【徹底検証】一棟アパート投資と区分投資との違いを比較

カテゴリ
買う 
タグ
不動産投資  賃貸管理  不動産売却  人気 

不動産投資家K

B!

不動産投資の代表的なものとして「一棟投資」と「区分投資」があげられます。それぞれメリットとデメリットがあり、目的などさまざまな点で違いがあります。この記事では不動産投資を始めようとしている方に向けて、一棟投資と区分投資を10項目の切り口から徹底比較します。

ポイント

  1. 不動産投資の代表的な手法には一棟投資と区分投資がある
  2. 一棟投資と区分投資はさまざまな点で違いがあるので、よく検討して始める方がよい
目次

一棟投資と区分投資を10項目で徹底比較!

一棟投資とは一棟アパートや一棟マンション、あるいは一棟ビルを、一棟まるごと所有して賃貸経営を行う投資手法です。出口戦略として、投資から撤退する際に売却で得られる利益も視野に入れた長期的な投資といえるでしょう。

また、区分投資とはアパートやマンションを一戸、あるいは複数戸所有して、同じく賃貸経営と出口戦略で利益を得る投資手法です。 

これら2つは、どちらも不動産投資ですが、さまざまな違いがあります。ここでは次の10項目の切り口で2つの投資手法を徹底的に比較します。

  1. 1.投資目的を比較
  2. 2.投資の始めやすさを比較
  3. 3.投資効率を比較
  4. 4.管理面の手間を比較
  5. 5.経営の自由度を比較
  6. 6.出口戦略面を比較
  7. 7.金融機関の評価を比較
  8. 8.節税効果を比較
  9. 9.リスクヘッジを比較
  10. 10.向き不向きを比較


詳しくは以下から解説していきます。

1.投資目的を比較

不動産投資の目的は、一般的に「収入の増加」「相続税対策」「インフレ対策」「老後のための資産形成」の4つです。区分マンション投資と、一棟アパート・一棟マンション・一棟ビル投資とをこの4つの効果の大小という点で比較すると、以下の表のようになります。

  収入の増加 相続税対策 インフレ対策 老後の
資産形成
区分マンション
一棟アパート
一棟マンション
一棟ビル

2.投資の始めやすさを比較

不動産投資に参入するには自己資金が必要ですが、必要な額が大きいほど参入のハードルが上がります。区分マンションは物件の選択肢が豊富で、一棟アパート・マンション・ビル投資に比べて圧倒的に少ない資金から始められます。

そのため、区分マンション投資は不動産投資ビギナーでも参入しやすいカテゴリーといえるでしょう。たとえば郊外かつワンルームマンションであれば、総額で500万円以下の物件もあり、表面利回りが10%を超えるケースもあります。

価格が手頃で流通数が多いことは、流動性が高いことを意味しています。つまり売却しやすい物件なので、出口戦略も含めた投資ビジョンを組み立てやすいということです。

手持ちの自己資金で購入できる範囲であれば、現金を現物資産に換えたいという目的にも対応しやすいのが区分マンション投資といえるでしょう。

  投資の始めやすさのハードル
区分マンション投資 低い
一棟アパート・一棟マンション投資 高い
一棟ビル投資 かなり高い

3.投資効率を比較

一般的に区分マンション投資に比べると、一棟アパート・マンション・ビル投資のほうが投資効率はおおむね高くなる傾向があります。

区分マンション投資の場合、転出転入が発生すれば、その都度原状回復費や募集費用がかかり、空室が埋まるまでは賃貸料が入りません。一方、一棟アパート・マンション・ビル投資の場合は複数戸から賃貸が入り、額も大きいため、どこかに空室が出ても全体でマイナスを吸収できます。

物件により事情はさまざまですが、概して一棟アパート・マンション・ビル投資のほうが投資効率は高いと考えることができるでしょう。

  投資効率
区分マンション投資 低い
一棟アパート・一棟マンション投資 高い
一棟ビル投資 高い

4.管理面の手間を比較

物件を管理する手間は区分マンション投資の方がかかりません。マンションは一般的に所有者による管理組合があり、多くの場合組合から管理会社にマンション全体の管理を委託しているからです。

