【相続前に対策を!】やってはいけない実家の相続4選!住まない実家や共有名義には要注意
相続前に知っておきたい、実家の相続の注意点について解説します。なんとなく自分が相続することになりそうと考えている子世代や、不動産の相続をどうしようか考えている親世代の方は、相続のポイントを押さえ、後悔のない相続をしましょう。
ポイント
- 実家相続の際には、名義・解体・売却についてそれぞれリスクがある
- 実家相続後の活用方法としては、維持・居住・賃貸などがある
- 実家相続をスムーズに進めるには、遺言書の作成・生前贈与・相続放棄などの方法がある
やってはいけない実家相続4選
実家の相続で懸念されるのは、相続したがために余分な負担を強いられてしまうケースです。居住予定がない実家を相続する際に、注意すべき項目は以下の4つです。
- 活用予定がない実家を相続するリスク
- 共有名義で相続するリスク
- 相続後に実家家屋を解体するリスク
- 相続後にすぐ実家を売却するリスク
実家相続の際に、やってはいけない事項の代表例4つを次章から解説します。
①活用予定がない実家を相続するリスク
実家の土地家屋を相続したものの、その後に活用する予定がないケースではいくつかのリスクが想定されます。ここでは、活用予定がない実家を相続するリスクの代表例を以下に4点紹介し、それぞれのリスク内容について解説します。
相続税がかかる
現在住んでおらず、将来も住む予定がない実家を相続すると、土地や家屋の維持管理の責任を引き継ぎます。当然ながら、固定資産税を負担しなければなりません。
固定資産税は不動産にかかる年間の税金であり、実家という家屋が存在する限り、所有者に課税されます。また、地域によっては都市計画税がかかるケースもあり、空き屋とはいっても万一のことを考えて火災保険に加入する必要もあります。
空き家は人が居住する家屋よりも火災保険料が高くなるケースもあり、状況次第では火災保険自体に加入できない場合もあることから、慎重に判断することが必要でしょう。
維持管理費がかかる
家屋の維持には空き家であっても定期的な清掃も必要な上、庭木などがあれば手入れも必要です。家屋の老朽化が進むと修繕費用もかかる上に、放火や不法投棄をされるなどの犯罪に遭うリスクがあります。
また、実家が遠方にある場合は、清掃などのたびに定期的に往復しなければなりません。定期清掃のためには水道やガスなどの光熱費も毎月の必要経費となります。
すなわち、活用予定がない実家の土地や家屋を相続すると、経済的・時間的な負担がかかるのを認識しておく必要があります。
放置すると特定空家に指定される可能性がある
空き家になった家屋に関しては「空家等対策の推進に関する特別措置法」という法律が適用される可能性もあります。同法が適用され特定空家に認定されると、固定資産税の減免解除や家屋取り壊し費用が相続人に請求されるなどのペナルティが課せられる可能性があります。
実家の定期清掃を怠っていた場合は、この法律が適用されてしまう可能性があります。実家を相続した以上、たとえ空き家でも定期清掃はしっかり実行しましょう。
参考:e-Gov「空家等対策の推進に関する特別措置法」
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放置すると近隣住民に迷惑をかける可能性がある
相続した実家を、空き家のまま放置し続けると、家屋の老朽化が進み、庭に雑草が生え荒れ地となれば地域の景観が損なわれてしまいます。結果として近隣住民に迷惑をかけることになり、大きなクレームに発展しかねません。
また、台風などの自然災害により瓦が飛んだり塀が倒壊したりすると、近隣に危害が及ぶこともあります。そうなれば、相続人が加害者となり、損害賠償責任を負うリスクもあるでしょう。
管理費用の負担でトラブルになる
実家の土地や家屋を兄弟または親族と共有で相続し、保有し続けることも避けた方が無難です。相続した家屋に共有者の誰かが居住するのなら、維持管理はその人に任せれば問題はありません。
誰も住まないのならば、固定資産税の分配比率や誰が維持管理をするのかなどの問題が発生する可能性もあります。共有相続人同士での事前に話し合いがきちんと行われており、お互いに信頼し合った間柄であれば、問題は起きないでしょう。
しかし、普段から十分なコミュニケーションがとれていない間柄であれば、相続後にトラブルになりがちです。この点をよく理解した上で、よく話し合って相続人を決めることが大切です。
売却時にトラブルになる
共有名義でのリスクの2点目は、実家を売却する際に意見が対立しトラブルになってしまうことです。 相続した実家を一括で売却する際には、相続人が複数の場合、全員の同意が必要です。(持分のみを売却する場合は、単独で可能です。)
つまり、売却に反対する相続人が一人でもいれば売却はできないことになります。金銭がからむ案件だけに、意見の対立は近親間での関係悪化を招きかねません。
最悪の場合は兄弟同士での係争に発展したり、絶縁状態になったりと、深刻な事態に陥ることさえあります。実家売却に関しては、相続する前に共有する相続人同士でよく話し合っておくべきでしょう。
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解体費用がかかる
実家土地と家屋を相続した後に、家屋の維持管理が面倒だからという理由で、家屋を解体するのは、決して賢明とはいえません。解体にかかる費用の相場が近年高騰しており、決して無視できない金額です。
