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原状回復トラブル防止!オーナー向けの対策とは【事例・対処法つき】

原状回復トラブル防止!オーナー向けの対策とは【事例・対処法つき】

借主の退去時に発生しやすい原状回復トラブルは、オーナーにとって悩ましい問題の1つです。

不要なトラブルを避け、アパート経営を円滑に行うためには、事前の対策やトラブル発生時の対応について把握しておくことが重要です。

この記事では、原状回復に関する基礎知識や費用相場、よくあるトラブル事例、オーナーが講じるべき対策やトラブル発生時の相談先などについて解説します。原状回復トラブルにお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

ポイント

  1. 契約書類の整備や事前説明・記録の徹底などによる、トラブルを未然に防ぐための対策が重要
  2. 原状回復トラブルが発生した際は、民間・公的機関の窓口や専門家に速やかに相談する
目次

借主退去時の原状回復トラブル

原状回復トラブル防止1

運営するアパートから借主が退去する際、原状回復をめぐってトラブルが発生することがあります。全国の消費者生活センターなどには、年間で約1万3,000件~1万4,000件もの賃貸住宅の原状回復に関する相談が寄せられています。

原状回復トラブルは金銭が絡むため訴訟に発展することもあり、注意が必要です。円滑で安定したアパート経営を続けるため、オーナーは借主退去時の原状回復トラブルに注意を払う必要があるでしょう。

参考:独立行政法人国民生活センター 住み始める時から、「いつか出ていく時」に備えておこう!-賃貸住宅の「原状回復」トラブルにご注意-

賃貸住宅における原状回復とは

原状回復トラブル防止2

賃貸住宅における原状回復とは、借主が退去する際、部屋を借りたときの状態に戻して明け渡すことです。民法第621条では、以下のように定められています。

「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」

出典:e-GOV 民法

つまり借主は「故意・過失によって賃貸住宅に生じた傷・汚れなどや、通常の使用方法では想定されないような使い方によって生じた損傷など」について、原状回復の義務を負います。

ただし、民法第621条の規定は任意規定のため、賃貸借契約において民法とは異なる特約を設定することも可能です。

ここでは、原状回復に伴う費用について詳しく解説します。

原状回復の費用負担者

原状回復には退去時に費用が発生することから、その負担をめぐってトラブルが急増し、大きな問題となっていました。そのため、原状回復にかかる契約関係、費用負担等のルールのあり方を明確にして、賃貸住宅契約書の適正化を図ることを目的として、国土交通省によるガイドラインが設けられました。

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)では、オーナーは経年劣化や通常損耗によるものについて、借主は善管注意義務違反や故意・過失によるものについて、それぞれ負担すべき、と定義しています。

このガイドラインでは、借主が費用を負担すべきケースとして、以下のように明記されています。

  1. 賃借人の住まい方、使い方次第で発生したり、しなかったりすると考えられるもの(明らかに通常の使用等による結果とは言えないもの)
  2. 基本的には「賃借人の住まい方、使い方次第で発生したり、しなかったりすると考えられるもの」であるものの、その後の手入れ等借主の管理が悪く、損耗等が発生または拡大したと考えられるもの

ケース別の費用負担者の具体例は、以下のとおりです。

費用負担者 オーナー 借主
損傷などの例 ● 家具の設置による床のへこみ
● 画鋲やピンによるクロスの穴
● 日照による壁紙やフローリングの日焼け
● 災害で破損した窓や建具
● 飲食物をこぼして生じたシミ、カビ
● 壁等のくぎ穴、ねじ穴
● タバコ等のヤニ・臭い
● 落書きなどの毀損
● ペットがつけた傷や汚れ
● 鍵の紛失、破損

ただし、これらはあくまでもガイドラインによる1つの基準に過ぎません。賃貸借契約によって対応が異なるため、オーナーは契約内容をきちんと確認しておく必要があります。

参考:国土交通省 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)のダウンロード

あわせて読みたい

オーナーが負担する原状回復費用の相場

オーナーにとって「原状回復にどのくらいの費用がかかるのか」は、特に気になるポイントではないでしょうか。

一般的にオーナーが負担すべきとされる原状回復にかかる主な費用相場は、以下のとおりです。

原状回復の例 費用の目安
壁紙の張り替え 1㎡あたり約1,500円
フロアタイルの張り替え 1㎡あたり約4000円~6000円
クッションフロアの張り替え 1㎡あたり約3,500円~4,000円
給湯器の交換 1台あたり約10万円~
鍵の交換 1部屋あたり約2.0万円~
ハウスクリーニング 1Kで約3万円~

