更地の活用方法には、賃貸アパートや駐車場の経営、事業者への土地の貸し出しなどさまざまなアイデアがあります。所有しているだけの更地は、固定資産税の負担が続き、管理にも手間がかかる「マイナスの資産」であるため、有効な土地活用を検討しましょう。
本記事では更地から収入を得るための活用方法を解説し、更地を放置するリスクや更地を活用するメリットなどをご紹介します。
ポイント
- 建物が建築可能かどうかが更地活用の基本的なポイント
- 建物が建築できる土地かどうかでまったく活用方法が異なるため、建築基準法・行政への確認が必要
- 更地の活用方法は賃貸アパートや駐車場、トランクルームの経営などがある
- 活用しない更地は、税金負担や管理の手間が増えるというデメリットになることがある
そもそも更地とは
更地とは、その土地を購入したらすぐに利用できる状態の宅地のことです。以下の2点を満たした土地が更地に当てはまります。
- 土地の上に建物や建造物などが何もない
- 土地の利用を制約する権利が付いていない
土地の利用を制約する権利とは、借地権や賃借権、地上権などがあげられます。ただし、住宅ローンを利用するときに金融機関が土地を担保として設定する抵当権であれば、付いていても更地とみなされます。これは、抵当権が土地利用に制約を付けるものではないためです。
また、その土地の地目が農地や山林など宅地以外のものであれば、畑や樹木などが何もない土地であっても更地には該当しません。
更地とは、建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいう。
出典:不動産鑑定評価基準(PDF)
更地がどうかを判別するには、土地の利用方法にかかわる権利が付いていないかを確認することが重要です。敷地に何も建っていない土地であっても、その土地にどのような権利が設定されているかはわかりません。「建物が何もない敷地」という見た目だけでは、更地とは言い切れないため注意が必要です。
参考:国土交通省 不動産鑑定評価基準
整地との違い
更地と似た言葉である整地は、土地をすぐに利用できるよう平らに整えた土地のことです。
具体的には、地面の下や表面にある廃材や石、雑草などを除去したのち、地面の凸凹をなくし重機で踏み固める転圧作業を済ませた土地が整地に当てはまります。
更地 | 整地 | |
---|---|---|
土地の状態 | 建物が建っていない | 転圧作業まで行い土地がきれいに整っている |
土地の利用を制約する権利 | 付いていない | 付いているものもある |
整地とは土地が整っている状態を指すものであり、土地にかかわる権利の有無は問われません。
一方更地は、敷地に建物がない状態であるうえに、土地利用を制限するような権利が付いていないことが条件です。整地されていない状態でも、建物がなく権利が付いていない土地であれば更地に該当します。
更地の主な活用方法
更地の活用方法として具体的なアイデアを7つご紹介します。
- アパート・マンション
- 定期借地
- 駐車場
- トランクルーム
- 資材置き場
- 太陽光発電
- 売却
それぞれの方法で、収益を得る仕組みやメリット・デメリットをまとめました。土地の特徴や周辺環境によって、適切な活用方法は変わってきます。所有する土地にはどのような活用方法が合いそうか、考えていきましょう。
アパート・マンション
更地を活用する方法として人気なのが、アパートやマンションによる賃貸経営です。所有する土地にアパートやマンションといった賃貸物件を建築し、そこから得られる賃料によって利益を出します。
メリット | ●固定資産税や相続税、所得税の節税対策になる ●安定した不労収入が長期的に見込める ●土地代がかからないため高い利回りを実現しやすい |
デメリット | ●高額な初期費用がかかる ●空室により収益が減少するリスクがある ●立地を変えられない |
所有する土地でアパート経営を行うメリットとしてまずあげられるのが、節税効果です。更地に住宅を建てると、住宅用地の特例により固定資産税の課税標準額は6分の1に減額されます。
相続税を計算する際の相続税評価額も、現金よりもアパートなどの賃貸物件の方が非常に低くなります。住居用の賃貸物件には小規模宅地等の特例や貸家建付地が適用されるため、相続税の課税対象額を大幅に圧縮することが可能です。
さらに、サラリーマンの方がアパート経営すると、ケースによっては所得税の節税効果も得られます。建物の減価償却費を経費計上する賃貸経営では、実際には手元にキャッシュが残っていても、会計上は赤字になる場合も珍しくありません。その赤字分は本業の給与所得と相殺できるため、支払う所得税を抑える働きをしてくれます。
