相続した土地を活用できず、自治体へ寄附できないか考える人もいるでしょう。自治体への寄附も可能ですが、必ずしも引き取ってくれるとは限りません。
本記事では、土地を自治体へ寄附する手順や必要書類、自治体以外へ寄附する方法などを解説します。
ポイント
- 自治体はどんな土地でも寄附を引き受けてくれるわけではない
- 認定地緑団体・個人・法人にも土地を寄附または贈与できる
- 相続した土地を国に引き渡せる相続土地国庫帰属制度も利用可能
自治体へ土地を無償譲渡できる?
相続で土地を手に入れたもののどうすれば良いのか対応に困ることがあります。土地を放置しており、毎年固定資産税だけがかかってしまっている方もいるかもしれません。
土地の処分は、売却や寄附などいくつかの方法があります。中には、公益に使って欲しいという思いから、自治体へ土地を無償譲渡しようと考える方もいるでしょう。
しかし、たとえ無償であったとしても、使用目的がなければ、自治体が土地を受け取ってくれることはほとんどありません。
ここでは、自治体への土地の無償譲渡が断られる理由やどのような土地が断られるかについて解説します。
自治体へ土地を寄附する
自治体へ土地を無償譲渡することは、「寄附」の扱いになります。
お住まいの自治体によっては、土地の寄附の担当窓口があります。まずは窓口に土地の寄附について相談してみましょう。ただし、自治体は土地の受け入れには消極的な場合が多いです。
土地の寄附は受け入れられない場合が多い
自治体にその土地を活用する可能性や必要性がなければ、無償であったとしてもその土地は受け入れられないと考えておきましょう。
自治体からすると、土地を引き取ることで固定資産税の税収が減ってしまううえに、活用予定のない土地に管理コストだけが発生することになります。
所有者にとって活用の方法がないから手放したい土地なのであれば、自治体にとっても活用できない土地である可能性が高いことは容易にわかるでしょう。
寄附を断られる土地
寄附を断られる可能性が高い土地として、以下の4つの条件があげられます。
- 利用が困難な土地
- 利用するのにコストがかかる土地
- 資産価値が低い土地
- 無許可で開発された土地
たとえば、山奥にある土地や傾斜地などの利用が困難な土地は、公益に利用できなかったり、第三者に譲ることが難しいため、断られる可能性が高いです。
また、土壌汚染などの問題を抱えている土地も、利用するために多額のコストが必要となるため、断られる可能性が高いといえます。
このように、公共の場として利用できない土地や新たに有効活用するのが難しい土地の引き取りは、基本的に断られます。
自治体への寄附は、処分の困った土地を無条件で引き取ってもらう手段ではないことを認識しておきましょう。
土地を自治体に寄付する手順と必要書類
土地を自治体に寄附する手順は、以下のとおりです。
- 1.
- 自治体の担当窓口に相談する
- 2.
- 自治体が土地の調査を行う
- 3.