なお、金額はケースごとに異なるため、こちらの数字は1つの目安にしてください。

原状回復のよくあるトラブル事例3つ

原状回復トラブル防止3

ここでは、オーナーが遭遇しやすい原状回復のトラブル事例を3つピックアップして紹介します。

オーナー向けの対策ポイントやトラブルへの見解もあわせて紹介するので、参考にしてください。

【事例1】借主の身に覚えのない損傷に関するトラブル

1つ目の事例は、借主が覚えていない損傷に関するトラブルです。

【事例】
『借主が部屋を退去する際に壁の損傷が見つかり、借主に原状回復費用を請求した。しかし、借主は「身に覚えがない」「自分の不注意のせいで生じた損傷ではない」と主張し、支払いを拒否している。』

オーナーと借主の認識のズレから、このような原状回復トラブルに発展するケースは珍しくありません。トラブルを回避するためには、入居時点での損傷の有無をはっきりさせておく必要があります。具体的な対策ポイントについては、後述の「入居前・退去時の確認・記録を徹底する」で紹介します。

【事例2】特約に関するトラブル

2つ目の事例は、賃貸借契約の特約に関するトラブルです。

【事例】
『「ハウスクリーニング代は借主負担」という賃貸契約の特約を設定していたため、部屋を退去する借主にハウスクリーニング代を請求した。しかし、借主は「オーナー側が負担すべき費用と認識していた」と主張し、支払いを拒否している。』

賃貸借契約の特約を設定していても、借主が認識していなければ、このような原状回復トラブルにつながる恐れがあります。オーナーは、不備のない契約書面を作成するだけでなく、仲介会社や管理会社とも連携し、入居時の重要事項説明で特約の周知を図り、入居者が理解しているか確認することが大切です。

【事例3】経年劣化に関するトラブル

3つ目の事例は、物件の経年劣化に関するトラブルです。

【事例】
『借主が部屋で喫煙していたため、壁紙の汚れや臭いが取れず、壁紙の張り替え費用を請求した。しかし、借主は「新品から6年以上経過しているため、すでに壁紙の価値はなくなっている」と主張し、支払いを拒否している。』

国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)では、「建物や設備等の経過年数を考慮し、年数が多いほど借主の負担割合を減少させることとするのが適当」とされています。

しかし、借主の故意・過失による汚損は、価値減少による負担割合の考慮の範囲に含まれます。喫煙による壁紙の変色や臭いの付着は、「通常使用による汚損を超える」と判断されるケースが一般的です。また喫煙を禁止している物件の場合、用法違反に当たると考えられます。

そのため、このようなトラブル事例では、借主が原状回復の費用を負担することが妥当といえるでしょう。

オーナーが原状回復トラブルを防ぐ5つのポイント

原状回復トラブル防止4

退去時の原状回復トラブルを未然に防ぐためには、具体的にどのような点に気を配ればよいのでしょうか。

ここでは、オーナーが特に注意すべき5つのポイントについて解説します。

1.「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を確認する

オーナーは、国土交通省が公開している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の最新版を、よく確認しておきましょう。

ガイドラインは、賃貸住宅の原状回復に関するトラブルの未然を防止し、円滑な解決を図る目的で、契約や退去の際にオーナー・借主の双方が理解しておくべき一般的なルールなどを示したものです。

賃貸借契約は、契約自由の原則のもとオーナー・借主双方の合意によって交わされるため、ガイドラインが法的拘束力をもつわけではありません。しかし、一般的な判断基準の参考になるだけでなく、原状回復トラブルをめぐる判例の把握にも役立ちます。オーナーは、しっかり目を通しておくべきでしょう。

