所有している土地をアパートに活用してはどうかと考えるとき、土地がアパートに必要な広さがあるかどうかは気になります。また建てたとしても、アパートをうまく経営していくには向いている条件や必要な費用もあるでしょう。アパート経営が1つの事業であることを考えれば、情報収集と十分な検討は必須です。 そこでここでは、アパート経営に必要な土地の広さと環境、適しているとされる特徴、アパート以外の土地活用の例を解説します。
ポイント
- アパート経営に活用する土地は、広さ60坪以上が目安
- 建てるアパートの構造や間取り、部屋数は法律によってさまざまな制限があるため自由に決められない場合がある
- アパート経営に適さない土地も工夫次第で活用できる可能性はある
アパート経営に必要な土地の広さ
アパートの建物は、戸数の少ないものから多いものまでさまざまです。しかし確保したい戸数と間取り、その場合の経営リスクを考えるとある程度絞られてきます。また建物に関する法的な制限もあるため、複数のプランを比較して検討することが重要です。
ここでは経営するアパートに必要な土地の広さの考え方と、建物の法的な制限、そして土地の広さ別の経営パターンを解説します。
アパート経営に必要な考え方「建ぺい率と容積率」
これから土地にアパートを建てるときは、建築基準法などさまざまな法律に照らし合わせて設計しなくてはなりません。なかでも「建ぺい率」と「容積率」は、建てるアパートの間取りや部屋数の検討に欠かせない要素です。
建ぺい率とは、ある土地の面積に対して建てられる建物の建築面積を表す指標です。たとえば 100坪の土地の建ぺい率が80%だった場合、建てられる建築面積は80坪までの建物に限られます。
建ぺい率は防災や隣人との関係、周囲の景観などの理由から定められた基準です。土地に対して余裕を持つよう規制して、入居者の暮らしを守る意味もあります。土地の建ぺい率を確認する方法はいくつかありますが、主には市区役所または町村役場の都市計画課で確認する方法です。
また容積率は、土地に建てられる建物に占める延べ床面積の割合です。延べ床面積とは、2階建てなら1階と2階の床面積の合計を示しています。容積率が定められた背景にあるのは人口制限です。
容積率の大きい建物、つまり狭い土地に階数の多い建物ばかりが建ってしまうと人口が集中して増えます。するとインフラ設備などが処理能力を超えてしまい、周囲を含む街全体にも悪影響を及ぼしかねません。容積率を規制することで人口を調整し、街全体がうまく機能するようにしているのです。
建ぺい率と容積率がわかれば、その土地にどのくらいの面積の建物が何階建てで建てられるかがわかります。これからアパートを建てるときも、確保できる部屋数を計算するために利用できる数値です。
必要な土地の広さの目安は60坪以上
これからアパートを建てて経営する場合、初期費用は少ないほど安定しやすいといえます。ただ初期費用を抑えると建物自体が小さくなり、確保できる戸数が少なくなってしまうため、効率よく経営するには初期費用を抑えつつ戸数を確保するバランスが重要です。
たとえば一般的なワンルームは7.56坪(25平方メートル)ですが、フロアあたり6部屋なら約45坪、10部屋なら約75坪の広さがなくてはなりません。間取りが2DK、3LDKと広くなればさらに広い土地が必要です。
さらに多くの場合、建ぺい率の制限を受けるため、土地のすべての面積を占める建物は建てられません。たとえば一般的なワンルーム10部屋の約75坪の建物を建てたい場合、建ぺい率80%の土地であれば約95坪以上の広さである必要があります。
例として建ぺい率80%の土地にすべてワンルームの2階建て(容積率200%)アパートについて、土地の広さごとに初期費用と確保できる戸数をまとめたのが次の表です。 国土交通省 建築着工統計調査(2022年)によると、木造共同住宅(貸家)の建築費の坪単価は46万円~138万円、全国平均は56万円でした。ここでは、東京都の平均66万円で計算してみます。
土地の広さ | 建物の面積の上限 | ワンルーム(7.56坪)の戸数上限 | 建築費用相場 (木造坪単価66万円想定) |
---|---|---|---|
30坪 | 24坪 | 6部屋 | 約4,356万円 |
60坪 | 48坪 | 12部屋 | 約8,712万円 |
120坪 | 96坪 | 24部屋 | 約1億7,424万円 |