- 受け入れ可能なら必要書類を提出する
土地の寄附は頻繁にあるわけでないため、担当窓口を常時設置していない可能性があります。まずは自治体の総合窓口へ連絡するのがおすすめです。
自治体の担当窓口で相談後は、寄附を受け入れるかどうかの審査を行います。審査が通れば、必要書類の提出を求められます。
土地の寄附に必要な書類は、以下のとおりです。
- 寄附申出書
- 公図
- 登記事項証明書
- 所有権移転登記承諾書
- 現況写真
- 権利者の承諾書
寄附申出書や所有権移転登記承諾書は、自治体の書式に従う必要があります。公図や登記事項証明書は寄附する土地の管轄の法務局で取得可能です。
現況写真は自分で用意し、所有権以外の権利設定がある場合には権利者の承諾書も準備しましょう。
必要な書類は自治体によって異なる可能性があるため、事前に確認しましょう。
自治体に寄附できなかった場合
自治体へ寄附したくても、基準が厳しいため自治体には断られる可能性が高いです。自治体に寄附できなかった場合には、別の方法を試せます。ここでは、自治体に寄附できなかった場合におすすめの方法をご紹介します。
認定地緑団体に寄附する
認定地緑団体とは自治会や町内会などです。自治体よりも規模の小さいものの、土地の寄附を受け入れてくれる可能性があります。
土地の寄附の可否には、自治体と同様に有効活用できるかどうかがポイントになります。土地の審査を通過した場合のみ、土地の寄附が可能です。また、認定地緑団体へ土地を寄附した場合、譲渡所得が非課税になるなどの税制優遇があります。
すべての自治会や町内会が認定地緑団体ではないため、事前に確認する必要があります。
個人に贈与する
知人や隣人などの個人へ土地を寄附することも可能です。隣人であれば、既存の土地と合わせて有効活用できる可能性があります。
ただし、個人への寄附は、税法上は贈与として扱われるため注意が必要です。贈与を受けた側は、資産価値に応じた贈与税を支払わなければなりません。
また、個人間で土地を譲渡する場合には、贈与契約書を作成しなければなりません。贈与契約書に記載する内容は、以下のとおりです。
- 贈与者と受贈者両者の氏名
- 贈与契約を締結した旨
- 贈与の対象となる土地の所在地や地番
- 所有権移転登記の日時
- 費用負担者
このほかにも、土地の所有権移転にかかる費用や贈与後の固定資産税の支払いなどをどちらが負担するかについても取り決めておくよう注意しましょう。
法人に無償譲渡する
法人に無償譲渡することも可能です。個人では使い道のないような土地であっても、法人であれば有効活用できる可能性があります。
ただし、法人に譲渡する場合は、税金がかかることに注意が必要です。また、寄附先が営利法人なのか公益法人なのかによって税金の扱いが異なります。
営利法人とは一般的な企業、公益法人は学校や神社、NPO法人などです。
営利法人に寄附する場合は、寄附をする側には譲渡所得税がかかり、寄附を受けた法人は法人税がかかります。
公益法人に寄附する場合は、社会貢献と見なされるため譲渡所得税が免除されます。ただし、譲渡所得税の免除には、租税特別措置法第40条の規定による承認申請書を提出しなければならないため注意しましょう。
相続土地国庫寄附制度とは
相続土地国庫帰属制度とは、相続または遺贈によって土地の所有権を相続した人が、土地を手放したい場合に、ある一定の条件を満たしていれば、国に返せる制度です。
これまで、相続財産に不要な土地があった場合、その土地を含めたすべての財産の相続破棄またはその土地も含めたすべての財産を相続するしかありませんでした。
しかし、近年では土地のニーズが低下し、相続しても処分に困るため、相続の際に登記がされないまま土地を放置する人が増加しています。
こうした事態に対応するため、相続土地国庫帰属制度が作られました。ただし、相続土地国庫帰属制度を利用するには、費用がかかります。
申請する際に1筆の土地あたり1万4,000円の審査手数料、審査を通ると10年分の土地管理費として1筆ごとに20万円納付しなければなりません。
まとめ
処分に困っている土地は、自治体、認定地緑団体、個人、法人へ寄附できます。
ただし、自治体や認定地緑団体への寄附は、基準が厳しく、断られる可能性が高いです。個人や法人へ土地を寄附する際は、贈与税の取り扱いに注意しなければなりません。
近年では土地のニーズが下がり、相続しても処分に困る土地が増えていることから、相続土地国庫寄贈制度を設けています。
審査や承認後に費用はかかりますが、譲渡先がなく、処分に困っている土地がある場合には、相続土地国庫帰属制度を利用してみるのも1つの手です。
監修者
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
中川 祐一
現在、不動産会社で建築請負営業と土地・収益物件の仕入れを中心に担当している。これまで約20年間培ってきた、現場に密着した営業経験と建築知識、不動産知識を活かして業務に携わっている。
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