2.入居前・退去時の確認・記録を徹底する

借主の入居前・退去時における物件の状態の確認・記録を徹底することも重要です。「いつ・誰がつけた損傷か」を判断できれば、責任の所在が明確になり、不要な原状回復トラブルを避けられます。

入居時点で、借主と一緒に物件の状態を確認し、認識を共有したうえでサインをもらっておきましょう。その際、写真や動画で入居前の状態を記録しておくことがポイントです。借主の退去時に入居前の記録と比較して、客観的な視点から原状回復の必要有無を判断できます。

借主と一緒に実施する物件の状況確認においては、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」のチェックリストを参考にするとよいでしょう。

3.契約書に具体的なルールを明記する

オーナーと借主の間で認識のズレが生じないように、賃貸借契約書には具体的なルールを明記しておきましょう。ペットの飼育や楽器の使用など、必要に応じて特約を設定することも重要です。

ルールの記載方法によっては、借主の誤解を招いてしまう可能性があります。トラブルを未然に防ぐためには、不動産会社へ契約を任せることをおすすめします。

4.定期的に契約内容を見直す

一度作成した契約書を使いまわすのではなく、アパート経営の状況にあわせて定期的に内容を見直すことが大切です。

原状回復に関する法律や制度が変わる可能性もあります。最新の法律動向などをチェックし、必要に応じて契約書類に反映させましょう。

5.入居者とコミュニケーションをとる

入居者とコミュニケーションをとることも大切です。定期的なコミュニケーションによって、部屋の使用状況の把握につながるためです。また、大きなトラブルに発展する前に対応しやすくなります。

必要に応じて不動産会社とも連携しながら、日頃から意識的に入居者とのコミュニケーションを図るようにするとよいでしょう。

原状回復トラブル発生時にオーナーが相談できる窓口

原状回復トラブル防止5

オーナーが十分に気をつけていたとしても、原状回復トラブルが起こってしまう可能性はあります。トラブルが発生したときは、専門的な知見を取り入れ、できる限り早めに対処することが大切です。

ここでは、原状回復トラブルが起きた際の主な相談先を紹介します。

民間団体・専門家

原状回復トラブルが起きたとき、オーナーが検討すべき「民間団体・専門家」の相談先の候補は、以下のとおりです。

  1. 管理会社
  2. 宅地建物取引士や不動産コンサルタント
  3. 弁護士・司法書士

管理会社を利用している場合、入居者との中立的な立場からのサポートにより、問題解決を図れます。

トラブルが深刻化した際は、法律に精通した弁護士などに相談するとよいでしょう。

公的機関

民間組織だけでなく、原状回復トラブルについて公的機関に相談することも可能です。主な相談先の候補は、以下のとおりです。

  1. 一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会(全宅管理)
  2. 地方自治体(住宅政策課・建築指導課などの相談窓口)

賃貸不動産管理業者を支援する全国賃貸不動産管理業協会(全宅管理)は、会員向けに国土交通省のガイドラインの解説書「賃貸不動産管理業者のための原状回復をめぐるトラブルとガイドライン再改訂版Q&A」を提供しています。支部によっては、弁護士による電話相談などの会員向けサービス利用できることもあります。

参考:全国賃貸不動産管理業協会 よくわかる全宅管理

まとめ

原状回復トラブル防止6

賃貸物件の原状回復には費用が発生することから、借主がアパートを退去する際、トラブルに発展することが多くあります。

オーナーは原状回復に関する知識を備えるとともに、契約書類の整備や記録の徹底などにより、原状回復トラブルを防ぐための対策を講じておくことが大切です。

今回ご紹介したポイントを、ぜひ円滑なアパート経営に役立ててください。

監修者icon

監修者

宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士

久保田 克洋

不動産業界に20年以上従事。賃貸管理を中心に管理受託業務・売買仲介・民泊運営を担った幅広い知識と経験をベースに、現在はプロパティマネジメント・アセットマネジメントを担っている。

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監修者

宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

石塚 佳穂

新卒で不動産会社に入社後、一貫して賃貸管理業務に従事。オーナーが所有する物件の価値向上に取り組み、実務経験を積んできた。現在は、セミナーやキャンペーンの企画・立案など、マーケティング業務にも携わっている。

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