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【いらない土地あげます!】不動産を無償譲渡する際の注意点や売れない土地の処分方法

【いらない土地あげます!】不動産を無償譲渡する際の注意点や売れない土地の処分方法

不動産は必ずしも望んだ場合だけ手に入るわけではありません。たとえば相続によって思いがけず土地が自分のものになることがあります。ただ、その土地が必ずしも何かに活用できるとは限りません。場合によっては所有しているだけで、税金や管理の手間などさまざまなデメリットを負いかねません。

ここではこのような土地を「いらない土地あげます」とばかりに、処分する方法としての無償譲渡について解説します。

購入検討チェックリスト

ポイント

  1. 有効に活用できない土地を無償譲渡するケースは増加傾向にある
  2. 個人から個人への無償譲渡では税金が課せられないが、個人・法人間や法人から法人の場合は税金が課せられる
  3. いらない土地はただ所有しているだけで手間や費用がかかるため、無償譲渡を含めできるだけ早く処分するのがおすすめ
目次

不動産の無償譲渡とは

不動産無償譲渡

無償譲渡とは、特定のモノや権利を無償(無料またはタダという場合もある)で他に譲り渡すことです。不動産でいえば、誰も住んでいない空き家や、何にも活用されていない空き地などの「所有権」の無償譲渡にあたります。ただし、法律上このような行為は譲渡ではなく「贈与」とされ、通常の売買と区別されることには注意が必要です。

無償譲渡は、受ける側にとって「不動産が手に入り、しかも大金を支払わなくてすむ」のはたしかにメリットかもしれません。しかし税金の発生や管理の手間などの注意すべき点もあるため、譲渡の前によく理解しておく必要があります。

無償譲渡の背景

土地は、2つと同じもののない貴重な資産です。この貴重な資産を無償で譲渡するということにどこか釈然としないかもしれません。ところが土地の無償譲渡は増加傾向にあり、これには現代ならではの背景があります。

日本ではバブル期に投資目的で買ったものの、それから価値が下がってしまい売却できず放置されている不動産は少なくありません。また、土地を相続したものの、ただ所有しているだけのケースもあります。

問題は、土地が「所有しているだけでも手間や費用がかかってしまう」ことです。土地の価値が高いほど高額な固定資産税を納めなくてはならず、空き地であれば雑草や不法投棄されたゴミの処分や、ご近所に迷惑をかけないよう定期的なチェックも欠かせません。

また土地には固定資産税を算出するための基準となる価格はあるものの、買主と合意できて初めて売却できます。価値が高いからといって、その金額で売却できるとは限りません。価値が高いからこそ売却できないケースもあり得ます。

無償譲渡にかかる税金

不動産無償譲渡

土地を一定の対価を設けて売買する場合、売る側は代金という「収入」が手に入り、買う側は代金を支払い「費用」となるため、それぞれに会計上の手続きが必要です。とくに売る側が手にした収入には、金額に応じた税金が課せられます。

これが無償譲渡となると譲渡する側は代金が手に入らず、受ける側も支払う代金はありません。しかし、この無償譲渡の場合でも、税金が発生することがある点には注意が必要です。無償譲渡では関わる個人・法人によってかかる税金のしくみが違います。

無償譲渡の内容 売主 買主
個人から個人へ 非課税 贈与税
個人から法人へ 所得税 法人税
法人から個人へ 法人税 所得税
法人から法人へ 法人税 法人税

ここでは土地を無償譲渡するとき、発生する税金について、個人・法人が関わる4つのパターンに分けてみていきましょう。

個人から個人へ無償譲渡する

個人同士で譲渡する場合、譲渡する側は所有権を移転するだけで、税金は課せられません。

一方、受ける側には相応の価値の資産を新たに取得することになりますが、代金の支払いを伴わない「贈与」とみなされ、原則として評価額が110万円を超えた場合は贈与税が課せられます。ただ土地を含む不動産は一般に評価額が大きいため、多くの場合贈与税が課せられると考えておいた方が無難です。

個人から法人へ無償譲渡する

譲渡する側が個人で受ける側が法人の場合は、無償譲渡でも適用される税金のしくみが変わります。これは個人から法人への無償譲渡が、たとえ代金の授受がなかったとしても、土地は時価で譲渡したものとみなされるためです。これを「みなし譲渡所得課税」といい、譲渡する側の個人には所得税が課せられます。

