不動産クラウドファンディングとは? 類似手法との違いも解説

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不動産クラウドファンディングとは、不動産を購入せずに家賃収入や売買益を得る手法です。少額でも始められる点が、既存の不動産投資と異なります。 本記事では、不動産クラウドファンディングとはどのような仕組みなのか、ほかと何が異なるのかについて解説します。

ポイント

  1. 不動産クラウドファンディングとは、不動産を購入せずに家賃収入や売買益などの利益を得られる比較的新しい手法のこと
  2. 不動産投資に関連するクラウドファンディングは、ファンド型・株式型・融資型の主に3種類
  3. 不動産クラウドファンディング以外にも、現物不動産投資、J-REITなどの不動産投資方法がある

不動産クラウドファンディングとは?

不動産クラウドファンディングとは、不動産を活用した投資のひとつを指します。不動産クラウドファンディングが注目されるきっかけとなったのが、2017年の不動産特定共同事業法改正です。

2017年改正で電子取引に関する条項が追加され、個人投資家がインターネットを通じて不動産に投資しやすくなりました。2019年には、長期・安定的な不動産クラウドファンディングへの参加を促進するための内閣府令・国土交通省令の改正である「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」が策定されるなど、さまざまな施策が進められており、今後不動産クラウドファンディングがさらに活性化していくことが予想されます

不動産クラウドファンディングについて、より詳しく確認していきましょう。

参考: 国土交通省「不動産クラウドファンディング 規制の明確化等により使いやすく 報道発表資料」
国土交通省「不動産クラウドファンディング 規制の明確化等により使いやすく 別紙」

クラウドファンディングの概要

不動産クラウドファンディングでは、クラウド上で不動産投資の資金を集めることができます。クラウドファンディングとは、ネットを通じて不特定多数の人々から資金調達をすることです。

クラウドファンディングには、購入型・寄付型・株式型・融資型・ファンド型などさまざまな種類があります。不動産クラウドファンディングの場合、投資型や融資型、ファンド型の形式が一般的です。

クラウドファンディングの仕組み

不動産クラウドファンディングの仕組みは、運営会社がクラウドファンディングを通じて複数人の投資家から集めた資金を不動産取得や運営の費用にあて、事業から生じた利益を分配するというものです。

単独ではなく多数で同じ不動産に投資する点、運営会社が物件を選ぶ点、運営会社自身も出資する点などが主な特徴としてあげられます。

不動産クラウドファンディングの流れ

不動産クラウドファンディングを通じて、資産運用する際の流れは以下の通りです。

01
事業者を選ぶ
02
事業者のサイトで会員登録する
03
本人確認書類を提出する
04
出資したい物件を選ぶ
05
契約する
06
専用口座に入金する
07
運用が開始される
08
運用が終了すると、分配・払い戻しされる

なお、本人確認書類の提出や契約については、ネットで完結できる場合と、郵送のやり取りが必要な場合があります。

不動産のクラウドファンディング3種類

不動産クラウドファンディングは、仕組みによって3種類に分けられます。それぞれの特徴を確認していきましょう。

不動産投資型クラウドファンディング(ファンド型)

不動産投資型クラウドファンディングは、クラウドファンディングの中のファンド型に分類される形式です。事業者は特定の事業やプロジェクト等について投資家から資金を募り、不動産を購入します。

不動産投資型クラウドファンディングの主な特徴は、情報の公開が進んでいる点や案件の種類が幅広い点、主に物件からの賃料収入や売却益からリターンを得る点です。

株式投資型クラウドファンディング(株式型)

株式投資型クラウドファンディングは、クラウドファンディングの中の株式型に分類される形式です。事業者は非上場株式を発行し、インターネット上で多数の人から少額の資金を調達します。

株式投資型クラウドファンディングの主な特徴は、投資家は同一会社に年間50万円までしか投資できない点、株主優待を受けられる可能性がある点です。また、事業者(株式発行者)には、資金調達できる金額が年間1億円未満という制限が設けられています。

定期的な分配金(インカムゲイン)は期待できず、主に株式売却益(キャピタルゲイン)が投資家の収入源です。

参考:日本証券業協会「株式投資型クラウドファンディング業務」

ソーシャルレンディング(融資型)

