【自主管理】賃貸借契約書を自分で作る手順とメリット・デメリット

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不動産オーナーにとって費用をいかにして抑えるかは重要な点であり、賃貸借契約書を自分で作ることを考えている方もいらっしゃるかもしれません。賃貸借契約書は私文書なため、オーナー自らが作成しても問題ありません。

しかし賃貸借契約書を作成するためには、必要な項目や注意点を押さえる必要があります。本コラムでは賃貸借契約書を作成する手順やメリット・デメリットについて紹介します。

ポイント

  1. 賃貸借契約書は私文書のため、オーナーが自分でも作成できる
  2. 自分で作ることで知識の蓄積やコスト削減できるが、作成には手間と時間がかかる
  3. 自分で作る際には内容をよく把握して、専門家に相談することも重要
目次

賃貸借契約書は自分で作成しても良い?

賃貸借契約書は法的な効力を持つ書面ですが、私文書なため作成にあたって特別な資格は必要ありません。そのためオーナーが自分で賃貸借契約書を作っても、問題はありません。しかし賃貸借契約書に問題があると、後々大きなトラブルに発展する可能性があるため、記載内容には注意する必要があるでしょう。

賃貸借契約書を自分で作る場合、オーナーが不利にならないようにすることが重要です。賃貸借契約は長い契約になるため、当初の契約内容はとくに慎重に行う必要があります。オーナーが自分で賃貸借契約書を作成する際には、必要な知識と方法を理解しておくようにしましょう。

賃貸借契約書と重要事項説明書との違い

賃貸借契約書とは別に、不動産取引の際に使われる書類に重要事項説明書があります。重要事項説明書は契約書とセットで交付されるため、よく似たイメージを持ってしまいますが同じではありません。重要事項説明書は宅地建物取引業者(=不動産会社)が借主・貸主に対して交付する書類です。

不動産取引は確認するべき項目も多く、専門的な知識も必要になるでしょう。後々のトラブルを防ぐために不動産のプロである不動産会社が、借主に対してわかりやすく物件の内容を説明するために使われる書面が重要事項説明書です。

重要事項説明書には、賃料や解約に関する条項、違約金や部屋の利用条件などが記載されています。このように重要事項説明書は重要な書類ではありますが、署名・捺印しても契約が発生するわけではありません。契約が発生する賃貸借契約書とは、大きな違いといえるでしょう。

また重要事項説明書は、不動産会社が仲介する場合に作成が義務付けられています。つまりオーナー自ら入居者と直接契約する場合には必要ありません。

賃貸契約書に必要な項目

賃貸借契約書を作成する際には、必要な項目を漏れなく記載するようにしましょう。賃貸借契約書に記載されるべき項目は、次の通りです。

  1. 物件の名称と所在地
  2. 使用目的
  3. 契約期間と契約更新
  4. 金銭に関する取り決め
  5. 敷金/保証金
  6. 支払い時期と方法
  7. 借主の緊急連絡先や連帯保証人および入居者の情報
  8. 貸主および管理業者の情報
  9. 解約・違約金について
  10. 特約事項

物件の名称、所在地

賃貸借契約書の冒頭にまず記載される項目が、物件の住所です。所在地や家屋番号・部屋番号、床面積などが細かく記載されているため、物件が特定できるでしょう。

使用目的

「居住」、「事務所」、 「店舗」などが明記され、ほかの用途に無断使用すると契約違反になることもあるでしょう。

契約期間と契約更新

賃貸借契約書には、契約期間と更新に関する取り決めも記載されます。賃貸の契約は2年契約が多いですが、3年~10年程度の場合もあります。契約期間が終わると、互いに異議がなければ更新されます。更新の際には入居者からオーナーへ更新料の支払いが発生する場合もありますが 、更新料の細かい取り決めも賃貸借契約書に記載すべきでしょう。

