することにより、自分に万が一のことがあったとしても、有益な資産を家族や親類に残しておけるようになります。そして、その資産のローンは残しません。
これらの特徴により、不動産投資ローンなどを活用したワンルームマンション投資を生命保険の代わりのように活用できます。。万が一のことがあった場合には、残された家族はワンルームマンションという資産を売却することで現金化することも、貸し出し続けて年金のように毎月収益を確保することも選べます。
ワンルームマンション投資のデメリット
ワンルームマンション投資には、さまざまなメリットがあります。その一方でデメリットもあるため、投資を考える際にはメリットとデメリットの両面を理解したうえで判断することが重要です。
ワンルームマンション投資のデメリットは、以下のとおりです。
- 空室リスクが高いこと
- 収入がゼロになる可能性があること
- サブリース業者の家賃保証にリスクがあること
- 節税効果が小さいこと
- 生命保険の代わりにするには注意が必要
それでは、上記にあげたワンルームマンション投資のデメリットについて、さらに詳しくチェックしていきましょう。
空室リスクが高い
不動産投資では、とくに空室リスクには注意しなければなりません。入居者がいなければ収入がゼロになってしまいます。
ワンルームマンション投資では入居者が頻繁に入れ替わる可能性が高く、その都度入居者募集をしなくてはなりません。ワンルームマンションは利便性の高い場所に建てられている物件が多いため、入居者が集まりやすいとはいっても、空室リスクはゼロではありません。
駅近やオフィス街の近くなど、なるべく早く入居者を集められるようなニーズの高い物件を慎重に選ぶようにすると良いでしょう。
収入がゼロになる可能性がある
収入がなくなってしまう恐れがあることも、デメリットの1つです。ワンルームマンション投資では、区分マンションのうちの1部屋単位で購入して運用します。1部屋だけにしか投資していない場合には、その部屋に入居者がいるのかいないのかのどちらかとなるため、入居率が0%か100%かになってしまいます。
常に100%であれば良いでしょう。しかし、入居率が0%になってしまっては、まったく収入が入らない状態になってしまいます。次の入居者が見つからなかった場合でも、不動産投資ローンや管理費用の支払いは続きます。これまで家賃収入によってまかなっていたこれらの支払いを、すべて自身で支払わなければならなくなる可能性があるのです。
また、購入したときの家賃での収入を将来にわたって見込んでいた場合には、マンション自体の築年数の経過や住宅設備の老朽化にともなって家賃が下落してしまうことも注意が必要です。当初見込んでいた収入通りではなくなってしまう恐れがあることを考慮したうえで、物件を選択するようにしましょう。
サブリース業者の家賃保証にリスクがある
サブリース業者の家賃保証で思っていたような保証が受けられない恐れがあることも、ワンルームマンション投資のデメリットの1つです。サブリース業者の家賃保証サービスとは、もしも入居者が滞納してしまった場合などに、その分の家賃を肩代わりして支払ってくれるサービスのことです。
しかし、家賃保証サービスを使った場合には、手数料として毎月の家賃収入から10~20%を差し引かれてしまいます。滞納時のリスクに備えられる代わりに、家賃収入が減ってしまうことに注意しましょう。
また、家賃保証付の契約をする際は、保証期間が想定していたより短くなっている場合や、保証金額が低くなっている場合などにも注意が必要です。契約の際にわざとわかりにくい書き方をしてオーナー側に誤解を招かせるような、保証内容への信ぴょう性が低いサブリース業者に気を付けましょう。
さらに、サブリース業者が倒産してしまうと家賃保証を受けられなくなるリスクがあるため、保証内容と管理会社はしっかりと確認してください。
節税効果が小さい
ワンルームマンション投資には節税効果があるものの、1部屋だけへの投資であれば税金対策の効果が小さいことにも注意が必要です。節税効果だけを見込んで投資を始めようとしている方は、投資規模が小さい場合にはそれほどの税金対策にならないと理解しておきましょう。
不動産投資で高い節税効果を期待するのであれば、減価償却期間が短いなど、年間の減価償却費を高くすることが重要です。しかし、ワンルームマンション投資は、最初に必要となる物件自体の価格や、修繕費用などのランニングコストが少ない分、費用として計上可能な金額が高額になりません。
