インボイス制度が不動産オーナーの賃貸経営に与える影響と対応方法
インボイス制度は2023年10月から始まった消費税に関する新しい制度であり、不動産オーナーにも影響を与える場合があります。法人テナントなど課税事業者が借主の場合、不動産オーナーが免税事業者のままでは、仕入税額控除を受けるためのインボイスを発行できません。 本記事では、不動産オーナーの賃貸運営に及ぼすインボイス制度の影響や、登録しない場合のリスク、登録のメリット・デメリットについて解説します。 ポイ...
不動産投資家K
投資用の不動産物件には投資のコストやリスクを考えて、買い替えたほうがよいタイミングがあります。また不動産の買い替えには税金がかかります。今回の記事では投資用不動産の買い替えを検討すべき理由とタイミング、そして節税対策について、わかりやすく紹介します。
不動産投資において状況によっては、投資物件を買い替えるほうが良い場合があります。その主な理由としては以下の2つがあげられます。
このどちらか、もしくは両方の理由があれば、投資物件を買い替えるタイミングといえるでしょう。
1つ目の理由は追加費用の発生を回避するためです。 所有している不動産に物理的な補修が必要になることがありますが、補修には追加の費用が発生します。
追加の費用の内容は、マンションであれば大規模修繕などが考えられます。
完成してから一定の年数を経たマンションは大規模修繕が必要ですが、多額の費用が想定される場合には、補修が必要になる前に買い替え、費用負担を避けることが有効です。
2つ目の理由は投資リスクを低減するためです。
不動産は、周辺環境の変化を理由に、資産価値や評価が下がってしまうことがあります。資産価値や評価が低下する前に売却できれば、リスクを低減することができるため、買い替えが必要になるケースといえます。
資産価値が低下しそうな懸念材料がある場合には、市場価格に反映される前に買い替えることで、損失を防ぐことができます。
不動産投資用の物件を買い替えるタイミングには、一般的に以下の3つが考えられます。
買い替えるタイミングのひとつ目は、投資物件の周辺環境が悪化しそうなときです。投資用不動産物件は周辺環境の悪化により、資産価値にマイナスの影響が出る場合があります。
たとえば、近隣の病院やスーパーマーケットなどの施設の閉鎖・撤退や、都市再開発による繁華街の移転などです。こうした変化があれば、物件の市場価値に影響するでしょう。
常日頃から周辺環境の情報にアンテナを張り情報をキャッチすることが大切です。悪い変化が起きそうな情報があっても、資産価値が下がる前に買い替えることで損失を回避できます。
買い替えるタイミングの2つ目は、不動産市場に変化が起きたときです。不動産市場にはトレンドがあるので、売却額が上昇傾向か下降傾向か、安定しているのかを見極める必要があります。
ひとつ目の「周辺環境」がミクロ的な要素とすれば、「不動産市場の変化」はマクロ的な要素といえるでしょう。最近までは問題なかったのに、トレンドが変化により売却額が下降に向かう場合があります。
そのような兆しがみえてきたら、保有物件の価値が下がる前に買い替えを検討すべきタイミングといえるでしょう。
あわせて読みたい
買い替えるタイミングの3つ目は、大規模修繕の前です。前述のように一定の年数を経たマンションは、大規模修繕が行われます。その際には住民に費用負担が発生しますが、その時期はあらかじめ決定しているものです。
費用負担の少ないケースであれば問題ありませんが、大幅にかかるのであれば、その前に買い替えを検討する方が得策でしょう。ただし、直前まで来てしまうと迫っている大規模修繕が売却額に影響を与えるので、余裕をもって早めに手を打つ必要があります。
一般的にマンションは築12年頃から大規模修繕が始まることが多いので、その2年ほど前の時期が、売却額に反映しない買い替えタイミングとして望ましいでしょう。
投資用不動産物件を買い替える際には、4種類の税金が発生します。これらは避けることはできない義務ですが、納税額を抑える方法があります。税金を優遇する特例を活用するのです。
要件を満たす必要はありますが、譲渡所得発生時に活用できる特例と譲渡損失発生時に活用できる優遇措置があります。
不動産売買によって譲渡利益が発生すると、その利益から売却に要した必要経費を差し引いて残った「所得」に対して、譲渡所得税が課せられます。
譲渡所得税の税率は、対象の不動産の所有期間が5年を基準として異なります。所有期間5年未満の場合は「短期譲渡所得」となり、税率は39.63%です。所有期間5年超の場合は「長期譲渡所得」で税率は20.315%となります。
不動産取引における売買契約書には収入印紙の添付が義務づけられています。
必要な額面の印紙を購入することで、印紙税を納めたことになります。契約書に印紙を添付しない場合、罰則を受けることがあるので注意が必要です。なお、2022年5月18日から不動産取引に電子契約が認められ、電子契約の場合は非課税となり印紙税は不要です。
不動産を取得した際は、不動産登記を行う必要があります。その際に課せられるのが登録免許税です。
登記の手続きは専門性が高いため、司法書士に依頼するのが一般的となります。その場合には、必要書類の発行に要した費用とは別に、司法書士への報酬の支払いも必要となります。
新たな不動産物件を取得した際に、不動産取得税が課せられます。
