
不動産会社における「管理会社」と「仲介会社」には、業務内容や対応範囲、手数料などの違いがあります。
とはいえ「具体的な違いがよくわからない」というオーナーも多いことでしょう。アパート経営を成功させるためには、業務を委託する不動産会社の基礎知識を押さえておくことが大切です。
この記事では、管理会社と仲介会社の業務内容や、委託会社の選び方のポイントなどを詳しく解説します。アパート経営を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

ポイント
- 建物や入居者の管理を担うのが「管理会社」、賃貸物件の媒介を担うのが「仲介会社」
- 効率的な投資規模やエリア拡大を検討する場合、管理会社への委託が必要不可欠
- 実績や強み、担当者の対応などのポイントで委託会社を選ぶとよい
不動産会社の「管理会社」と「仲介会社」の違い

不動産会社における「管理会社」と「仲介会社」には、どのような違いがあるのでしょうか。「仲介管理会社」と呼ばれる会社も含めた主な違いは、以下のとおりです。
会社の種類 | 対応範囲 | 対応期間の目安 |
---|---|---|
管理会社 | 建物や入居者の管理 | 契約から退去までの長期間 |
仲介会社 | 賃貸物件の媒介 | 契約から引き渡しまでの短期間 |
仲介管理会社 | 建物や入居者の管理・賃貸物件の媒介の両方 | 契約から退去までの長期間 |
それぞれの会社の具体的な違いについて、詳しく見ていきましょう。
管理会社とは
管理会社とは、オーナーの代わりに物件全般の管理を引き受ける会社のことです。
建物・入居者の両面から賃貸経営管理をサポートするため、オーナーは手間や時間をかけることなく物件を運用可能です。たとえば管理会社に建物・入居者の管理を任せることで、遠方の物件でも運用できます。
なお、管理形態は大きく分けて一般管理とサブリースの2種類あります。詳細が気になる方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。
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仲介会社とは
仲介会社とは、入居希望者とオーナーの間に入り、部屋の賃貸借契約を円滑に進めるために媒介する会社のことです。
入居希望者を集客して希望条件にマッチした部屋を紹介・案内し、成約すればオーナーと賃貸契約を結ぶ手続きを代行します。借主が物件に入居するまでの業務を代行してくれるため、オーナーにとっては心強い存在といえるでしょう。
両方に対応する仲介管理会社とは
仲介管理会社とは、仲介と管理業務のどちらにも対応する会社のことです。
仲介会社に足を運んでいるオーナーからすれば1社との契約で一括対応してもらえるため、複数の不動産会社とやり取りする手間が省けるメリットがあります。一方、顧客や物件情報を独占的に管理し、他社へ物件情報を流さない「囲い込み」と呼ばれるケースも見受けられるため、注意が必要です。
なお、2025年からは「囲い込み」が業務停止などの処分対象となります。仲介管理会社に業務を依頼する際には、情報がオープンになっているかどうかチェックしておきましょう。
参考:国土交通省 宅地建物取引業法 法令改正・解釈について
入居者の管理
管理会社の業務の1つ目は、入居者の管理です。具体的には、以下のような仕事を担当します。
- 入居者募集、審査、契約業務
- 入居者の要望ヒアリング、クレーム・トラブル対応
- 入居者の更新業務
- 入居者の退去受付、立ち合い
たとえば「上の階の騒音が気になる」「水漏れトラブルが起きた」など入居者からのクレームやトラブル報告があった際、管理会社が連絡窓口の役割を果たします。
入居者への対応に慣れている管理会社に適切な管理を任せることで、オーナー・入居者双方の安心につながるでしょう。
賃料の管理
管理会社の業務の2つ目は、賃料の管理です。入居者から賃料を回収し、オーナーへ送金します。
近年、賃貸物件への入居にあたっては保証会社に加入することが一般的です。
一方、長く入居している入居者の中には保証会社に加入していない場合があります。また、特に自主管理で運用されていた物件では、保証会社に加入していない入居者を抱えているケースが多く見られます。
家賃を滞納した入居者が保証会社に未加入の場合、賃料を滞納した入居者への督促や、連帯保証人への請求業務は、管理会社が請け負います。
建物の管理
管理会社の業務の3つ目は、建物の管理です。オーナーの代わりに賃貸物件の設備や環境を整え、入居者の快適な生活をサポートします。
具体的な業務は以下のとおりです。
- 共用部分の清掃・メンテナンス
- 備え付け設備の故障対応
- 退去時の修繕対応
物件の入居率を向上させるために、新設備への入れ替えやリフォームの提案を行う管理会社もあります。
オーナーによる自主管理も可能

