土地活用には、さまざまな方法があります。そのなかでも人気がある方法の1つが、アパート経営です。
今回は「アパート経営」とはどのようなものか、メリット・デメリット、経営を始めるまでの流れ、初期費用などを解説します。活用できる土地をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
ポイント
- アパート経営は長期的に安定した収入が得られる
- 資産として残しやすく、節税対策にもなる
土地活用法の1つ「アパート経営」とは?
「アパート経営」は、「土地活用といえば・・・」と考えたときに思い浮かべる方が多い土地活用法の1つではないでしょうか。ここではまず、土地活用法にどのような種類があるのか、どのような土地がアパート経営に向いているのかについて、詳しくチェックしていきましょう。
土地活用の種類
土地活用の方法は、「自ら活用する」「プロと共同で土地を収益化する」「土地を貸すだけ」の3種類です。アパート経営は自ら活用する方法です。ほかには、駐車場の経営や介護施設の建設、オフィスビルの建設、トランクルームの運用などが含まれます。
プロと共同で土地を収益化する場合は、自身は土地の出資のみで、デベロッパーが分譲マンションなどを建設し、そのマンションの区分所有権を得る方法があります。土地を貸すだけの場合は、定期借地として貸し出します。土地を借りた事業者は、ファミレスや太陽光発電などその土地でさまざまな活用をします。
アパート経営に向いている土地
賃貸経営が成功しやすい土地やエリアの特徴についてもチェックしていきましょう。アパート経営に向いている土地やエリアの特徴は、以下のとおりです。
- 地価や賃料相場が高い土地エリア
- 駅近や商業施設の近くなど、住環境が整った便利なエリア
一般的な経営規模で考えると土地の広さは60坪以上、駐車場付きにする場合は100坪以上はほしいところです。大規模経営をする場合には、300坪以上の土地が良いでしょう。これらより狭い土地でも賃貸物件を建てられますが、部屋数が少なくなることで空室リスクが高まる可能性があるため、需要の高いアパート経営向きのエリアであることや、デザイン性や機能面で物件の差別化を図るなど、リスク低減の要素が必要でしょう。
長期的に安定した収入が得られる
アパート経営のメリットは、長期的に安定した収入が得られることです。アパートの平均的な部屋数は8~10戸ほどであるため、これらすべてが空室にならない限りは収入を得つづけることができます。また、家賃収入は景気変動の影響を受けにくく、インフレによって物価が上がった場合のリスク回避にもなるといわれています。
資産として売却できる
単なる投資と異なり、アパート経営の場合は資産として土地や建物が残ります。建物に入居者がいる限りはずっと収入を得られますし、ローン返済が終了すると手元に残る金額が増えます。また、土地や建物を売却することで利益を得ることもできます。
長く持ち続けると建物は経年劣化によってどうしても価値が下がりますが、土地の価値は建物のようには下がりません。そのため、まとまったお金が必要になるまで持ち続けて、いざとなれば土地を売却するという選択肢もあります。
将来へ向けた相続税対策になる
将来へ向けた相続税対策になることも、アパート経営のメリットの1つです。現金や土地を残した場合と、アパート経営をしている物件を残した場合とでは、支払う相続税の額に大きな違いが出る可能性があるといわれています。
相続税の節税になるのは、アパート経営をした場合に「小規模宅地等の特例」などの税務上のさまざまな特典を生かせるためです。相続税の対策を講じたい方は、アパート経営を検討してみてはいかがでしょうか。
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固定資産税・所得税・住民税の節税対策として
アパート経営は、固定資産税や所得税、住民税の節税対策としてもメリットがあります。たとえば固定資産税であれば、所有する不動産が住居用地の場合には「住宅用地の課税標準の特例」による減税措置が適用できるため、そのままの土地で所有し続けるよりも節税効果があるのです。この減税措置を適用すると、200平方メートル以下の敷地の部分を課税標準額の6分の1に、超過する部分は3分の1に固定資産税を減額できます。
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相続人にローンが残らず資産として残しやすい
相続人にローンを残さずに資産を相続できる点も、アパート経営のメリットです。アパート経営でローンを組む場合には、団体信用生命保険に加入するケースが多いといわれています。
団体信用生命保険は、契約者の死亡時に保険金が支払われることでローンの残債を返済できる仕組みです。そのため、この保険に加入していれば、アパート経営をしていた方が死亡した場合にローンの支払いが負担にならない状態で相続できます。
初期費用がかかる
経営を始める際に必要となる費用が高いことは、アパート経営のデメリットだといえます。建築費用などがかかってほかの土地活用方法よりもはじめに用意すべき金額が高いため、きちんと家賃収入で回収できるように計画を立てることが重要です。アパート経営に必要な初期費用の詳細については、後述とします。
