土地の所有者を明確にするには、土地の登記内容を確認する方法が確実です。不動産登記簿謄本を取得するか、登記情報提供サービスで登記情報を請求するかの2つの方法があります。ただしどちらも手数料がかかるため、土地所有者を無料で調べることはできません。
本記事では、土地所有者の調べ方として登記情報の取得方法をまとめました。取得方法によって異なる費用や注意点を解説します。
ポイント
- 土地の所有者を調べるには、不動産の登記内容を確認する必要があり、手数料が発生する
- オンライン上で登記内容が確認できる登記情報提供サービスは、登記簿謄本を取得するよりコストがかからない
- 土地の登記内容を確認するには、土地の地番が必要
土地の所有者を無料で調べる方法はない
土地の正確な所有者を知るには、登記簿上における土地の所有者を確認する必要があります。
不動産登記簿謄本には、現在その土地をだれが所有しているのかが記載されています。無料での閲覧はできないため、登記内容を確認するには所定の手続きとともに手数料の支払いが必要です。
土地の所有者を調べるための登記情報を確認する手段として、2つの方法を紹介します。
不動産登記簿謄本(登記事項証明書)を取得する
不動産登記簿謄本(登記事項証明書)を取得すると、土地や建物の所有者が明らかになります。
不動産登記簿謄本は、不動産所有者の氏名や住所を明確にし、権利を第三者に明確に示すための公的な書類です。
紙の帳簿で管理されている登記情報をコピーした証明書が、不動産登記簿謄本です。データベースに記録・保存されるようになってから、登記事項証明書へと名称が変更されました。
不動産登記簿謄本が必要となる手続きを予定している場合は、土地の所有者を調べる段階から不動産登記簿謄本を取得しておくとよいでしょう。
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登記情報提供サービスを利用する
不動産の所有者のみを知りたい場合は、「登記情報提供サービス」(https://www1.touki.or.jp/night.html)でも土地所有者の情報を確認できます。一般財団法人民亊法務協会が運営する登記情報提供サービスでは、登記簿に記載されている内容がインターネット上で閲覧可能です。提供しているサービスには以下のようなものがあります。
- 登記所に保有されている不動産や法人の登記情報の閲覧・ダウンロード
- 一部の申請において登記事項証明書の代わりに添付できる照会番号の発行
登記情報提供サービスのメリットは、法務局に出向かずに登記内容の確認やダウンロードができる点です。不動産登記簿謄本を取得するよりも時間やコストをかけずに情報取得ができます。
ただし、登記情報提供サービスで取得した登記情報をダウンロードした資料は、登記事項証明書のように公的な証明書としては認められません。
不動産登記簿謄本(登記事項証明書)の取得方法
土地の登記内容を確認する1つ目の方法として、不動産登記簿謄本(登記事項証明書)の取得方法を紹介します。
不動産登記簿謄本(登記事項証明書)は、不動産を売却するときや相続などの不動産取引の際に提出が求められる書類です。発行は法務局で行われ、法務局の窓口や郵送のほか、オンライン上でも請求手続きが行えます。
それぞれの請求手続きについて、手順や注意点を詳しく解説します。
不動産登記簿謄本は誰でも取得できる?
不動産登記簿謄本は、誰でも閲覧および取得が可能です。不動産の所有者や家族に限らず、関係のない第三者であっても定められた手続きを行えば取得できます。
不動産の情報をだれもが閲覧できるように公示することで、所有者の権利保護や取り引きの安全性を図るためです。
そのため、登記簿謄本の請求には本人確認書類や認印などは必要ありません。
法務局の窓口で請求する
不動産登記簿謄本は、全国の法務局または出張所で、国内にある不動産の登記簿謄本を請求できます。一部のデータ化されていない登記簿を除き、遠方の不動産であっても最寄りの法務局で手続きが可能です。
不動産登記簿謄本を請求するには、法務局の窓口に用意されている「登記事項証明書交付申請書」に以下のような必要事項を記入します。
- 請求する人の氏名・住所
- 対象不動産の住所・地番
交付申請書には、不動産の住所だけでなく「地番」の記載が求められます。不動産を管轄する法務局であれば、備え付けの地図から地番の確認が可能です。
申請手数料は、600円の収入印紙を交付申請書に貼り付けて支払います。収入印紙は法務局の窓口で購入できます。
法務局での請求受付時間は平日の9時~17時です。混雑していなければ、交付申請書を提出してから10~15分程度で不動産登記簿謄本を受け取れます。
法務局窓口での請求は、交付申請書を提出したその場で登記簿謄本を受け取れる点がメリットです。また、法務局の職員に不明点を聞きながら手続きを進められます。
平日の受付時間内に法務局に行ける方であれば、早く確実に取得できる方法といえるでしょう。
参考:法務省 登記手数料について
法務省 法務局の窓口対応時間について
郵送で請求する
不動産登記簿謄本は、郵送での請求も可能です。郵送での請求手続きは以下の流れで行います。
- 1.