管理会社に業務を委託することなく、オーナーが自主管理することも可能です。
自主管理には、管理業務の委託コストをかけずに済むメリットがあります。さまざまな経験を通じて、賃貸経営のノウハウも蓄積できるでしょう。
ただし自主管理の場合、入居者対応から建物の管理までの膨大な業務を、すべてオーナー自身が引き受ける必要があります。クレーム・トラブル対応や家賃督促などの業務が、精神的な負担につながるケースもあります。迅速かつ適切な対応ができなければ、空室リスクにもつながるため注意が必要です。
そのため、入居者からの問い合わせ対応や緊急を要する対応などが必要な場合、不動産賃貸業を本業としている方以外は管理会社へ委託されるケースがほとんどです。
副業として不動産投資を検討する場合は特に、管理会社を利用するほうが安心でしょう。
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仲介会社の主な業務内容

仲介会社の主な業務内容には、物件情報の掲載や物件の案内、重要事項説明や契約手続きなど、入居希望者に関する仕事があげられます。
ここでは、仲介会社の具体的な業務内容について解説します。
物件情報の掲載
仲介会社の業務の1つ目は、不動産ポータルサイトや店頭などへの物件情報の掲載です。
2019年に国土交通省が行った「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」によると、入居者の74.5%が住宅・不動産情報の総合サイトから情報収集していることがわかりました。
そのため、Webサイトによる情報公開は特に重要です。Webサイト上の掲載順位が高くなるように募集・閲覧状況をチェックし、データに基づく運用や情報登録を行う仲介会社も少なくありません。
入居希望者に物件の特徴や魅力を伝えるために必要な間取り図の作成や物件の写真撮影も、仲介会社が担当します。
参考:国土交通省 賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査
物件の案内
入居希望者に物件の内見案内を実施することも、仲介会社の業務です。
物件情報を見た入居希望者から問い合わせがあれば、希望条件などをヒアリングし、物件のマッチングを行います。実際に物件を案内しながら、入居希望者に対して物件の魅力や設備について説明し、成約へとつなげます。
「オーナーや管理会社から鍵を借りる」などの諸手配も、仲介会社の業務です。
重要事項説明や契約手続き
入居者に重要事項説明を行い、賃貸借契約を締結することも、仲介会社の業務の1つです。
入居希望者が契約を希望し、オーナーから入居の了承を得た場合、宅地建物取引士が入居者に対して重要事項について説明してから賃貸借契約へと進みます。契約書の取り交わしだけでなく、鍵の受け渡しなど、入居までに必要な一連の業務に対応することが一般的です。
なお、オーナーと借主を仲介する仲介業者の業務範囲は「入居希望者に物件を紹介して賃貸借契約手続きを代行し、引き渡すまで」となります。入居者が物件に居住してからの管理も担う管理会社と比べて、対応期間は短めです。
「管理会社」と「仲介会社」における手数料の違い

「管理会社」と「仲介会社」では、オーナーが支払う手数料が以下のように異なります。
手数料の種類 | 手数料の目安 | |
---|---|---|
管理会社 | 管理手数料 | 家賃収入総額の3~5%程度 |
仲介会社 | 仲介手数料 | 家賃1カ月分程度 |
それぞれの違いについて、詳しく見ていきましょう。
管理会社の手数料
管理会社を利用する場合、オーナーは管理会社に「管理手数料」を支払う必要があります。
管理手数料の設定金額に関する法律の定めはありません。オーナーと管理会社の同意によって自由に設定可能であるものの、「家賃収入総額の3~5%」が1つの目安となります。たとえば管理手数料が5%の場合、月に100万円の家賃収入がある場合、1カ月の管理手数料の相場は5万円程度です。
ただし「家賃収入総額の3~5%」はあくまでも目安です。最近のトレンドでは管理手数料「無料」や「1%」など安さを売りにするケースが多く見受けられます。どこまでの業務をやるのか、パンフレットを見ただけではどこも同じような業務内容で比較が難しいです。
その時は管理物件を見に行く、会社へ行くなどしてオーナー自身の目で確認することが重要かもしれません。
下記記事では、管理手数料の相場について解説しています。ぜひご覧ください。
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仲介会社の手数料
仲介会社を利用するオーナーが仲介会社に支払う手数料は「仲介手数料」です。
仲介手数料は必ず発生するものではなく、仲介会社が賃貸借契約を成立させた際に生じる「成功報酬」となります。
賃貸契約における仲介手数料は、宅地建物取引業法によって「家賃1カ月分+消費税」が上限と定められています。そのうち、貸主と借主の双方が0.5カ月分ずつ負担することが基本です。
ただし、仲介手数料の負担割合に関する法律の規定はありません。そのため「貸主または借主の一方の負担がゼロで、もう一方がすべて負担する」といった対応も可能です。たとえば入居者が集まりにくい物件では、貸主が仲介手数料のすべて負担するケースが珍しくありません。
貸主と借主で負担割合が異なる場合、多く負担する側の承諾が必要になります。
参考:国土交通省 <消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ
管理会社や仲介会社の選び方