ただし、取得時点ではなく、取得後に「納税通知書」が届いた段階での納付となるので注意が必要です。物件がマンションなどの場合、高額になることがあります。
売却物件が賃貸併用住宅や店舗併用住宅など居住用財産の定義に当てはまる場合、売却で譲渡所得が発生した際に活用できる可能性がある特例が3種類あります。「3,000万円の譲渡所得控除」「居住用財産の買換え特例」「軽減税率」です。
売却した物件の購入時の費用と売却に要した必要経費を、売却額から差し引いて利益が残れば譲渡所得が発生したことになり、特例の対象となる可能性があります。
まず、3,000万円の特別控除を受けるには、対象の投資物件が賃貸併用住宅など居住用であったことや、居住用財産の特例を前年もしくは前々年に受けていないこと、関係者への売却ではないことなどです。
買換え特例や軽減税率の要件は、居住用財産として所有期間が10年を超えることや、居住用財産の特例を前年もしくは前々年に受けていないこと、他の居住用財産特例を受けていないことや関係者への売却ではないことなどです。
不動産売買で譲渡損失が発生した際に活用できる、税金の優遇措置もあります。売却額から取得費用と必要経費を差し引いてマイナスになるケースが対象となる「譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」です。
この特定が適用されれば、損益を翌年に繰越して計上できます。つまり翌年も損失分が所得から控除されて、税額を抑えることができるのです。
特例を受けるための要件は、譲渡する年の元旦までに、最低でも5年間は所有して居住していた物件であること、対象物件に対して金融機関のローンを組んでおり、10年以上の償還期間が残っていることなどです。
他にも譲渡の前年から譲渡の翌年までに50平方メートル以上の床面積を持つ物件を取得し居住すること・損失を繰越控除する年度の所得が3,000万円以下であること、居住用財産の特例を受けていないことなどの要件があります。
こちらの記事もおすすめです
不動産投資のリスクを解説!「やめとけ」と言われる理由と対策方法
上記のような特例および優遇措置を、さらに小規模宅地等の特例などと組み合わせると、将来発生する可能性がある相続税対策になります。
また、投資用物件を買い替える先が賃貸ビルであった場合にも、さらに優遇措置が活用できるケースがあります。
小規模宅地等の特例とは、要件を満たす面積が小さい宅地について、相続税の計算上で評価額の一定の割合が減額される特例です。
被相続人の事業用宅地等が貸付事業用宅地等に該当する場合、200平方メートルまでの宅地は50%軽減されます。
例えば買い替え前の物件が200平方メートルを超える駐車場等だった場合、小規模宅地等の特例が適用されても、200平方メートルを超える部分は軽減対象外となるでしょう。
そこで、その物件を売却してマンションなどに買い替えすると、全体を面積200平方メートルに抑えられます。そうなれば小規模宅地等の特例の適用で、相続税を減額できるのです。
投資用不動産物件を売却して賃貸ビルに買い替えした場合、土地の評価は「貸家建付地評価」、建物の評価は「貸家評価」で計算され、小規模宅地等の特例と併せてさらに相続税を減額できます。
土地の評価の計算式は次のようになります。
【更地の土地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=貸家建付地評価額】
評価額2億円の土地で、借地権割合70%、借家権割合30%、賃貸割合100%として計算すると、評価額は以下のようになります。
【2億円×(1-70%×30%×100%)=1億5,800万円】
また、貸家評価額については以下のように計算します。
【建物の評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)=貸家評価額】
評価額4,000万円の建物の場合、貸家の評価額は以下のようになります。
【4,000万円×(1-30%×100%)=2,800万円】
賃貸用物件に買い替えることで、建物も土地も評価額を引き下げることができるので、小規模宅地等の特例の適用と併せると相続税が大幅に減額できます。
こちらの記事もおすすめです
不動産投資を行っている場合には、所有物件の周辺の環境変化や不動産市場のトレンドの変化による価値の下落や、大規模修繕による多額の費用発生などを避けるために、物件を買い替えたほうが賢明なケースがあります。
やみくもに買い替えるのではなく、買い替え時の税金を抑える特例・優遇措置などを活用しましょう。さらに小規模宅地の特例を組み合わせたり、賃貸物件に買い替えたりすることで将来の相続税対策も施せます。
不動産投資に取り組んでいるみなさんは、ここで紹介した情報を参考に買い替えるべきタイミングを逃さないようにしてください。
監修者
魚角 幸正
インボイス制度は2023年10月から始まった消費税に関する新しい制度であり、不動産オーナーにも影響を与える場合があります。法人テナントなど課税事業者が借主の場合、不動産オーナーが免税事業者のままでは、仕入税額控除を受けるためのインボイスを発行できません。 本記事では、不動産オーナーの賃貸運営に及ぼすインボイス制度の影響や、登録しない場合のリスク、登録のメリット・デメリットについて解説します。 ポイ...