- 法務局のホームページから交付申請書をダウンロードし、必要事項を記入する
- 2.
- 交付申請書に手数料分(600円)の収入印紙を貼り付ける
- 3.
- 返信用の切手と返信先を記入した返信用封筒を同封する
- 4.
- 不動産を管轄する法務局あてに郵送する
郵送での手続きは法務局窓口に出向く必要はありませんが、不動産登記簿謄本を受け取るまでに1週間ほど要します。また返信用の切手や封筒を準備する手間もかかります。
法務局への来庁が難しく、インターネットを使わずに登記簿謄本を取得したい方に向いている方法です。
オンラインで請求する
自宅で手軽に交付請求したい場合は、オンラインでの請求が便利です。
法務局の「登記ねっと供託ねっと」(https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/)内にある「かんたん証明書請求」のサービスを使えば、必要事項を入力するだけで、不動産登記簿謄本のオンライン請求ができます。
かんたん証明書請求を使う際には申請者情報の登録が必要ですが、専用ソフトやアプリのダウンロードなどは不要です。手数料もインターネットバンキングで支払いできます。
「登記ねっと供託ねっと」の利用時間は、平日の8時30分~21時です。請求した不動産登記簿謄本は、郵送で受け取るだけでなく、最寄りの法務局窓口に取りに行くことも可能です。事前にオンライン請求を済ませてから法務局に出向けば、受け取りの待ち時間を短縮できます。
ただし17時15分以降の請求は、翌業務日の8時30分以降に受け付けされたのちに手数料が納付できます。窓口での受け取りは、手数料の支払いを済ませたあとになるため注意が必要です。
登記簿謄本取得にかかる費用
登記簿謄本の取得にかかる費用は、取得方法によって金額が異なります。
登記事項証明書の交付手数料 | ||
法務局窓口での書面請求 | 1通600円 | 50枚超 50枚までごとに100円 |
郵送での書面請求 | 1通600円+返信用切手代 | |
オンラインでの請求・郵送による送付 | 1通500円 | |
オンラインでの請求・窓口交付 | 1通480円 |
手数料がもっとも安いのは、オンライン請求のあと最寄りの法務局窓口に受け取りに行く方法です。
法務局窓口での請求は、オンラインにくらべて手数料が若干高くなりますが、分からないことがあれば法務局職員に相談できるメリットがあります。郵送での書面請求の場合、返信用の切手代も発生する点に注意しましょう。
参考:法務省 登記手数料について
登記情報提供サービスを利用する方法
土地の登記内容を確認する2つ目の方法は、登記情報提供サービス(https://www1.touki.or.jp/)です。土地の所有者を知りたいだけであれば、不動産登記簿謄本を取得するよりも登記情報提供サービスを利用したほうが費用を抑えられます。
登記情報提供サービスを使ってダウンロードした登記情報は、公的な証明書にはなりません。しかし、登記情報提供サービスで発行された照会番号は、その番号をもとにインターネット上で登記内容が確認できるものです。行政機関によっては、登記事項証明書代わりの確認書類として添付できます。
登記情報提供サービスを個人で利用する際は、以下の2つの申込方法から選択しなければなりません。
- 当日に限り登記情報の請求ができる「一時利用」
- 継続的に情報請求したい人向けの「個人利用」
個人利用の申込手続きは1週間ほどかかり、登録費用も発生します。不動産の登記情報を頻繁に閲覧する方以外は、即日利用が可能な一時利用を選びましょう。
一時利用での登記情報請求は以下の流れで行います。
- 1.
- 一時利用の登録をする(個人情報入力、利用者IDの取得)
- 2.
- マイページの「不動産請求」から、対象不動産の情報を入力する
- 3.