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また所有する土地に建物を建てる場合、土地代がかからない分初期費用を抑えられるため、土地から購入するケースよりも高い利回りを期待できます。
一方で、アパート経営には高額な初期費用がかかる点がデメリットです。建物の建設費用はローンを組んで借り入れるのが一般的です。しかし、返済計画の見通しが甘いと、多額の負債を抱えて返済できなくなる恐れがあります。
アパート経営には空室リスクがある点も考慮しなければなりません。とくに所有する土地を活用する場合、立地を選べない点がデメリットとなります。所有する土地のエリアが、賃貸需要が少ない、もしくは将来的に需要が減少するようであれば、長期的に安定した入居率を維持するのは難しいでしょう。
高額な初期費用がかかり大きな損失を抱えるリスクもあるアパート経営ですが、需要が見込める土地であれば安定した収益や節税効果に期待できます。
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参考:東京都主税局 【土地】2 住宅用地及びその特例措置について
定期借地
定期借地権を使った土地活用としては、コンビニやドラッグストア、飲食チェーン店などの事業者に、10年から50年未満の期間で土地を貸し出し地代を得る方法があります。
定期借地権とは、決められた一定の期間だけ他人の土地を借りて建物を建てられる権利のことです。借地権は建物を建てる目的で土地を借りる権利であり、土地を借りる借地人は、土地の所有者に地代を支払います。
事業用の建物を建てる土地として貸し出す「事業用定期借地権」のほか、「一般定期借地権」を使ってマンションなどを建てる土地として貸し出すパターンもあります。一般定期借地権は住居を建てるための借地権であるため、契約期間は50年以上と定められているのが特徴です。
1992年より前の借地法に基づく普通借地権は、借り手の意志により契約期間の延長ができ、貸主からの契約解除が通りにくいものでした。1992年に施行された新借地借家法で導入された定期借地権は、契約期間経過後に必ず土地が返却される制度であり、貸主の権利も守られるようになっています。
メリット | ●自己資金をかけずに収益を得られる ●契約期間満了後には土地が返却される ●相続税、固定資産税が節税できる |
デメリット | ●契約期間中は土地を他の用途に使えない ●事業者の経営破綻により建物が残るリスクがある |
定期借地権を使った土地活用では、自分の資金を使って投資する必要がありません。建物の建設や事業自体は借地人である企業が行うため、安定した地代収入が期待できます。契約期間が終了すると、土地は更地の状態で返却されます。
また、定期借地権の設定により相続時における土地の評価額が下がるため、相続税の節税が可能です。固定資産税については、借地人が居住用の建物を建てた場合にのみ住宅用地の特例が適用され、課税標準額が6分の1に減額されます。
デメリットとしては、契約期間が終わるまでは土地を自由に利用できない点があげられます。より有効な土地活用のチャンスがあったとしても、契約期間中は見送らなければなりません。
また事業者が経営破綻してしまうと、定期借地権契約の解除を求める裁判や、建物の解体費用の負担など、さまざまな手間や費用がかかる恐れがあります。
定期借地権による土地活用は、契約する事業者によってはトラブルに巻き込まれる可能性もありますが、自己資金を出さずに長期的な土地活用が実現できる方法です。
駐車場
更地を駐車場として貸し出して収入を得る方法があります。駐車場の種類は次の2つに分けられます。
- 月極駐車場:利用者と1カ月単位で駐車場を貸し出す契約を結ぶ
- コインパーキング:利用した時間に応じて料金を支払ってもらう
月極駐車場は長期での契約が見込めるため、収入が安定しやすいでしょう。駐車場施設がないマンションや住宅街付近の土地は、月極駐車場の需要が見込めます。
コインパーキングの売上は変動しやすいですが、駅や商業施設、飲食店街の近くの土地であれば需要が高いでしょう。立地や周辺環境に応じて、所有する土地に合った形態の駐車場を選ぶことが大切です。
メリット | ●少ない初期費用で手軽に始められる ●不整形地でもできる ●更地に戻しやすい |
デメリット | ●節税効果が小さい ●土地の利用効率が低く、大きな収益は得られない |
駐車場で土地活用を行うメリットは、比較的少ない初期費用で始められる点です。月極駐車場であれば、整地した土地に砂利を敷き、ロープで区画を作るだけでも駐車場経営を始められます。コインパーキングの場合は料金を精算するための設備が必要になり費用がかかりますが、駐車場運営会社に土地を貸し出す一括借り上げ方式であれば、設備負担はかかりません。
