賃貸人の修繕義務範囲はどこまで?設備が故障したときの責任や対処法
賃貸人は賃借人に対し、物件を使用・収益させるべき義務を負っており(民法第601条)、物件に不具合や故障が発生した場合には、適切に使用・収益ができるように修繕しなければなりません。修繕義務の範囲には個別判断が必要なことも多々あり、ケースごとの把握が必要です。 本記事では、賃貸人の修繕義務の範囲や設備が故障した場合の対応、賃貸人が負うリスクとその予防策について解説します。 ポイント 賃貸人は、賃借人が...
不動産投資家K
不動産投資は、老後の資金対策として有効な手段の1つです。また、家賃収入は年金にも影響がありません。ただし、投資にリスクはつきものです。不動産投資を始めるにあたっては、あらかじめリスクや流れを理解しておくことが大切です。
この記事では、老後の資金対策になる不動産投資のポイントや、3つのリスクについて詳しく解説しています。
不動産投資は、投資信託や株式・債券投資などと並び、老後の資金づくりに役立つ方法とされています。
生命保険文化センターの「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、公的年金以外の夫婦の老後の必要生活資金(月額)は、60〜64歳で20.2万円、65歳以上で16.1万円とのことです。リタイア近くになってから慌てることのないように、老後の資金づくりとして不動産投資を活用すべきか、一度考えてみましょう。
不動産投資が、老後の資金づくりに役立つ具体的な理由を解説します。
参考:生命保険文化センター 2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査
不動産投資では、一度入居者が決まると何年も同じ物件に住むことも少なくないため、入居者がいる限り毎月長期にわたって安定収入を得られます。日本賃貸住宅管理協会の「第26回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』」によると、2021年度の入居者平均居住期間(全国)は4年1か月でした。
インフレに対応しやすい点も、不動産投資から安定収入を期待できる理由です。一般的に、現預金などの金融資産はインフレ時に価値が低下するのに対し、不動産のような現物資産は価値が下がりにくいとされています。
参考:日本賃貸住宅管理協会「第26回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』」
不動産投資は、最初に投資対象を決めれば後は物件の管理やメンテナンスを管理会社に委託することが可能なため、不労所得になります。不労所得とは、自分の労働への直接的対価以外で得る所得のことです。
つまり、会社員・公務員のように平日の日中は他のことに時間を割けないという場合でも、老後の資金づくりができます。国土交通省の「個人投資家への不動産投資に関するアンケート調査結果について」によると、「不動産投資経験あり」と答えた回答者のうち約4割が会社員でした。
参考:国土交通省「個人投資家への不動産投資に関する アンケート調査結果について」
不動産所得が赤字の場合、他の黒字の所得金額から差し引けるため、節税対策にもなります。不動産投資では、固定資産税・減価償却費・ローン利息・賃貸管理会社への委託管理費など、さまざまな費用を経費として算出できるため、年によって赤字になることもあるでしょう。
経費を計算する上で、とくにポイントとなるのが建物の減価償却費です。不動産の購入費用を耐用年数で分割し、毎年経費として計上できるため、各年の収支がプラスでも計算上赤字になりえます。
一般的に、株式投資やFXなどが「ハイリスク・ハイリターン」の投資であるのに対し、不動産投資は「ミドルリスク・ミドルリターン」といわれています。不動産が人間の生活に必要な「住」であることや、基本的に家賃は毎月安定して得られる点でハイリスク商品と比べると急激に下がる可能性が低いことが、ミドルリスクに分類される主な要因です。
もちろん、不動産投資にも空室リスクや家賃滞納リスク、地震・火災リスクなどさまざまなリスクが存在します。しかし、これらのリスクは想定しやすいため、前もって対処しやすいでしょう。
空室リスクとは、所有する投資物件が空室になることで、家賃収入を得られなくなるリスクです。想定外のタイミングで空室になると、不動産投資で借りたローンを返済できなくなるおそれがあります。
空室リスクが高まると、本来老後資金対策ではじめたにもかかわらず、赤字になるでしょう。空室リスクを抑えるために、利便性が高く入居者の人気を集めそうな物件を選ばなければなりません。
主な空室リスク対策は、「入居者に選ばれるような募集条件にする」「ノウハウを有した仲介会社に入居者募集を依頼する」「設備を新しくする」などです。思い切ってリフォームやリノベーションをして、見栄えをよくする方法もあります。
