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公務員のための不動産投資入門! 違反にならないポイントやメリット

公務員のための不動産投資入門! 違反にならないポイントやメリット

副収入を得る方法の1つである「不動産投資」は、公務員の「副業禁止の原則」から違反になると考えている人は多いかもしれません。 しかし、公務員でも一定の条件を満たせば違反にならずに、不動産に投資することは可能です。

ここでは公務員が違反にならずに不動産投資を始めるポイントや、公務員ならではの代表的なメリットを解説します。

購入検討チェックリスト

ポイント

  1. 公務員は不動産投資に必要な融資を、より有利な条件で利用できる可能性がある
  2. 公務員による不動産投資は、一定の条件を満たしていれば違法ではない
  3. 不動産投資には経営や不動産流通、確定申告に関する知識が必要なため、始める前に十分備えておくことが大切
目次

公務員に不動産投資が向いている理由

不動産投資入門1

不動産は生前贈与や相続によって得ることもありますが、そうでない場合は適切な不動産を探して購入するのが一般的です。この段階の資金調達において、公務員は「向いている」といえます。 ここでは、不動産投資に必要な資金調達面で、公務員が向いている理由をみていきましょう。

信用力が高く融資が通りやすい

理由の1つは、 公務員の社会における信用力の高さによる、融資の審査に通りやすさです。

不動産投資における資金調達には、金融機関からの融資を利用するのが一般的です。この場合の融資は、自分が住む住宅を購入するために利用するいわゆる「住宅ローン」ではありません。

不動産投資は、購入した不動産を他の人と契約して賃貸するという「事業」です。そのため企業や個人事業主への融資と同様、融資金額や利率、返済期間などは住宅ローンよりも厳しく審査された上で決まります。 審査される項目は申込者の年収や勤務先、貯蓄、個人の属性などです。このとき公務員は信用力の高さ、安定した収入見込みから、他の職業より通りやすいといわれています。

融資の条件が有利になる

信用力が高く、 安定した収入が見込める公務員は、金融機関にとって「返済できなくなるリスクが低い」比較的安全な融資先であるため、より有利な条件を引き出しやすいのも大きなメリットです。より高額な融資や、低い金利での融資を受けられる可能性があります。

信用力の高さについては、公務員であれば職種は大きく影響しません。会社員や個人事業主であれば、業種や職種も融資条件に影響することもありますが、公務員なら安定した収入が見込めるため、どの職種でも同じように有利な条件を引き出せる可能性があります。

公務員が不動産投資を行うことは違法ではない

不動産投資入門2

公務員が不動産投資を行うことは、違法ではありません。ただし公務員は次の法律によって定められた義務を遵守する必要があります。

  1. 信用を失うような行為を禁じる(国家公務員法第99条、地方公務員法第33条)
  2. 公務員は全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではない(日本国憲法第15条)
  3. 営利企業や個人事業を自ら営んではならない(国家公務員法第第103条、地方公務員法第38条)

参考:e-GOV 「国家公務員法」
e-GOV 「地方公務員法」
e-GOV 「日本国憲法」

ただし、人事院規則14-8(https://www.jinji.go.jp/seisaku/kisoku/tsuuchi/14_fukumu/1403000_S31shokushoku599.html)には、不動産賃貸経営が経営の自営にあたるとされる規模が定義されています。つまり、この定義に達しない規模であれば、公務員でも不動産投資は可能です。 ここでは公務員が可能な、不動産投資の規模や要件について解説します。

公務員が不動産投資を行う条件

人事院規則14-8によると、公務員が不動産投資をできる規模や要件は次の3つです。

  1. 不動産投資の対象となる不動産が5棟10室を超えない
  2. 年間の家賃収入が500万円未満
  3. 公務員が自身で管理業務を行わない

これらはどれも、 不動産投資が公務員の本業の妨げにならないこと、営利事業の経営に当たらないことの基準とされています。1つずつ詳しくみていきましょう。

5棟10室規模を超えない

1つめの条件は、不動産投資を行う不動産の規模が、5棟または10室を超えないことです。 この「5棟10室」とは、所得税を算出するための区分である「不動産所得」が、事業規模であるかどうかを区別するための基準でもあります。

これを定められているのが、国税庁による「所得税基本通達26-9」(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/02.htm )です。 「5棟10室」が示しているのは、戸建住宅のように独立した家屋5棟、もしくは貸し間やアパートのように別々に賃貸できる部屋数10室です。

