メタバース内の不動産投資とは?メタバース投資のメリットと3つの注意点

カテゴリ
買う  売る 
タグ
不動産DX  不動産投資 

不動産投資家K

B!

世界中で話題となっているメタバースは、日本からもパナソニックやKDDI、任天堂といった世界的な企業もビジネス参入を表明しているインターネット上の仮想空間です。参入の背景には、技術の進化や個人の利用する電子端末の進化によるメタバース空間の発達により、新たなビジネスチャンスの存在が大きくあるといわれています。

そんなメタバース内で近年注目されているのが不動産投資です。ここではメタバースにおける不動産投資について、メリットとデメリット、注意点などの概要を解説します。

ポイント

  1. メタバースの認知度拡大とともに、メタバース内の不動産投資にも注目が高まっている
  2. メタバース内の不動産投資は、経年劣化や災害のリスクがないなどメリットがある
  3. 一方で、通常の不動産投資にない仮想空間や仮想通貨ならではのリスクを理解しておく必要がある
目次

そもそもメタバースとは

「メタバース」という言葉は、アメリカのSF小説で初めて登場しました。もともとの意味は「高次の別世界」という「meta(超えた)」と「universe(宇宙)」を組み合わせた造語です。現在での意味としては「インターネット上に作られた仮想空間」と言うとわかりやすいかもしれません。

現在メタバースは、次の条件を満たしている必要があるとされています。

  1. 現実世界と同じようにライブ性をもち、リアルタイムで感じることができる(ただし現在のところは嗅覚や味覚の制御は難しい)
  2. 個人やグループ、企業によって提供されるコンテンツで構成される
  3. 経済インフラが半永続的に機能している
  4. リアルタイムに現実世界の人とつながる

身近なメタバースとしては、ゲームの「あつまれどうぶつの森」「Minecraft(マインクラフト)」「Fortnite(フォートナイト)」などがあげられます。いずれも、先の条件を満たしているメタバースです。

ゲームの例からわかる通り、メタバースには多くのユーザーが同時に同じ場所に存在するため、豊かなコミュニケーションが生まれます。人が集まれば社会が形成され、ものやお金のやり取り、つまり経済活動が生まれるのです。

よりリアルに作り込まれたバーチャル渋谷のような自治体公認の街は、仮想空間でありながらすでに1つの街と言ってよいでしょう。そんなメタバースだからこそ、不動産が生まれ、不動産を運用する不動産投資が生まれても不思議ではありません。

メタバース内の不動産投資とは?

メタバースが多くのユーザーに認識されると、仮想空間に存在する土地や建物を「欲しい」と思う人が出てきます。では、仮想空間にあるものを所有するとはどういうことでしょうか。そこで登場するのが、「NFT(Non-Fungible-Token)」という技術です。

NFTは、偽造や複製ができない唯一無二のデジタルデータを意味します。デジタルデータはまったく同じものをいくつでもコピーできますが、NFTはコピーができません。NFTによってメタバースは、経済活動が安心して行える空間になりました。

NFTは現実世界でいえば、所有権を主張できる自動車や貴金属、土地などと同じものです。そのためメタバースでは、土地や建物を所有でき、それを売ることも買うことも、貸すことも借りることもできます。

メタバースにある不動産は、現実世界と同じようにユーザーが増えるほどニーズが高まり、価値は上がる傾向にあります。これからの投資先の一つとして注目を集めています。

メタバース内で不動産投資を行うメリット

不動産投資の原理上、たしかにメタバースと現実世界は似ていますが、異なる部分も多くそれぞれのメリットやデメリットも異なります。ここでは、メタバースでの不動産投資のメリットを紹介します。

経年劣化や災害のリスクがない

現実世界の不動産建物には、経年劣化というリスクがあります。致命的ではなくても時間と共に劣化し、いずれ修理や設備交換をしなくてはなりません。こうしたメンテナンスをしなければ、借り手や買い手がつかなくなってしまいます。

その点、デジタルデータであるメタバース内の不動産は、時間が経っても劣化することはありません。また災害によってダメージを受けることもないため、修理や修繕も不要です。現実世界の不動産投資にはつきもののリスクがないことは、メタバースにおける不動産投資のメリットといえます。

小口投資ができる

メタバースでの不動産は、土地や建物の一部だけをトークンとして売却できます。トークンとはブロックチェーン上で動作する暗号資産のことを指します。メタバースではこのトークンを購入することによって、不動産投資を全体への一括投資ではなく小口投資も可能です。