また、複数で相続した場合には、相続直後に居住する意思がなくても、しばらくして状況が変わり実家に住みたいと願う相続人が出てくることも考えられます。
家屋を解体する前に、土地だけの固定資産税の金額を試算し、将来実家に住む可能性も考慮した上で慎重に判断するのが無難でしょう。
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土地の固定資産税が高くなる可能性がある
実家の家屋を解体すると土地だけの状態になりますが、先のことを考えずに家屋解体をしてしまうと後悔することになりかねません。なぜならば、固定資産税の金額は、家屋付きの土地よりも土地だけの方が6倍も高くなってしまうからです。
日本の法律では、居住目的の土地は「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が6分の1に抑えられています。ところが、家屋を解体したことで特例が解除され、実家の土地は更地とみなされ翌年に6倍の固定資産税が課せられるわけです。
相続した実家の家屋を解体することで、翌年の固定資産税が一挙に6倍に跳ね上がることをよく理解する必要があります。実家の家屋の処分については、固定資産税の課税のことをよく考慮した上で慎重に判断すべきでしょう。
④相続後にすぐ実家を売却するリスク
実家を相続すると、相続税の支払いを考えて、すぐに実家の土地家屋の売却を考えがちです。しかしながら、相続直後に実家の売却を進めてしまうと、以下のような事態が起きて後悔することになりかねません。
小規模宅地等の特例が受けられなくなる
相続した不動産に対しては「小規模宅地等の特例」という法律が適用され、相続開始時から相続税申告期限(10か月以内)まで相続した不動産の保有を条件として、相続税の負担額が軽減されます。
同特例の規定では、100坪までの土地の評価額は8割も減額されることから、相続後10か月は売却せずに保有しておく方が相続税の負担が軽くなるのです。
ただし、相続税の軽減を目的に適用する法律は別にもあることから、状況によっては早く売却した方が得するケースもあります。いずれにせよ、実家相続後の売却と相続税の軽減措置とのからみについては、司法書士など法律の専門家に相談して決断するのが賢明です。
実家を相続する方が良い場合
実家を相続することがマイナスに作用するケースもあれば、相続した方がプラスとなるケースもあります。どのようなケースが相続するべきだと判断するのか、以下に3つのパターンを解説します。
居住予定がある
相続した実家に居住する予定があるのなら、相続して良いといえるでしょう。というのも、空き家になった家屋は傷みやすいといわれているためです。
相続人が住むことで家屋が傷みにくい状態となり、家屋自体の資産価値を下落させる心配も少なくなります。相続前の家が賃貸等で引っ越せる環境であれば、相続した家屋に転居して居住することも良い選択肢といえるでしょう。
維持管理ができる
相続した実家の家屋が誰も住まない空き家になってしまうと、相続人が定期的に家屋や土地の維持管理を行う必要があります。相続人が多忙な社会人であっても、忙しい仕事の合間を縫って定期的に清掃などをしなければなりません。
相続人が実家に転居することが難しい場合は、相続時点での居住地が実家の近距離であれば、実家を相続しても良いケースとなり得ます。実家の維持管理に必要な家屋や土地の清掃が、楽に行えるためです。
実家の維持管理を定期的に行える環境であれば、維持管理の問題は解決します。実家を相続する判断のポイントは、実家へ定期的に行ける環境か否かにあるといえるでしょう。
活用する予定がある
実家を相続した直後は空き家となるが、近い将来に実家の土地家屋を有効活用する予定がある場合は相続してもよいでしょう。不動産の資産運用により、固定資産税の負担を軽減したり収益を生んだりすることも可能です。つまり、実家を相続人の資産として運用する目算があるのなら、相続する意味は充分にあるといえるでしょう。
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自分で住む
相続した実家の有効活用として、相続人が現在の住居から実家に引っ越すのも良い方法です。実家に居住することで、固定資産税や家賃や管理費用などが節約でき、金銭的な負担を軽減できる効果があります。
ただし、実家の家屋の築年数が古く、リフォームする必要がある場合は、一般的に数十万円から数百万円ほどかかるリフォームの工事費用を負担しなければなりません。
さらに、実家が現在の居住地から遠距離にある場合は、通勤にかかる時間や子どもたちの転校などの問題が発生します。
実家と現住所との距離によっては生活環境が一変し、金銭的負担が大きくなる場合は、実家に住むことは断念せざるを得ないでしょう。
建物を賃貸する
相続後に実家を賃貸物件にして借り手を募集し、第三者に貸し出す選択肢もあります。賃貸にすることで毎月家賃収入が得られ、経済的にも楽になることでしょう。
しかし、賃貸物件にするには駅に近いなどの立地条件や、生活に便利な周辺環境でなければ、借り手が見つからないというリスクがあります。また、第三者が住みたいと思う魅力ある物件にするために、リフォーム費用がかさむというケースもあるでしょう。