さらに、ワンルームマンションはRC造が多く、減価償却期間が長いという特徴があります。それほど高額ではない物件価格を長年減価償却することになるため、年間の減価償却費が低くなり、毎年の節税効果はそれほど見込めないでしょう。
ワンルームマンション投資をする方のなかには、収支が赤字になることを見込んで税金対策としようとしている場合もあるようです。しかしこの場合には、検討している物件が節税で期待できるメリット以上に収益性のデメリットのある物件を選んでしまっている可能性があります。投資する物件の収益性に問題がないか、事前にしっかりとチェックしましょう。
なお、物件自体の価格などが低いと経費としてあげられる金額が低くなるということは、投資の規模を大きくすれば経費を増やして節税効果を高めることもできます。節税目的で投資を検討している高額納税者の方は、効果を大きくするために複数の不動産に投資するのもおすすめです。
生命保険の代わりにするには注意が必要
ワンルームマンション投資を行うメリットの1つとして、毎月収益を確保しつつ、万が一の場合には生命保険のような役割を果たせるという点を先述しました。しかし、ワンルームマンション投資を保険として扱うことには、デメリットもあります。
毎月収益を確保できるという点は、年金保険のように収益を受け取れるイメージがあります。しかし実際には、ローンの支払いが終わった場合であっても、修繕積立金や管理費用などの支払いが必要です。
また投資者に万が一のことがあったときには、不動産投資ローンの支払いが必要ではなくなり、有益な物件を売却するなどして現金化できるとも伝えました。しかし、もしもローン完済後になってから物件を売却しようとした場合には、物件の築年数が経過しており、価格が下がっていると考えられます。
そのため、生命保険のような役割を期待して、「多少は赤字赤字になるようであったとしても、保険代わりだと考えれば良いか」と安易に思ってしまうことには注意が必要です。物件を購入する際には、生命保険の代わりならばと思うような収益性が低い物件ではなく、健全に収益をあげられる物件を選びましょう。
ワンルームマンション投資のリスクと対処法
ここまで紹介してきたワンルームマンション投資のデメリットにくわえ、不動産投資として気を付けておくべきリスクがあります。対処法に応じて、「空室・家賃変動・価格変動リスク」「家賃滞納・修繕リスク」「天災リスク」「金利上昇リスク」の4つにわけて解説していきます。
空室・家賃変動・価格変動リスク
不動産投資には、空室・家賃変動・価格変動によるリスクがあります。
空室・家賃変動・価格変動のリスクは、入居のニーズがなくなることで起こります。そのため、入居者のニーズが低下しにくいような立地の物件を選択することで、これらのリスクを抑えられるでしょう。さらに入居のニーズが高い物件を所有すると、物件自体の価値が低下するリスクも下げられることで、不動産としての価値が比較的高い状態を維持し続けやすいです。
また、複数の物件を所有することで空室リスクは下げられます。投資対象となる不動産がワンルームマンション1部屋であれば、入居者がいるかいないかの2択です。しかし、2部屋になるだけでも、入居者がいる部屋といない部屋がある場合には入居率が50%になります。
この場合、空室になっている部屋があったとしても、もう片方の部屋では家賃収入がある状態を続けられます。1部屋のみに家賃収入を依存せずにすみ、空室リスクの分散が期待できます。
アパート・マンションの1棟分を不動産投資する場合には、入居者に入ってもらえる部屋が複数ある状態です。そのため、さらなる空室リスクの分散効果が期待できます。ワンルームマンション投資であっても、1部屋のみへの投資ではなく複数の部屋を所有していれば、空室リスクの分散が期待できるのです。
家賃滞納・修繕リスク
家賃滞納・修繕リスクも、不動産投資で気を付けるべきポイントです。これらのリスクを防止するためには、とくに管理会社選びが重要です。また、修繕計画や入居者についてもしっかりとチェックしましょう。
入居希望者の事前審査により、家賃滞納リスクを抑えられます。また、万が一入居者が家賃を滞納しても、家賃保証サービスを付けていれば保証会社が支払ってくれるため、滞納によって収入がまったくなくなってしまうリスクを軽減可能です。
家賃保証サービスを使う場合、毎月の家賃収入から10~20%ほどを手数料として差し引かれます。滞納時のリスクに備えられる代わりに、手数料分の収入が減ってしまいます。そのため、収入が減っても家賃保証サービスを使うべきか、家賃保証サービスを使っても十分な収益を上げられるのかなどを、しっかりと検討して判断しましょう。