金銭に関する取り決め

賃貸借契約書の中でもとくに重要なのが、金銭に関する取り決めです。毎月の家賃や共益費、退去の際の精算などを決めて、契約書に記載します。単に金額を決めるだけでなく、いつまでに支払うかも明記しましょう。

敷金/保証金

敷金や保証金の額と、退去時の返還金額についても記載します。

支払い時期と方法

家賃であれば 毎月、前月25日までに支払う、のようにいつの家賃をいつまでに支払うかを定めます。支払方法が振込なのか口座振替なのか、ということも明記しておきましょう。

貸主および管理業者の情報

貸主であるオーナーや、物件を管理する管理会社の情報も記載します。

借主の緊急連絡先や連帯保証人および入居者の情報

とくに入居者の情報は重要で、同居人や勤務先などの属性を記載することもあるでしょう。オーナーにとっては入居者の勤務先や保証会社、連帯保証人などは重要な情報です。賃料の延滞が発生した際に必要な情報なため、きちんと確認しておくようにしましょう。保証人を特定するための住所や名前に加えて、保証の極度額も取り決めます。極度額は2020年の民法改正で、限度を定めることが義務付けられました。連帯保証人の負担を軽減するためのもので、極度額の記載がないと契約自体が無効になります。

解約・違約金について

入居者が退去を希望する場合の通知方法、いつまでに通知する必要があるのかといった通知方法の取り決めをします。逆にオーナー側から契約を解除する場合はいつまでにどのような方法で通知するのかといった取り決めを契約書に記載します。一般的に入居者は1カ月前までに解約予告をするのが契約書の通例となっており、オーナー側の契約解除は6カ月前までに予告することと記載されている契約書が多く見られます。また中途解約の際の違約金なども、重要な要素です。しかし実際には中途解約しても違約金が発生しないような契約が多いです。

特約事項

特約は一般的な契約内容に含まれないその他の取り決めのことです。不動産の賃貸や売買では権利関係や諸条件が複雑なことも多いため、個別の細かい取り決めは特約で定めるようにしましょう。
賃貸の場合で多い特約が、ハウスクリーニング特約で、退去時のクリーニング費用を入居者負担にすることを定めています。オーナーにとって重要な項目なため、契約時にきちんと説明して合意を得ておきましょう。

賃貸借契約書を自分で作成するメリット

賃貸借契約書を自分で作成するメリットは、次の2点です。

  1. 管理費用を削減できる
  2. 賃貸経営の知見を蓄積できる

管理費用を削減できる

オーナーが賃貸物件を管理する場合は管理会社を入れるのが一般的ですが、賃貸借契約を自分で作るのであれば自主管理ができるでしょう。一般的に管理会社に払う費用は賃料収入の5~10%程度なため、費用を削減できます。5~10%といえども、保有物件が多ければコストも大きくなるため、経済的なメリットも大きいといえるでしょう。

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賃貸経営の知見を蓄積できる

賃貸借契約書を自分で作成することで、賃貸経営者としてのスキルを高められます。不動産の賃貸経営を行っている方は少なくありませんが、物件の管理は管理会社に任せている方が多いでしょう。自分で賃貸借契約書を作成することで、不動産業に関する知見を蓄積できます。

また自分で作成した契約書であれば、契約内容を理解しやすいメリットもあります。不動産賃貸でトラブルに発展した際には契約書の内容理解度は武器になるため、自分で作成するメリットは大きいといえるでしょう。

賃貸借契約書を自分で作成するデメリット

賃貸借契約書を自分で作成するデメリットは、下記の2点があります。

  1. 作成に手間がかかる
  2. トラブルが起こる可能性がある

作成に手間がかかる

不動産契約における賃貸借契約書は非常に重要な意味を持ちます。後々までトラブルを防いで、自分にとって不利益のない契約書を作成するためには、手間だけでなく知識と経験も必要になるでしょう。一朝一夕で作成できるわけではなく、失敗を繰り返しながら精度を高めていくことになるかもしれません。