もしエリアのニーズから、ファミリー向けの2DK以上の間取りにすると部屋数はさらに減り、部屋数が少ないアパートは空室リスクも高まります。60坪以上になれば、部屋数とのバランスを見ながら より広い間取り設計も可能です。初期費用はかかるものの、やはりアパートには60坪以上の土地が目安といえるでしょう。
参考:国土交通省 「建築着工統計調査」
土地の広さ別 アパート規模シミュレーション
土地の広さごとの建築費用相場は、それぞれ次のような計算に基づいています。
土地の広さ | 建設費 (木造坪単価66万円の場合) | 諸経費(建設費の10%) | 合計 |
---|---|---|---|
30坪 | 3,960万円 | 396万円 | 約4,356 万円 |
60坪 | 7,920万円 | 792万円 | 約8,712 万円 |
120坪 | 1億5,840万円 | 1,584万円 | 約1億7,424万円 |
数値はあくまで目安です。アパートが鉄筋コンクリート造になれば建設費の坪単価は上がり、建設時期や周囲の状況によっては諸経費がかさむことも考えられます。とはいえ、大切なのはどのような計算方法によって求めるかを知ることです。実際の金額を調べるときは、できるだけ詳細に具体的に把握する必要があるでしょう。
また収入とリスクによるダメージの大きさの把握も重要です。1部屋あたりの家賃を7万円と仮定すると、得られる収入はおよそ次の通りとなります。ここではさらに、空室が1戸発生した場合の収入減が、収入に与える影響の割合も示しました。
土地の広さ | ワンルームの戸数上限 | 1戸家賃7万円の場合の月額収入 | 空室1戸の月額収入減の割合 |
---|---|---|---|
30坪 | 6部屋 | 42万円 | ▲17% |
60坪 | 12部屋 | 84万円 | ▲8% |
120坪 | 24部屋 | 168万円 | ▲4% |
戸数が少ないアパートの空室リスクの大きさがわかるでしょう。アパートの戸数にかかわらず、空室はいつ発生しても不思議ではないリスクです。特に戸数が少ない場合、空室が発生すると経営に大きく影響します。空室リスク17%は大きな負担となるでしょう。リスクはできるだけ低い方が望ましいといえますが、せめて10%以下を目指したいところです。それを考えるとやはり60坪以上の土地が向いているといえます。
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アパート経営に適した土地の特徴
アパート経営に必要な広さは、あくまで適した土地の特徴の1つです。他にも法的な基準を満たす必要があり、建物がきちんと機能するような整地や賃貸物件としてのニーズ、不動産としての価値など判断する基準はあります。あくまで公平かつ客観的な判断が必要です。
ここではさまざまな、アパート経営に適した土地の特徴を解説します。とくに賃料に影響する「賃料査定」については、次の記事で詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてください。
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接道義務を満たしている
土地に建物を建てるとき、建築基準法第43条に定められた接道義務を満たしていなくてはなりません。接道義務とは、建物を建てる土地が建築基準法の定める道路に2メートル以上接していなくてはならないという決まりです。奥まった土地でも接道義務を満たしていればアパートは建てられます。
接道義務は、「緊急車両などの通行を確保するため」また「災害時の避難路を確保するため」といった万が一に備えた決まりです。そのため道路に接する間口が2メートルに達していない土地や、そもそも道路に接していない土地にはアパートを建てられません。
なかには古い空き家が建っている土地を相続したが、接道義務を満たしていないため取り壊すと建物が建てられなくなる場合もあるようです。これから建物を建てるときは、早めに確認する必要があります。
参考:e-GOV 「建築基準法」
東西に長く整形された土地
アパートを建てる土地は、東西に間口を長く整形された土地が適しているといわれます。これは主に次の2つの理由があるためです。
- バルコニーが南向きまたは西向きのため日当たりがよい
- アパートの各戸は一般的に長方形のため、土地が正方形だと効率よく設計しづらく、同じ坪数でも部屋数が確保しにくい
とはいえ理想的ではなくても、工夫次第で魅力的なアパートを建てる可能性はあります。もし思いつかないときは、専門家である不動産会社などに相談するのも良い でしょう。