副業で不動産投資を手がける会社員の方でも、定められた管理費用を納めることでこまごまとした管理・メンテナンスの業務から解放されます。

一棟アパート・マンション・ビル投資の場合、戸数が多く住民間のトラブルなども多くなるため管理が大変かもしれません。一般的には管理会社に委託しますが、管理項目ごとにコストが発生し、あらゆる項目を委託すると利益を圧迫することがデメリットといえるでしょう。

  管理の手間
区分マンション投資 管理組合に任せられる
一棟アパート・一棟マンション投資 コストをかけて管理会社に任せる
一棟ビル投資 コストをかけて管理会社に任せる

5.経営の自由度を比較

一棟アパート・マンション・ビル投資では、オーナーの経営の自由度が高いです。オーナーが決められることやコントロールできる項目が多いといえるでしょう。空室リスクを下げる施策や賃料アップの戦略など、柔軟なリスクヘッジと積極経営で進むことができます。

一方、区分マンション経営の自由度は低いです。裁量範囲は所有している戸内だけで、マンション全体に関わる施策は、他のオーナー全員が賛同しなければ実施できません。

  経営の自由度
区分マンション投資 低い
一棟アパート・一棟マンション投資 高い
一棟ビル投資 高い

6.出口戦略を比較

一棟アパート・マンション・ビル投資の方が区分マンションよりも自由度の高い戦略を組み立てやすい傾向があります。

区分マンションの売却は、近隣の類似物件や同じマンション内の事例によって価格相場が決まります。その情報はオープンになっていることが多いので、オーナーの希望価格が通りにくいこともあるでしょう。

一棟アパート・マンション・ビルの場合は、売買情報も非公開で個別性が高く、オーナーの希望を売却価格に反映させやすいという面があります。

ただし売買の流動性の高さは、圧倒的に区分マンションの方が上です。一棟アパート・マンション・ビルは需要が多くあるわけではなく、状況によっては価格を妥協することもあるでしょう。

  出口戦略
区分マンション投資 戦略を立てにくい/流動性が高い
一棟アパート・一棟マンション投資 戦略を立てやすい/流動性が低い
一棟ビル投資 戦略を立てやすい/流動性がかなり低い

7.金融機関の評価を比較

区分マンション投資は、価格が低い分不動産ローンを活用しやすい面がありますが、担保評価が伸びず、個人の与信内容に審査結果が左右される傾向があります。

一方、一棟アパート・マンション・ビル投資は、価格が高いため融資の審査は厳しいですが、経年劣化がない土地が大きな割合を占めるため、担保価値が評価されやすい傾向にあります。

そのため土地所有者であれば、個人の与信に依存した区分マンション投資の融資よりも、一棟アパート・マンション・ビル投資のほうが融資を受けやすい面があるといえるでしょう。

ただし、融資額が大きい一棟アパート・マンション・ビル投資の場合、土地からの購入となると多額の自己資金が必要となります。また、経営が不調になり、返済が滞った際、区分マンション投資よりリスクが大きくなることがあります。

  金融機関の担保評価
区分マンション投資 低め
一棟アパート・一棟マンション投資 高い
一棟ビル投資 かなり高い

8.節税効果を比較

不動産投資は節税効果があるとよくいわれます。一棟アパート・マンション・ビル投資と区分マンション投資では、どちらの節税効果の方が高いのでしょうか。

不動産投資で節税になる代表的な項目は、物件の購入費用を分割して毎年必要経費に計上できる減価償却です。計上期間は建物の構造によって決められている法定耐用年数によって変わります。

RC造(鉄筋コンクリート造)の法定耐用年数は47年です。つまり、取得費用を47年間に分割して経費計上することができます。一般的に一棟物件のほうが価格が高く、それだけ所得から控除できるため、節税効果が高いといえるでしょう。

  節税効果
区分マンション投資 普通
一棟アパート・一棟マンション投資 高い
一棟ビル投資 高い

9.リスクヘッジを比較

一般的に1つのものや事に集中して投資すると、失敗したときにすべてを失うことになります。そのため、投資対象を分散することが投資におけるリスクヘッジの基本といえるでしょう。

区分マンション投資は、戸数を増やさないとリスク分散はできないため、初期のリスクが高い傾向にあります。一方、一棟アパート・マンション・ビル投資はスタート時から複数戸を所有しているので、空室リスクを全体でカバーでき、リスクが分散しやすいといえます。

