賃貸人の修繕義務範囲はどこまで?設備が故障したときの責任や対処法
賃貸人は賃借人に対し、物件を使用・収益させるべき義務を負っており(民法第601条)、物件に不具合や故障が発生した場合には、適切に使用・収益ができるように修繕しなければなりません。修繕義務の範囲には個別判断が必要なことも多々あり、ケースごとの把握が必要です。 本記事では、賃貸人の修繕義務の範囲や設備が故障した場合の対応、賃貸人が負うリスクとその予防策について解説します。 ポイント 賃貸人は、賃借人が...
不動産投資家K
不動産経営では家賃相場の変動や不動産価格の上昇などにより、家賃の値上げが必要な場合があります。この記事では家賃交渉の基礎知識やトラブルの対処法、値上げを成功させるポイントを解説します。記事の内容を参考に、トラブルのないスムーズな家賃交渉を目指しましょう。
不動産経営をしていると、家賃の値上げが必要なときもあるでしょう。家賃の値上げは、不動産オーナーに認められた権利です。しかし、入居者との交渉次第では、値上げが難航するケースもあります。
家賃の値上げは、借地借家法第32条に基づいて不動産オーナーに認められた権利です。借地法第32条では、以下の正当な理由がある際に家賃の値上げが認められると規定しています。
上記の理由が認められた場合、オーナーは契約の条件に関わらず家賃の値上げを求めることが可能です。ただし、一定期間は家賃を増額しないといった特約を付けている場合は、値上げができないケースもあります。家賃の値上げを検討しているなら、まずは契約内容を確認しましょう。
参考:e-GOV 借地借家法
家賃を値上げするタイミングに、特に決まりはありません。一般的には、契約更新や新たに入居者を募集するタイミングが多いようです。
家賃の値上げを告知すると、入居者が退去するケースもあるでしょう。その場合、次の入居者が決まるまで家賃収入がストップし、一時的にキャッシュフローが悪化する場合があるかもしれません。家賃の値上げ交渉を考える場合、退去による空室リスクが発生する可能性があることは認識しておきましょう。
家賃の値上げに上限の規定はないものの、際限なく値上げできるわけではありません。先述のとおり家賃値上げの正当な理由には、周辺の家賃相場と比較して極端に価格が低いことがあげられます。そのため、値上げ後の家賃が相場価格よりも大幅に高い場合は、値上げが認められないと考えられます。
適切な家賃を設定するために、物件情報を確認することや不動産会社に相談することで、周辺の家賃相場を知ることが肝心です。
家賃の値上げを検討しているのであれば、家賃の値上げが認められないケースも理解しておく必要があります。家賃の値上げが認められない主な理由は、以下の3つです。
先述のとおり、家賃の値上げが認められるのは、正当な理由がある場合のみです。そのため、オーナーの経済的な都合での家賃の値上げは認められません。収入を増やしたい、賃貸経営で発生した損失を補てんしたいといった理由での家賃の値上げは難しいと考えてください。
家賃の値上げ自体は認められたとしても、周辺の家賃相場と極端に離れた金額への値上げはできません。値上げ後の家賃は、あくまでも正当と認められる範囲内で設定しましょう。
契約に一定期間は家賃を増額しないといった特約がある場合は、当然その期間が終了するまでは家賃の値上げはできません。周辺の家賃相場より家賃が低い、固定資産税が上がったなどの正当な理由があったとしても期間中の家賃の値上げができないため、契約時の条件は慎重に検討しておくようにしましょう。
あわせて読みたい
家賃の値上げを行うと、入居者の金銭的負担が増えます。そのためオーナーは入居者に納得してもらえるよう、家賃の値上げについて丁寧な説明と交渉を行わなくてはなりません。
しかし、値上げに正当な理由があったとしても、場合によってはトラブルが発生するケースもあります。ここでは、家賃の値上げに関するよくあるトラブルを4つ紹介します。
トラブルの1つ目は、値上げ分の支払い拒否です。家賃の値上げ幅が大きいほど、このトラブルが発生するケースが増えます。
値上げ分の支払いを拒否された場合、調停や訴訟による解決が選択肢となる可能性が出てきます。しかし、調停や訴訟は多額の費用や解決までの時間がかかります。できるだけ賃借人と話し合いで解決できるよう、しっかりと準備をして交渉を進めてください。
