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不動産相続に関する6つのポイント!分割方法や費用・税金を徹底解説

不動産相続に関する6つのポイント!分割方法や費用・税金を徹底解説

不動産の相続は、期限内に行わなければならない上、手続きも非常に煩雑です。複数の相続人により、不動産分割が必要な場合には、すべての相続人による協議が必要です。また、手続きに要する諸経費もかかってきます。今回の記事では不動産相続に関するポイントを詳しく解説します。

ポイント

  1. 不動産の相続が発生した際にはしかるべき手順を踏まなければならない
  2. 複数人で相続する場合には遺産分割協議が必要である
  3. 不動産を相続した場合には税金や諸経費がいろいろとかかってくる
目次

ポイント1:そもそも不動産相続とは?

資産を持った人が亡くなると相続が発生します。そして遺産に不動産が含まれる場合、不動産相続が行われます。

不動産の相続は、流動資産といわれる現金や預貯金と異なり、適切に評価する必要があります。売却する際に、購入時の価格より大幅に高くも、あるいは安くもなることがあるからです。

また、相続人のうちの誰かがそこで居住していたり、賃貸借契約を結んでいる相続人がいたり、権利関係が複雑になりがちです。

さらに、固定資産税の支払いをめぐって揉めることもあります。

このように、不動産相続には複雑な問題が絡むケースがあります。

ポイント2:不動産相続の手続きの流れ

実際に不動産相続を進めていく場合のおおまかな流れは、以下のとおりです。

  1. 遺言書の有無を確認
  2. 不動産の所在と相続人を確認
  3. 遺産分割協議を行い協議書を作成する

2-1.遺言書の有無を確認

まず、真っ先に遺言書の有無を確認しておく必要があります。相続手続きが済んだ後に見つかるとややこしくなります。また、遺言書が自身によって作成されたものか、公証役場で作成されたものかによって、手続きが変わってきます。

自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所による検認が必要です。ただし、法務局にて保管する制度を用いた遺言書は、家庭裁判所の検認は不要です。公正証書遺言の場合は、公証役場で遺言書を確認してもらいます。

遺言書があり、不動産に関する記述があればその内容に沿って、遺留分をはじめ、法的に優先すべき事項をクリアしながら遺産分割を進めます。

2-2.不動産の所在と相続人を確認

遺言書がなかった場合や、遺言書があっても不動産に関する記載がない場合、遺産分割を行い、不動産の名義変更を行なわなければなりません。

前提として被相続人がどのような不動産を所有していたのかを確認する必要があります。また、遺産分割は相続人全員の参加が原則なので、誰が相続人であるのかを確認するため、戸籍謄本を取得します。

2-3.遺産分割協議を行い協議書を作成する

相続人が特定されたら、全員が集まり遺産分割協議を行います。協議で決まった内容を記録に残すために、遺産分割協議書を作成しなければなりません。

遺産分割協議書については、相続人が自ら作成することも可能ですが、専門性が必要なので司法書士に依頼することが一般的です。遺産分割協議書には相続人全員の自筆による署名と実印の押印が必要です。

ポイント3:不動産を分割相続する方法

具体的な不動産の分割相続の方法には、以下の4種類があります。

  1. 現物分割
  2. 代償分割
  3. 換価分割
  4. 共有分割

3-1.現物分割

不動産が物理的に分けられる状態であれば、共同相続人が現物を分け合うのがもっとも手間がかからず、わかりやすい方法といえるでしょう。

例えば相続人が2人で相続の割合も同じとしましょう。遺産の不動産が2筆あり、それぞれの立地や面積などの総合的な評価が同程度の場合、各相続人が1筆ずつ相続できればスムーズです。

3-2.代償分割

誰かが代表して不動産を相続し、その人が他の相続人に代償金を支払い、分割協議で決めた通りのバランスに調整する方法です。

相続人が複数いて、皆が不動産を必要としない場合には現実的な方法として用いられます。

3-3.換価分割

全員が不動産を必要としない場合や、不動産の取得を希望する人がいても代償金を準備できない場合などに、不動産を売却して得た譲渡益を、分割協議で決めた割合に応じて分割する方法です。

ただし、相続人全員の合意が必要なので、誰かが合意しない場合は家庭裁判所に審判申し立てを行い、換価命令を得る必要があります。

3-4.共有分割

法定相続分をはじめ、しかるべき割合で持ち分を決め、不動産を共有名義とする方法です。

一見わかりやすい方法ですが、先々共有者の誰かが亡くなった際に相続人が複数になることもあり、権利関係が複雑になりがちです。

これらの4つの分割方法のうち、実際にはどの方法が一番適しているか、慎重に判断しなければなりません。複雑なケースでは、後々のことを考えて法律の専門家に相談することが賢明です。

ポイント4:不動産相続にかかる費用

ポイントの4つ目として、不動産相続にかかるさまざまな税金や費用について見ていきましょう。

  1. 相続税
  2. 固定資産税および都市計画税
  3. 不動産を売却する場合の譲渡所得税
  4. 登記費用

4-1.相続税と計算方法

相続税は基礎控除が高額なので、対象外となる場合も多くあります。しかし平成27年の法改正で、基礎控除額が大幅に減額されたため、以前と比べ、相続税の申告対象になるケースが増えています。

相続税の計算は少し複雑です。順を追って説明します。

まず、相続税基礎控除額は以下の計算式で求められます。

【基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)】

次に、相続税の税率は以下のとおりです。相続税は相続額が増えるにつれて税率が上がる累進課税です。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