ただし、所在エリアの不動産市場に変化があった場合や大きな災害が起きた場合のダメージは、区分マンション投資よりも大きいため注意が必要です。

  リスクヘッジ
区分マンション投資 難しい
一棟アパート・一棟マンション投資 しやすい
一棟ビル東リ しやすい 

10.向き不向きを比較

区分マンション投資は、将来的なビジネスのスケールアップを視野に入れるのではなく、長期的な運用で老後を見据えた資産形成を始めたいという場合に向いている投資手法と考えてよいでしょう。

区分マンション投資は、管理組合に管理を任せることが可能です。そのため本業が忙しくても参入でき、将来の長期的な資産形成に向く投資方法です。投資効率が低いというデメリットはありますが、確実にローン返済を進めていけば純資産に変えていくことができます。区分マンション投資はローリスクの長期運用を検討する場合に、有効な選択肢といえるでしょう。

一棟投資は、副業というよりも本業に近い感覚で自身のビジネスを拡大したい場合に向いている投資方法です。

一棟アパート・マンション・ビル投資には多額の資金調達が必要になりますが、クレジットヒストリーに問題がなく安定収入がある方で対象物件の収益性の評価が高い場合には、高額融資を受けることはそれほど困難ではありません。

一棟投資はスケールメリットがあるため、ダイナミックに展開して大きく収益が上がれば、早期に複数物件を手がけることも夢ではありません。規模拡大に向けた資金繰りもしやすく、実績を重ねることで金融機関からの与信評価も高まります。

一棟アパート・マンション・ビル投資を始めたいけれど資金調達が叶わないから、区分マンション投資を始めるという消極的な参入には注意が必要です。区分マンションを購入することでさらに融資枠が減り、今後の与信に悪影響を与えるおそれがあるためです。

一棟投資は区分マンション投資と比べオーナーが判断すべき状況も多く、不動産投資家としての力量が試される必要とされる局面もあるでしょう。一棟アパート・マンション・ビル投資は、リスクを覚悟してそれに耐えられる資金力があるなら、一棟アパート・マンション・ビル投資は本格的なビジネスとして取り組む場合に向いている投資手法といえるでしょう。

  向いている投資ビジョン
区分マンション投資 長期的な資産形成
一棟アパート・一棟マンション投資 積極的なビジネス展開
一棟ビル投資 大規模で積極的なビジネス展開

まとめ

一棟アパート・マンション・ビル投資と区分マンション投資について、10項目の切り口から徹底的に比較しました。もちろん1つとして同じ条件の物件などないので、実際には個々の物件ごとに環境を精査して判断しなければなりません。

それに加えて自身の投資ビジョンや資金の余力、リスクの許容度などあらゆる観点から検討して、有効と判断できる投資に臨むために、この記事が参考になれば幸いです。

監修者

魚角 幸正

資格
宅地建物取引士
略歴
大手ハウスメーカーにて従事した後、不動産会社で土地の仕入れに携わる。建築知識と経験を活かした不動産売買にまつわる問題解決を得意としている。

監修者

佃 光昇

資格
行政書士、損害保険募集人一般資格
略歴
リース会社、損保会社を経て、現在は不動産会社のローン管理部に所属。行政書士の資格も有しており、知識と資格を活かし、ファイナンスや行政手続きに関する業務を担っている。趣味は旅行、ドライブ。好きな食べ物は牛刺し。

関連記事

賃貸管理手数料は家賃の5%が相場!管理会社の選び方と安さだけで選ぶリスクを解説

賃貸経営にかかわる管理業務の委託料である賃貸管理手数料は管理委託先である賃貸管理会社へ支払うこととなり、家賃収入の5%ほどが相場といわれています。安い手数料というだけで賃貸管理会社を選ぶのはリスクがあり、実際に行ってもらえる業務範囲やサービスの質、実績などを踏まえたうえで比較するべきです。 本記事では賃貸管理手数料の相場や、格安な手数料を理由に管理会社を決めるリスク、適切な管理会社を選ぶポイントな...

入居率の重要性と目安とは?計算方法や入居率アップの方法も解説

入居率はアパート経営を行う際に押さえておきたい数値の1つです。重要な指標であることは知っているものの、具体的な数値の目安や計算方法について理解していない方もいるのではないでしょうか。 入居率の計算方法は複数あって、公表している不動産会社によって計算の仕方や条件が異なる場合があります。この記事では、アパート経営における入居率の種類や入居率を上げる方法についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください...