空室が多くなることで家賃収入が減少
アパート経営をする際は、空室が多くなると家賃収入が減少してしまうというリスクがあることに注意が必要です。マンションと比べると戸数が少ないため、空室1戸あたりのリスクは大きくなります。複数棟を所有することで1戸あたりの空室リスクを減らすなど、工夫すると良いでしょう。
賃料滞納のリスク
賃料滞納のリスクがあることも、アパート経営をする際のデメリットです。賃料滞納が続くと、最悪の場合は強制執行のための費用がかかることもあります。家賃保証会社に加入していれば、入居者の賃料滞納があった場合でも、保証会社が家賃を建て替えた上で入居者への家賃回収手続きをすべて代わりに行ってくれます。
入居者同士や近隣の住人とのトラブル
アパート経営では、入居者同士や近隣の住人とのトラブルに注意が必要です。騒音によるトラブルやゴミ出しのトラブルなどは、しばしばクレームに発展します。副業でアパート経営をしている方などは迅速かつ適切な対応が難しいこともあるため、クレーム対応が得意な管理会社に管理を依頼することで、スムーズな解決につながるでしょう。
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老朽化により修繕費やリフォーム代、建て替え費用がかかる
アパート経営をする際は、老朽化対策によって修繕費やリフォーム代、建て替え費用がかかることに注意が必要です。大規模な修繕が必要になるのは、10年から15年に一度とされています。適切に資金計画を立て、メンテナンスがしっかりとできる状態にしておきましょう。
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地震・台風などの災害リスク
アパート経営には、地震や台風などの災害リスクも想定されます。もしも所有アパートで火災や台風、地震などによる被害があった場合には、補修したり建て替えたりする費用が必要です。しっかり保険をかけることでリスクを軽減できますが、それでも補修工事期間中に家賃収入を得られないリスクは残ります。
アパート経営を始めるまでの流れ
続いて、アパート経営を始めるまでの下記の流れについて詳しくチェックしていきましょう。
- 01
- 経費やリスクなど必要な情報を収集する
- 02
- 建設会社に相談して見積もりを依頼する
- 03
- 金融機関でローンの審査
- 04
- アパートの建設
- 05
- 入居者の募集
1.経費やリスクなど必要な情報を収集する
アパート経営を始める前に、経費やリスクなどの必要な情報を収集します。アパート経営は、20年以上の長期間に及ぶ投資です。行き当たりばったりで始めるのではなく、アパート経営に必要な経費の目安やメリット、デメリット、土地のリサーチなど、収集すべき必要な情報を集めてしっかりとした計画を立てておきましょう。
2.建設会社に相談して見積もりを依頼する
次に、建設会社に相談して見積もりを依頼しましょう。建設会社の担当者に実際に土地を見てもらってから、プランニングや見積もりの提案を受けられます。長期的な収支予測をした事業計画を出してもらって、しっかりとチェックするようにしましょう。
3.金融機関でローンの審査
しっかりとした計画が立てられたならば、金融機関で不動産投資ローンやアパートローンの審査を受けます。(自己資金のみで捻出できる場合には不要です。)個人の収入や資産状況、アパートの経営計画に問題がないかなどが審査対象となります。
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5.入居者の募集
アパートの建設開始とともに工事完成時期の目途がつくため、いつから入居開始できるのか確認したうえで入居者の募集も行いましょう。この入居者の募集作業については、不動産会社に委託する場合が多いようです。
アパート経営に必要な初期費用
最後に、アパート経営に必要な初期費用について解説します。初期費用には、建物の設計費や建築工事費、付帯工事費などが該当します。また、土地を新しく購入する場合には土地代がかかります。
自己資金の目安は「物件価格の1割以上で総資金の3割」だといわれています。それぞれの費用を詳しくチェックしていきましょう。
アパートの建築工事費
アパートの建築工事費は、初期費用のなかでも大きな割合を占めるものです。このなかには、アパートの設備の費用や人件費も含まれます。
建築工事費の坪単価は建物の構造などで異なり、木造アパートならば約50万~70万円、鉄骨造ならば約60万~90万円が目安だといわれています。実際に相見積もりを取ると、ある程度のビジョンが描けるようになるためおすすめです。
監修者
中川 祐一
- 資格
- 宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
- 略歴
- 現在、不動産会社で建築請負営業と土地・収益物件の仕入れを中心に担当している。これまで約20年間培ってきた、現場に密着した営業経験と建築知識、不動産知識を活かして業務に携わっている。