さらに、家賃保証を約束していた会社が倒産してしまうリスクもあるでしょう。この場合、空室の場合に保証されていた金額が支払われず、自身で月々のローン返済をまかなわなければならなくなることで、自己破産に追い込まれてしまう可能性があるため注意が必要です。
もしも入居者による家賃の滞納が発生した場合には、迅速な対応が求められます。そのほか、クレーム対応や退去時の立会いなど、賃貸管理会社のサポートの質の違いによって、運用成果に大きな差が出ることがあります。
そのため、管理会社選びは大変重要なポイントです。管理会社選びをする際は、「賃貸住宅管理業登録制度に登録済みか」「管理戸数」「オーナー数」などをチェックし、経営状態を把握したうえで選定することをおすすめします。
また、修繕計画がない物件を購入した場合、不動産オーナーに急な費用負担がかかってしまうケースがあり得ます。このようなことがないように、修繕計画をしっかりと確認してリスクを回避しましょう。
なお修繕計画に関して事前に確認しておくべき内容には、修繕積立金の金額や用途、今後の修繕計画、いままでにおこなった修繕の内容などがあります。
天災リスク
不動産投資には、地震・津波などによって被害を受ける天災リスクもあります。天災は急なものではあるものの、物件を購入する前に周辺情報をしっかりと確認しておくことで、リスクを抑えることは可能です。
購入する物件が「新耐震基準」を満たしているかどうか、内閣府が発表する「表層地盤のゆれやすさ全国マップ」で地盤がしっかりしているかどうかを確認するとよいでしょう。また鉄筋コンクリート造か、周りに木造の建物が多くないか、道幅が狭くないかなどを確認することで、火災リスクも抑えられるでしょう。火災保険や地震保険への加入でも、リスクを軽減できます。
金利上昇リスク
不動産投資では、金利上昇リスクにも注意しましょう。金利が上昇すると、返済するべきお金が増えてしまいます。
繰り上げ返済を行う、金利を比較してほかの金融機関への借り換えを実施するなど、ローンの返済計画を見直すことで金利上昇リスクにも備えておきましょう。多くの金融機関と提携している不動産会社を選んでいれば、より良い条件での借り換えがしやすくなります。
なお、ワンルームマンションを購入した際に融資を使わずに現金で一括払いしていた場合には、このリスクは関係ありません。
ワンルームマンション投資に向いていないケースとは
投資を検討している方のなかには、ワンルームマンション投資の特徴にそぐわないケースがありえます。とくに、「自己資金ゼロ」「生命保険・年金代わり」「節税目的」などのケースは、ワンルームマンション投資に向いていないでしょう。
また、空室リスクを不安視するあまりに、投資家にとって不利になる内容で「サブリース契約」を結んでしまうケースにも注意が必要です。実際に、国土交通省でも「サブリース契約」に対する注意喚起をしています。
それでは、これらのケースについて詳しくチェックしていきましょう。
自己資金ゼロ
自己資金がまったくない状態の方には、ワンルームマンション投資が向いていないかもしれません。ワンルームマンション投資は比較的少額からスタートできるため、多くの自己資金が用意できなくても不動産投資を始められるという点がメリットの1つです。契約によっては、自己資金ゼロでもフルローンで始められます。
しかし、不動産ローンを活用して投資を行った場合には、金利に応じた利息が発生します。その分支払うべき金額が増えるため、ワンルームマンション投資による収益が減ってしまうことに注意が必要です。
自己資金が少ないと、金利や利息が高くなってしまいます。そのため、ワンルームマンション投資が自己資金を用意できなくても不動産投資を始められるとはいっても、ある程度の自己資金は用意しておいたほうがいいでしょう。
生命保険・年金代わり
先述のとおり、生命保険や年金の代わりとしての役割だけを期待してワンルームマンション投資をするケースは、十分な役割を果たせない可能性が高いです。このケースもワンルームマンション投資に向いていないといえるでしょう。
生命保険や年金代わりを目的として投資を行う場合、万が一に備えて資産として持ち続けることを前提としているはずです。しかし、20〜30年の時間が経ったワンルームマンションは、資産価値が落ちていたり経年劣化により、売却しようとしても買い手がいない可能性もあるでしょう。
ワンルームマンション投資は、毎月の収益を確保しつつ将来の資産形成に役立つものではあるものの、生命保険や年金の代わりとしての役割を期待しすぎることには注意が必要です。
節税目的