相続した実家を賃貸物件にするには、このような条件をクリアできるかどうかを検証して決断する必要があります。
土地を賃貸する
実家の土地はそのままにして、家屋部分を解体し、土地だけを貸し出すという選択肢もあります。「事業用定期借地権」を利用すれば年数を限定した上での貸し出しも可能です。
ただし、土地の借り主がすぐに見つかる保証はありません。実家の土地が、貸し出しに適しているかどうかを慎重に検討して決断する必要があるでしょう。
タイミングを検討して売却する
相続人が実家に居住する可能性がない場合は、タイミングを検討した上で、実家売却の計画を立ててみるのもよいでしょう。相続人が複数いる場合は、実家の売却益を分け合う「換価分割」をするケースがあります。
ただし、相続税の申告をする前に急いで売却すると「小規模宅地等の特例」の適用外となり、相続税の金額が跳ね上がってしまいかねません。実家の売却に関しては、不動産関連の専門家に相談してタイミングを検討する必要があります。
土地活用を始める
相続した実家の土地活用には、「駐車場」「賃貸住宅」「定期借地」「テナント」「トランクルーム」などいくつかの方法があります。それぞれに特徴があり、土地の立地条件や周辺環境をよく検証し、適切な活用法を選択するのが賢明でしょう。
条件の判断を誤ると、入居希望者は少なく空き部屋が多い賃貸住宅を建ててしまったり、収益化に時間がかかる活用方法にしてしまったりなどの事態になりかねません。土地活用の際には、後悔しないためにも、より慎重に検討することが大切です。
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実家の相続をスムーズに進める方法
両親が健在のうちに話し合う
相続後の相続人同士の争いを避けるために、両親が健在のうちに相続人となる兄弟や親族同士で話し合っておくのがよい方法です。両親の生前に討議しておく重要事項は、以下の4点に絞られます。
遺言書を作成する
相続後の親族間の争いを避けるために、両親は生前に遺言書を作成しておくのが良策です。遺言書は、公証人立ち合いの元に作成した「公正証書遺言」が理想といえます。
親の死後、相続人が集まった場所で、公証人に預けてあった遺言書を公証人により開封して読み上げる流れです。公正証書遺言は公的な書面のため、争いの原因となるあいまいさを回避できます。
生前贈与を検討する
実家を相続すると、相続人には贈与税が課せられます。しかし、築年数が古い実家であれば基礎控除範囲内となり、相続税が免除されるだけでなく不動産取得税もかからないかもしれません。
節税対策として、生前贈与という方法も選択肢のひとつです。実家以外にも相続する財産がある場合は、生前贈与しない方が有利なケースもあります。
生前贈与については、税理士など専門家を交えて慎重に検討して決断するのが得策でしょう。
相続放棄を検討する
実家の土地家屋はプラスの財産ですが、場合によっては借入金やローンなどの負債がプラスの財産の金額を上回るケースもあります。すなわち、相続した財産を算出すると金額がマイナスとなってしまったというケースです。
このようなケースでは、「相続放棄」をしてマイナスの財産を相続しないのが賢明でしょう。また、相続放棄は被相続人のすべての財産を放棄する方法ですが、プラス部分の財産の範囲内で相続する「限定承認」という方法もあります。
なお「相続放棄」と「限定承認」のいずれも、自分が相続人と知ってから3か月以内に家庭裁判所に申告しなければなりません。3か月を経過すると、相続人には負債の弁済義務が発生することになり、注意が必要です。
相続前に処分する
実家の相続の際に起きる面倒な手続きを嫌い、親が生前に実家処分後の利益を現金化しておくケースもあります。実家の処分は、当然ながら、実家を処分後に親の住居を確保できる場合に限られる方法です。
ただし、親の転居先が見つからない場合でも、実家売却後も賃貸で住み続けることが可能な「リースバック」という方法があります。リースバックの活用は、実家相続時のもめごとを回避できる上に、親の住居も確保できるメリットのある方策といえるでしょう。
不動産会社に相談する
相続した実家をどう活用するかという点については、状況に応じてさまざまな方法が考えられます。実家という大きな財産の活用では、不動産の専門家からのアドバイスを受けて決断するのが賢明です。
実家の相続が決まり、何から手を付ければよいのかわからないという場合でも、不動産のプロなら適切なアドバイスをしてくれます。 相続した実家の有効活用のためには、多くの物件を手がけた実績豊富な不動産会社に相談してみましょう。
まとめ
本記事では、実家の相続人となった人のために、やってはいけないことを中心に対応策別のメリットとデメリットなどを解説しました。相続した実家をどうするかは、一度決断して実行してしまったら、取り返しはつきません。後悔しないためにも、皆さまにとって最善の方策をとれるよう、はやくから検討を進めましょう。
監修者
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
中川 祐一
現在、不動産会社で建築請負営業と土地・収益物件の仕入れを中心に担当している。これまで約20年間培ってきた、現場に密着した営業経験と建築知識、不動産知識を活かして業務に携わっている。
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