大切な物件・入居者の管理や仲介を任せる管理会社や仲介会社は、慎重に選ぶ必要があります。
とはいえ、多くの会社がある中で「どのように選べばよいのだろう?」とお悩みのオーナーも多いことでしょう。
ここでは、管理会社や仲介会社の選び方について解説します。
管理料
1つ目の注目ポイントは、管理会社に支払う管理料です。
仲介会社に支払う仲介手数料とは異なり、管理料の上限は法律で定められていません。そのため、オーナー側で賃料収入に対する管理料のバランスをチェックする必要があります。
ただし、管理料の安さのみを重視すると、対応してもらえる管理の幅が狭いケースもあるため注意が必要です。契約した後に「契約内容に家賃滞納者への対応業務が入っておらず、自分で督促しなければならなくなった」といった、想定外の事態に見舞われる恐れもあります。
また管理料が安くても、対応が不十分で入居者の満足度が下がれば、退去につながりかねません。
管理料と管理の質は比例する傾向があるため、管理料の安さだけで選ぶことは控えたほうがよいでしょう。
管理実績
2つ目の注目ポイントは、管理会社の管理実績です。
管理会社がWebサイトなどで公開する資料などから、管理実績をチェックできます。「管理戸数1万戸以上」の実績を目安にするとよいでしょう。
また、収益を向上させるためには、空室を埋めて入居率を高めることが重要です。満室経営を目指すためには「入居率95%以上」を目安に判断するとよいでしょう。
また「空室を埋めるための具体的な提案があるかどうか」も、管理会社を選ぶうえでチェックしておきたいポイントです。
担当者の対応
3つ目の注目ポイントは、管理会社の担当者の対応です。
入居者の満足度を上げるためには、クレームや相談を受けた担当者の迅速かつ適切な対応が求められます。
オーナーにとっても、ビジネスパートナーとして信頼できる相手を選ぶことは重要です。たとえば「担当者に相談しても、十分な対応をしてもらえない」「なかなか連絡が返ってこない」といった不満を抱く場合、アパート経営のストレスを感じやすくなります。
オーナーとともに物件価値を向上させるために、必要に応じて的確な提案ができる担当者が在籍する管理会社を選ぶことも大切です。
たとえば、管理会社のWebサイトやパンフレットなどに「お客様の声」が掲載されていることがあります。特に顔出しによる高評価が多い場合、顧客満足度の参考にできるでしょう。
ターゲット層に対する集客力
1つ目の注目ポイントは、ターゲット層に対する集客力です。
ひとくちに仲介会社といっても、会社によって得意分野が異なります。たとえば、ワンルームマンションの客付けに強い仲介会社もあれば、ファミリー向けマンションの実績が豊富な仲介会社もあります。所有物件の特徴と得意分野が異なる仲介会社に依頼すると、スムーズに入居者が決まらない恐れもあるため、注意が必要です。
また、該当地域の事情に詳しい仲介会社を選ぶことも大切です。所有物件にマッチする入居希望者が見つかりやすくなります。
地域の情報に精通しており、ターゲット層に対する集客力の高い仲介会社を選ぶことを意識しましょう。
免許の更新回数
2つ目の注目ポイントは、免許の更新回数です。
仲介会社が仲介業務を行うためには、宅地建物取引業(宅建業)の免許が必要です。また5年に1度、免許を更新する必要があります。そのため、免許の更新回数が多いほど、営業年数が長いことを意味します。営業年数の長さは、安心につながるでしょう。
具体的には「〇〇県知事(△△)第□□□□号」という免許番号のカッコ内の数字(△△)が大きいほど営業年数が長いことがわかります。免許番号は、仲介会社のWebサイトや事務所内の掲示物などで確認できます。
担当者の対応
3つ目の注目ポイントは、担当者の対応です。管理会社と同様、ビジネスパートナーとして信頼できる担当者が在籍する仲介会社を選びましょう。
「疑問や不安を安心して相談できる」「レスポンスが早い」「交渉ごとや調整事項に対して柔軟に対応してくれる」といった、人柄のよい担当者が理想です。
まとめ

不動産会社における「管理会社」と「仲介会社」には、業務内容や対応範囲、手数料などの違いがあります。物件を決めるための動きをする「仲介会社」とオーナー様の物件を決めるための動きをする「管理会社」とでは大きく違います。
賃貸経営をする上で、将来的に予想される空室リスクや修繕リスクなどに備えたい場合は、管理会社に任せることがいいでしょう。

監修者
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士
長谷川 憲一
20年以上にわたり不動産業界に従事。中古物件の仕入れ販売、賃貸管理業務、マンスリーマンション事業の立ち上げ、リーシング事業の立ち上げなどに携わる。現在は、幅広い経験と知識を生かし、プロパティマネジメント・アセットマネジメントを担っている。

監修者
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士
久保田 克洋
不動産業界に20年以上従事。賃貸管理を中心に管理受託業務・売買仲介・民泊運営を担った幅広い知識と経験をベースに、現在はプロパティマネジメント・アセットマネジメントを担っている。
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