仮想通貨(暗号資産)は相続できる?相続税の評価方法と手続き、生前対策を解説

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ビットコインなどの仮想通貨を保有する人が増える一方、その相続について家族と話し合っている方は、まだ多くないかもしれません。通帳や権利証のような形がなく、スマートフォンやパソコン上で管理されるため、相続人が存在に気づけない、見つけても取り出せない、といった問題が起こりやすい資産です。

なお、「仮想通貨」は広く使われている呼び方ですが、法令上の呼称は2020年5月から「暗号資産」に変更されています。本稿では、一般になじみのある「仮想通貨」も残し、「仮想通貨(暗号資産)」と表記します。相続税の扱いや手続き、生前に準備しておきたいことを整理します。

ポイント

  1. 仮想通貨(暗号資産)も相続財産に含まれ、相続税の課税対象になる
  2. 交換業者の口座と本人管理のウォレットでは、相続手続きが大きく異なる
  3. 死亡時点の価格で評価されるため、納税資金の確保と円滑な引き継ぎの準備が重要
目次

仮想通貨(暗号資産)も相続財産に含まれる

仮想通貨は、現金や預貯金、不動産と同じく、経済的な価値を持つ財産です。相続や遺贈によって取得したときは、相続税の課税対象になります。

ただし、仮想通貨を相続しただけで、必ず相続税が発生するわけではありません。預貯金、不動産、有価証券などを含めた正味の遺産額が、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算する基礎控除額を超えると、原則として相続税の申告が必要です。計算の結果、税額が生じる場合は納税も必要になります。申告期限は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。

ここで注意したいのは、相続人が仮想通貨の存在を知らなくても、相続財産から外れるわけではないことです。申告後に口座やウォレットが見つかれば、修正申告や追加納税が必要になる可能性があります。まずは、相続財産を漏れなく把握することが第一歩です。

相続手続きは、保管方法によって大きく異なる

ここでは、暗号資産交換業者の口座で管理する方法と、本人管理のウォレットに保管する方法に分けて解説します。

暗号資産交換業者に預けているケース

国内の暗号資産交換業者に口座があるときは、相続人が事業者へ連絡し、所定の相続手続きを進めます。一般に、戸籍関係書類、相続人の本人確認書類、遺言書や遺産分割協議書などが必要になりますが、具体的な書類や資産の受取方法は事業者によって異なります。

被相続人のIDやパスワードがわかっていても、自分でログインして送金せず、まず事業者の窓口へ連絡します。相続人の口座へ暗号資産を移管する方法のほか、状況に応じて日本円で払い戻されることもあります。暗号資産のまま受け取る際は、移管先となる口座やウォレットを用意しなければならないこともあります。

利用先が一つとは限らないため、メールや取引履歴、銀行口座の入出金記録などを手がかりに特定します。被相続人のスマートフォンやパソコンには、交換業者からのメールや認証アプリなどの情報が残っていることもあります。調査が終わるまでは端末を初期化・処分せず、関連情報を保全しておきます。

あわせて、海外事業者の口座や、ステーキング・レンディングに回している資産がないかも確認します。

本人がウォレットで管理しているケース

本人が専用アプリやハードウェアウォレットを使って暗号資産を管理していると、交換業者を通じた相続手続きとは事情が異なります。

秘密鍵などは、暗号資産を移転するために欠かせない情報です。本人しか知らないまま亡くなると、相続人が資産の存在を把握できても、動かせなくなる可能性があります。利用者自身が秘密鍵を管理するウォレットでは、こうした問題が特に起こりやすくなります。

その一方で、秘密鍵やシードフレーズを安易に家族へ共有すると、不正送金や紛失のリスクが高まります。相続対策では、『誰にも知らせない』『そのまま書き残す』の二択ではなく、安全性を保ちながら引き継げる方法を考えておくことが重要です。

相続税評価は、原則として死亡時点の価格が基準

相続税では、被相続人が亡くなった日が「課税時期」です。活発な市場がある仮想通貨は、相続人などが利用する暗号資産交換業者が公表する課税時期の取引価格を基に評価します。死亡日時点の取引価格などが記載された残高証明書を取得できれば、そこに記載された価格を用いることもできます。

販売所で購入価格と売却価格が別々に示されているケースでは、売却価格で評価して差し支えないとされています。複数の交換業者を利用しているときは、選択した事業者の価格を用いることも認められています。

取引が少なく、客観的な相場が成立していない銘柄は、内容や性質、実際の取引状況を踏まえた個別判断が必要です。主要な仮想通貨と流動性の低いトークンを同じ方法で評価できるとは限りません。