アパート経営のように建物を建てる必要がないため、形が整っていない土地や車が数台しか停められない狭い土地でも経営できます。土地を売却したい場合や、他の事業を始めたい場合にもすぐに更地に戻せます。
ただし駐車場経営による土地活用は、固定資産税を節税する効果はありません。また、使う土地に対して得られる収益は、ほかの土地活用方法と比べて少なくなる点がデメリットです。
駐車場経営には3つの経営方式があります。
自主管理 | 自分自身で運営管理する方法。設備の導入や日常の管理業務を自分で行い、得られた収入はすべて自分が確保できる。 |
管理委託 | 管理業務を業者に委託する方法。毎月の売上のなかから委託料を支払う。 |
一括借り上げ | 駐車場運営会社に土地を貸し出す方法。駐車場の売上にかかわらず、毎月一定の賃料が得られる。 |
収益を重視するなら自主管理方式ですが、初期費用や管理の負担は大きくなります。一括借り上げ方式は、得られる収益は少なくなるものの、設備の導入から管理まで運営会社に任せられます。
「手間やコストをかけずに運営したい」「稼働率の心配をしたくない」といった場合は、一括借り上げ方式が向いているでしょう。
駐車場経営だけでは大きなリターンは得られませんが、初期費用がほとんどかからないため大きなリスクを背負わずに済みます。手軽に始めやすい点が駐車場経営の魅力です。
トランクルーム
比較的少ない初期費用で始められる活用法のひとつがトランクルームです。
トランクルームとは、収納スペースを貸し出すためのコンテナのような設備や施設のことです。リモートワークの拡大やオフィスの縮小などにより、自宅やオフィスのスペースを確保したいニーズに応えるサービスとして、需要が高まっています。
メリット | ●賃貸経営よりも初期費用を抑えられる ●管理・維持コストが少なく済む ●小さな土地や変形地でもできる |
デメリット | ●節税効果が小さい ●アパート経営よりも収益は少なくなる |
トランクルーム経営を始めるには、更地にトランクルームを建設しなければなりません。トランクルーム経営の初期費用は200〜800万円程度が一般的な目安といわれています。アパート経営に比べると、少ない初期費用で始められるのが特徴です。管理や維持にかかるコストも少なく済みます。
また、トランクルームは人が居住するものではないため、日当たりが悪い土地や騒音が気になる場所であってもあまり影響がありません。土地の形状が不整形であったり、建物を建てるには小さすぎる土地であっても、トランクルームの運営は可能です。
トランクルーム経営に向いているのは、車の出入りがしやすい土地や人口が多いエリアです。賃貸アパートには向いていないような「駅から遠い・生活の利便性が悪い」といった土地でも、トランクルームなら需要が見込めるケースもあるでしょう。
デメリットとしては、アパート経営に比べて固定資産税や相続税の節税効果が小さくなる点があげられます。賃料単価が安く、集客できないリスクもあるため、アパート経営のような大きな収益は期待できないでしょう。
需要が見込めるエリアであれば、多額の費用や大きな手間をかけずに始められる土地活用として有効といえます。
資材置き場
更地を資材置き場として貸し出す方法もあります。
建設業者や土木業者が、木材や石材、運搬器具などの資材を保管するための場所が資材置き場です。自社スペースでは資材が置ききれない、建築現場の近くに資材を保管しておきたいといった場合に、資材置き場が求められます。
メリット | ●初期費用が不要 ●土地を管理しなくて済む ●長期の安定収入になる |
デメリット | ●大きな収益にはならない ●節税効果が小さい ●近隣住民とのトラブルを招く恐れがある |
資材置き場として土地を貸し出すメリットは、初期費用がかからない点です。大きな資材を置けるスペースがあればいいため、土地をコンクリートなどで舗装する必要がありません。
土地を貸し出している間は、土地管理の手間を省けるメリットも得られます。使っていない更地は、所有者が定期的な草刈りやチェックを行う必要がありますが、土地を貸し出している間は借主が土地を管理してくれます。土地を使ってもらうと人の出入りが増えるため、敷地に不法投棄されるなどのリスクも避けられるでしょう。
資材置き場は定期借地権で契約するケースもあります。事業用定期借地権での貸し出しとなると10年以上の契約となるため、長期的な収入を確保できます。
ただし高額な賃料は見込めず、アパート経営のような節税効果もありません。さらに、住宅街に近い土地であれば、トラックの激しい出入りや資材による砂ぼこりなどによって、近隣住民から苦情の声があがる可能性もあります。
需要とマッチすれば自己資金をかけずに収入を得られますが、収益は大きなものではなく、土地周辺の環境によっては注意が必要です。