また、マンション一棟に丸ごと投資する一棟投資の場合、空室率を意識することが大切です。空室率とは、部屋の数に対して空室の割合が何%なのかを示した数字を指します。
家賃下落リスクとは、経年劣化などの事情で投資物件の競争力が低下し、募集家賃を下げざるをえない状況になるリスクです。投資エリア周辺に賃貸物件が増えれば増えるだけ、競争が激しくなり、家賃下落リスクが高まります。
家賃下落リスクの対処法の1つが、できるだけライバルの少ないエリアを選ぶことです。空室リスクの場合と同様に、利便性の高い物件を選ぶことや設備を充実させることも、対策になりえます。
また、空き家リスクや家賃下落リスクと同様に、家賃滞納リスクも家賃収入を得られなくなるリスクです。これは入居者がいるにもかかわらず、家賃を支払ってもらえないリスクを指します。
日本賃貸住宅管理協会の「第26回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』」によると、2021年度の全国滞納率(月末での1か月滞納率)は0.9%でした。家賃下落リスクに対処法として、「入居審査を徹底する」「入居者に連帯保証人をつけてもらう」「入居者に家賃保証会社に加入してもらう」などがあげられます。
参考:日本賃貸住宅管理協会「第26回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』」
金利上昇リスクとは、不動産投資にあたって借り入れしているローンの金利が上昇することで、返済負担が増加するリスクです。一定の費用を要する不動産投資では、金融機関のローンを利用することが一般的なため、借入金利には十分に注意しなければなりません。
金利上昇リスクの主な対処法は、「できるだけ自己資金でまかない借入金額を減らす」「負担が大きくなりそうな時に、金利が低い金融機関への借り換えを検討する」などです。
不動産投資のリスクについては、下記の記事でも詳しく解説しています。
老後対策で不動産投資を始める際のポイントは、以下のとおりです。
各ポイントを確認していきましょう。
不動産投資を始めると、不動産会社の担当者などさまざまな人からアドバイスを受ける機会がありますが、自分自身でも知識を身につけることがポイントです。実際に投資物件を購入する際も、言われたままの物件にするのではなく、自分でも情報収集した上で十分に納得できるものを選びましょう。
不動産投資の主な勉強方法には、「書籍やインターネットで基礎知識を学ぶ」「セミナーに参加する」「興味のある物件を実際に見学する」などがあります。ただし、インターネット上には不正確な情報もあるため、信頼性が高いか確認した上で活用しましょう。
老後対策で不動産投資を始めるのであれば、早い時期から取り組むこともポイントです。不動産投資でローンを借りる場合、若いうちから取り組みリタイア前に全額返済していれば、家賃から諸費用を引いた金額すべて老後資金にまわせます。
ただし、早ければ早い方がよいと考えて、焦って購入するのは禁物です。物件を十分に選定せずに購入すると、空室リスクや家賃下落リスクなどのリスクが高まるおそれがあります。
不動産投資でローンを利用するにしても、できるだけまとまった資金を用意することがポイントです。自己資金が少なく借りる金額が多いと、返済時の利息が増えてトータルのコストが増加してしまいます。
ローンは、空室で家賃収入が得られない時にも支払いが必要です。用意できそうな自己資金額や、家賃収入がない時期にも返済が可能な額を考慮して借入金額を決めましょう。
ただし、預貯金がなくなると、病気や冠婚葬祭、子どもの留学など想定外の出費に対応できません。あくまで、無理のない範囲でまとまった自己資金を用意することが大切です。
安定した家賃収入を手に入れるためには、不動産会社を慎重に選ぶこともポイントです。自分の成績だけを優先する担当者が在籍する不動産会社ではなく、顧客の資産状況や目的を把握してニーズに合った物件を提案する会社を選定しましょう。
不動産会社を選ぶにあたっては、自分自身で不動産投資に関する知識を身につけておくこと大切です。説明する不動産会社担当者の話をしっかりと聞きつつ、情報を精査するようにしてください。
老後対策としての不動産投資を成功させるには、出口戦略を考えておくこともポイントです。投資活動における出口戦略とは、投資しした資金をいかに損失を出さずに増やして終わらせるかを決めることを意味します。
一般的に、不動産投資における出口は「売却」です。できるだけ多くの家賃収入を得て、高額で売却できるかが鍵となります。
不動産購入時から、家賃収入を得やすく、価格が下がりにくい売却時に高値が期待できる物件選定を心がけましょう。いつ売却するのか、不動産投資開始時からあらかじめ決めておくことも大切です。
不動産投資を始める際は、まずなぜ投資をするのか明確にします。投資目的が曖昧だと、出口戦略が立てられず、物件選定もうまくいきません。