なぜこのような制度があるかというと、法人という立場を利用した「税金逃れ」をさせないためです。たとえば法人の社長が、個人として所有している土地を自身の法人に無償で譲渡すれば、社長個人に固定資産税が課されることはなくなります。しかし法人の社長であれば、土地もいわば「個人所有であったときと同じように」自由に処遇を決められる、つまり実質的に社長が所有者だったときと変わりません。これはただ、社長個人が固定資産税の支払いを逃れるための対処です。

一方、受ける側の法人は、資産として土地を受け取ったことで利益を得たとみなされ、法人税がかかります。こちらは受け取って発生する固定資産税を費用として計上し、法人税の支払い逃れを防止するためです。

法人から個人へ無償譲渡する

法人からの無償譲渡で、個人が受け取る場合も税金は発生します。この場合も個人から法人への無償譲渡と同様、譲渡された土地は時価の資産として利益とみなされ、利益に対して法人税が課せられるというしくみです。

一方、受け取った個人は、受け取った土地が時価分の一時所得とみなされ所得税が課せられます。一時所得とは次のような性質の一時的な所得です。

  1. 営利目的の継続的行為から生じた所得ではない
  2. 労務や役務の対価としての性質を持たない
  3. 資産の譲渡による対価としての性質を持たない

法人から法人へ無償譲渡する

法人から法人への無償譲渡では、どちらにも法人税が課せられます。これは対価が発生していなくても、譲渡する側の法人には譲渡が土地の時価での譲渡とみなされ、また受ける側の法人は譲渡が、受けた土地の時価分の利益とみなされるためです。

無償譲渡の注意点

不動産無償譲渡

土地のように一般に価値が大きいとされる不動産を無償で譲渡するのは、どちらかといえば特異な例といえるかもしれません。それだけに通常の不動産売買取引とは異なる注意点もあります。

ここでは土地の無償譲渡における注意点について解説します。

無償譲渡を受ける側の注意点

土地を無償で譲り受けるとしても、それ以降は所有者としての義務を果たさなくてはなりません。目につくメリットだけでなく、デメリットについても詳しく調べて把握し、後に問題とならないよう備えることが大切です。

ここでは、無償譲渡を受ける側が把握しておきたい注意点を3つ解説します。

税金がかかる

土地の譲渡に対価が発生しない、無償だとしても受ける側が土地の価値分の利益を得ることに違いはありません。そのため受ける側には土地の贈与税が課せられます。

また譲渡にかかる対価とは別に、土地には「登記の義務」があるため所有者を正式に変更する手続きも必要です。手続きには「登録免許税」が必要で、手続きが済めば正式に土地の所有者となるため、以降の固定資産税や、地域によっては都市計画税も課せられます。

土地が対価なく手に入ったため「価値はゼロ」と勘違いしがちですが、税金は取引金額とはあまり関係ありません。無償で手に入れたとしても、税金が発生することには、注意が必要です。

契約のトラブル

無償譲渡を完了するには多くの手続きが必要なため、なかには書面による契約をせずに口約束で譲渡してしまうケースも少なくありません。しかしそうすると、後にトラブルとなってしまう場合もあるため注意が必要です。

たとえば、無償譲渡後に譲渡した側から「やっぱり返してほしい」「譲渡した覚えがない」などと言われたとき、口約束だけであれば譲渡取引自体を証明できない可能性があります。証明するため裁判にまで発展しかねません。また、譲渡された土地で事故や事件が発生していたことが分かったり不具合が発覚したりした場合も、契約書がないことで責任の所在や問題の解決が難しいかもしれません。

対価が発生しない無償譲渡だからと取引を簡単に済ませるのではなく、あらゆる事態に対応できるよう、書面で譲渡契約を締結する必要があるでしょう

無償譲渡をする側の注意点

無償で譲渡すれば、手にする収入もないことからあまり面倒な注意点はないように思えるかもしれません。しかし無償ではあっても不動産の所有権の移転である点は同じです。 ここでは、無償譲渡する側の注意点をみていきましょう。

譲り先を自分たちで探すことになる

無償譲渡は取引される代金がゼロであるため、仲介しても手数料が得られないことから、不動産業者は契約に関与しないのが通常です。取引を仲介する不動産業者は、買い手探しからそのための広告や営業活動、契約締結の際の交渉や説明まですべてを取り仕切ってくれます。しかし無償譲渡では不動産業者に頼ることはできないため、譲り先も自分たちで探すのが原則です。