節税目的の方も、ワンルームマンション投資に向いていない可能性があります。ワンルームマンション投資などの不動産投資は、一定の節税効果が期待できます。しかし、節税による効果を目的としてワンルームマンション投資を実施してしまうと、投資が失敗しやすくなる可能性があるため注意が必要です。
節税効果が期待できるとはいっても、ワンルームマンション投資が投資である以上は、毎月の家賃収入によってキャッシュフローの強化につなげることが目的であるべきです。
そして、節税効果のメリットが大きいのは、年収1,200万円以上、課税所得900万円以上の高所得者に限られます。年収1,200万円以下の方は節税効果が少なく、ワンルームマンション投資自体での収益がないと、必要な費用のほうが大きくなってしまう可能性があります。
不動産会社からは、「月々の収支が多少赤字になってしまっても、減価償却による税還付を受けられる」といったセールストークをされるかもしれません。しかし、1部屋のワンルームマンション投資では、かかるコストが少ないうえに減価償却期間が長いため、節税による効果を目的として実施するほどではないでしょう。
収支が赤字となってしまう収益性の低い物件であることをごまかしている可能性があるため、セールストークを鵜吞みにしないように気をつけてください。
ワンルームマンション投資を始めるための3つのステップ
ワンルームマンション投資を始める際には、情報収集・物件探し・管理会社への管理委託の3つのステップで進めていきます。
- 1.
- 情報収集をする
- 2.
- 物件を探す
- 3.
- 管理会社へ管理委託をする
ワンルームマンション投資に興味がある方は、この流れで始めてみましょう。ワンルームマンション投資は1部屋目を選択する際が難しいため、勢いだけで購入してしまうのではなく、情報収集や収益性の高い物件探しをしっかりと行うことが重要です。
それでは、これらのステップごとに詳しくチェックしていきましょう。
1.情報収集
まずは不動産投資の情報を収集して勉強し、必要な知識を身につけていくのが一般的です。不動産投資の本を読んだり、セミナーに参加してみたりして、さまざまな情報を取り入れましょう。
セミナーでは、基本的な不動産投資のノウハウだけでなく、実際に投資をしている方の考えなども解説されることがあります。参加者同士で自由に意見交換ができる不動産投資情報交換会が開催されていることもあるため、経験者ならではの裏話などの参考になる話が聞けておすすめです。
物件情報や管理会社の情報をチェックしていると、エリアごとの価格相場や管理会社のサポート体制などが把握できるようになってきます。興味がある会社には積極的に資料請求を依頼して、物件の詳細情報やサポート体制などをチェックしてみましょう。
自分で情報を収集しないまま、勝手にお金を産んでくれるような良い儲け話を誰かが紹介してくれると考えていては危険です。自分で行動・勉強し、どのような物件が良いのかなどを自らで判断できるようになりましょう。
2.物件探し
情報収集を行い、ワンルームマンション投資に対する必要な知識がある程度身についたら、実際に投資するワンルームマンションを探していきます。
お伝えした通りワンルームマンション投資では、空室・家賃変動・価格変動によるリスクに注意が必要です。入居者ニーズが低下しにくいような立地の物件を選択することで、リスクを抑えられるでしょう。
投資対象となるワンルームマンション探しは慎重に行うべきです。ライバル物件や賃貸ニーズの調査など、さまざまな角度から収益性の高い物件探しを行いましょう。
物件を探す方法は、大きく分けると以下のとおりです。
- インターネットを用いて自分で探す方法
- 不動産会社や管理会社に物件を紹介してもらう方法
不動産会社や管理会社に物件を紹介してもらう場合であっても、受け身にはならずに主体的に考え、行動するようにしましょう。また、不動産ポータルサイトを良くチェックしていると、物件の市場相場や人気の物件などが理解できるようになります。
3.管理会社への管理委託
ワンルームマンションを選び、購入できたら、入居者募集や物件管理など賃貸事業の運営がスタートします。しかし不動産投資初心者の方や副業目的の方にとっては、不動産管理会社などに業務を委託して必要な対応を代わってもらい、管理業務を自動化させたいところでしょう。
ワンルームマンション投資で必要な管理内容の例は、以下のとおりです。
- 入居者の募集
- 家賃の集金
- 設備管理
- クレーム対応
自らでの対応が難しいようであれば、管理会社への管理委託を行いましょう。その際も、複数の管理会社の情報を確認して、信頼できる会社を選択することが重要です。