この基準には駐車場の収容台数や、貸地の数も次のように示されています。

  1. 家屋だけ :5棟
  2. 部屋だけ :10室
  3. 駐車場だけ:50台
  4. 貸地だけ :10筆

そのため公務員ができる不動産投資の規模は、家屋だけなら4棟まで、部屋だけなら9室まで、駐車場だけなら49台、貸地だけなら9筆までです。この規模を超えると不動産投資は「事業」とみなされるため、国家公務員法または地方公務員法違反となってしまいます。

他にも「5棟10室」規模を超えれば個人の確定申告に必要な会計手続きも変わってくるため注意が必要です。より詳しく知りたい場合は、下記記事もご参考ください。

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家賃収入は年間500万円未満

2つめは年間の家賃収入が500万円を超えないことです。これは たとえ会計上のミスであっても、違反となり重いペナルティを課される可能性があります。 年間500万円は、月単位で換算すると41万6,666円です。5棟10室規模を超えない範囲で最大限事業を拡大したとしても、各物件あたりの賃料は比較的低くなり拡大のメリットはあまり感じられないかもしれません。

  賃貸件数 1カ月あたりの賃料平均
家屋だけ 4棟 104,166円/1棟
部屋だけ 9室 46,296円/1室
駐車場だけ 49台 8,503円/1台
貸地だけ 9筆 46,296円/1筆

不動産投資では、かかる費用と収入のバランスが重要です。とくに公務員が行う場合は、家賃を高く設定すれば年間の家賃収入が500万円を超え違反となり、安すぎると経営が苦しくなります。投資する不動産は、収支のバランスがとれた物件の中から選ぶ必要があるでしょう。

自分で管理業務を行わない

3つめは不動産投資を行うにあたり、公務員が自身で管理業務を行わないことです。管理業務によって公務員は、自身の本業に支障をきたす可能性があります。この可能性を排除するための要件といえるでしょう。

不動産投資において管理業務は、入居者の募集や告知、家賃の集金や督促、建物のチェックや修繕の手配など多岐にわたるため、重要かつ手間暇のかかる業務です。公務員でなくても一人ですべてをきっちりこなすのは難しいでしょう。

多くの場合、ノウハウを持つ不動産管理専門の業者に委託するのが一般的です。 業者に委託すると管理費が発生するため、利回りは低下しますが、違反して処分を受けてしまうことには代えられません。信頼できる、順当な管理費で委託できる業者に任せるほうが賢明といえるでしょう。

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条件外でも不動産投資が可能な方法

定められている3つの条件にそぐわない状況であっても、公務員の立場と関係なく不動産投資を行わざるを得ない状況になることがあります。

たとえば生前贈与や相続で不動産を取得することになった場合や、さらにその不動産が10室以上の賃貸アパートや5棟以上の貸家の場合もあるかもしれません。借主からは現状の賃貸契約を継続するよう求められることもあるでしょう。

そのようなやむを得ない場合は、公務員でも申請すれば認められる可能性があります。 申請に必要な書類は地域によって異なることもありますが、一般には次のとおりです。

  1. 自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)
  2. 不動産管理の委託契約書
  3. 物件概要書
  4. 賃貸条件一覧表

公務員の副業を禁止する法律

このように、要件を満たすか、承認されれば、公務員でも不動産投資は行えます。しかし、公務員は原則として、法律によって副業が禁止されていることは十分に認識しておく必要があります。なかでも次から示す3つの条文は、遵守が求められます。

国家公務員法 第103条

「私企業からの隔離」として国家公務員がまもるべき、職員の「兼業」について定めている条項です。条文は「営利を目的とする企業(私企業)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない」と記載され、以降承認のしくみや手続きなどが続きます。

参考:e-GOV 「国家公務員法」

国家公務員法 第104条

この条項では「他の事業又は事務の関与制限」として、報酬が得られる営利企業の役員や自営業以外の兼業には、内閣総理大臣および管轄庁の長の許可が必要と定められています。

参考:e-GOV 「国家公務員法」

地方公務員法 第38条

「営利企業への従事等の制限」として、地方公務員が人事委員会または地方公共団体の規則が定める兼業をしてはならないと定めています。制限されているのは、営利を目的とする私企業を経営したり、役員などの地位を兼ねたりして、事業や事務に従事することです。