最寄駅から徒歩10分圏内にある
最寄駅から徒歩10分圏内にあるアパートは、通勤・通学などにも非常に便利な場所といえるでしょう。徒歩10分は、距離にするとおよそ800メートルで、できればより近い5分圏内が理想です。
ただ10分圏外でも、最寄駅が複数の路線が利用できれば、10分圏内と同程度の便利さと受け取られる場合もあります。また駅の駐輪施設があれば、アパートに屋根付きの駐輪場を設置して自転車の利用を促せば、かえって「駅に近い」と感じてもらえるかもしれません。
スーパーや病院などの生活利便施設が近い
入居者はアパートで毎日生活するため、生活に必要なスーパーや病院、保育園といった施設に近い場所が選ばれやすいといえます。他にも最寄駅とアパートの間にコンビニエンスストアやコンランドリー、銀行、飲食店などの生活利便施設があれば、アパートにより高い価値があると感じられるでしょう。
また入居者に単身世帯を対象とする場合は、夜遅い時間まで営業している施設の多さも重要です。ファミリー世帯が対象なら、小学校や中学校、公園、公民館、さまざまな手続きに欠かせない官公庁などが近いと、移動時間を節約できるため家事や休養の時間も取りやすくなります。
地価の値上がりが見込まれる
アパート経営は5年や10年単位で続けられる息の長い事業です。そのため現在だけのニーズだけでなく、10年後、20年後のニーズも調査しできるだけ正確に把握しておく必要があります。たとえば新しいターミナル駅や大型商業施設が建設される、あるいは再開発によって地価が値上がりすると見込まれているエリアは、将来家賃収入のアップも可能でしょう。
アパート経営も事業の1つと考えれば、周囲の環境や状況の変化に合わせたニーズの把握は重要です。土地周辺の情報は常にチェックしましょう。
アパート経営に適さない土地の特徴
アパート経営に適した土地がある一方、適さない土地もあります。そのような土地には、アパートを建てられない場合や、建てられても経営できない場合もあるため事前に把握することが大切です。
ここではアパートに適さない土地の特徴とその理由を解説します。
敷地条件の悪い不整形地
不整形地とは、形状が長方形や正方形の土地以外をいいます。アパートは、各戸が長方形となっているため建物自体も長方形に納めるのが通常です。周囲に配置する駐車場や駐輪場、エントランスも長方形のため、たとえば円形の土地では建物の大きさが制限され、面積の割に部屋数が確保しにくくなります。
またいわゆる「うなぎの寝床」と呼ばれる極端に細長い形状の土地もアパートには向いていません。たとえアパート本体は建てられても、駐車場や駐輪場が作れなかったり、方角によっては日当たりが悪くなる可能性もあります。
このような不整形地を活用するには、アパート以外の方法が適しているかもしれません。アパートだけに固執せず、収益が期待できるその他の方法を柔軟に検討することをオススメします。
もちろん、不整形地でも敷地条件によってはアパートとして活用できる可能性はあります。
たとえば単身の社会人や学生だと、日当たりのよさを判断するのは朝の時間帯がほとんどです。そのため東側に窓を広く取って朝日が入るようにしておくと「日当たりがよい」と感じてもらえるでしょう。
また建物自体の面積は小さくなるものの、余った土地は共用の庭として整備したり、レンタサイクルポートを設置したりして入居者に合うような設備を導入すれば、アパートの価値を上げられるかもしれません。
とはいえ、不整形地の活用は整形地に比べ難しいのは事実でしょう。なかなか活用法を思いつかないときは、調べた情報を整理し、専門家である不動産会社に提示して相談するという方法もあります。
用途地域が適していない
一般的に土地は都市計画法によって区分けされ、それぞれに用途が定められています。この区分が用途地域です。用途地域はおおまかにいうと住居系、商業系、工業系に分けられます。
所有している土地の用途地域や環境に合わせて建物を計画していく必要があり、状況によってはアパートを含めた住宅以外の方法で活用すると良いでしょう。
その他の法令上の制限を確認する
用途地域を確認したら、次はその他の規制を確認します。用途地域以外にも、地区計画や高度地区など建物の高さの規制には注意が必要です。
アパートを建てるときは建ぺい率の他、容積率も建物の造りに大きく影響します。容積率は前面道路の幅員によって変わります。市区町村は用途地域ごとに容積率を定めていますが、前面道路の幅員を元にした計算結果と比較し、どちらか低い方の容積率が採用されるしくみです。
