2026年度税制改正大綱で、不動産オーナーが押さえたい3つの変化
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不動産投資家K
投資用の不動産物件には投資のコストやリスクを考えて、買い替えたほうがよいタイミングがあります。また不動産の買い替えには税金がかかります。今回の記事では投資用不動産の買い替えを検討すべき理由とタイミング、そして節税対策について、わかりやすく紹介します。
不動産投資において状況によっては、投資物件を買い替えるほうが良い場合があります。その主な理由としては以下の2つがあげられます。
このどちらか、もしくは両方の理由があれば、投資物件を買い替えるタイミングといえるでしょう。
1つ目の理由は追加費用の発生を回避するためです。 所有している不動産に物理的な補修が必要になることがありますが、補修には追加の費用が発生します。
追加の費用の内容は、マンションであれば大規模修繕などが考えられます。
完成してから一定の年数を経たマンションは大規模修繕が必要ですが、多額の費用が想定される場合には、補修が必要になる前に買い替え、費用負担を避けることが有効です。
2つ目の理由は投資リスクを低減するためです。
不動産は、周辺環境の変化を理由に、資産価値や評価が下がってしまうことがあります。資産価値や評価が低下する前に売却できれば、リスクを低減することができるため、買い替えが必要になるケースといえます。
資産価値が低下しそうな懸念材料がある場合には、市場価格に反映される前に買い替えることで、損失を防ぐことができます。
不動産投資用の物件を買い替えるタイミングには、一般的に以下の3つが考えられます。
買い替えるタイミングのひとつ目は、投資物件の周辺環境が悪化しそうなときです。投資用不動産物件は周辺環境の悪化により、資産価値にマイナスの影響が出る場合があります。
たとえば、近隣の病院やスーパーマーケットなどの施設の閉鎖・撤退や、都市再開発による繁華街の移転などです。こうした変化があれば、物件の市場価値に影響するでしょう。
常日頃から周辺環境の情報にアンテナを張り情報をキャッチすることが大切です。悪い変化が起きそうな情報があっても、資産価値が下がる前に買い替えることで損失を回避できます。
買い替えるタイミングの2つ目は、不動産市場に変化が起きたときです。不動産市場にはトレンドがあるので、売却額が上昇傾向か下降傾向か、安定しているのかを見極める必要があります。
ひとつ目の「周辺環境」がミクロ的な要素とすれば、「不動産市場の変化」はマクロ的な要素といえるでしょう。最近までは問題なかったのに、トレンドが変化により売却額が下降に向かう場合があります。
そのような兆しがみえてきたら、保有物件の価値が下がる前に買い替えを検討すべきタイミングといえるでしょう。
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買い替えるタイミングの3つ目は、大規模修繕の前です。前述のように一定の年数を経たマンションは、大規模修繕が行われます。その際には住民に費用負担が発生しますが、その時期はあらかじめ決定しているものです。
費用負担の少ないケースであれば問題ありませんが、大幅にかかるのであれば、その前に買い替えを検討する方が得策でしょう。ただし、直前まで来てしまうと迫っている大規模修繕が売却額に影響を与えるので、余裕をもって早めに手を打つ必要があります。
一般的にマンションは築12年頃から大規模修繕が始まることが多いので、その2年ほど前の時期が、売却額に反映しない買い替えタイミングとして望ましいでしょう。
投資用不動産物件を買い替える際には、4種類の税金が発生します。これらは避けることはできない義務ですが、納税額を抑える方法があります。税金を優遇する特例を活用するのです。
要件を満たす必要はありますが、譲渡所得発生時に活用できる特例と譲渡損失発生時に活用できる優遇措置があります。
不動産売買によって譲渡利益が発生すると、その利益から売却に要した必要経費を差し引いて残った「所得」に対して、譲渡所得税が課せられます。
譲渡所得税の税率は、対象の不動産の所有期間が5年を基準として異なります。所有期間5年未満の場合は「短期譲渡所得」となり、税率は39.63%です。所有期間5年超の場合は「長期譲渡所得」で税率は20.315%となります。
不動産取引における売買契約書には収入印紙の添付が義務づけられています。
必要な額面の印紙を購入することで、印紙税を納めたことになります。契約書に印紙を添付しない場合、罰則を受けることがあるので注意が必要です。なお、2022年5月18日から不動産取引に電子契約が認められ、電子契約の場合は非課税となり印紙税は不要です。
不動産を取得した際は、不動産登記を行う必要があります。その際に課せられるのが登録免許税です。
登記の手続きは専門性が高いため、司法書士に依頼するのが一般的となります。その場合には、必要書類の発行に要した費用とは別に、司法書士への報酬の支払いも必要となります。
新たな不動産物件を取得した際に、不動産取得税が課せられます。