投資目的が明確になったら、物件購入の予算やローンの有無などを決めます。ローンを借りるのであれば、何年でいくら借りるのかやどの金融機関を利用するのかも考えることが大切です。
続いて、インターネットや不動産会社訪問を通して、不動産投資の対象物件を選定します。気に入った物件があれば、実際に見学するようにしましょう。
物件が見つかれば、金融機関でローンを申し込み購入します。ただし、ローン借入にあたって審査が必要な点に注意が必要です。
なお、不動産投資を始める際、物件購入費用・管理費用・ローン利息など各種費用以外に、固定資産税や都市計画税などの税金もかかる点も理解しておきましょう。
物件購入の流れについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
ここで、よく疑問に思われるのが、収入があると年金の支給額が減額されないだろうか?ということです。これは60歳を超えて厚生年金に加入して給与を一定額以上もらっている場合に、年金が減額される「在職老齢年金制度」と混同されているために起こる誤解でしょう。
家賃収入は不労所得です。厚生年金の被保険者ではなく在職老齢年金制度の対象外となるため、年金は減額されません。定年退職後は、年金と家賃収入の両方を受け取ることができます。
ただし、家賃収入を得ていると、先ほど述べた所得税や固定資産税・都市計画税といった税金の支払いが必要になったり、確定申告が必要な場合があります。家賃収入で年金が減額になることはありませんが、不動産投資を行う際は、税金についての理解も重要です。
参考:日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
日本年金機構 在職老齢年金の支給停止の仕組み~働きながら年金を受けるときの注意事項~(2022年4月1日)(PDF)
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不動産投資には、向いている人と不向きな人がいます。不動産投資をはじめるか悩んでいる場合は、自分が向いている人の特徴に該当するかチェックしてみるとよいでしょう。それぞれの特徴を解説します。
不動産投資でローンを組む場合、一般的に30年前後返済し続けなければならないため、長期的に物事を考えられる人が向いています。長期的な視点で物事を考えられる人は、自分でスケジュールを立てて収支状況を把握できるでしょう。
一方、長期的な視点で物事をとらえない人や目先のことしか興味を持てない人は、全体の収支のバランスを意識できず、投資がうまくいっているのかの判断もつかないため向いていません。
不動産投資でローンを借りる場合でも、物件価格の1〜2割程度の自己資金を金融機関から求められることが一般的なため、それだけの資金を準備できる人が向いています。2019年に金融庁が発表した「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」によると、「物件の購入金額の一部を顧客の自己資金で賄わせているか」という質問に対して「必ず」もしくは「概ね3分の2以上の案件で」行っていると答えた銀行の割合が約8割でした。
また、不動産投資でローンを借りる前提で考えると、会社員や公務員のように安定した収入を得られる職業に就いている人も向いています。安定した収入があれば、一般的に金融機関の審査も通りやすいです。
不動産投資は、入居者との接点や不動産会社との打ち合わせ、銀行への相談など人と接する機会が多いため、行動力のある人が向いています。また、不動産の金額も大きいため、物件を自分で決断する際、不動産会社と契約を締結する際に決断力も必要です。
行動力や決断力が欠けていると、理想の物件に出会えたとしても購入をためらうため、チャンスを逃しかねません。結果的に、不動産投資の成功から遠ざかるでしょう。
投資家に向いている人の特徴については、以下の記事もぜひ参考にしてみてください。
長期的な安定収入を得られる点、ミドルリスクでリターンを得られる点などを考慮すると、不動産投資は老後の資金対策になります。ただし、不動産投資を始めるにあたって空室リスクや家賃下落リスク、金利上昇リスクなど各種リスクを理解しておくことが大切です。
長期的な視点で物事を考えられる人や行動力・決断力がある人は不動産投資に向いています。老後資金が不安な方は、知識を身に付ける、出口戦略を考えるなどのポイントを押さえつつ不動産投資を検討してみてはいかがでしょうか。
監修者
宅地建物取引士
東京・仙台を中心に、20年以上アパート・マンション建築賃貸業界に従事している。これまで500棟以上の新築アパート・マンションの企画・設計・建築・運営に携わり培ってきたリアルな知見が強み。
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