土地の隣人や知り合いなどに見込みがあれば比較的スムーズに手続きできるかもしれませんが、そうでない場合は結局、長期間所有し、税金や管理費用を負担することになってしまうかもしれません。譲り先は、無償譲渡を決めるための、重要な要素といえるでしょう。

契約のトラブル

代金が発生しないとはいえ、無償譲渡には土地の所有権が移るという、法的な手続きが発生します。有償での売買と同じように取り決めが明確で漏れのないしっかりとした契約書が必要です。でなければ所有権移転登記などに支障が出る可能性もあります。

あとでトラブルとならないような契約書の作成には、不動産取引の知識が豊富な司法書士や行政書士への依頼が必要です。ただ依頼には費用が発生します。無償譲渡では収入が得られないため、発生するコストはすべて自身で負担しなければなりません。

無償譲渡を決めるときは、契約のトラブルを避けるための費用も含めて把握する必要があります。

手続きが面倒

土地などの不動産の譲渡には、さまざまな手続きが必要です。買い手を探すための広告活動や情報収集、価格をはじめとした売買条件の設定や交渉、売買契約の締結から引き渡しまで、それぞれの段階に複雑な実務があり、しかも法律で定められた手続きを経なくてはなりません。

有償で売却する場合は、不動産会社が仲介してくれます。なぜなら、売却金額に応じた仲介手数料が得られるためです。そのため複雑な手続きも不動産の専門家が最後までしっかりサポートしてくれます。しかし無償譲渡において、不動産会社は仲介しないのが一般的です

となると手続きはすべて、譲渡する側が自身で負わなくてはなりません。わからないところは役所や役場、税務署などに問い合わせる必要があります。もちろん不動産会社に尋ねることもできますが、そのときは別途手数料を請求されるのが通常です。

このような手続きは、無償譲渡ならではのデメリットといえるでしょう。

いらない土地を放置するリスク

不動産無償譲渡

土地の無償譲渡には譲渡するだけで税金が発生する可能性があり、しかも契約締結など必要な手続きは原則としてすべて譲渡する側が自身で、または別途費用をかけて行わなくてはならないなどデメリットや面倒があるのは事実です。しかし、このまま空き地として所有するにも一定のリスクがあります。

ここではいらない土地を放置することによるリスクを整理してみましょう。

税金がかかる

直接的な費用に関することでいうと、土地を所有しているだけで「税金が課せられる」ことはリスクといえます。「いらない土地」というくらいには、とくに活用していない土地にも土地の価値に応じた固定資産税が課せられます。納税するには、何も活用していない土地のために自身の蓄えを充当するしかありません。

所有する目的や意義があれば別ですが、経済的な視点でいえば、いらない土地はできるだけ早く処分し、余計な出費は減らす必要があるでしょう。

管理の手間がかかる

いらない土地とはいえ所有している以上、土地の管理責任は所有者自身にあります。土地は放置するだけで雑草が生え、虫や害獣の温床になってしまう危険があり、なかには心ない人によるゴミや不用品の不法投棄によって、周辺の住人にとって危険な存在にもなりかねません。必要に応じて雑草を刈ったり、ゴミを処分したりして整理しておく必要があります。

ただこのような作業には手間も時間もかかるため、所有者がもし土地から遠い場所にいれば、状況がつかめず必要な手間をかけられないかもしれません。その場合は、別途費用をかけて管理会社に管理を委託するなどの手続きが必要です。

このような管理の手間も、土地を所有していなければかかりません。

近隣トラブルになる

前述のとおりいらない土地を放置し荒れ放題にしてしまうと、近隣トラブルとなる可能性もあります。住宅は本来、住む人にとって安心で安全な場所であるものですが、たとえば隣の土地が雑草は生え放題になり、野良猫や野鳥が住みついたり、粗大ゴミなどが不法投棄されたり、捨てられたゴミに放火されたりすることもないとは限りません。周辺の住民が不安になっても仕方ないでしょう。

万が一、人が立ち入ったり、災害によって周辺に損害を与えたりすれば、損害賠償を請求される可能性もあります。そのような事態になる前に、なにかしらの対処をする必要があります。

いらない土地を手放すその他の方法

不動産無償譲渡

いらない土地を処分する方法は無償譲渡だけではありません。相続も強制ではないため放棄が可能で、またごく安い金額ではあっても売却することもできます。ただ、土地は残り続けるため、処分後も誰かが管理しなくてはなりません。そのためどの方法でも、自分だけでなく相手の事情にも十分な配慮が必要です。