参考:e-GOV 「地方公務員法」

公務員が不動産投資を始める前に知っておきたい注意点

不動産投資入門3

不動産投資は、一定の費用をかけ、不動産を維持・管理し借主に賃貸して収入を得るという1つの「事業」です。バランスよく経営して利益を得るには、収入と費用だけでなく手続きもしっかり把握しておく必要があります。 公務員による不動産投資における注意点をみていきましょう。

公務員は高額物件を勧められやすい

公務員であれば、金融機関による審査に通りやすく、より低い金利などの有利な条件で融資を利用できる可能性があります。そのため高額な物件を勧められやすい場合があることに注意が必要です。

不動産業者はより高額な物件の売買が成立すればその分高い手数料が得られ、金融機関も信用力の高い高額な融資ほど高い利息が得られます。

しかし、高額な不動産物件ならすべて賃貸で高い利回りが得られるとは限りません。場合によっては高額なだけに売れ残った物件である可能性もあります。一見利回りの良さそうな、リスクの高い物件かもしれません。

不動産投資のための不動産は、物件価格だけでなく周辺環境や立地、築年数を含めた建物や設備の状態などさまざまな要素をもとに選ぶ必要があります。そのためには、うまく経営し続けるためのノウハウや不動産の流通、融資のしくみについても正しく知ることが大切です。

公務員は有利な融資が受けやすいからといって安易に勧められるまま高額な物件に手を出すのではなく、無用なリスクを避け、業者の勧めを冷静に判断できるだけの知識を身につけることも求められます。

規定を超えると懲戒処分の対象になる

公務員でも不動産投資が行えるとはいえ、あくまでも「規定以内」でなくてはならないことは常に意識しておく必要があるでしょう。規定を超えれば、懲戒処分の対象となってしまう可能性があります。

お伝えした通り公務員は有利な条件での融資が受けやすいため、想定している以上の高額な物件を勧められることはあり得ます。高額な物件であれば、たしかに高額な家賃収入が得られる可能性はあります。

しかし、公務員である限り、不動産投資で得られる年間の家賃収入は500万円までです。 年間の家賃収入が500万円以内に収まり、かつ順調に経営が成り立つよう家賃を調整するなど、そもそも規定内の経営が成り立つ物件を選ぶ必要があるでしょう。

確定申告が必要になる

不動産投資を行えば、利益が出る場合でも損失が発生する場合でも、 毎年2月16日から3月15日までの間に、必ず確定申告しなくてはなりません

確定申告とは、1年間で得た収入に対して収めるべき所得税を計算し、申告するものです。 確定申告では申告書の他、1年間の事業に関する取引の証明書と、取引の記録帳簿をまとめて提出します。申告した所得税は確定申告の後、金融機関などで納付しましょう。

また、確定申告によって決まる住民税も、納付書は5月または6月に届いたら期限内に納付します。 確定申告は青色申告と白色申告に分けられますが、それぞれのメリットとデメリットは次のとおりです。

  青色申告 白色申告
メリット ・最大65万円の所得控除ができる(所得税を抑えられる)※事業的規模でない場合は最大10万円
・赤字を3年間繰越でき、公務員として得た給与と損益通算できる
・30万円未満の固定資産購入費用を経費として一括計上できる
など
・保存や提出の必要な書類が少ない
デメリット ・事前の申請が必要 ・保存や提出の必要な書類が多い ・青色申告所得控除が受けられない
・赤字の繰越や損益通算ができない

青色申告を選べば、所得控除や赤字の繰越などによって所得税を抑えられますが、書類作成の手間が多く、事前の届出も必要です。一方、白色申告は書類作成の手間は比較的少なくてすみますが、所得税を抑える制度は利用できません。どちらにするかは事前によく検討し、慎重に選びましょう。

まとめ

投資利回り

公務員は、法律によって原則として副業を禁じられていますが、不動産投資であれば「事業」に区分されない「5棟10室」を超えない規模であること、年間家賃収入500万円未満であること、管理業務を自ら行わないことの3つを満たしていれば、不動産投資は可能です。

さらに公務員は、不動産購入の際に利用できる金融機関からの融資の審査には通りやすく、有利な条件で利用できるメリットもあります。その分、利回りのよくない高額物件を勧められる可能性もあるため、注意が必要です。 また、不動産投資は、確定申告して所得税を届け出なくてはなりません。かかる手間も含めてどのように経営するか、慎重に考えることが大切です。

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監修者

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

中川 祐一

現在、不動産会社で建築請負営業と土地・収益物件の仕入れを中心に担当している。これまで約20年間培ってきた、現場に密着した営業経験と建築知識、不動産知識を活かして業務に携わっている。

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