小口である分、投資で得られる利益は少額になります。逆にいえば、大きな損をするリスクが少ないため、初心者でも比較的安心して投資しやすいといえるでしょう。

管理コストなどがかからない

現実世界での不動産投資では、経年劣化や災害などに対する適切な管理が求められます。自身で管理を行う場合も、管理会社に委託する場合も、相応のコストがかかるため、得られる収益は目減りします。

メタバースの不動産には経年劣化や災害のリスクがなく、そもそも管理の手間が圧倒的に少ないことも特徴です。総じてかかる管理コストが抑えられ、その分高い収益が得られることは大きなメリットといえるでしょう。

メタバース内で不動産投資を行うデメリット

メタバース内の不動産投資で想定されるデメリットは、メタバースがまだ生まれて間もないしくみであることが関連しているものが多くあります。不動産に限らず、投資には一定の基準や規制が必要です。ここでは、メタバース内の不動産投資にまつわるデメリットを解説します。

情報が少ない

メタバースという仕組みが世間から広く注目されるようになったのはここ数年の話で、日本での認知もまだまだ低いです。世界的にみても現実世界における不動産投資と比較にならないほどメタバース自体に関する情報量は少ないといえます。

現実世界の不動産投資に関連する情報は、テレビニュースや新聞、書籍、インターネットなどさまざまなメディアから収集できますが、メタバース不動産投資に関する情報収集の手段はまだまだ少ないのが現状です。そのため、数少ない情報を求めるユーザーへの詐欺行為も後を断ちません。その上、メタバースの不動産投資にまつわる情報だけでなく、メタバース業界全体の現状や実態を知らないことには、投資では重要となる適切な情報の拾い上げも難しいといえるでしょう。

法整備が追いついていない

NFTがトレンドとなり、全世界で注目されるようになったここ数年で、メタバース内の不動産投資は急激に加速しました。それと同時にメタバース開発やメタバース内の経済活動も急速に拡大し、想定していなかったことも起こり始めています。これは、メタバースで起こる事象に対応する基準や法整備がまだ不十分であるためです。

そのため、詐欺行為やハッキング被害などのトラブルに行政が対応できず、自己責任となる可能性があります。逆に突然の法規制によって売買が制限されたり、気づかぬうちに法を犯したりしてしまうこともあるかもしれません。

メタバースでの不動産投資を始めるのであれば、現時点でのNFT関連の法律や税制度、提供側が掲げている規約などをチェックしておくことが重要です。

メタバース内で不動産投資をする際の3つの注意点

メタバースでの不動産投資には、現実世界の場合と同様、うまく続けるためのポイントがあります。投資で成功するために、ぜひ押さえておきたい点ばかりです。ここでは、メタバースの不動産投資の注意点について解説します。

1.不動産の利用者が減ると価格が下落する

メタバースは、世界で一般利用され始めてから20年ほど経った現在もなお、今後拡大していくか衰退するかどうかが読みにくい特殊な分野です。メタバースの不動産を求めるユーザーが増えているうちはよいのですが、他の投資商品と同様に、なんらかの理由でユーザーが減ればニーズが減り、価格を下げざるを得なくなります。

2.仮想通貨の価格変動により不動産の価値も変動する

メタバースの経済活動では、仮想通貨が利用されます。現実世界におけるわが国の通貨・円は、国家の信用や後ろ盾により価値が大幅に下がることはありません。一方で仮想通貨は、価格が大きく変動する可能性があります。仮想通貨の価値が下がれば、メタバースでの不動産価値の価値も下がり、結果として割高となってしまうことは大きなリスクです。

仮想通貨価格の変動は、不動産の価値を左右する要素です。利益を得ることもありますが、損をすることもあります。メタバースにおいて不動産投資をする場合は、仮想通貨の価格にも配慮することが大切です。

3.価格変動の度合いが大きい

現実世界での不動産の価値は、よほどのことがない限り大きく変動することはありません。災害によって建物はなくなっても土地は残り、また建物を建てて投資として利用することもできます。これは、土地が実在するため発揮される価値であるからです。

しかしメタバースの不動産は、ユーザーのニーズや取引に使う仮想通貨の価格に直接影響を受けます。そのため、現実世界の不動産より価格変動の度合いは大きいといえます。

メタバース内の不動産価値の決定要因

現実世界と同じように、メタバースにも不動産の価値が決まるための要因があります。現実世界とよく似た要因もありますが、メタバース内では意味が違うものも多いです。これから投資を始めるのであれば、価値が決まる要因の種類とその仕組みを正しく理解しておきましょう。