ただし、取得時点ではなく、取得後に「納税通知書」が届いた段階での納付となるので注意が必要です。物件がマンションなどの場合、高額になることがあります。
売却物件が賃貸併用住宅や店舗併用住宅など居住用財産の定義に当てはまる場合、売却で譲渡所得が発生した際に活用できる可能性がある特例が3種類あります。「3,000万円の譲渡所得控除」「居住用財産の買換え特例」「軽減税率」です。
売却した物件の購入時の費用と売却に要した必要経費を、売却額から差し引いて利益が残れば譲渡所得が発生したことになり、特例の対象となる可能性があります。
まず、3,000万円の特別控除を受けるには、対象の投資物件が賃貸併用住宅など居住用であったことや、居住用財産の特例を前年もしくは前々年に受けていないこと、関係者への売却ではないことなどです。
買換え特例や軽減税率の要件は、居住用財産として所有期間が10年を超えることや、居住用財産の特例を前年もしくは前々年に受けていないこと、他の居住用財産特例を受けていないことや関係者への売却ではないことなどです。
不動産売買で譲渡損失が発生した際に活用できる、税金の優遇措置もあります。売却額から取得費用と必要経費を差し引いてマイナスになるケースが対象となる「譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」です。
この特定が適用されれば、損益を翌年に繰越して計上できます。つまり翌年も損失分が所得から控除されて、税額を抑えることができるのです。
特例を受けるための要件は、譲渡する年の元旦までに、最低でも5年間は所有して居住していた物件であること、対象物件に対して金融機関のローンを組んでおり、10年以上の償還期間が残っていることなどです。
他にも譲渡の前年から譲渡の翌年までに50平方メートル以上の床面積を持つ物件を取得し居住すること・損失を繰越控除する年度の所得が3,000万円以下であること、居住用財産の特例を受けていないことなどの要件があります。
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上記のような特例および優遇措置を、さらに小規模宅地等の特例などと組み合わせると、将来発生する可能性がある相続税対策になります。
また、投資用物件を買い替える先が賃貸ビルであった場合にも、さらに優遇措置が活用できるケースがあります。
小規模宅地等の特例とは、要件を満たす面積が小さい宅地について、相続税の計算上で評価額の一定の割合が減額される特例です。
被相続人の事業用宅地等が貸付事業用宅地等に該当する場合、200平方メートルまでの宅地は50%軽減されます。
例えば買い替え前の物件が200平方メートルを超える駐車場等だった場合、小規模宅地等の特例が適用されても、200平方メートルを超える部分は軽減対象外となるでしょう。
そこで、その物件を売却してマンションなどに買い替えすると、全体を面積200平方メートルに抑えられます。そうなれば小規模宅地等の特例の適用で、相続税を減額できるのです。
投資用不動産物件を売却して賃貸ビルに買い替えした場合、土地の評価は「貸家建付地評価」、建物の評価は「貸家評価」で計算され、小規模宅地等の特例と併せてさらに相続税を減額できます。
土地の評価の計算式は次のようになります。
【更地の土地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=貸家建付地評価額】
評価額2億円の土地で、借地権割合70%、借家権割合30%、賃貸割合100%として計算すると、評価額は以下のようになります。
【2億円×(1-70%×30%×100%)=1億5,800万円】
また、貸家評価額については以下のように計算します。
【建物の評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)=貸家評価額】
評価額4,000万円の建物の場合、貸家の評価額は以下のようになります。
【4,000万円×(1-30%×100%)=2,800万円】
賃貸用物件に買い替えることで、建物も土地も評価額を引き下げることができるので、小規模宅地等の特例の適用と併せると相続税が大幅に減額できます。
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不動産投資を行っている場合には、所有物件の周辺の環境変化や不動産市場のトレンドの変化による価値の下落や、大規模修繕による多額の費用発生などを避けるために、物件を買い替えたほうが賢明なケースがあります。
やみくもに買い替えるのではなく、買い替え時の税金を抑える特例・優遇措置などを活用しましょう。さらに小規模宅地の特例を組み合わせたり、賃貸物件に買い替えたりすることで将来の相続税対策も施せます。
不動産投資に取り組んでいるみなさんは、ここで紹介した情報を参考に買い替えるべきタイミングを逃さないようにしてください。
監修者
魚角 幸正
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