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【不動産鑑定士が解説】令和7年相続税路線価

【不動産鑑定士が解説】令和7年相続税路線価

不動産鑑定士(公認会計士・税理士)の冨田と申します。今回は先日公表された令和7年路線価について、傾向やトピックを私見を交えながら解説したいと思います。

目次

2025年の動向・トピック

全国の動向

各報道等によると、令和7年の相続税路線価の上昇率トップ5は以下だそうです。

令和7年相続税路線価上昇率

1位 長野県白馬村〔前年比+32.4%〕
2位 北海道富良野市北の峰町〔前年比+30.2%〕
3位 東京都台東区浅草〔前年比+29.0%〕
4位 岐阜県高山市〔前年比+28.3%〕
5位 東京都足立区千住〔前年比+26.0%〕

参考:FNNプライムオンライン 【速報】路線価上昇率トップは“人気観光地”長野・白馬村 全国平均も4年連続上昇 全国1位は40年連続で銀座・鳩居堂前
参考:NHK 「路線価」全国平均は4年連続上昇 あなたの住む場所は?

これを見るに、1位から4位については明らかにインバウンドの影響と考えられ、相続税路線価が極端に上昇しています。なお、足立区の北千住に関しては再開発事業の進捗が上昇の原因と考えられます。

ちなみに、去年〔2024年7月1日〕の上昇率については、NHKの報道によると、以下だったそうです。

令和6年相続税路線価上昇率

1位 長野県白馬村〔前年(2023年)比+32.1%〕
2位 熊本県菊陽町〔前年比+24.0%〕
3位 大阪市西区〔前年比+19.3%〕
4位 岐阜県高山市〔前年比+17.8%〕
5位 東京都台東区浅草〔前年比+16.7%〕

参考:NHK 「路線価」全国平均3年連続上昇 インバウンド需要好調など要因(2024年7月1日)

令和6年については大阪市西区が目を引きますが、これはもともとの地価がやや低めであったのと、万博期待の需要があったようです。

要するに、インバウンドの影響が大きい地域が突出して上昇するが、それ以外についても景気回復(貨幣価値下落も?)を受けて、相続税路線価は一定以上の都市であれば上昇傾向と言えるでしょう。

また、都道府県別の平均の路線価の増減率は、NHKの報道によると以下です。

北海道 2.4%
青森県 0.5%
岩手県 0.2%
宮城県 4.4%
秋田県 1.1%
山形県 0.5%
福島県 1.2%
茨城県 1%
栃木県 0.1%
群馬県 ▲0.1%
埼玉県 2.1%
千葉県 4.3%
東京都 8.1%
神奈川県 4.4%
新潟県 ▲0.6%
富山県 ▲0.4%
石川県 0.7%
福井県 ▲0.1%
山梨県 ▲0.4%
長野県 0.6%
岐阜県 ▲0.1%
静岡県 0.2%
愛知県 2.8%
三重県 0.4%
滋賀県 0.5%
京都府 3.7%
大阪府 4.4%
兵庫県 2%
奈良県 ▲1%
和歌山県 ▲0.7%
鳥取県 0.2%
島根県 0.1%
岡山県 1.9%
広島県 2.3%
山口県 0.8%
徳島県 ▲0.4%
香川県 ▲0.1%
愛媛県 ▲0.5%
高知県 ▲0.2%
福岡県 6%
佐賀県 3.3%
長崎県 1.1%
熊本県 2.8%
大分県 1.7%
宮崎県 0.4%
鹿児島県 0.1%
沖縄県 6.3%

参考:NHK 「路線価」全国平均は4年連続上昇 あなたの住む場所は?

これを見るに、東京は突出して、千葉や神奈川、大阪もある程度は上昇率が高い点が指摘できます。なお、福岡は天神ビッグバン(福岡市の中心部の天神の再開発)等があると考えられます。

また、沖縄も地価が上昇していますが、これについては、沖縄の公示価格の最高地点「那覇5-14」の鑑定評価書を見るに、観光客の回復や市中心部では複数の開発計画の進展などが背景にある旨が伺えます。

ちなみに、地方の県庁所在地の相続税路線価で最高価格地点でも数十万円という場合はザラですが、沖縄の「那覇5-14」の前面道路の令和7年相続税路線価は1,560万円でした。実は筆者もこの事実を不勉強にして存じ上げなかったのですが、那覇を中心とする地域は不動産需要も厚く、結果、相続税路線価も上昇している様が伺えます。

一方で、地方の県庁所在地は下落している都市も散見され、特に四国は4県とも微減です。

この傾向から察するに、地価が上昇しているところはますます上昇し、その結果として相続税路線価等の土地の税負担も上昇する。その一方で、地方の勢いのない都市は、税負担そのものは減るでしょうが、その背景にある衰退で利用価値が減退する面も無視してはならないでしょう。

このため、地方のこのような都市に実家等の不動産をお持ちの場合は、そのあたりの点も認識の上で、特に空き家等の場合はある程度は安い売買価格であるとしても妥協して売却するのも一案ではないでしょうか。

