
中古物件は少ない初期投資から始められますが、築年数が経っている分、家賃も相場より低めに設定せざるを得ないというデメリットがあります。そのような中古物件を生まれ変わらせるのがリノベーションです。
この記事では、リノベーションの定義やメリット・デメリット、注意すべき点と成功のポイントを解説します。

ポイント
- 不動産投資を行う際に物件のリノベーションをすることで、物件の選択肢が増え、よりターゲットに合わせた物件づくりが可能になる
- リノベーションをする際には、戦略的に実施しなければ無駄な投資になってしまうこともあるため注意が必要である
- 不動産投資でリノベーションを行う際には、入居してもらいたいターゲットを明確にした上で、需要のある物件づくりを行うことが重要である
リノベーションとリフォームの違いとは

リフォームは、英語のRe(再び)form(形・姿)という言葉どおり、中古物件を以前あった姿や性能に戻すのが主な目的です。経年劣化のために壊れたり汚れたりしたところを修繕し、もとのようなきれいな状態に戻します。新築時点での姿や性能をゼロとすれば、マイナスになったものをゼロまで戻すイメージです。
一方リノベーションとは、英語のRenovationが語源で、日本語でいうと刷新や更新を意味し、「元どおり」というより「新たに別のものに作り直す」に近い用語です。新築時点をゼロとすれば、こちらはゼロ以上、プラスにまで価値を付加することを表しています。
リノベーションによって、物件に新しい価値を付加できれば相場以上の収入が得られる可能性があります。リノベーションとは、中古物件を新しい形でよみがえらせ、収益を改善できる手法といえるでしょう。
不動産投資でリノベーションをするメリット

リノベーションは元の構造や設備を一新し、別の機能や性能を付加することで物件に新たな価値を生み出す手法です。物件を生まれ変わらせ、収益性を上げることも可能です。ここでは、不動産投資物件をリノベーションするメリットについて紹介します。
費用対効果が高い
古い物件を安く手に入れて、リノベーションすることで、よりニーズの高い物件にすることが可能です。
新築の物件を購入するよりもリノベーションの方が一般的にトータルの費用を安くできます。リノベーションは、不動産投資家にとって実益に直結する「コストを抑える」というメリットがあります。
物件やエリアの選択肢が増える
リノベーションする前提で物件を探すと、より物件やエリアの選択肢の幅が広がります。中でも、新築だと高額になりがちな立地の良いエリアも、築年数が経った物件であれば相場よりも安価で購入出来るでしょう。
つまり、リノベーションを前提にすれば築古物件も扱うことが出来るため、新築物件では予算的に厳しい好条件の物件やエリアでの購入も視野に入れることが出来るのです。
旧式の浴室とトイレを刷新する、リビングと和室の間の壁を取り除いてフローリングのリビングに変えるなどは、築古物件のリノベーションの一例です。ほかにも、ウォークインクローゼットやキッチンカウンターを設置したり、壁にアクセントクロスを取り入れたり、共用スペースを設けて入居者同士のコミュニケーションを打ち出したり、さまざまな方法が考えられるでしょう。デザイン性や希少性を高めることで、より高収益の得られる物件に生まれ変わる可能性があります。
ターゲットに適した物件づくりができる
周囲の環境とはマッチしていない物件を、優良物件に生まれ変わらせることができるのもリノベーションの魅力です。
たとえば、独身者向けにワンルームや1DK、1Kの間取りの需要が大きかったエリアが、周辺環境の変化に伴いファミリー層の多い街に変貌した場合、単身向けのアパートのニーズは減少してしまいます。このときワンルーム8部屋のアパートを、4部屋に集約してファミリー向けに間取りや設備を一新すれば、借り手をファミリー層というターゲットに変えられます。
不動産投資家に求められるのは、ターゲットに適した物件かどうかの見極め力です。不動産賃貸では、空室リスクはできる限り低くすることが重要です。そのようなときに、ニーズの変化や想定したターゲットに合わせて物件づくりができるリノベーションは有効であると言えるでしょう。
不動産投資でリノベーションをするデメリット

