土地売却時にかかる税金の計算方法は?土地を売る際の節税方法
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不動産投資家K
不動産売買の際に、中間省略登記を検討したことのある方も多いのではないでしょうか。しかし中間省略登記は不透明な部分もあり、不安に感じることもあるでしょう。
中間省略登記を行うことで、売買価格に影響があることもあるため慎重な検討が必要です。今回の記事では中間省略登記について、詳しく解説していきます。
中間省略登記とは、名前の通り「不動産売買に関する登記を一部省略する」ことをいいます。不動産売買の際には、売買の都度所有権の移転登記を行うことが一般的です。所有権の移転登記を行わなければ登記上の所有者は変わらないままのため、売買された事実が第三者にはわかりません。
所有権移転登記を行うことで、買主は不動産の所有を主張できるようになります。このように不動産売買において所有権移転登記は重要ですが、登記に伴い登録免許税や不動産取得税などの費用が発生します。仮に購入してすぐに売却が決まっているのであれば、無駄のコストはおさえたいと考えるでしょう。
そこで行われる取引が中間省略で、たとえばXさんがYさんに物件を売却します。Yさんは物件を購入後、Zさんにすぐに売却することが決まっているとしましょう。このような場合にXさんからYさんへの所有権移転登記を行わず、直接Zさんに所有権移転することを中間省略といいます。
本来は「XさんからYさん」、「YさんからZさん」の登記を行うべきですが、最終的にZさんが所有者であるという実態を反映しています。そのため当事者全員の合意があれば有効です。
節税メリットを享受するために、行われることが多い取引です。本来「XさんからYさん」、「YさんからZさん」という2回の登記を行うべきところを、「XさんからZさん」の1回しか行いません。そのため1回分の登録免許税や不動産取得税などの税金がおさえられます。
登録免許税や不動産取得税は物件の買主に課税されるため、中間省略でメリットを受けるのはYさんです。またYさんが無駄なコストをおさえられることで、Zさんが安く購入できるというメリットもあるでしょう。
節税以外にもメリットがあります。それは売買価格が、当事者以外にはわからない点にあるでしょう。中間省略の場合、売買契約書はXさん・Yさん間、Yさん・Zさん間それぞれで作成します。
そのためXさんは、Yさん・Zさん間の売買価格が、Zさんは、Xさん・Yさん間の売買価格がわかりません。Yさんが不動産会社で利益を抜いている場合、各当事者には利益の金額がわからないことになります。中間省略は不動産会社が間に入って行われるのが一般的です。
節税などの効果がありますが、不動産取引による権利の移転を正しく表示していないという問題点もあります。登記を管轄している法務局は、権利の移転は事実を正しく反映させる必要があるとの考え方から、認めていませんでした。
しかし、裁判所の判例では中間省略登記を認めた例もあり、事実上は行える状態が続いていましたが、平成17年に不動産登記法が改正施工されました。不動産登記法の改正によって、従来の手法は行えなくなっています。
前述のように平成17年に不動産登記法が改正され、登記申請の際に「登記原因証明情報」の添付が必要になりました。登記原因証明情報は登記の変動となった要因を証明する書面のことで、Xさん→Yさん→Zさんの経緯が明確にわかります。そのため従来のような中間省略だと、法務局へ申請できません。
しかし不動産会社を中心に中間省略のニーズは強くあったため検討が行われ、内閣の諮問会議である「規制改革・民間開放推進会議」によって、下記の点が発表されました。
上記のような理由であれば行えます。それぞれの手法について、見ていきましょう。
参考:法務省 新不動産登記法Q&A
従来の中間省略の代替手法の1つが、「第三者の利益のために締結する契約」です。従来の中間省略が禁止されたのは、所有権が中間のYさんを経由しているにもかかわらず正しく登記されていないためです。そのため、所有権が直接Zさんに移転するのであれば、問題ありません。
所有権を直接Zさんに移転する方法として考えられたやり方が「第三者の利益のために締結する契約」で、Yさんは第三者という立場であるZさんのために売買契約を行うことになります。「Yさんは所有権の移転先を指定し、XさんはYさんの指定する者に所有権を直接移転する」という特約を文言にいれることで、YさんはZさんのためにXさんと売買契約を行うことになります。
売買契約はXさん・Yさん間、Yさん・Zさん間で行われますが、実際の所有権移転はYさんを経由しないでXさんからZさんに直接移転するといえるでしょう。このような内容を記載して申請することで、中間省略が可能です。