なお、上記はあくまでも相続税路線価のデータです。相続税路線価は、「ある程度の市街地」にしか設定されません。「ある程度の市街地」ではない過疎地においては、相続税路線価は設定されず、代わりに倍率方式と言われる方式で相続税申告に際しての土地評価を行います。言い換えれば、上記の相続税路線価の変動率は本物の過疎地を含めずに計算されていることになります。

地方の県では「ある程度の市街地」ですら微減ということは、本物の過疎地の場合は、実態としての下落はより顕著である旨が推定される点も申し添えたく思います。

東京都の動向

さらに、東京都内について注目してみましょう。 FNNプライムオンラインによると、以下が「東京国税局管内の最高路線価」とのことです。

東京国税局管内の最高路線価トップ5

※以下はFNNプライムオンラインによるが、前年比は筆者が加筆。
中央区銀座5丁目 銀座中央通り 4,808万円/㎡(前年比+8.7%)
渋谷区宇田川町 渋谷駅側通り 3,440万円/㎡(前年比+6.7%)
新宿区新宿3丁目 新宿通り(新宿税務署) 3,256万円/㎡ (前年比+5.4%)
新宿区新宿3丁目 新宿通り(四谷税務署) 2,920万円/㎡ (前年比+4.6%)
千代田区有楽町2丁目 晴海通り 2,680万円/㎡(前年比+5.0%)

参考:FNNプライムオンライン 【速報】路線価上昇率トップは“人気観光地”長野・白馬村 全国平均も4年連続上昇 全国1位は40年連続で銀座・鳩居堂前

今回の記事を書くに際して、上記の地点に限らず都内のいくつかの公示地の地点の前面道路の相続税路線価の推移を見てみました。

当然と言えば当然ですが、基本的には公示地の変動率を概ね反映した変動率でした。従って、今後においても、相続税路線価の推移を予測するに際しては、公示地の変動を指標にするというのが定石と言えるでしょう。

都内では、基本的には利便性や住環境、繁華性が優れたところに人が集まる傾向にあります。このため、公示地(それに連動して相続税路線価の概ねの傾向)も都心部の方が上昇率も高い傾向にあります。

たとえば、23区の住宅地は公示地を見るに令和7年の対前年上昇率は令和6年の対前年上昇率を上回っており、令和7年の対前年上昇率は10%前後です。ただ、「公示価格が元々の実勢相場より低かったので追いつけるための調整」の要素も皆無ではない点は留意すべきとも言えなくもないですが。

ただ、これがいわゆる都下になると、上昇しているほとんどの市でも数%の上昇に留まり、青梅市・羽村市・あきる野市ではわずかですが微減です。

東京都の分析でも、全国の都道府県の分析でも言えることは、東京23区や一部の大都市等、人気のある都市は地価が上昇し続けて、これに連動して相続税路線価も上昇する。よって、このような地域にある程度の土地を所有している場合で相続が見込まれる場合は、あくまでも親御さんが協力的である場合に限りますが、適時のタイミングで相続対策を講じるのも一案でしょう。

その一方で、過疎地では地価が下落し、相続税路線価も下落して、税負担こそ減るものの、地域の魅力が衰退し、利用価値も減り、場合によってはむしろ管理に負担が生じるとことすら考えられます。そのような地域に親御さんの土地がある場合は、場合によっては、それを活かせる地域の方に売却するのも一案かもしれません。

今後の見通し

今後の見通しについても、何か突発的な事象がない限りは基本的には概ね同様の傾向を描くと考えられます。

ただし、筆者個人の見解としては、今月20日の参議院選挙の結果に影響される部分も「なくはない」と見ています。報道にあります通り、一部の政党が外国人による土地取得について、さまざまな見解や公約を述べています。参議院選挙の結果を見るに、外国人の土地取得に関して一定の案を提起している政党が躍進したといえることから、何らかの政策的な動きが生じる可能性も「なくはない」と言えるのではないでしょうか。

その場合、一部で報道されている地域の相続税路線価の上昇にも影響が及ぶ可能性もなくはないと言えるのではないでしょうか。

執筆者

不動産鑑定士・公認会計士・税理士

冨田 建

慶應義塾中等部・高校・大学卒業。大学在学中に当時の不動産鑑定士2次試験合格、卒業後に当時の公認会計士2次試験合格。大手監査法人・ 不動産鑑定業者を経て、独立。全国43都道府県で不動産鑑定業務を経験する傍ら、相続税関連や固定資産税還付請求等の不動産関連の税務業務、ネット記事等の寄稿や講演等を行う。特にYahoo!Japan様の個人オーサーとして専門記事や各種ニュースへの専門家コメントを定期的に執筆しており、令和4年1月には鬼怒川温泉の記事で、毎月の個人オーサーの中でも得に優れた記事を表彰する月刊MVAを受賞。令和3年8月には自身二冊目の著書「不動産評価のしくみがわかる本」(同文舘出版)を上梓し、令和4年に増刷。令和5年春、不動産の売却や相続等の税金について解説した「図解でわかる 土地・建物の税金と評価」(日本実業出版社)を上梓。

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