リノベーションにはメリットがある一方、もちろんデメリットもあります。いずれもリノベーションするなら避けられない要素ではありますが、リスクであることには違いありません。正しく把握して、適切に対処するよう努めましょう。
コストがかかる
リノベーションは修繕だけでなく、物件の魅力を上げるための改修を行います。そのためリノベーションは、リフォームよりも高額なコストがかかります。
大切なのはリノベーションによって、コスト以上の収益が得られるかです。計画段階で、できるだけシビアに想定しておく必要があります。
リノベーションを依頼する際には、見積りをしっかりと取り、事業計画と照合して確認を行いましょう。
あわせて読みたい
工事期間中は収益化できない
リノベーションはコストだけでなく工事にかかる日数も考慮しなくてはなりません。工事期間中は賃貸できず家賃収入を得られないからです。
また、リフォームよりもリノベーションの方が工事が長くかかる場合が多いため、十分に想定しておく必要があるでしょう。
コンセプトや戦略を誤ると投資効果が薄くなる
リノベーションには、コンセプトや戦略が重要です。コンセプトや戦略を誤ると思うような収益を得ることができず、投資効果が薄くなってしまうリスクがあります。リノベーションには高額な費用がかかるという点や、リノベーションの工事期間中に収入が得られないというデメリットも踏まえると、きめ細やかな計画を立てることでリスクを最小限に抑えてから行いたいところです。
リノベーションにはアイデアやひらめきも重要ですが、なにより的確なニーズの把握と、ニーズを前提としたコンセプトや戦略、高いクオリティの施工が欠かせません。リノベーションを実施する前に、あらゆる方面からの情報を集めて検討することが大切です。
不動産投資でリノベーションを行う際の4つの注意点

不動産投資にとってリノベーションは、収益性を上げるための方法の1つです。自由度が高いからこそ客観的に考え、収益の上がりやすいポイントを押さえる必要があります。ここでは、これらの注意点を1つずつ詳しく解説します。
1.長期的に需要が見込めるエリアの物件を選択する
不動産の需要はエリアによって変わるため、どのエリアの物件を選ぶかは重要です。一般的に次のようなエリアは、長期的な需要が見込めると考えられます。もちろん将来の開発計画にも注意が必要です。
- 駅が近い
- 最寄り駅に急行や特急が停車する
- 近くにスーパーやコンビニ、医療機関など生活に必要な施設がある
- 深夜に騒音や強すぎる照明などの施設がない
リノベーションにかかる初期投資のコストを回収し、利益を上げるためには長期的な需要が重要であり、物件のエリア選びがポイントとなります。
2.古すぎる物件は選ばないようにする
築年数の古い物件の方が価格は安く、かかるコストを抑えられます。しかし、あまりに古い物件の場合、老朽化による問題が出てくるため注意が必要です。
築年数があまりに古い賃貸物件は、一般的に人気は高くありません。建物自体の古さによる外観はもちろん、中の設備も相応に古いことが考えられるためです。
設備には簡単に交換できるものも多いですが、たとえば建物の下に埋め込まれた水道管は、劣化しても簡単には交換できません。交換する場合、工事は大がかりになり、費用も高額になる可能性があります。
マンションであれば、物件の専有部分だけでなく、エントランスや階段、エレベーター、通路といった共用部分の古さもネガティブな要因になります。専有部分はきれいでも、共用部分が汚れたり破損していれば、それが原因で敬遠される場合もあります。
他に、築年数の古さから金融機関からの融資の返済期間が短く設定されてしまう可能性があることも注意すべき点です。返済期間が短いと毎月の返済額が増え、最終的にキャッシュフローが悪化するため、毎月手元に十分な資金が残らなくなる可能性があります。
あわせて読みたい
3.希望のデザインや間取りでリノベーションできるか確認する
どのような物件でも、希望のデザインや間取りでリノベーションできるわけではありません。リノベーションにも限界があり、天井の高さや水回りの位置などは変更できない場合もあります。
また、区分所有のマンションは、専有部分以外のリノベーションはできません。戸建ても建築基準法や条例によって、一定の制限を受けます。必ずしも希望通りとはいかないこともあると思っておく必要があります。
リノベーションするときは事前に、対象物件が希望通りのリノベーションをできるかどうかを確認することが重要です。その際は、リノベーションに強い業者と一緒に、物件を確認するのがおすすめです。プロの目で一般には気付かないようなポイントをチェックしてくれます。

4.投下資本を回収できるかを確認しておく
長期的に需要が見込めても、それだけでは十分ではありません。不動産投資には細かな計算や算段が重要で、リノベーションにかかるコストが想定している期間で回収可能かどうか、できるだけ正確に把握することが求められます。
もちろん、投資である限り、計画通りにいかないこともあります。リノベーションを実施する前には、万が一の災害や空室リスクなど、想定できるさまざまなリスクに備えて事業計画を外すことが大切です。
不動産投資でリノベーションを成功させるためのアイデア