大家になるために、特別な資格は不要ですが、アパート経営を行う目的や理由を明確にしたり、不動産投資の基本知識を身につけたりする必要はあります。また、どのように資金を調達するかまで考えることも必要です。 この記事では、大家になるにあたってどのような準備が必要なのか、またどのような流れで大家になるかなどについて解説します。将来的に大家になりたい人は、ぜひ最後までご覧ください。 ポイント 大家になるための...
資産承継は、財産を次世代に安全かつ計画的に引き継ぐための手段です。承継対象資産の整理や承継者の明確化を行い、遺言書や信託を活用することで、相続時の手続きや税負担を軽減できます。 本記事では、資産承継のステップや円滑に進めるためのポイントなどを詳しく解説します。 ポイント 資産承継とは、保有する資産を次世代や後継者へ引き継ぐこと 資産承継を円滑に進めるためには、計画と手順に沿った準備が大切 円満に資...
土地信託とは、土地の所有者が土地を専門家に信託し、管理や運用を任せることで収入を得る仕組みのことです。不動産運用の経験がない方でも始めやすく、自己資金がなくても土地活用ができるのがメリットですが、土地を自由に利用できなくなる、信託報酬が発生するなどのデメリットもあります。 この記事では、土地信託の概要をはじめ、土地信託の流れや主な運用方法などについて解説します。土地信託に興味をお持ちの方は、ぜひ最...
所有している土地を有効活用したいけれど、「多額の初期費用がかかるのではないか」と不安に感じている人も多いのではないでしょうか。実は、まとまった資金なしでも、所有している土地を活用して利益を得られる方法はいくつかあります。ただし、そのリスクや注意点はしっかり確認しておく必要があります。 本記事では、資金なし・少額で土地活用を始める方法や注意点、土地活用が可能な土地の条件について解説します。 ポイント...
東京でのアパート経営は、賃貸需要の高さや家賃水準の高さといったメリットがある一方で、地価や建築費の高さ、利回りの低さといった課題もあります。 本記事では、東京ならではの特性を踏まえ、アパート経営のメリットと注意点をわかりやすく解説します。 ポイント 東京でのアパート経営は安定した賃貸需要と高い家賃収入が見込める 東京でアパート経営する際は、地価の高さや利回りの低さ、税金の高さに注意が必要 東京のア...
海外移住を予定していたり、海外赴任の可能性のある賃貸不動産のオーナーにとって、日本国内の賃貸経営や税務対応は大きな課題となります。入居者対応や家賃管理、家賃収入の確定申告などは現地から直接行うことができないため、管理会社への委託や納税管理人の選任が不可欠です。 本記事では、海外に移住・赴任するオーナーが直面するリスクや対応策を解説し、安心して賃貸経営を続けるためのポイントを紹介します。 ポイント ...
「富裕層の投資戦略」と聞くと、多くの人が「特別な金融商品」や「限られたネットワーク内での情報交換」を想像するかもしれません。しかし、実際に長年にわたって資産を守り増やしてきた富裕層を観察すると、その答えは意外とシンプルです。 『どのように資産を守りながら安定的に資産を伸ばすか』 この問いを軸に投資戦略を組み立てているのです。 ここで注目すべきは、日本の富裕層が一様ではないという点です。資産形成の経...
資産価値とは、現金や不動産、株式などの資産が持つ経済的な価値を指し、不動産の場合は土地や建物の市場での取引価格や評価額で表されるのが一般的です。不動産の資産価値は立地条件や築年数、建物の状態など多くの要素で左右されるため、適切な管理や市場動向の把握によって維持・向上させることが可能です。 本記事では、資産価値の概要や価値の高い土地・建物の条件、維持するために必要なことを解説します。 ポイント 不動...
賃貸経営において入居率と稼働率は、どちらも空室状況や収益性を測るために重要な指標です。入居率はある時点にどれだけ部屋が埋まっているかを示すのに対し、稼働率は一定期間のうち実際に稼働していた割合を表すといった違いがあります。 本記事では、入居率と稼働率の違いやそれぞれが果たす役割、活用場面などをわかりやすく解説します。 ポイント 入居率とはある時点の入居状況、稼働率は一定期間の入居状況を示す指標であ...