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太陽光発電
日当たりのよい広い更地を所有しているのであれば、太陽光発電で収入を得る方法も考えられます。
太陽光発電事業は、土地に設置したソーラーパネルが生み出した電力を、電力会社に買い取ってもらい収益を得る事業です。再生エネルギー事業への支援であるFIT制度(固定価格買取制度)により、10kW以上の発電規模であれば契約時の買取価格が20年間続きます。
メリット | ●価格が固定されているため収入が安定する ●維持管理に手間やコストがかからない ●需要にかかわらず収益を生み出せる |
デメリット | ●買取価格は年々低下している ●初期費用の回収に時間がかかる ●節税効果が小さい |
太陽光発電事業は、20年もしくは10年の間は買取価格が固定されているため、見通しが立てやすい事業といえるでしょう。
賃貸管理や建物の修繕が必要なアパート経営に比べると、太陽光発電事業の維持管理は手間やコストが少なく済みます。環境エネルギー庁の2022年のデータによると、地上設置(10kW以上)全体の年間運転維持費は、平均値で5,300円/1kWでした。
100坪ほどの土地に50kWの太陽光発電を設置したとすると、年間の運転維持費は約26万円です。
賃貸や駐車場の需要が見込めない郊外の土地でも、日当たりが確保できる広い土地であれば収益を得られるのが特徴的です。
一方のデメリットは、買取価格が年々低下している点があげられます。
年度 | 1kWhあたりの買取価格 | |
---|---|---|
地上設置 | ||
10kW以上50kW未満 | 50kW<以上(入札対象外) | |
2022年 | 11円 | 10円 |
2023年 | 10円 | 9.5円 |
2024年 | 10円 | 9.2円 |
出典:経済産業省エネルギー庁 買取価格・期間等(2012年度~2023年度)
FIT制度が開始された2012年当初の買取価格は約40円/kWhでしたが、2024年における事業用の買取価格は50kWhで9.2円/kWhにまで下落しています。ただし、設備の導入費用も年々安くなっているため、適正な価格に調整されているとも受け取れます。
また、設備の導入にかかった初期費用を回収するには時間がかかり、10~15年程度は見ておく必要があるでしょう。
大きな収益は得られませんが、需要によって収入が左右されないため、立地にかかわらず着実な投資成果を得たい場合に検討したい方法です。
参考:経済産業省 第82回調達価格等算定委員会 資料1太陽光発電について
売却
将来的にも使う予定がない土地であれば、土地の有効活用だけにこだわらず、「売却」も選択肢の1つとして検討しましょう。
メリット | ●現金を得られる ●固定資産税の負担がなくなる ●土地を管理する手間がなくなる |
デメリット | ●譲渡所得税がかかる ●相続税の節税効果がなくなる ●買い手が見つからない可能性がある |
土地を売却すると、その対価としてまとまった現金が手に入ります。不動産を現金に変えておくと、相続の際に分配しやすいだけでなく、相続税の納税資金としての備えにもなります。
得られた現金を使って、株式などの金融資産や、条件のよい別の不動産などに投資することも可能です。適切な投資ができれば、所有していた土地を活用するよりも効率的に資産形成できる可能性もあります。固定資産税の負担もなくなるため、手元により多くの現金が残るでしょう。
また、土地を管理する手間やコストも省けます。
ただし、土地を売却した際の売却益には譲渡所得税が課税されます。売却時には、不動産会社への仲介手数料や登記するための登録免許税なども必要です。
土地を現金化することで相続時に分配しやすくなる一方、相続税の節税効果はなくなります。土地の相続税評価額は、時価の80%程度です。つまり、5,000万円の現金よりも、5,000万円で購入した土地の方が相続税評価額が低くなり、相続税の課税対象額を圧縮できます。
さらに、土地を売却したくても買い手が見つからずに売却できない可能性もあります。売却できたとしても、希望する価格やタイミングでは買い取ってもらえないかもしれません。需要が見込めない土地であれば、複数の不動産会社に売却を依頼したり、不動産会社に直接買取してもらったりといった工夫が必要です。
土地の立地や条件から土地活用が難しいようなケースや、売却で得たお金で別の投資をしたい場合には、土地の売却も有効な手段といえます。
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更地を活用しないデメリット
せっかくの大切な資産である土地を更地のまま放置している場合、所有しているだけでさまざまなリスクを負っていることになります。