ユーザーの訪問数

メタバースの不動産を利用するユーザーが多ければ、集まるユーザーに対してアプローチしやすいことに価値を見出せます。イメージとしては、現実世界の渋谷などの人が集まる場所にあるような商業施設や電子広告を設置できる不動産の価値が高いことと似ています。もちろん、ユーザーが少なければ、期待できる価値が少なく、不動産を利用しようというユーザーも減るのが通常です。

つまり、ユーザーの訪問数の少なさは不動産の利用価値が低いことを示しています。このことは、現実世界でも同様です。条件のよい物件は家賃を高く設定しても借り手がいますが、条件が揃わない物件の場合は家賃を下げても借り手がつかないこともあり得ます。

立地

メタバースにおける不動産の立地も、現実世界の不動産と同じです。近くに人気が高く多くのユーザーが訪れる施設があれば、自ずと訪れるユーザーも多いことが期待できます。そうでない場合、利用するユーザーの数は期待できません。

希少性

メタバース内では、不動産の大きさや数に制限を設けています。理論的にいえば、デジタル空間では不動産をいくらでも作ることが可能です。しかし、これではユーザーのニーズが高まることがなく、需要は生まれません。

そこでメタバースでは、所有できる不動産の区分を限定されています。メタバースにしろ現実世界にしろ、不動産は希少だからこそ需要があり価値があるのです。

メタバース内の不動産投資で稼ぐ方法

メタバース内の不動産投資で稼ぐ方法は、原理的に現実世界とあまり変わりありません。ここでは現実世界の不動産投資と比較しながら、メタバース内での方法として詳しく解説していきます。

土地の売買

メタバースでも現実世界と同様に土地の売買ができます。土地の売買では、買った価格より高い価格で売るのが基本です。

注意したいのは、現実世界では地域ごとにある程度の価格(地価)が決まっていることに対し、現状のメタバースでは相場や価格の基準がない点です。ニーズの高さは未知数であるため、価値はいくら高くなっても低くなっても不思議ではありません。

うまくいけば、買った価格の数倍以上の利益を得られる可能性もあります。

土地の貸し出し

土地を所有すれば、定めた賃料で他のユーザーに貸し出すこともできます。土地の価格に影響されるのは、先述にもあるとおりユーザーの訪問数や立地です。人気の施設の近くや人通りの多いエリア、人の集まりやすい場所の土地は、イベント開催などにも有効利用されることが多く、ある程度高い賃料でも借り手が現れる可能性があります。土地の賃貸については現実世界と近いといえるでしょう。

土地と建築物の売却

メタバース内では、購入した土地に建物を建てて、土地と建物をセットで売却することもできます。立地に対してニーズに沿った建物を建てれば、より高い価格で売却することが可能です。海外では、メタバース内で不動産投資家と建築家が協力し、利益を得ている事例もあります。

現実世界では、建物を立てるにも耐火性や耐震構造など厳しい規制がありますが、メタバースにはありません。現実離れしたダイナミックな建物も建てられるため、斬新なデザインの建築も可能です。

まとめ

メタバースとは、インターネット上にある仮想空間です。多くのユーザーが利用すればコミュニティが形成され、経済活動が可能になります。経済活動の基盤となるのは、デジタルデータを所有するために欠かせないしくみである、NFTです。NFTの仕組みがあるメタバース内では現実世界と同じように、土地や建物といった不動産の売買や賃貸などの不動産投資ができます。 ただし、メタバース内での不動産投資はまだ始まって間もないため、情報が少なく法整備も十分ではありません。投資するのであれば、現状の限られた情報や法律的知識を把握し、利活用しながら進めることが大切です。

監修者

赤井 祐貴

大手通信会社にて経理、経営企画、事業会社投資を担当。2019年より不動産会社の経営企画部にて計数管理、アライアンス企画、事業開発、M&A等に携わっている。

関連記事

入居率の重要性と目安とは?計算方法や入居率アップの方法も解説

入居率はアパート経営を行う際に押さえておきたい数値の1つです。重要な指標であることは知っているものの、具体的な数値の目安や計算方法について理解していない方もいるのではないでしょうか。 入居率の計算方法は複数あって、公表している不動産会社によって計算の仕方や条件が異なる場合があります。この記事では、アパート経営における入居率の種類や入居率を上げる方法についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください...

管理不全空家に指定されるとどうなる? 固定資産税が6倍!?【改正法施行】

実家を相続したものの、活用できず空き家のまま放置している方も多いのではないでしょうか。こうした放置されたままの空き家の対策を強化するために「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が施行され、新たに「管理不全空家」というカテゴリが定義されました。 これにより、今までより影響を受ける空き家の範囲が広くなります。「管理不全空家って?」「罰則はある?」「罰金は?」この記事では、空き家所有...