トラブルの2つ目は、家賃の支払い拒否です。家賃の値上げを伝えると、家賃の支払い自体を拒否されるケースがあります。
家賃の支払い拒否が起きたときには強制退去を求めることも可能ですが、そのためには家賃の督促などを行ったうえで訴訟を起こさなければなりません。強制退去を進めるには多くの時間やお金、手間がかかるだけでなく、解決するまではその入居者からの家賃が滞るため、できるだけ避けたいところです。
トラブルが大きくなる可能性もあるため、家賃の支払い拒否が発生したら速やかに弁護士などの専門家に相談すると良いでしょう。
トラブルの3つ目は、契約の解約です。値上げにより家賃が高くなると、より家賃が安い物件への引っ越しを考える入居者もいます。その場合、賃貸借契約を解除される可能性があります。
その場合は、次の入居者の募集を迅速に行い、空室の期間をできるだけ短くすることが肝心です。
トラブルの4つ目は、夜逃げです。資金に余裕がない入居者の中には夜逃げを選択する可能性もあります。夜逃げが発覚したら、連帯保証人に連絡を取り賃貸借契約を解除するなど、手続きを速やかに進めてください。
夜逃げをされると家賃の回収ができなくなるだけでなく、家財道具の処分や原状回復の費用の支払いをオーナーが被ることになります。夜逃げのトラブルを防ぐには、入居時に収入や資金状況の審査を厳しく行うことが重要です。
家賃の値上げは難しい交渉の1つですが、賃貸経営を続けていると避けて通れないときもあります。ここでは、家賃の値上げを成功させる以下の5つのポイントを解説します。
家賃値上げが必要になったときに慌てずにすむよう、あらかじめ確認しておきましょう。
家賃を値上げするのであれば、入居者には必ず事前に通知をしてください。早めに通知をすることで、入居者が居住を続けるか引っ越すかなどを考える時間ができます。落ち着いて検討する時間を設けることで、トラブル回避を図ることができるでしょう。 値上げを通知する具体的な時期は、特に決まりはありません。契約書に定められた解約予告の期間に合わせて通知すると、スムーズに手続きを進められます。たとえば、解約予告の期限を退去の1カ月前としているのであれば、1カ月前までには事前に通知を行い、退去か居住の継続かを入居者に決めてもらうようにしてください。
家賃を値上げする理由を明確にし入居者に伝えることも、交渉を進めるうえで重要なポイントです。オーナーの経済的な都合などによる家賃の値上げは認められていません。値上げをするなら、相手にその根拠をしっかりと伝える必要があります。 たとえば、周辺の家賃相場と乖離があるために値上げをする場合は、周辺の家賃相場がわかる資料を示しましょう。これにより、家賃値上げの必要性と値上げ後の家賃金額の正当性を伝えられます。入居者が納得できる理由を説明できれば、値上げに応じてもらえる可能性も十分にあります。
正当な理由を明確にしても交渉が進まないときには、値上げにより入居者にどのようなメリットがあるかを示すことも有効です。提示するメリットの一例としては、以下があげられます。
家賃の値上げは、更新時と合わせて行われるケースも多いです。契約更新をするにあたっては、毎月の家賃に加えて更新料も支払わなければなりません。そのため更新料を無料にするという提案は、交渉に有利に働く可能性があります。 また資金に余裕があるのであれば、宅配ボックスといった新たな設備を導入することで、家賃値上げの同意を得やすくなります。交渉が難航しそうな場合は、選択肢の1つとして検討してください。
あわせて読みたい
家賃値上げのタイミングはいつでも構いませんが、一定期間は家賃を増額しないという特約が賃貸借契約に付いている場合は、その期間が終了するまでは家賃の値上げはできません。 値上げを検討しているならまずは契約の内容をチェックし、特約が付加されていないことを確認しましょう。
交渉がスムーズに進まない場合は、専門家に相談するのも有効な方法です。周辺の家賃相場や保有する物件の適正な家賃設定は不動産会社や不動産鑑定士に話を聞いてください。交渉が難航し訴訟や調停に発展しそうなときには、弁護士への相談も検討しましょう。
通常の値上げとは異なりますが、リノベーションを行うことで家賃がアップした事例を参考にご紹介します。
都心駅徒歩10分 築31年 RC造の場合
