2026年度税制改正大綱で、不動産オーナーが押さえたい3つの変化

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2026年度(令和8年度)税制改正大綱では、基礎控除や年収の壁など、家計や給与まわりの制度変更が注目を集めました。一方で、NISAの制度改正の方向性など、資産形成に関わる論点も含まれています。不動産分野でも、賃貸用不動産の相続税評価の見直し、不動産関連商品をめぐる動き、住宅・不動産周辺税制の延長など、不動産オーナーにとって見逃せない内容が盛り込まれました。

不動産投資は、目先の利回りや税負担だけで判断できるものではありません。物件取得時の資金計画、保有中の収益性、将来の出口戦略、さらには相続や承継まで視野に入れ、長い時間軸で考える必要があります。税制改正も、「今年の税金がいくら変わるか」だけでなく、「これまでの考え方のうち、何が通じにくくなるのか」という視点で捉えるほうが、実務には役立ちます。

本稿では、2026年度税制改正大綱のうち、不動産オーナーに関係の深い改正点を整理します。

参考:財務省 「令和8年度税制改正の大綱」

目次

変化1:賃貸用不動産の相続税評価は、「短期対策」の是正が進む

5年ルールで、相続直前の取得・新築による評価圧縮が見直される

不動産オーナーにとって、最も注目度が高い論点のひとつが、賃貸用不動産の相続税評価の見直しです。大綱では、貸付用不動産について、市場価格と相続税評価額の乖離や取引実態を踏まえた是正の方向性が示されています。「課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得または新築した一定の貸付用不動産」について、課税時期における通常の取引価額をベースに評価する考え方が示されており、適用時期は令和9年1月1日以後の相続等とされています。

押さえたいのは、細かな要件よりも方向性です。相続直前の取得や新築を前提に、短期間で評価差によって税負担の軽減を目指す発想が対象になった、という点です。不動産は、相続対策の一環として「現金より評価を下げやすい資産」として語られることが少なくありません。今回、焦点になっているのは、そうした考え方のうち、短期の評価圧縮です。

「不動産そのもの」ではなく「短期対策」が対象

読み違えたくないのは、「不動産を持つこと自体が不利になる」という話ではないことです。家賃収入を生む資産としての意味や、長期保有による資産形成の役割まで否定されたわけではありません。対象の中心にあるのは、取得後間もない貸付用不動産による短期の評価圧縮策です。

つまり、問われているのは、その物件を保有する合理性を説明できるかどうかです。どの程度の保有期間を想定しているのか、相続人が引き継ぎやすい資産なのか、収益資産として持つ意味があるのか。今後は、評価差そのものより、保有の妥当性のほうが重視されやすくなるでしょう。

変化2:不動産関連商品も、「相続対策になるか」だけでは選びにくくなる

不動産関連商品の相続税評価にも変化が

対象は、現物不動産だけにとどまりません。大綱では、不動産小口化商品や信託型の商品など、貸付用不動産を組み込んだ商品(不動産特定共同事業契約に基づく商品や、一定の信託受益権型商品など)についても、取得時期にかかわらず、通常の取引価額を基準に評価する方向が示されています。現物で持つか、商品で持つかという違いだけで、相続税評価の有利不利を語りにくくなっているわけです。

不動産小口化商品や信託型の商品に関心のある方ほど、見落とせない論点です。従来は、「相続対策として活用しやすいか」「評価圧縮効果は高いか」という視点で選ばれる商品もありました。しかし、制度の方向性を踏まえると、不動産関連商品であっても、相続税評価で有利になるとは限りません。

「節税になるか」より「保有する理由があるか」が問われている

重要になるのは、現物不動産であれ不動産関連商品であれ、保有する意味です。税制面のメリットが縮小してもなお保有する価値があるのか。収益性はあるのか。換金しやすいのか。相続人が内容を理解しやすく、引き継ぎやすいのか。今後は、現物不動産でも不動産関連商品でも、同じ観点が判断材料になります。

不動産投資の本質は、節税テクニックだけに限りません。安定したキャッシュフローが見込めるか、借入返済に無理がないか、空室や修繕のリスクを吸収できるか、将来の売却や承継まで現実的な見通しが立つか。そうした要素がそろって初めて、投資としての妥当性が見えてきます。「相続対策になるかどうか」だけで不動産や不動産関連商品を選ぶ考え方は、従来ほど通じにくくなっています。