委託する管理業務は、管理会社の担当者と相談しながら決められます。一括委託でも一部の管理業務のみの委託でも、自分のニーズにあわせて選択すると良いでしょう。
ワンルームマンション投資で失敗しない物件を選ぶ際のポイント
ワンルームマンション投資で失敗しないためには、物件を選ぶ際に物件の立地と入居者ニーズの把握が重要です。
なお、築年数の経ったワンルームマンションは、物件購入価格を抑えて利回りの高い状態にできるため、収支が赤字になってしまうことを回避できます。物件の一部に欠損がある場合にも相場より非常に割安で購入可能です。その欠損がもしもリフォーム費用を支払って修繕すれば、その費用以上に物件価値の上昇を見込めるものであった場合、利回り・収益性の高い状態で運用できる可能性があるでしょう。
失敗しない物件を選ぶ際のポイントについて、詳しくチェックしていきましょう。
物件立地
ワンルームマンション投資で失敗しない物件を選ぶためには、立地が良くて人気がある物件であることが重要です。立地が良くて人気がある条件の物件であれば入居ニーズが高いため、入居者が集まりやすく空室を防止できます。さらに、このような魅力のある物件であれば、資産価値が低下するリスクを抑えることも可能です。
物件の立地を確認するときは、駅から徒歩圏内であることだけではなく、ターミナル駅へのアクセスも確認しましょう。また、生活に必要な施設が充実しているか、閑静で治安の良い場所か、再開発の対象地域などの将来性のある土地かといったポイントもチェックするのがおすすめです。
ワンルームマンション投資では、地方と都心のどちらの物件立地を選んだほうが良いのかも気になるところです。これは、賃貸需要が高い都心のワンルームマンションのほうが有利だと考えられます。
近年では50歳時の未婚率が高くなっていること、男女ともに65歳以上の単身世帯が上昇傾向にあることから、ワンルームマンションの需要が増加しています。また、都心の分譲マンションの平均賃料が値上げ傾向にあること、大規模な再開発による地価上昇があることなども、都心のほうが有利だと考えられる理由です。
また、立地は賃料にも大きく関わってきます。以下の記事で賃料査定について解説していますので、あわせてご覧ください。
入居者ニーズの把握
ワンルームマンション投資で失敗しない物件を選ぶためには、入居者ニーズを把握するようにしましょう。エリアやターゲットによって人気のある設備が異なることにも注意が必要です。
設備が充実している物件は、その分家賃が高くなります。家賃が高くなることでの入居者ニーズの変化もあるため、設備が充実している物件が良いかというとそうでもありません。
また、デザイナーズマンションなどの変わった間取りや個性的な物件よりも、基本的にはよくある使いやすい間取りの物件のほうが入居者が集まりやすいといわれています。入居者ニーズの把握をして、過不足のない設備・間取りのマンションを選ぶようにしましょう。
まとめ
ワンルームマンション投資では、購入したマンションの1部屋を貸し出すことで毎月の家賃収入を得て利益があがります。
近年、老後に必要なお金が2,000万円以上だという話が広まったことにより、「そんなにも老後資金を準備できるのか」と将来への漠然とした不安を抱えている方が多くなりました。初期投資が少なくて手軽に始められるワンルームマンション投資は、資産運用を検討する方が取り組みやすい不動産投資方法の1つです。
ワンルームマンション投資には、「比較的少ない初期費用で始められる」「運用の手間をかけずに収益を見込める」「回転率が高い」「景気に影響されにくい」「節税効果を期待できる」などのメリットがあります。
これらの特徴により、ワンルームマンション投資は若い世代を含めた幅広い年齢層から注目を集めています。手間をかけずに取り組めるため、副業として始める方が増えているのです。
とはいえ、ワンルームマンション投資にもデメリットや注意すべきポイントもあります。
メリットやデメリット、リスクとその対処法、失敗しない物件を選ぶ際のポイントなどを参考にして、収益性の高い物件での不動産投資ができるようになりましょう。
監修者
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
中川 祐一
現在、不動産会社で建築請負営業と土地・収益物件の仕入れを中心に担当している。これまで約20年間培ってきた、現場に密着した営業経験と建築知識、不動産知識を活かして業務に携わっている。
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