もう1つの代替手法が、「買主という立場を第三者に譲渡する契約」です。名前の通り買主の地位を譲渡する手法でXさんYさん間の売買契約における買主の地位を、Yさん・Zさん間で譲渡する契約を結びます。
譲渡についてXさんが同意することで所有権はXさんからZさんに直接移転し、Yさんを経由しません。Yさん・Zさん間で結ぶのは売買契約ではなく地位譲渡であるため、Yさんに登記する義務はありません。
従来の中間省略と、新中間省略の一番の違いは「Yさんが所有権を取得するかどうか」です。従来の中間省略ではXさん・Yさん間、Yさん・Zさん間で売買契約が成立し、Yさんに所有権が移転するにもかかわらず、Yさんへの移転登記を行っていませんでした。
一方、新中間省略登記では、「第三者の利益ためにする契約」や「買主という立場を第三者に譲渡する契約」により、Yさんに所有権が移転しません。そのため権利の移転を正しく反映しながら、登記が行えます。
新中間省略登記を活用すれば節税ができるメリットがありますが、次のような注意点もあります。
それぞれの注意点について、見ていきましょう。
新中間省略登記の注意点の1つに、入金まで時間がかかることがあります。新中間省略登記ではXさん・Yさん間の売買契約に加えて、Yさん・Zさん間にも契約が成立しなければ決済が完了しません。そのためYさんとZさんとの交渉が手間どってしまうと、Xさんの代金回収が遅れてしまう場合もあるでしょう。
一般的にはYさんに当たるのは不動産会社であることが多く、Xさんに対して決済期日を明確にします。万が一、決済期日にYさん・Zさん間の契約が成立しない場合は、Yさんが不動産会社であれば買い取ることが多いでしょう。しかし、期日が明確にされていなければ、Xさんはいつまでたっても代金を回収できないというリスクがあります。
新中間省略登記では、重要事項説明や契約不適合責任が免除されてしまう可能性があることも注意点といえるでしょう。新中間省略登記の手法を利用する場合、前述のとおりYさんが不動産会社でZさんが一般消費者というケースも多いです。
通常、宅建業法では一般消費者を保護するため売買契約にさまざまな規制があり、その代表が重要事項説明や契約不適合責任です。売主である不動産会社は買主の一般消費者に対し物件に関する重要な事項を説明したり、物件に瑕疵が見つかった場合に責任をとったりしなければなりません。
しかし、新中間省略登記では、Yさん・Zさん間に売買契約が発生しないこともあります。「買主の地位譲渡」の手法では、Yさん・Zさん間の契約は売買契約ではなく譲渡契約です。そのため宅建業法上の重要事項説明や契約不適合責任を負う必要がありません。買主である一般消費者のZさんが不利益を被る可能性がある点には、注意が必要です。
新中間省略登記では、Xさん・Yさん間、Yさん・Zさん間の取引を同時に行なわなければ、所有権が移転されないリスクがあります。そのため、新中間省略登記ではXさん・Yさん間の売買契約と、YさんZさん間の契約を成立させる必要があります。Xさん・Yさん間、Yさん・Zさん間の決済が同日でない場合は、先にXさん・Yさん間の決済を完了させることになるでしょう。
つまり、Yさんにとっては、Yさん・Zさん間の決済が行われないままXさんに代金を支払うことになります。万が一Xさんに悪意があれば代金だけ受け取って、Zさん以外の第三者に売却してしまうかもしれません。このようなリスクを防ぐためには、Xさん・Yさん間、Yさん・Zさん間の決済を同時に成立させる必要があるでしょう。
登記簿には、所有権移転の経緯を正しく反映しなければなりません。そのため一部の例外を除いて、中間省略登記は認められていません。ただし、次のようなケースでは行ってもよいとされています。
それぞれの内容について紹介していきます。
数次相続とは被相続人の相続のあと、相続登記や遺産分割協議などの手続きを完了する前に相続人が亡くなってしまうことをいいます。数次相続が発生した際、中間の相続が単独相続(相続人が1人のみ)であれば、中間省略が認められています。
具体例を見ていきましょう。たとえばXさんが亡くなり、唯一の相続人であるお子さんのYさんに相続登記をする前にYさんも亡くなったとします。Yさんの相続人がお子さんのZさんだった場合は、XさんからZさんへの直接登記が可能です。
しかし、中間の相続が単独相続でない場合、中間省略は認められません。先ほどの例でXさんの相続人にYさんのほか、Dさんがいた場合を考えてみましょう。この場合は所有権がYさんだけでなく、Dさんも経由している可能性があります。そのためXさんからZさんへの中間省略登記はできません。