- クレジットカード情報を入力して登記情報の請求をする
一時利用の場合、登記情報の請求および照会番号の取得は、初回ログイン当日中のみに限られます。再ログインできる期間は初回利用から100日間で、照会番号や利用明細の確認が行えます。ただし取得した登記情報の表示は、取得した日の翌日以降の平日3日間のみです。
登記情報提供サービスの利用時間は以下のとおりです。
- 平日8時30分~23時
- 土日祝日8時30分~18時
- 年末年始(12月29日~1月3日)は休業日
オンラインサービスですが、利用できない時間帯がある点に注意しましょう。
登記情報提供サービスを利用する費用
登記情報提供サービスを利用するには、以下の費用が発生します。
利用料金 | ||
---|---|---|
不動産登記情報 | 全部事項 | 331円 |
所有者事項 | 141円 |
登録費用 | |
---|---|
個人利用 | 300円 |
一時利用 | 無料 |
不動産登記情報の所有者事項を請求すると、現在の所有者の氏名や住所を確認できます。土地の所有者を調べたいだけであれば、登記簿謄本を取得する方法よりも、登記情報提供サービスのほうがコストを抑えられるでしょう。
一時利用は、登記情報を請求する都度に利用者登録が必要となりますが、登録費用は無料です。
参考:登記情報提供サービス サービス概要
土地の所有者を調べるその他の方法
土地の所有者を調べる方法は、不動産登記簿謄本か登記情報提供サービスを閲覧して、登記内容を確認するしかありません。
不動産の登記内容を確認するのは個人でも簡単にできますが、なかには専門家に依頼したほうがスムーズな場合もあります。司法書士や不動産会社に依頼したほうがメリットがあるケースや、その際の注意点を解説します。
司法書士に依頼する
土地の所有者を確認し、土地の名義変更までを一緒に済ませたい場合は、まとめて司法書士に依頼すると効率的でしょう。
ただし、土地の所有者を調べるだけであれば、不動産登記簿謄本や登記情報提供サービスで簡単に確認できます。個人であっても司法書士であっても、調べ方は同じです。そのため、登記事項証明書の取得や登記情報提供サービスでの登記情報請求は、司法書士に依頼せずに自分で行うのが一般的です。
不動産会社に依頼する
取得したい土地があるために土地所有者を知りたい場合は、その地域に詳しい不動産会社に相談しましょう。土地の所有者調査を引き受けてもらえる可能性があります。
空き家や空き地を購入したい意志がある場合、所有者と直接やり取りする前に、不動産会社に仲介してもらうほうがトラブルのない取引を進めやすくなります。土地の所有者を調査してもらう際には費用についても事前に確認しておきましょう。
土地所有者情報を取得する際の注意点
不動産登記簿謄本を取得したり、登記情報提供サービスを利用したりする際の注意点を2点紹介します。
土地所有者を調べるためには、その土地の地番がなければ不動産登記情報を取得できません。また、登記簿上の土地所有者と実際の所有者が異なるケースも考えられます。地番の調べ方や、登記簿と実際の所有者が異なる際の問題点を見ていきましょう。
土地の正確な地番が必要
土地所有者を調べるには、その土地の地番が必要です。地番が分からなければ、登記事項証明書の取得や登記情報提供サービスでの情報請求ができません。
一部の地域では地番がそのまま住所として使用されていますが、多くの場合で住所とは別の地番が割り当てられています。
土地の地番を調べるには以下の方法があります。
- ブルーマップを確認する
- 登記情報サービスの「地番検索サービス」を利用する
- 法務局に電話で問い合わせる
ブルーマップは、株式会社ゼンリンが発行している地図です。住宅地図に地番や公図界、容積率といった不動産情報が掲載されています。多くの法務局では管轄地域のブルーマップが備え置かれているほか、地域によっては図書館や市町村役場でブルーマップを閲覧できる場合もあります。
登録情報サービスを使って不動産情報を請求する予定であれば、登記情報サービス内にある「地番検索サービス」が便利です。インターネット上で地番が記載された地図を閲覧でき、地番の検索のみであれば利用料はかかりません。
ただし、ブルーマップや地番検索サービスは、地番を確認できるマップが作成されていない地域もあります。その場合には、管轄する法務局に電話で問い合わせる方法が有効です。不動産の住所と地番照会を依頼したい旨を伝えると、地番を調べてもらえます。
登記の名義人が所有者ではない可能性がある
不動産の登記内容を確認できても、登記簿上の所有者と、現時点での実際の所有者が異なるケースも考えられます。相続によって取得した土地の名義変更がされていないために、登記簿における所有者は亡くなった元の所有者のままということがあるかもしれません。
たとえば、父親から相続した土地の登記簿上の所有者が「2代前の祖父のままだった」といった場合、自分が取得するまでの間の名義変更を遡って行わなければなりません。つまり、「祖父から父」、そして「父から自分」へと、2回分の名義変更を登記申請する必要があります。
まとめ
土地所有者の調べ方は、不動産登記簿謄本を取得するか、登記情報提供サービスで登記情報をダウンロードするかの2つの方法があります。どちらも費用がかかるため、土地所有者を無料で調べる方法はありません。
不動産登記簿謄本は、その不動産に関係のない第三者であってもだれでも取得可能です。オンライン申請をして法務局窓口で受け取る方法は、窓口で申請するよりも手数料が割安になります。
登記情報提供サービスで取得した登記情報は、不動産登記簿謄本と同じ内容が記載されています。ただし、ダウンロードした資料を印刷しても公的な証明書にはなりません。土地の所有者を知りたいだけであれば、登記謄本を取得するよりもコストを抑えられます。
登記簿情報を請求する際には、所有者を調べたい不動産の地番が必要です。ブルーマップや地番検索サービス、法務局へ電話で問い合わせる方法を使って、正確な地番を確認しましょう。
監修者
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
中川 祐一
現在、不動産会社で建築請負営業と土地・収益物件の仕入れを中心に担当している。これまで約20年間培ってきた、現場に密着した営業経験と建築知識、不動産知識を活かして業務に携わっている。
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