土地活用をすれば得られたであろう利益を逃しているだけでなく、余分な税金や支出を支払っているかもしれません。さらには、手間が増えたりトラブルを招いたりする恐れもあります。
更地を活用しない場合のデメリットを4つご紹介します。
固定資産税・都市計画税が高くなる場合がある
所有している土地を更地のまま保有していると、住宅が建つ土地に比べて、固定資産税や都市計画税が高くなります。
住宅が建つ土地には住宅用地の特例が適用されるため、課税標準額が以下のように減額されます。
土地の種類 | 課税標準額 | |
---|---|---|
固定資産税 | 都市計画税 | |
小規模住宅用地 住宅1戸あたり200平方メートル以下 |
価格×1/6 | 価格×1/3 |
一般住宅用地 住戸1戸あたり200平方メートルを超える部分 |
価格×1/3 | 価格×2/3 |
参考:東京都主税局 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
一方、更地のまま所有している場合、固定資産税や都市計画税は本来の税額どおりに課税され続けます。
更地の固定資産税を算出する場合、負担調整措置によりほとんどの場合で固定資産税評価額の70%が課税標準額です。そのため、建物が建つ土地を更地にした場合、土地の固定資産税は3~4倍程度に増加します。
このように、更地では住宅が建つ土地に向けた減税措置が受けられないため、「更地にすると固定資産税や都市計画税が高くなる」と広く認識されています。
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相続税が高くなる
更地が税制面で不利になるのは、相続税についても同様のことがいえます。更地よりも住宅が建つ土地の方が相続税を節税できるのは、以下の特例が適用されるためです。
- 小規模宅地等の特例
- 貸家建付地
小規模宅地等の特例とは、被相続人の自宅が建っていた土地を、一定の要件を満たす親族が相続する場合に、土地の評価額を最大80%減額できる制度です。
この特例は自宅だけでなく、被相続人が営む事業を親族が継承することを条件に、事業用の土地を相続する際にも適用されます。アパートなどの賃貸事業も対象となり、事業用土地の200平方メートルまでの部分は、評価額の50%減額が可能です。
賃貸用の物件が建つ土地は貸家建付地に該当します。貸家建付地は、第三者への賃貸によって土地の所有者が自由に土地を使えない状態であるため、自分自身だけで使用している土地よりも評価額を安く算出します。
貸家建付地の相続税評価額の計算式は以下のとおりです。
貸家建付地の相続税評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
自用地とは、土地やそこに建つ建物を貸し出しせずに自分自身で使用している土地を指します。借地権割合は路線価から確認でき、借家権割合は全国一律で30%です。
相続税評価額を低く抑えるには、賃貸割合を上げることがポイントとなります。つまり、満室であれば賃貸割合が100%となり、そのぶん相続税負担の軽減が可能です。
このように、土地に住宅や賃貸アパートが建っていると、相続税を軽減する措置が適用されます。更地のまま相続を迎えるとこれらの節税効果を得られず、相続税の課税額は高くなってしまいます。
管理の手間がかかる
土地を所有している場合、まったく使われていない土地であっても、雑草の手入れや清掃などの管理が必要です。
更地を放置していると、草木が生い茂り見た目が悪くなるだけでなく、無断で利用されたり不法投棄されたりするリスクが高まります。土地に建物が残っている場合は、建物を維持するための清掃やメンテナンスも必要です。遠方の土地であれば、その手間やコストは大きな負担となるでしょう。
土地を所有し続けるのであれば、土地の状態を維持するための管理に手間がかかると理解しておかなければなりません。
近隣トラブルになる可能性がある
土地の管理が不十分だと、近隣住民とのトラブルに発展する恐れがあります。
雑草が生い茂った空き地は、害虫が発生して近所に被害が及ぶ可能性もあります。人目に付きにくくなるため、ゴミを捨てられたり犯罪現場となったりするリスクも高まるでしょう。
とくに周辺に住宅が多いエリアであれば、景観を損ねる状態の空き地は近隣住民から好まれるものではありません。近隣トラブルを避けるためには、土地の清掃や手入れを怠らないことが大切です。
更地を活用する際の注意点
更地を更地のまま所有し続けるのはリスクもあり活用したいと考える方も多いでしょう。しかし、更地を活用する際にも事前に知っておきたい注意点があります。注意点を知らずに土地活用の検討を始めると、その土地に適した活用方法を選べずに、期待する成果を得られないかもしれません。