謄本には所有者の氏名・住所が記載されるため、氏名や住所が変更された場合は変更する必要があります。しかし、登記の住所変更を失念してしまっても実務的にはあまり影響がないため、住所変更登記を行っていない場合もあるでしょう。中には変更登記をしないまま、複数回氏名や住所が変更していることもあります。
このような場合にも、中間を省略した登記手法が認められます。引っ越した住所や変更した氏名をすべて登記する必要はなく、登記上の住所から現在の住所に省略して登記して問題ありません。このケースでは変更したのは氏名・住所だけで、所有権移転は行われていないため中間省略登記が認められていると言えるでしょう。
裁判で判決が出た場合も、中間省略登記が行えます。本来登記は権利変動の過程を正確に記載するべきですが、確定した判決の主文にもとづいた登記申請であれば差支えないと判断された事例がありました。
ほかにも確定した判決だけでなく、判決理由の中に次の項目の記載がある場合は中間省略できるとされています。
中間省略することを認めているのであれば、主文や理由中に関係ないという考え方から取扱が認められています。
中間省略登記を用いての取引は、慎重に行う必要があります。中間省略登記を行うケースで一番多いパターンが、Xさん=一般の売主、Y社=不動産会社、Zさん=一般の買主でしょう。
このようなケースでは不動産会社のY社が、Xさんに中間省略登記を持ちかけ、不当な利益を確保しようとしている場合も考えられます。中間省略登記を活用することで、通常の取引に比べるとY社の利益を極大化できます。
具体例を見ていきましょう。たとえば売主のXさんが土地を2,000万円でY社に売却し、Y社は2,300万円でZさんに売却して中間省略登記を行ったとします。この場合はY社には登録免許税や不動産取得税がかからないため、差額の300万円がY社の利益となります。
Zさんは土地を2,300万円で購入しているため、単純に考えればXさんは2,300万円で土地を売却できた可能性があると言えるでしょう。XさんとZさんが通常の取引で売買を行ったとすると、Y社はXさんZさん間の契約の仲介という立場になります。仲介手数料の相場は約3.3%であるため、この場合のY社の利益は約76万円です。
Xさんの売却価格 | Y社の利益 | Zさんの支払額 | |
---|---|---|---|
中間省略登記 | 2,000万円 | 300万円 | 2,300万円 |
通常の取引 | 2,300万円 | 76万円 | 2,300万円 |
上記のように買主Zさんの払う金額が同じであるにもかかわらず、Xさんの受取金額は中間省略登記のほうが少ないです。その分Y社の利益が増えていることがわかるでしょう。上記の中間省略登記の計算は、Xさん・Y社・YさんZ間も仲介手数料等の細かい経費は折り込んでい
ないため、実際の計算とは違いますので、注意してください。
ただ、Xさんからすると、Y社がいなければZさんに売却できなかった可能性もあります。しかし、中間省略を行うことで、不動産会社であるY社の利益を確保しやすいことも事実です。中間省略登記を行う際には、慎重に行うようにしましょう。
中間省略登記とは、名前の通り中間の登記を省略する手法をいいます。登記を省略することで登録免許税や、不動産取得税がかからないというメリットがあります。そのため中間省略登記は節税を目的として行われることが多いですが、所有権の移転経緯を正しく表していません。
そのため中間省略登記は、「第三者のためにする契約」や「買主の地位譲渡」のほか、一定の条件を満たす場合にしか認められていません。また中間省略登記には売主の入金まで時間がかかったり、同時決済でなければ所有権が移転されないリスクがあったりします。
中間省略登記を行うケースでは、間に不動産会社が入るパターンが多く一般の売主と買主が不利益を被ってしまう可能性も否定できません。
不動産売買において、中間省略登記を行う際には慎重に検討する必要があります。とくに間に入る不動産会社からの提案の場合は、売買価格に影響を及ぼす可能性があるため、契約内容に不審な点がないか留意するようにしましょう。
監修者
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、不動産コンサルティングマスター
不動産・建築業界歴20年。アパートの建築請負営業、それに係る土地仲介業務、仕入営業に携わっている。自身でも不動産経営を行っており顧客目線で業務に取り組んでいる。
不動産投資家Kとその仲間たちでは、「土地を相続する予定だけど、どうすれば良いか検討している」「管理が大変なので、土地を売却したいと思っている」など、土地・建物のさまざまなご相談を承っております。
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