たとえば容積率200%の住居系用途地域の土地は、前面道路の幅員が4メートルだった場合、4メートルに定数0.4をかけ、さらに容積率をかけた160%が正式な容積率となります。この他にも土地には、道路傾斜制限や北側斜線制限などさまざまな規制があるため、これらすべての規制を加味しなければ、最終的なアパートの大きさは決められません。
またこの過程も、建築士に図面を引いてもらわなければわからないしくみです。このような作業をボリュームチェックといいますが、アパートを含めた土地活用の検討は、ボリュームチェックから始まるといえます。
周辺環境・治安が悪い
その他、入居者の確保が難しい特徴となると、周辺の環境や治安が悪いこともあげられます。
たとえば子どものいるファミリー世帯には、風俗店やパチンコ店、居酒屋、ファッションホテルが軒を連ねるような商業繁華性の高すぎる土地は、住む場所としてあまり適しているとはいえません。
深夜の煌々とした明かりや騒々しさは、安眠等の日常生活の障害になる可能性があります。このような環境の土地には、アパートを建てても安定的な入居需要は期待できないかもしれません。
やはりアパート経営以外の、環境に合わせたニーズの高い活用法に変える必要があるでしょう。
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アパート経営を検討するときのポイント
さまざまな情報収集と調査を経て、やはりアパート経営を始めると決めても、まだまだやるべきことはあります。建築にかかる資金の調達方法はもちろん、設計プランの立案やコストとのバランス、アパートの管理方法は、そのうち最低限の項目といえるでしょう。
これから長期にわたる事業を始めると考えれば、スタートまでの準備は重要です。ここではアパート経営を検討するときに、押さえておきたいポイントを6つ紹介します。
あらかじめ経営シミュレーションを行う
アパート経営を始めるにあたり、当面重要になるのは「うまく経営できる見込みがあるかどうか」です。とくにこれからアパートを建てるのであれば、建築可能な床面積からどの間取りの部屋を何戸設けるか、建築資金はどのように手配するか、借り入れるならどのように返済するかも計画に盛り込む必要があります。できるだけ具体的な経営のシミュレーションを行ってみましょう。
シミュレーションでは、家賃収入とかけられる費用のバランスが重要です。費用を金融機関等から借り入れる場合、融資額が十分に確保できず建物や設備に費用があまりかけられず、家賃設定を低くせざるを得なくなるかもしれません。かといってあまりグレードを上げすぎると、返済計画等の理由で家賃設定を高くせざるを得ない状況となり、入居者確保の敷居が高くなり、空室リスクが上がる可能性があります。
経営シミュレーションは、アパート経営のバランスをはかるためのツールです。重要なお金に関するシミュレーションのため、細部も大切ですが全体を見失わないよう注意し、短期と同じように長期にわたってバランスの良い経営ができるよう慎重に準備しましょう。
複数社にプランを依頼する
これからアパートを建てる段階なら、たてられるプランはそれこそ無数にあるといって良いでしょう。しかし「とりあえず」のつもりで個別の不動産会社に相談すると、そこで聞いたプランの印象が強く残ってしまい、その他の可能性をより広い視野で検討する柔軟性を失ってしまう可能性があります。そのためこの段階ではまず、ハウスメーカーや建築会社など複数の会社にアパート建築のプラン作成を依頼し、複数のプランを検討するのがオススメです。
インターネット上には、一度情報を入力すると自動的に複数の会社に送信され、見積もりを請求できるサイトがあります。これなら会社にアポを取ることも、わざわざ出向くこともありません。しばらくして届いたプランを1つずつ、比較・検討しましょう。すると費用だけでなくデザインや設計の違いが明確になり、納得いくプランが絞られていきます。
気になるプランがあれば、実際に現地を調査してもらい、より具体的なプランを示してもらいます。「これならいける」と確信できるプランが見つかるまで妥協せず、慎重に選ぶことが大切です。
賃貸併用住宅を検討する
アパート経営に向いている土地は60坪以上が目安です。60坪に満たない場合は部屋数が確保できず、バランスのよいローン返済プランが建てられないかもしれません。そのときは自宅にアパートが付属した「賃貸併用住宅」を検討してみましょう。