収益が出る土地活用を効率的に選びたいのであれば、これから説明する2つの注意点を把握しておきましょう。
法律や条例を確認する
土地活用を検討するには、その土地に法律や条例によってどのような規制がされているのかを確認しなければなりません。取り組みたい土地活用があっても、所有する土地にかかる法規制によっては実現できない可能性もあります。
とくに確認しておきたい規制は以下の3つです。
- 市街化調整区域ではないか
- 用途地域は何か
- 容積率や建ぺい率はどれくらいか
市街化調整区域ではないか
都市計画法による区域区分が市街化調整区域に該当する土地の場合、原則として建物を建てられません。市街化調整区域の多くは、市街地から離れたエリアであり、市街化を抑制すべき地域として建築許可が得られる建物が自治体によって制限されています。
駐車場や太陽光発電など建物が不要な事業にするか、コンビニや高齢者施設など建築の許可を得られる事業にするか、土地活用を検討しなければなりません。
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用途地域は何か
市街化調整区域に該当しない場合でも、用途地域の確認が必要です。住環境の保護や、商業・工業の利便性向上を目的に、土地の用途を住居や商業、工業などの13種類に分けて適正に配分したものが用途地域です。
たとえば、住居系の用途地域であれば、賃貸アパートや駐車場、保育所、老人ホームなどといった建物が建てられます。しかし、店舗やオフィスビルは制限がかかるケースが多いです。
容積率や建ぺい率はどれくらいか
さらに、建てられる建物の大きさを規制するものとして建ぺい率や容積率も確認しなければなりません。
建ぺい率 | 敷地面積に対して建物が建つ面積がどれくらいの割合か | たとえば、建ぺい率50%とは、敷地面積の半分までの面積の建物の建築が可能 |
容積率 | 敷地面積に対して建物の延べ床面積がどれくらいの割合か | たとえば、容積率200%とは、建物の延べ床面積(各階の床面積の合計)が敷地面積の2倍までの建物の建築が可能 |
建ぺい率や容積率は用途地域によって上限が決められています。ほかにも、日影規制や斜線制限、防火地域など、その土地で建てられる建物を制限するさまざまな規制があります。
そのため、土地活用を検討する際には、不動産会社やハウスメーカーなど土地活用の専門家に相談する方が効率的です。所有する土地ではどのような土地活用が可能なのかを確認しながら、土地活用の手段を検討していきましょう。
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周辺のニーズを考える
土地活用で収益を得るには、周辺地域のニーズに合った事業の選択が大切です。賃貸物件や駐車場などで事業を始めても、需要がなければ収入は得られません。その事業を利用する顧客が見込めるかどうかを、見極める必要があります。
たとえば、すでに賃貸物件が集まって飽和しているエリアであれば、駐車場やトランクルームといった別の方法を選んだ方がうまくいくかもしれません。ほかにも近隣に大きな企業や大学などもなく利便性の悪い場所であれば、単身者向けの賃貸アパートには入居者は集まりにくいことが想像できます。
土地活用が成功するかどうかは、いかにエリアのニーズにあった事業を行えるかがポイントとなります。需要や競合を知るための市場調査をするには、近隣地域に強みをもつ不動産会社やハウスメーカーなどに相談してみましょう。
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土地活用に向かない更地
土地活用に向かない更地は以下のような特徴をもった土地です。
- 土地の形が複雑・小さい
- 土地の条件が悪い
土地の形がいびつだったり極端に小さかったりする土地は、建物の建築が難しく、ある程度の広さがなければ駐車場としても活用できません。立地が悪い土地や郊外の土地は、事業を行っても集客しにくいほか、土地を使えるようにするための整備にコストがかかる可能性もあります。
土地の活用方法は多種多様であるため、所有する土地に合った活用方法を選ぶことが大切です。たとえば、土地が複雑な形状であっても、駅から近い場所であれば駐輪場としての需要が見込めるかもしれません。集客が見込めない郊外に土地があるなら、太陽光発電で収益を目指す方法も考えられます。
土地活用で収入を得るのが困難な土地も存在しますが、土地の特徴や立地条件、周辺の需要に合わせて工夫することで可能性を広げられるでしょう。
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空き家は解体して更地にした方がよい?