賃貸管理マンスリーデータ(2024年3月)を公開

「不動産投資家Kとその仲間たち」を運営するarchitect developer, Inc.(ADI)の賃貸管理に関するデータをお伝えしていきます。この記事では、2024年3月のデータをご覧いただけます。 ◎PDFをダウンロードする ADIの賃貸管理マンスリーデータ(2024年3月)◎過去のデータはこちら 目次 2024年3月賃貸管理状況 2024年3月サマリー エリア別管理戸数割合 エリア別入居...

アパート共用部の清掃頻度の目安は?清掃内容や費用相場についても解説

この記事では、アパートの共用部の清掃の重要性および清掃頻度の目安、自主清掃と委託清掃のメリット・デメリット、委託清掃の費用相場を解説します。清掃の委託を検討している方や、現在の管理状況が適正かどうか確認したい方は、参考にしてください。 ポイント 共用部の清掃には日常清掃および定期清掃、特別清掃がある 共用部の清掃を徹底することで成約率の向上や退去率の低下、物件の資産価値維持が期待できる 費用を抑え...

家賃値上げの上限は?大家さん必読の家賃交渉やトラブル対処法

不動産経営では家賃相場の変動や不動産価格の上昇などにより、家賃の値上げが必要な場合があります。この記事では家賃交渉の基礎知識やトラブルの対処法、値上げを成功させるポイントを解説します。記事の内容を参考に、トラブルのないスムーズな家賃交渉を目指しましょう。 ポイント 家賃の値上げは借地借家法に基づく正当な理由があれば認められる オーナーの経済的な都合など個人的な理由での家賃の値上げは認められない 値...

公務員のための不動産投資入門! 違反にならないポイントやメリット

副収入を得る方法の1つである「不動産投資」は、公務員の「副業禁止の原則」から違反になると考えている人は多いかもしれません。 しかし、公務員でも一定の条件を満たせば違反にならずに、不動産に投資することは可能です。 ここでは公務員が違反にならずに不動産投資を始めるポイントや、公務員ならではの代表的なメリットを解説します。 ポイント 公務員は不動産投資に必要な融資を、より有利な条件で利用できる可能性があ...

60坪は何平米?建てられるアパートや家の広さは?

60坪の土地とはどのくらいの広さなのか、どのくらいの大きさの建物が建てられるのかすぐにピンとこない方もいるかもしれません。60坪の土地があれば、戸建てはもちろんアパートやマンションなどの土地活用も十分可能です。 この記事では、60坪の土地の広さや建てられる建物について解説します。60坪の土地の活用や購入をお考えの方はぜひご覧ください。 ポイント 60坪の土地は約198平米で、平均的な注文住宅の広さ...

建築資材高騰はいつまで続く? 高騰の要因8つを解説【2024年最新】

建築資材の高騰に頭を悩ませている不動産投資家も多いでしょう。建築資材はさまざまな要因で高騰しており、解決もすぐには期待できないため、今後も高騰が続くと予想されます。今回の記事では建築資材高騰の要因や過去の推移、今後の見通しについて解説します。 ポイント 建築資材の高騰は、円安やウッドショックなど主に8つの要因がある 高騰の要因がすぐに解消することは難しく、今後も高騰が続く見込み 不動産投資をする際...

再建築不可物件とは?不動産投資に活用できる?購入前に知っておきたい注意点

再建築不可物件は安く購入できるため、投資用として購入するケースもあるでしょう。再建築不可物件を購入するにあたり、注意点を知りたい方も多いのではないでしょうか。 再建築不可物件は、期待通りの収益を上げにくいです。今回の記事では再建築不可物件の注意点や活用方法について紹介します。 ポイント 再建築不可物件は相場よりも安く購入できる 災害による倒壊などでも再建築できない 接道義務を果たせば再建築できる場...

マンション売却時の税金はいくらかかる?種類や計算方法、節税方法まで

マンションを売却した際にかかる税金は、「印紙税」「登録免許税」「譲渡所得税」「消費税」があります。契約金額や売却による利益によってかかる税金の金額は異なります。 また、マンション売却時にすべての種類の税金がかかるとは限りません。売却するマンションの条件や特例を用いることで支払う必要がない税金もあります。 本記事では、マンション売却時にかかる税金の金額や種類、計算方法、節税方法をご紹介します。 ポイ...