空家等対策特別措置法改正の影響と改正の背景を解説【令和5年12月施行】

増加の一途をたどる空き家の対処のため平成27年に施行された空家等対策特別措置法は、行政の処分の対象が放置する危険の高い「特定空家」に集中しているため想定していた効果をあげられない状況に陥っていました。そこで、令和5年12月13日に施行された「改正空家等対策特措法」によって、処分の対象はより幅広い状態の空き家にまで拡大されます。 この改正によって「どんな対応をされるのか?」「罰則や罰金はあるのか?」...

賃貸管理マンスリーデータ(2024年3月)を公開

「不動産投資家Kとその仲間たち」を運営するarchitect developer, Inc.(ADI)の賃貸管理に関するデータをお伝えしていきます。この記事では、2024年3月のデータをご覧いただけます。 ◎PDFをダウンロードする ADIの賃貸管理マンスリーデータ(2024年3月)◎過去のデータはこちら 目次 2024年3月賃貸管理状況 2024年3月サマリー エリア別管理戸数割合 エリア別入居...

家賃値上げの上限は?大家さん必読の家賃交渉やトラブル対処法

不動産経営では家賃相場の変動や不動産価格の上昇などにより、家賃の値上げが必要な場合があります。この記事では家賃交渉の基礎知識やトラブルの対処法、値上げを成功させるポイントを解説します。記事の内容を参考に、トラブルのないスムーズな家賃交渉を目指しましょう。 ポイント 家賃の値上げは借地借家法に基づく正当な理由があれば認められる オーナーの経済的な都合など個人的な理由での家賃の値上げは認められない 値...

公務員のための不動産投資入門! 違反にならないポイントやメリット

副収入を得る方法の1つである「不動産投資」は、公務員の「副業禁止の原則」から違反になると考えている人は多いかもしれません。 しかし、公務員でも一定の条件を満たせば違反にならずに、不動産に投資することは可能です。 ここでは公務員が違反にならずに不動産投資を始めるポイントや、公務員ならではの代表的なメリットを解説します。 ポイント 公務員は不動産投資に必要な融資を、より有利な条件で利用できる可能性があ...

土地を自治体に無償譲渡できる? 手順や必要書類を解説

相続した土地を活用できず、自治体へ寄附できないか考える人もいるでしょう。自治体への寄附も可能ですが、必ずしも引き取ってくれるとは限りません。 本記事では、土地を自治体へ寄附する手順や必要書類、自治体以外へ寄附する方法などを解説します。 ポイント 自治体はどんな土地でも寄附を引き受けてくれるわけではない 認定地緑団体・個人・法人にも土地を寄附または贈与できる 相続した土地を国に引き渡せる相続土地国庫...

60坪は何平米?建てられるアパートや家の広さは?

60坪の土地とはどのくらいの広さなのか、どのくらいの大きさの建物が建てられるのかすぐにピンとこない方もいるかもしれません。60坪の土地があれば、戸建てはもちろんアパートやマンションなどの土地活用も十分可能です。 この記事では、60坪の土地の広さや建てられる建物について解説します。60坪の土地の活用や購入をお考えの方はぜひご覧ください。 ポイント 60坪の土地は約198平米で、平均的な注文住宅の広さ...

建築資材高騰はいつまで続く? 高騰の要因8つを解説【2024年最新】

建築資材の高騰に頭を悩ませている不動産投資家も多いでしょう。建築資材はさまざまな要因で高騰しており、解決もすぐには期待できないため、今後も高騰が続くと予想されます。今回の記事では建築資材高騰の要因や過去の推移、今後の見通しについて解説します。 ポイント 建築資材の高騰は、円安やウッドショックなど主に8つの要因がある 高騰の要因がすぐに解消することは難しく、今後も高騰が続く見込み 不動産投資をする際...

再建築不可物件とは?不動産投資に活用できる?購入前に知っておきたい注意点

再建築不可物件は安く購入できるため、投資用として購入するケースもあるでしょう。再建築不可物件を購入するにあたり、注意点を知りたい方も多いのではないでしょうか。 再建築不可物件は、期待通りの収益を上げにくいです。今回の記事では再建築不可物件の注意点や活用方法について紹介します。 ポイント 再建築不可物件は相場よりも安く購入できる 災害による倒壊などでも再建築できない 接道義務を果たせば再建築できる場...