賃貸併用住宅とは、自宅の一部に賃貸用住宅を追加した建物です。住宅面積の50%以上が自宅であれば、住宅ローンが利用できます。賃貸部分の収入で住宅ローンを返済していくことも可能です。
子どもが小さな頃は賃貸として賃貸収入を得て、子どもが大きくなったら子どもの家族との2世帯住宅とするという、ライフステージに合わせた活用も検討できます。
戸建て賃貸を検討する
60坪に満たない土地活用として、アパートではなく戸建て住宅を賃貸にするという方法もあります。60坪前後の面積は、まさに一般的な戸建て住宅に適した広さです。建物も25坪ほどの小さなタイプなら2棟、50坪の庭・車庫付きなら1棟が十分建てられます。
25坪のタイプなら土地の容積率によっては3階建てにし、1階は玄関と駐車場のみ、2・3階を居住部分にして、屋上をバルコニーとするようなプランでも良いでしょう。
50坪のタイプはまさにファミリー世帯にふさわしい戸建て住宅として、転勤族のファミリーや外国人ファミリーの利用なども見込めます。戸建て賃貸は家賃を多少高めに設定しても、空室になりにくい傾向があり、より長期間の入居も期待できるでしょう。
他の土地活用も検討する
アパート経営は、ある程度の広さの土地活用としてかなり一般的といえます。しかし土地活用は他にもさまざまな種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあるため、今所有する土地により適した方法があるかもしれません。
大切なのは「土地を有効活用してより効率的に収益を得る」ことであって「アパート経営で」収益をあげることではないはずです。アパート経営だけにとらわれず、土地活用を柔軟にとらえ、他の活用方法も公平かつ客観的に検討しましょう。
土地を手っ取り早く活用するなら、空き地にラインを引いて駐車場にもできます。借り手さえいればすぐに収入を得ることも可能です。また土地を提供するだけでマージンを受け取りたいなら、大手駐車場管理会社に委託する方法もあります。
これから建物を建てるアパート経営には、高額な借入や運用する際のコストも必要ですが、活用法の中には、初期費用ゼロで毎月一定の収入が得られるものも少なくありません。土地をより有効に活用するため、アパート経営と並行して、他の土地活用も検討しましょう。
売却も検討する
土地はうまく活用すれば収入が得られますが、その分手間暇やコストもかかり、一定のリスクを負う必要もあります。このような手間暇やコストをかけたくない場合は、思い切って土地の売却も検討しましょう。
土地は売却すればまとまった資金が得られる上、以降固定資産税が発生しないというメリットがあります。
ただ売却にあたって仲介する不動産会社に手数料を支払い、ほかにも買主へ売り渡すまでの条件によっては費用が必要です。また売却で得た利益には譲渡所得税も発生し、確定申告する必要もあります。
また一度売却してしまえば、活用して場合のように定期的な収入は得られなくなります。売却を検討するなら、その前に収支を詳しく計算し、納得することが大切です。
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土地の広さに応じたアパート経営以外のプラン
たしかにアパート経営は土地活用の種類の中でもかなり一般的といえるでしょう。しかし広さが60坪に足りなかったり、不整形地だったりという理由でアパート経営が難しい場合もあります。そのようなときは、アパート経営以外の土地活用を検討しましょう。
土地活用の種類は多く、進め方によっては初期費用ゼロで、毎月一定の収入が見込めるものもあります。なかにはアパート経営より適した方法があるかもしれません。ここではアパート経営以外の土地活用を6つ紹介します。
駐車場
駐車場は、ごく簡単に始められる土地活用の1つです。大手駐車場管理会社に委託して一定のマージンを受け取るか、土地を賃貸して賃借料を受け取るかといった手法に違いはありますが、どちらもあまり高額な初期投資は必要ありません。さらに運営管理も委託できるため、総じて手軽に始められる土地活用といえるでしょう。
ただこの場合は、土地のある場所が重要です。駐車場ニーズのないエリアに作っても収益が見込めないため、委託契約も締結できない可能性があります。また収入は契約内容に沿って支払われるマージンまたは賃借料のみで、あまり大きな利益は見込めません。
商業施設
もし120坪以上の土地を活用するなら、用途地域や周辺環境によりますが、アパート経営ではなく商業施設にするという方法があります。立地や入居する店舗の種類にもよりますが、商業施設ならアパートよりも高い賃料を設定できるのはメリットです。場合によっては月数十万円の利益を得られます。