変化3:実需支援は続く一方、貸付用不動産は「評価の適正化」が軸になる

住宅取得を支える税制は、引き続き維持・調整が進む方向

2026年度税制改正大綱は、厳格化一辺倒ではありません。大綱では、「住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除」、いわゆる住宅ローン控除についても、適用期限(令和7年12月31日)を令和12年12月31日まで5年延長するとともに、一定の措置を講じる方向が示されています。ただし、単なる維持や拡充というわけではありません。省エネ性能の高い既存住宅への支援拡充がある一方で、対象住宅の線引きや要件には調整も加えられており、実需支援も選別色を強めています。

大綱全体を見ても、「不動産関連はすべて締め付け」あるいは「住宅分野は一律に追い風」といった単純な話ではありません。家計や実需を支える措置は続けつつ、貸付用不動産の評価については適正化が進められています。こうした流れからは、実需を下支えしながら、資産評価のあり方をより厳密に捉え直そうとする姿勢がうかがえます。

実需向け税制と賃貸用不動産の扱いは、別の論点

不動産オーナーが切り分けて考えたいのは、住宅ローン控除と賃貸用不動産では、そもそも前提が異なるという点です。住宅ローン控除は基本的に自ら居住する住宅が前提であり、賃貸経営用の物件にそのまま当てはまる制度ではありません。

大綱を読むうえでは、実需を支える措置と、貸付用不動産の評価を適正化する流れを分けて受け止める必要があります。住まいを支える政策と、資産評価の公平性を整える政策は別の軸で動いているからです。それぞれの制度が、どのような対象を前提にしているのかを見極めることが重要です。

判断軸は、短期の損得から保有の妥当性へ移りつつある

ここまで見てきた3つの変化は、それぞれ別の論点のように見えて、実は共通する流れを持っています。賃貸用不動産の相続税評価では、相続直前の取得や新築による短期的な評価差狙いが是正され、不動産関連商品についても、「相続対策になるかどうか」だけでは評価しにくくなりました。住宅・不動産周辺税制では実需支援が続く一方で、貸付用不動産については評価の適正化が進められています。

見えてくるのは、税制改正大綱が、単なる増税・減税ではなく、不動産の保有の妥当性を問い直しているということです。重要なのは、制度変更のたびに目先の有利・不利だけで動くことではありません。収益性、保有期間、借入とのバランス、出口戦略、承継のしやすさまで含めて、長く保有できる形になっているかを見直すことが求められています。

相続を見据える場合は、評価額だけでなく、管理のしやすさ、収益の継続性、相続人の承継しやすさも含めて考える必要があります。一連の改正は、税制テクニック中心の発想から、不動産そのものの質や保有の妥当性を重視する方向へと、判断軸が移りつつあることを示しています。

「まとめ」と次回コラムの案内

2026年度税制改正大綱を不動産オーナーの視点で見ると、賃貸用不動産の相続税評価では短期の評価圧縮が是正され、不動産関連商品も「相続対策になるか」だけでは選びにくくなりました。一方、実需の住宅取得支援は、調整を伴いながら引き続き維持・延長される方向であり、大綱全体を見ても「不動産全体が一律に厳しくなる」という単純な話ではありません。

制度変更を追うだけでなく、保有する不動産や不動産関連商品が短期の評価差狙いを前提にしたものになっていないか、収益性や承継まで含めて無理のない設計になっているかを確認しておきたいところです。

なかでも、「賃貸用不動産の相続税評価額における5年ルール」は実務への影響が大きい論点です。次回は、どのようなオーナーに影響しやすいのか、確認すべきポイントと実務上の注意点について解説します。

執筆者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、宅地建物取引士

水野 崇

水野総合FP事務所代表。東京理科大学理学部卒業。相談、執筆・監修、講演・講師、取材協力、メディア出演など多方面で活躍する独立系ファイナンシャルプランナー。テレビ朝日「グッド!モーニング」、BSテレ東「マネーのまなび」などに出演。NHK土曜ドラマ「3000万」の家計監修を担当。学校法人専門学校東京ビジネス・アカデミー非常勤講師。一般社団法人相続・事業承継コンサルティング協会会員。

<保有資格>1級ファイナンシャル・プランニング技能士|CFP認定者|宅地建物取引士|日本証券アナリスト協会検定会員補|証券外務員1種 ほか

【URL】https://mizunotakashi.com/

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