各人の相続額に税率を掛けて、相続人ごとの相続税額を出します。

ただし、単純にそれが各人の納税額となるわけではありません。各人の税額を合計した「総納税額」を算出し、これを遺産分割の割合で割ったものが各人の納税額となります。

4-2.固定資産税と都市計画税

固定資産税や都市計画税は、課税標準額に標準税率をかける方法で求めます。土地の課税標準額は、課税台帳に登録されている土地の価格に、特例措置や負担調整などを適用して計算されます。建物の課税標準額についても、優遇措置などを適用して算出されます。

固定資産税の税率は、自治体によって例外もありますが、多くの自治体では1.4%です。都市計画税の税率は、ほとんどの場合0.3%です。

なお、不動産の価格は3年に1回、評価替えが行われ、それに準じて固定資産税や都市計画税も変わります。

4-3.不動産を売却する場合の所得税

不動産の売却によって譲渡利益が発生すると、その利益から売却に要した必要経費を差し引いて残った「所得」に対して、譲渡所得税が課せられます。

譲渡所得税は、物件を売却した年の1月1日時点での所有期間5年を基準として税率が異なります。
所有期間5年未満の場合は「短期譲渡所得」となり、税率は39.63%です。所有期間5年超の場合は「長期譲渡所得」となり、税率は20.315%です。所有期間は、被相続人が物件を取得した日から計算します。相続した日からの期間ではないので注意しましょう。

4-4.登記費用

相続により不動産を取得した場合には、不動産登記を行う必要があります。その際に課せられるのが登録免許税です。

また、登記は専門性の高い手続きのため、司法書士に依頼することが一般的ですが、その場合には、必要書類の発行に要した費用とは別に司法書士に支払う報酬も必要です。

ポイント5:不動産相続の注意点

不動産相続には主に以下のような4つの注意点があります。

  1. 相続税の申告期限とペナルティ
  2. 相続開始前3年の贈与は相続税対象
  3. 相続税額が加算される場合
  4. 代償分割の課税方法

5-1.相続税の申告期限とペナルティ

相続税は被相続人が亡くなってから10ヶ月以内に申告しなければなりません。遺産分割が完了していない場合は、一旦法定相続分で仮申告を行い、遺産分割完了後に修正申告することになります。

また、特例を利用して相続税が免除される場合であっても、特例利用のために、ひとまず相続税の申告が必要になる場合もあります。

万が一、申告の期限を過ぎるとペナルティとして「無申告加算税」が課せられます。無申告加算税は、本来の税額が50万円未満の部分は15%、50万円超の部分は20%という高い税率なので、くれぐれも期限を過ぎることのないように気をつけましょう。

5-2.相続開始前3年の贈与は相続税対象

相続開始前3年以内に行われた不動産の贈与は相続税の対象です。生前に贈与されたものは贈与税が提要されると思われがちですが、贈与後3年以内に亡くなった場合は相続税の対象となります。

これは相続税対策の「駆け込み贈与」への対策です。ただし、課税対象外の財産もあるので、不動産以外に贈与を受けている場合は確認しましょう。

5-3.相続税額が加算される場合

相続人との関係性によっては、相続税額が加算されます。「配偶者以外の人」や「被相続人の一親等の血族以外の人」である場合には、その人の相続税額の2割に相当する金額が加算されます。

被相続人と関係が深い「配偶者」や「被相続人の一親等の血族」は加算されません。

5-4.代償分割の課税方法

代償分割を行った場合の課税方法について触れておきましょう。代償財産を交付した人と受けた人のそれぞれの課税対象額は以下の計算により求めます。

【代償財産を交付した人の課税対象額=相続で取得した現物財産の価額-代償財産の価額】

【代償財産の交付を受けた人の課税対象額=相続で取得した現物財産の価額+交付された代償財産の価額】

ポイント6:相続しないという選択肢

遺産相続の多くは、遺産を丸ごと(プラスもマイナスも)受け継ぐ単純継承という方法が選択されます。しかし事情次第では相続しないという選択肢もあります。

マイナスの遺産、つまり負債が多くなりそうな場合や引き継ぎたくない資産がある場合、以下のどちらかの方法をとることができます。

  1. 限定承認
  2. 相続放棄

6-1.限定承認

単純承認をした場合、後から多額の借金があることが判明した場合、その負債もを引き継ぐ義務があります。

そのような事態を避けるための、プラスの遺産とマイナスの遺産を差し引きして、プラスになった場合のみ相続する方法が限定承認です。

ただし事務手続きが煩雑であることや、相続人全員の合意がなければならないことなどから、限定承認を選択する方の割合は極めて少ないのが現状のようです。

6-2.相続放棄

相続放棄とは、プラスの遺産もマイナスの遺産も、すべての相続を放棄する方法です。

債務の額が財産額を上回りそうな場合や、相続する資産に価値が感じられない場合、あるいは事業承継で他の相続人に引き継ぎを任せたい場合などに用いられます。

限定承認とは異なり、相続人自身の意思で決定できます。ただし意思表示には期限があり、自分が相続人になったことを知った日から3ヶ月(熟慮期間)以内に家庭裁判所で手続きを行わなければなりません。また、相続放棄の撤回はできないため、意思表示にあたっては慎重に検討すると良いでしょう。

まとめ

不動産の相続は、相続人が単独なら問題ありませんが、複数人いる場合には、分割が難しくなりがちです。4つの方法から、状況的にもっともふさわしいものを慎重に選ばなければなりません。

また、不動産を相続すると、さまざまな税金や登記費用などが発生するので、注意しましょう。要件を満たせば税額を軽減できる特例や優遇措置がいくつかあるので、よく調べて利用しながら、最適な相続の仕方を検討しましょう。

監修者

佐藤 智彦

資格
宅地建物取引士
略歴
東京・仙台を中心に、20年以上アパート・マンション建築賃貸業界に従事している。これまで500棟以上の新築アパート・マンションの企画・設計・建築・運営に携わり培ってきたリアルな知見が強み。
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