居室内をはじめ、エントランスにはオートロックと宅配BOXを新設するなど共用部までリノベーションを行いました。リノベーションを行いデザイン性を高めることで、立地の良さを最大限に活かした物件に蘇らせたことで、単純に賃料がアップしただけではなく、このリノベーションによって入居者の決まりやすさにもプラスの影響が出ています。
リノベーションにはそもそも資金が必要になりますが、物件の魅力を高めることで大幅な賃料アップにつなげることも可能です。所有する物件の築年数によっては、リノベーションや建て替えなどにより、賃料アップを検討することも必要かもしれません
出典:株式会社アーキテクト・ディベロッパー 「事業紹介 リブランディング事業」
どうしても交渉が難航した場合、調停や訴訟にまで至る場合があります。借主から訴えられる可能性もあります。
調停や訴訟を行えば第三者に判断を委ねられますが、解決までに時間や費用がかかります。調停や訴訟を検討しているのであれば、事前に手続きのポイントを確認しておきましょう。
調停とは、調停委員や裁判官との話し合いで紛争の解決を図る手続きです。調停の特徴には、以下があげられます。
解決までの期間は調停の内容によって異なるため一概にはいえませんが、おおむね3カ月以内には決着することが多いようです。
なお、調停自体の費用はそれほど高くありませんが、調停をスムーズに進めるには弁護士への依頼が必要です。この場合、弁護士への依頼料として40万円~100万円の費用がかかることは押さえておきましょう。
調停が不成立になったら、訴訟による解決が選択肢となります。訴訟は、法廷で裁判官の判決により紛争の解決が行われる方法です。
訴訟での判決は、不動産鑑定士の鑑定結果や固定資産税額額の推移、近隣物件の家賃相場などを基に出されます。そのため訴訟を起こすには、判決の材料となる資料を提出しなければなりません。訴訟をするには弁護士への依頼料のほか、資料作成のために不動産を鑑定する費用など、合わせて70万円~150万円程度かかることは押さえておきましょう。
訴訟による判決までには1年以上かかるケースも多く、その間は家賃収入が得られません。訴訟は明確な答えが得られる一方で、多額の費用や時間がかかります。家賃値上げ交渉が難航していたとしても、訴訟を起こすかどうかは慎重に判断する必要があるでしょう。
家賃の値上げは、借地借家法によって認められたオーナーの正当な権利です。家賃を値上げするには、法律によって定められた正当な理由が必要です。オーナーの経済的な都合での値上げや、周辺の家賃相場とかけ離れた金額の設定は認められないので注意しましょう。
家賃の値上げをすると、家賃の支払いが滞ったり契約を解除されたりといったトラブルが発生する可能性があります。トラブルを防ぐには、前もっての通知や値上げ理由の明確化、値上げによる入居者へのメリットの提示等が有効です。 家賃の値上げでは、周辺の家賃相場の調査やトラブルへの対応が必要なケースもあります。自身での対応が難しいと感じるときには、管理会社や不動産会社、弁護士といった専門家に相談してください。
監修者
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
賃貸不動産業20年以上。賃貸管理業法や宅建業法、民法といった関係法規に深い造詣をもつ。専門知識を活かして賃貸管理業務に従事し、法改正や最新の業界動向に迅速に対応している。賃貸専門の仲介会社に11年、地場不動産会社に6年、現職は10年目を迎える。
不動産投資家Kとその仲間たちでは、「アパートに空室が増えてきた」「管理会社の対応に不満がある」「建物が老朽化してきた」など、アパート管理に関するお悩みをお持ちのオーナー様のさまざまなご相談を承っております。
あなたやあなたの家族の大切な資産を有効に活用できるよう、お気軽にご相談ください!
賃貸人は賃借人に対し、物件を使用・収益させるべき義務を負っており(民法第601条)、物件に不具合や故障が発生した場合には、適切に使用・収益ができるように修繕しなければなりません。修繕義務の範囲には個別判断が必要なことも多々あり、ケースごとの把握が必要です。 本記事では、賃貸人の修繕義務の範囲や設備が故障した場合の対応、賃貸人が負うリスクとその予防策について解説します。 ポイント 賃貸人は、賃借人が...