ここではいらない土地を手放す、無償譲渡以外の方法を4つ解説します。

相続土地国庫帰属制度を利用する

いらない土地が相続した土地であれば、相続土地国庫帰属制度に申請する方法があります。相続土地国庫帰属制度は相続した、または遺贈された土地の所有権を、国庫に帰属させるための制度です。

ただこの制度は申請制で、必ず認められるわけではありません。またそもそも、次のような土地は申請そのものができないとされています。

  1. 建物が建っている
  2. 担保権・使用収益権が設定されている
  3. 他人の利用が予定されている
  4. 土壌汚染されている
  5. 境界が明らかでない
  6. 所有権や範囲について係争中である

申請費用は土地一筆あたり14,000円です。帰属が認められれば10年分の土地管理費相当額を納付すれば、その日から所有権は国に移転します。

参考:法務省 相続土地国庫帰属制度について

相続放棄する

土地を相続する前に「価値がない」ことがわかっていれば、相続を放棄する方法もあります。ただ、相続人が自分だけなら問題ありませんが、そうでないときは他の相続人に了承を得ておく必要があるでしょう。

相続放棄の手続きは、相続を知った日から3カ月以内に家庭裁判所への申し立てから始められます。また相続する財産の一部を放棄することはできず、すべての財産を相続放棄するか、相続するかの二者択一です。その他の財産がある場合は慎重に検討する必要があります。

相続を放棄すれば、土地の所有権は自分にないため固定資産税が課されることはありません。しかし正式に土地を管理する相続財産管理人が決まるまで、管理義務は残ることには注意が必要です。その間の管理不行き届きの責任は、本来相続するべき元相続人が負わなくてはなりません。

自治体に寄附する

もし自治体が受け入れるなら、寄附するという方法もあります。いくら寄附だからといっても、自治体が必ず受け入れるわけではありません。土地を所有すれば管理義務が発生する上、管理の手間や費用がかかります。それだけの労力に見合うかどうか、つまり利用目的に合致しているかどうかが問題です。現実的に寄附できる事態は、かなりめずらしいケースといえます。

寄附の手続きは自治体によって異なりますが、寄附採納申請をもとに審査され、承認された後、実行されるのが一般的です。

また寄附の手続きで所有権は移転しないため、別途司法書士に依頼するなどして所有権移転登記する必要があります。かかる費用については双方の協議、合意の上で決定するのが通常です。

隣人に譲る・売却する

土地の隣人に譲ったり、売却したりする方法にもメリットがあります。売却先を探す手間がなく、直接取引することで不動産業者に支払うはずの仲介手数料もかかりません。そもそも隣にあるため周辺の事情にも詳しく、お付き合いがある隣人ならある程度安心して取引できます。

一方で、売買価格を相場より割安にせざるを得なかったり、契約交渉や契約書の準備、登記手続きなども自身で行わなくてはなりません。

ただ隣人にとっては、自分の土地と合わせると効果的に活用できたり、境界が曖昧だった場合は境界そのものが解消できたりといったメリットが考えられるため、比較的売りやすい相手ともいえるでしょう。

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まとめ

不動産無償譲渡

相続や遺贈といった事情から、とくに必要もないのに土地が手に入ることがあります。しかし、その土地がなににも活用できないくらい「いらない土地」なのであれば、ただ所有しておくとコストや管理の手間がかかるため、できるだけ早い対処が必要です。

その対処法の1つは無償譲渡ですが、無償なのは譲渡の対価だけであって、その後の管理の手間や固定資産税は負担しなくてはなりません。また無償譲渡によって課せられる税金も、取引するのが個人か法人かによって金額は変わります。

無償譲渡以外にも、相続放棄や隣人への譲渡、売却など方法はいくつかあるため、もっともメリットの大きい、効果的なものを選ぶことが大切です。

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監修者

宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、不動産コンサルティングマスター

髙橋 一壽

不動産・建築業界歴20年。アパートの建築請負営業、それに係る土地仲介業務、仕入営業に携わっている。自身でも不動産経営を行っており顧客目線で業務に取り組んでいる。

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不動産投資家Kとその仲間たちでは、「土地を相続する予定だけど、どうすれば良いか検討している」「管理が大変なので、土地を売却したいと思っている」など、土地・建物のさまざまなご相談を承っております。

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