価格変動が大きい仮想通貨は、死亡時には高値でも、相続手続きや納税の時点までに大きく値下がりすることがあります。相続税は原則として死亡時点の評価額を基に計算されるため、値下がり後の相場だけで資金計画を立てると、納税資金が不足するおそれがあります。

相続税は、原則として申告期限までに金銭で一括納付します。手元の現預金が少ないときは、仮想通貨を売却するかどうかを早めに検討しなければなりません。交換業者の手続きにかかる期間も見込み、納税資金は仮想通貨だけに頼らず、現預金を含めて準備しておく必要があります。

遺産分割では、価格が動くことも考慮する

まずは遺言書の有無や内容を確認します。遺産分割が必要な場合は、相続人同士で、誰がどの銘柄をどれだけ取得するかを決めます。仮想通貨は細かく分けられる一方、協議を進めている間にも相場が動きます。

数量で分けるのか、一定時点の円換算額で調整するのかを決めておかないと、合意時と実際の移管時で取り分の差が広がることがあります。どの時点の価格を基準にするかを相続人間で取り決め、遺産分割協議書にも銘柄、数量、保管先などを具体的に記載しておくと、移管手続きを進めやすくなります。

相続後に売却したときの税金も確認する

なお、相続税上の評価額が、そのまま相続後の売却時の取得価額になるわけではありません。相続により取得した暗号資産の取得価額は、被相続人の死亡時において、被相続人がその暗号資産について採用していた「総平均法」または「移動平均法」により算出した金額となります。被相続人が評価方法を届け出ていなかった場合は、総平均法が適用されます。取得価額を確認できるよう、購入履歴や年間取引報告書に加え、評価方法の届出状況も引き継いでおくことが望ましいでしょう。

相続後の課税関係も押さえておきます。現行では、暗号資産の売却や使用による利益は、原則として雑所得に区分され、給与所得などと合算する総合課税の対象です。

令和8年度税制改正では、一定の暗号資産取引を20%(所得税15%、住民税5%。復興特別所得税等を除く)の申告分離課税とする規定が設けられ、その前提となる金融商品取引法等の改正法も2026年7月15日に成立しました。ただし、適用は同改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後となり、すべての銘柄や取引が対象になるわけではありません。実際に売却する時点で、適用される制度を確認する必要があります。

仮想通貨の相続で、生前に準備しておきたいこと

生前対策では、利用している交換業者やウォレット、保有銘柄、相続時の連絡先を資産一覧に整理します。残高は常に変動するため、金額を固定的に記すより、最新の情報を確認できる場所や手順を示しておくほうが管理しやすくなります。

こうした資産一覧や、家族が日常的に見られる場所には、秘密鍵やシードフレーズをそのまま記載しないようにします。遺言書やエンディングノートには資産の存在や確認方法を記し、秘密鍵やシードフレーズ自体は別の安全な方法で保管します。誰がどの段階で情報にアクセスできるのかまで、あらかじめ決めておく必要があります。

あわせて、仮想通貨を誰に承継するのか、暗号資産のまま残すのか、相続発生後に換金するのかも考えておきます。受け手が仮想通貨に詳しくなければ、資産を残すつもりでも、管理や納税の負担が先に立つおそれがあります。

まとめ

仮想通貨(暗号資産)は相続でき、相続税の課税対象にもなります。ただし、預貯金などと比べて、存在の把握、アクセス方法、死亡時点の評価、相続後の管理という複数の課題があります。

重要なのは、保有額だけを伝えることではありません。資産の所在、引き継ぎの手順、困ったときの相談先まで、家族に伝わる形でまとめておくことが欠かせません。仮想通貨の相続対策は、税金への備えに加え、デジタル資産を家族が実際に受け取れる仕組みを整えることから始まります。

※2026年7月時点の公表情報を基に作成しています。

執筆者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、宅地建物取引士

水野 崇

水野総合FP事務所代表。東京理科大学理学部卒業。相談、執筆・監修、講演・講師、取材協力、メディア出演など多方面で活躍する独立系ファイナンシャルプランナー。テレビ朝日「グッド!モーニング」、BSテレ東「マネーのまなび」などに出演。NHK土曜ドラマ「3000万」の家計監修を担当。学校法人専門学校東京ビジネス・アカデミー非常勤講師。一般社団法人相続・事業承継コンサルティング協会会員。

<保有資格>1級ファイナンシャル・プランニング技能士|CFP認定者|宅地建物取引士|日本証券アナリスト協会検定会員補|証券外務員1種 ほか

【URL】https://mizunotakashi.com/

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