また取引相手が事業者のため、いったん契約を締結すれば短期間で撤退する可能性は低いといえるでしょう。つまり商業施設は長期間、空室リスクを避けながら安定的に高額の収入が得られる、効率の良い活用法です。
商業施設があれば、エリアの利便性は向上し、雇用の創出を含め地域の過疎化に歯止めをかけられる要因にもなり得ます。地域の活性化にもつながり、自身の収益にもなる、一石二鳥の土地活用法です。
オフィスビル
オフィスビル経営とは、所有する土地にビルを建設し、オフィスや商業施設のテナントとして貸し出し、家賃収入を得る土地活用法です。借り手がオフィスを運営する企業のため、ビルも駅や都市中心部に近い、一定以上の広さが求められます。
オフィスビル経営には、建設の際制限を受けにくい、高い収益が見込めるなどのメリットがある反面、初期費用が高額で、設備やメンテナンスにかかる費用が高く、空室リスクが高いことはデメリットです。
また景気に左右されやすい、周囲のオフィスビルとの競争が激しいといったリスクもあります。高い収益が期待できるがゆえに退去されたときのインパクトも大きいため、リスクへの十分な備えが大切です。
マンション
ここでいうマンションとは、土地にマンションを建てて賃貸として経営することを指します。同じ不動産賃貸とはいえ、木造アパートとは大きく異なり、初期投資費用も莫大です。また簡単に取り壊せない、修繕費が高額になりやすいのもデメリットといえます。
ただそれだけに建物は丈夫なため、一般に40年以上は保つといわれ、家賃相場も下がりにくいのはメリットです。十分な資金を借り入れられれば自己資金は少なくても始められる上、建物が丈夫なだけに長期にわたる収入が見込めます。
太陽光発電
土地の広さがあり、周囲が開けた日当たりのよい場所であれば太陽光発電にも活用できます。太陽光発電は住宅用と産業用の2つに分けられますが、土地活用で検討するのは、発電規模50キロワット以上の産業用です。
主な設備は太陽光パネルですが、これは定期的な点検が義務とされていますが一般に寿命が長く「メンテナンス不要」といわれています。そのためアパート経営に比べ修繕のリスクが低く、借り手がいないため空室リスクもありません。
ただ初期費用の負担が大きく、規模が大きいほど高額にのぼる傾向があり、回収までの期間が長くなることはデメリットともいえるでしょう。
借地事業
何も整備しない土地をそのまま賃貸できれば初期費用はほとんどかかりません。なかでも事業者との賃貸契約を、契約期間満了で確実に土地が戻ってくる「事業用定期借地」とすればさまざまなメリットがあります。
事業用定期借地とは、事業者に対して店舗や施設を建てるために期間を定めた賃貸契約です。借り手が事業者のため、賃料は未払いのリスクが少なく、契約期間は10年以上となるため長期にわたる収入が見込めます。また通常、事業者が建物や施設を建てますが、契約満了にあたり建物を買い取る義務はありません。貸し手は土地を貸しているだけであるため、契約期間中の管理の手間や費用がかからないこともメリットといえるでしょう。
ただ事業用なだけに、土地が恵まれた立地や周辺環境にある、特定のニーズがある場合にのみ有効な土地活用です。この方法を採用するには、土地を探している事業者の情報の集まる、不動産会社などの業者からの情報収集がカギとなるでしょう。
まとめ
土地を有効活用しようと考えるとき、「アパート経営」が候補に浮かぶことは比較的多いでしょう。アパートには、土地にある程度の広さが必要です。ただし、広さだけで判断するのは危険です。建物の大きさや構造、間取りも法律によって制限されるため、周辺環境やニーズも含め慎重に検討する必要があります。
アパート経営は、たしかにさまざまなメリットがある活用法ですが、自身の土地がアパート経営に適した広さや立地条件かなどを判断する際、不動産会社などのプロに相談してみることもおススメです。 さまざまな外部の知見も活用し、有益な土地の活用方法を検討しましょう。
監修者
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
中川 祐一
現在、不動産会社で建築請負営業と土地・収益物件の仕入れを中心に担当している。これまで約20年間培ってきた、現場に密着した営業経験と建築知識、不動産知識を活かして業務に携わっている。
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