リノベーションを成功させるには、新しいアイデアとニーズの両方のバランスをとることが大切です。ここではより効果的なリノベーションのために、まず確認したいポイントを解説します。
ニーズのある設備を導入する
ニーズのある設備を導入することは物件の魅了を高める方法の1つです。どんな設備を導入すれば良いかわからない場合は、人気が高い物件にはあって自身の物件にはない設備をリストアップしてみましょう。
たとえばアパートのモニター付きのインターホン、戸建ての最新式のドアキーや目隠しフィルムを施した窓などは防犯面で大きなプラスポイントです。そのほか、宅配ボックス、浴室乾燥機、無料インターネットなど、ニーズのある設備は多くあります。
以下の記事では家賃査定に影響する設備も紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。
あわせて読みたい
あわせて読みたい
壁紙や床材を変える
物件の内見で、強く印象付けるのは見た目です。とくに室内の印象は、壁紙や床材、和室なら畳の状態が大きく影響します。古い壁紙や床材は、経年劣化によるシミや汚れによって印象が悪くなってしまい、入居もつきづらい傾向にあります。逆に言えば、壁紙や床材を新しくするだけで入居ハードルが低くなると言えるでしょう。
壁紙や床材の交換は、リノベーションの中では比較的簡単に行えます。コストを抑えて印象を大きく変えられる手法であるため、リノベーションの第一歩として検討することをおすすめします。
間取りを変更する
物件を選ぶときの大きな要素の1つが間取りです。例えば、リビングと和室が隣り合っている場合、古い間取りだとふすまで仕切られている場合が多く見受けられます。敷居が天井から低い位置にあるふすまは、リビングも和室もどこか狭い印象を与えがちです。
そのような物件の場合であれば、リノベーションでふすまを敷居ごと取り払い、フラットなフローリングにして広いリビングにリノベーションする方法があります。こうすることで、元の和室よりも広々とした空間へ生まれ変わり、同じ広さの居室であっても受ける印象が大きく変わります。また、入居者目線で見たときにも、現代の過ごし方にあったお部屋作りがしやすくなるでしょう。
1Kや1Rタイプの間取りの場合、3点ユニットをバス・トイレセパレートタイプにすることも、時代のニーズを捉えたリノベーションの1つです。
間取りの変更はリノベーションの中でもかなり大きな工事のため、建物の構造によってはできない場合があります。実現可能かどうかは、必ず業者へ確認しましょう。
リノベーションにより家賃がアップした事例
ここでは、実際にリノベーションを行うことで家賃がアップした、リノベーション成功事例をご紹介します。
都心駅徒歩10分 築31年 RC造の場合

居室内はもちろん、エントランスにオートロックと宅配ボックスを新設、共用部までリノベーションを行った事例です。リノベーションを行いデザイン性を高めることで、立地の良さを最大限に活かした物件に蘇らせました。単純に賃料がアップしただけではなく、このリノベーションによって入居者の決まりやすさにもプラスの影響が出ています。
出典:株式会社アーキテクト・ディベロッパー 「事業紹介 リブランディング事業」
まとめ

効果的なリノベーションには、ニーズの正確な把握が必須です。ターゲットを明確にし、どのようなデザインや設備が人気なのか、ライバル物件と差別化を図るにはどのような特長を打ち出すのか、戦略をたてましょう。
購入する物件をしっかりと選ぶことも重要です。物件によってはリノベーションの内容に制限があることも念頭に、事前の確認を怠らないようにしておきましょう。
不動産投資家Kでは無料相談を承っております!
不動産投資家Kとその仲間たちでは、「土地を相続する予定だけど、どうすれば良いか検討している」「管理が大変なので、土地を売却したいと思っている」など、土地・建物のさまざまなご相談を承っております。
あなたやあなたの家族の大切な資産を有効に活用できるよう、お気軽にご相談ください!

監修者
宅地建物取引士、第一種衛生管理者
松本 和洋
九州から上京、新卒から今日まで都内を拠点として不動産業界一筋、7年目。バックオフィスからフロントまでさまざまな業務を経験し、現在は既存物件のリニューアル事業に携わっている。
無料資料ダウンロード


収益物件の老朽化は避けて通れない問題です。中古物件投資を行う方も必見!検討すべきは建て替えかリフォームか、ポイントや費用について解説します。