ソーシャルレンディングは、クラウドファンディングの中の融資型に分類される形式です。ソーシャルレンディングを運営する企業が資金調達を希望する事業者と投資家をマッチングし、投資家から集めた金額を企業に融資します。

ソーシャルレンディングの特徴は、事業者からの返済金利がリターンの原資となる点と投資先の匿名性が高い点です。投資家は、あらかじめ返済金利がわかっているため、どれくらいの収入を定期的に得られるか予測できます。

なお、具体的にどのような不動産クラウドファンディングがおすすめかについては、以下の記事を参考にしてください。

類似する不動産投資手法との違い

不動産投資は、不動産クラウドファンディング以外の手法でも可能です。混同しやすい手法の特徴や違いを解説します。

現物不動産投資との違い

現物不動産投資とは、投資家自身が不動産を購入・所有し、賃貸用物件として運用して家賃などから収益を得る従来型の不動産投資のことです。

不動産クラウドファンディングとの大きな違いとして、初期投資金額があげられます。不動産クラウドファンディングは数万円単位の少額から投資できるのに対し、現物不動産投資は最低でも数百万円は必要です。

J-REITとの違い

J-REITとは、多数の投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなどの不動産を購入し、賃貸収入や売買益を投資家に分配する投資信託のひとつです。

不動産クラウドファンディング(不動産投資型クラウドファンディングの場合)では、直接不動産を選択できるのに対し、J-REITでは具体的な指定はできない点が異なります。またJ-REITは上場されているため、株式市場が開いている間はいつでも売買できて流動性が高い点も違いです。

参考:一般社団法人 投資信託協会「そもそもJ-REITとは?」

不動産クラウドファンディングで知っておきたいポイント

ここまで不動産クラウドファンディングの概要を解説してきました。そのほかにも、知っておくと投資の判断材料になるポイントがあります。3つのポイントを確認しましょう。

なぜ比較的始めやすいと言われているか

不動産クラウドファンディングは、不動産投資の中でも比較的始めやすい投資手法といわれています。1万円から始められる上に手間もあまりかからない点が主な理由です。

従来の不動産投資であれば、数百万円以上の資金が必要なため金融機関からの借入が必要な場合もあります。また、修繕・ハウスクリーニングの費用負担も発生するでしょう。

不動産投資初心者や余計な手間・費用負担を避けたいという方にとって、不動産クラウドファンディングは敷居の低い投資手法です。

どんな点に注意すべきか

不動産クラウドファンディングでは、元本割れリスクがある点に注意が必要です。不動産価格や家賃収入の下落により、今まで得ていた収益が減少したり、投資している元本が割れたりしてしまう可能性があります。

また現物不動産投資と異なり、不動産は事業者が所有しているという点も理解しておかなければなりません。万が一事業者が倒産した場合、出資したお金が戻らない可能性もあります。

不動産クラウドファンディングのデメリットについては、以下の記事も参考にしてください。

かかる税金や確定申告すべき人

不動産投資型クラウドファンディングで受け取る分配金は、配当所得・利子所得・不動産所得ではなく、雑所得です。また、受け取る際には20.315%の税率(所得税および復興特別所得税15.315%、地方税5%)で一律源泉徴収されます。

給与所得者は、分配金を受け取っても確定申告する必要はありません。ただし、給与所得・退職所得以外の所得(不動産クラウドファンディングの分配金やネットショップでの売却益、FXなど)の合計額が20万円を超える際は、給与所得者であっても確定申告が必要です。

参考:国税庁「雑所得」
国税庁「副収入などがある方の確定申告」

まとめ

不動産クラウドファンディングとは、不動産を活用した投資のひとつです。特に、不動産投資型クラウドファンディングでは、運営会社がクラウドファンディングを通じて複数人の投資家から集めた資金を不動産取得や運営の費用にあて、事業から生じた利益を分配します。

従来の現物不動産投資との違いは、少額でも投資できるという点です。類似手法との違いを理解した上で、自分にあった不動産投資を進めましょう。

監修者

赤井 祐貴

略歴
大手通信会社にて経理、経営企画、事業会社投資を担当。2019年より不動産会社の経営企画部にて計数管理、アライアンス企画、事業開発、M&A等に携わっている。

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