時間と金銭に余裕があれば構わないですが、忙しい中でそこまで時間と手間をかけられない方も多いでしょう。自分で賃貸借契約書を作成するには、相応の手間と時間がかかる点がデメリットです。

トラブルが起こる可能性がある

どれだけ気をつけて作成しても、契約書に不備があるリスクはなくなりません 。管理会社によって作成された契約書であれば管理会社に責任を追及できるかもしれませんが、自分で契約書を作った場合は誰も助けてくれません。そのため時には大きなトラブルに発展してしまう可能性もあるでしょう。自分で契約書を作成した場合は、トラブルが起きてしまうデメリットがあります。

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賃貸借契約書のテンプレート

賃貸借契約書に記載すべき事項は多岐にわたるため、すべてを自分で作るのは難しいでしょう。ミスやトラブルのもとになりますし、作り上げるまでの膨大な時間と労力を必要とします。賃貸借契約書は基本的な項目はどの契約書であっても大きく変わらないため、ひな形を利用するとよいでしょう。

参考になるひな形としては、国土交通省が公開している「賃貸住宅標準契約書」があります。PDF版と、編集できるWord版があるため使いやすいです。ひな形を標準として、物件ごとの特性を踏まえた特約を追加するだけで、形式を整えた契約書は作成できるでしょう。

参考:国土交通省「『賃貸住宅標準契約書』について」

賃貸借契約書を自分で作る際の注意点

自分で賃貸借契約書を作る際の注意点には、下記の2点があります。

  1. 内容を正確に把握しておく
  2. 司法書士など専門家に相談する

内容を正確に把握しておく

自分で賃貸借契約書を作成する際は、記載している内容を正確に把握しておきましょう。前述のようにひな形を使う場合であっても、内容を熟読しましょう。契約書は貸主と借主の合意を書面にしたもののため、署名・捺印はすべての内容への合意を表します。

あとになって、知らなかったは通用しません。これは仲介会社が作成した場合も同様ですが、まして自分で作成した契約書であれば尚更です。契約書に記載している内容は正確に把握しておくことが、トラブル防止につながります。

司法書士など専門家に相談する

自分で作成した契約書は、どれだけ勉強したとしても不安があるでしょう。そのような場合は専門家にチェックしてもらうとよいでしょう。契約書といえば弁護士や行政書士、不動産関係であれば司法書士も頼りになります。自分では気づけないミスに気づいてもらえるため、無用なトラブルを防げるでしょう。

自身での作成が不安な場合は管理会社へ相談する

オーナー自身で契約書を作成することは可能ですが、簡単ではありません。不動産に関する専門的な知識が必要ですし、作成には膨大な手間と時間がかかります。時間と手間をかけて契約書を作成しても、トラブルを完全に防げるとはいえないでしょう。

契約書作成に慣れている方でなければ、管理会社へ委託するとよいでしょう。管理会社は普段から賃貸借契約の実務を行っているため、契約書の作成に慣れています。物件ごとの特性を踏まえた契約書を作成してくれるため、オーナーとしても頼りになるでしょう。

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まとめ

賃貸借契約書は法的拘束力を持つ書面ですが、オーナー自身でも作成できます。契約書を自分で作成することで、管理会社に払う手数料を節約できるでしょう。しかし物件の詳細を説明する重要事項説明書とは違って、契約が成立する書面なため、正確な作成が必要です。

後々のトラブルを防ぐための契約書作成には、手間も時間もかかるでしょう。自分自身で内容を把握しておく必要もありますし、不安であれば専門家への相談も必要です。このように自分で契約書を作成するには負担が大きいため、契約書作成は管理会社に任せるほうがよいでしょう。

監修者

宅地建物取引士、不動産賃貸経営管理士

遅澤 昭彦

現在の会社に入社以来10年以上リーシング業務に従事し、入居率10年連続99%達成に貢献。現在はリーシング業務の経験を活かし、管理受託業務を中心に担い、若手育成などにも力を注いでいる。

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