賃貸物件の設備不良が生じた場合、入居者の生活に支障が出てしまいます。賃貸物件の設備不良についてはオーナーが責任をとらなければならず、家賃減額の要因の1つです。 今回の記事では設備不良時に家賃減額になる条件や相場、対処法などを紹介します。 ポイント 民法改正により、設備の故障によるオーナーの責任が明確になった 入居者の生活に支障を与える程度によって、家賃の減額の割合が変わる 家賃の減額を避けるために...
短期譲渡所得とは、所有期間が5年以下の土地や建物などの資産を譲渡して得た利益のことです。短期譲渡所得には税金がかかりますが、特別控除を利用すれば節税ができます。 この記事では、短期譲渡所得の基本情報をはじめ、短期譲渡所得が発生した際の税金の計算方法や節税方法などについて解説します。不動産を売却するときの注意点も紹介するのでぜひ最後までご覧ください。 ポイント 短期譲渡所得は、所有期間が5年以下の資...
アパート・マンションのオーナーは、法律により、物件の法定点検が義務づけられています。実施を怠った場合、罰金が科される恐れがあるため、注意が必要です。 この記事では、アパート・マンションの法定点検の具体的な内容・実施すべき頻度や依頼方法、注意点などを解説します。ぜひ参考にしてください。 ポイント 法定点検とは、建物や付帯設備に関する法律で義務付けられている点検のこと 管理会社に専門業者の手配を委託す...
民泊事業には多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットもあります。開業を検討する際は、事業のプラス面・マイナス面の両方を理解しておくことが大切です。 この記事では、民泊事業のメリット・デメリットに加え、開業までの流れや押さえておきたいポイントを解説します。 ポイント 民泊とは、戸建てやアパート・マンションなど居住用物件を活用した宿泊サービスのこと 空き家を活用して収益を得られ、地域貢献や資産...
投資を始めようと考えたとき、多くの人が最初に直面するのが、「不動産にすべきか?それとも株式か?」という選択です。どちらも資産を増やすための代表的な手段として知られており、それぞれに根強い人気があります。 不動産投資と株式投資は、リスク特性、収益構造、必要な資金や流動性といった点で本質的な違いがあります。本コラムでは、両者の特徴やメリット・デメリットを比較しながら、あなたに合った投資スタイルを見極め...
アパートの経営において、リフォームや修理・修繕は欠かせません。費用とのバランスを考えると、どこまで投資するか頭を悩ませているオーナーも多いでしょう。 自治体や国の補助金を活用すれば費用負担を軽減できるケースもあります。今回の記事ではリフォーム/修理・修繕費用の相場や、利用できる補助金について詳しく紹介していきます。 ポイント リフォームや修繕の費用相場は、工事内容や建物の規模によって変わる リフォ...
プロパーローンは、金融機関が保証会社を介さずに独自の基準で審査し、直接融資を行うローンのことです。アパート経営など不動産投資を行う際の資金調達の方法のひとつとして知られています。 保証会社を通さない分、融資額や金利、期間などをオーダーメイドで設計できることが魅力ですが、その反面、金融機関の審査は慎重になる傾向があります。 本記事では、プロパーローンの基本的な仕組みから、保証会社付きアパートローンと...
不動産投資では、高額な物件を購入するため多くの場合金融機関からの融資が不可欠です。しかし、「購入したい物件の担保価値だけでは、希望する融資額に届かない」といった事態に直面することも少なくありません。 そんな時に選択肢となるのが共同担保です。 共同担保は、複数の不動産を担保とすることで、より大きな融資を引き出すことができる有効な手段です。しかし、安易に活用するのではなく、知っておくべきリスクも存在し...
土地活用を検討する中で「100坪はどのくらいの広さ?」「どのように活用できる?」と、お悩みではありませんか?所有する土地を有効活用して収益化するためには、活用方法や注意点をあらかじめ把握しておくことが重要です。 この記事では具体例を用いて100坪の広さを解説するほか、100坪の土地活用の方法10選も紹介します。建築に関する制限や土地活用を成功させるポイントなどもあわせて解説するので、ぜひ参考にして...