使わなくなった空き家を所有している場合、空き家を残したままにしておくのか、解体して更地にするのか、どちらを選ぶべきかは一概には言えません。
老朽化が進んだ建物であれば、解体した方が有効活用しやすくなり、売却時にも売れやすくなります。ただし、解体費用を負担しなければなりません。
一方、空き家を解体しなければ固定資産税の負担を抑えられます。空き家を解体せずにリノベーションして活用する、古家付き土地として売却する、といった方法も考えられるでしょう。
更地にするかどうかは、解体にかかるコストや空き家の状態、土地の使い道などを考慮して判断しなければなりません。更地にするメリットやデメリット、解体にかかる費用を詳しく見ていきましょう。
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更地にするメリット・デメリット
空き家を解体して更地にするのには以下のようなメリットがあります。
- 流動性がアップする
- 建物の維持・管理が不要になる
古い家が建っている土地より、更地の方が売却しやすく流動性が高まります。使用用途が幅広い更地の方が、購入者層の幅が広がり買い手が付きやすくなる傾向です。
一方、古い空き家が付いた土地は、買い手が建物を解体しなければならないため、更地を求める購入希望者からは敬遠されがちです。解体費用を買い手が負担する分、売却価格の値引きを求められる可能性もあります。売却前に更地にしておくことで、売却を有利な条件でスムーズに進めやすくなるでしょう。
また空き家を解体すると、建物を管理する手間や費用が不要になるメリットもあります。
一方のデメリットは以下のとおりです。
- 固定資産税が高くなる
- 建物を解体するのに費用や時間がかかる
空き家があることで住宅用地の特例が適用されていた場合、更地にすると固定資産税は高くなります。更地にしたあと売却や土地活用せずに放置してしまうと、これまでよりも税負担が増すだけです。
また、更地にするには建物の解体費用が必要です。更地の方が売却しやすくなるとはいえ、空き家の解体にはまとまった費用と作業期間がかかります。
更地にしたあとの土地をどのように活用して収入を得るのかを検討してから、建物の解体を進めましょう。
更地にする費用
空き家を解体して更地にするための解体費用は、建物の立地や規模、構造によって変わってきます。
土地が接している道路が狭いと、使える重機が限られるために作業の難易度が上がり費用が割り増しになるケースがあります。建物の規模や、構造の複雑さや耐久性によっても、解体費用は変動するため注意が必要です。
1坪あたりの解体費用相場を建物の構造別にまとめました。
建物の構造 | 1坪あたりの解体費用相場 |
---|---|
木造 | 3~5万円 |
鉄骨造 | 5~7万円 |
RC造 | 6~8万円 |
30坪の木造住宅を解体した場合、費用の相場は90〜150万円ほどになります。
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整地にする費用
建物を解体しただけで廃棄物や石などが残っているため、土地を使用するには土地を平らにならしてきれいに整えるための整地作業をしなければなりません。解体後には整地まで済ませておくことで、売却しやすくなったり、すぐに土地活用できたりといったメリットがあります。
整地の仕上げとして一般的な荒仕上げの場合、整地費用の目安は1平方メートルあたり300〜600円、1坪あたりに換算すると990円〜1,980円です。50坪の土地を整地した場合の費用は、約5〜10万円ほどが目安となります。
まとめ
更地とは、その土地のうえに建物が建っておらず、土地の利用を制約する権利が付いていない土地を指します。
更地を活用しないまま放置していると、税負担が大きくなるほか、土地を管理する手間もかかります。更地を活用して収入を得られるのが理想ですが、土地にかかる規制をチェックしてから、周辺ニーズに合った活用方法を考えなければなりません。
空き家が建つ土地であれば、建物を解体して更地にすることで活用方法が広がります。ただし、更地にする費用などをふまえたうえで、解体するかどうかを判断していきましょう。
監修者
杉田 裕蔵
東京を中心に、20年以上アパート・マンション建築賃貸業界に従事。現場に密着した営業経験と建築知識、不動産知識を活かして業務に携わっている。
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