アパート経営の収支シミュレーション!利益を最大化するコツと計算方法

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アパート経営者にとって、適切な収支計算は欠かせません。収支計画書を作成し、アパート購入時や物件の運用に役立てましょう。

この記事では、アパートの収支計算における利回りの計算方法や収支計画書の書き方と注意点のほか、利回りを高く維持するポイントも解説します。

ポイント

  1. アパート経営の収支計算には「実質利回り」を用いる
  2. 賃料・稼働率・空室率・修繕費の目標数値設定は特に重要
  3. 物件の立地選び・早期の空室対策・需要の変化にあわせた施策で、高利回りをキープ
目次

アパートの収支計算における利回りの計算方法

アパートの収支計算において注目したいポイントの1つが「利回り」です。

利回りとは、アパート建築への投資額に対する利益を数値化したもので、賃貸経営における採算性を判断する目安になります。

利回りには「表面利回り」「実質利回り」などいくつかの種類があり、それぞれ計算方法が異なります。利回りの種類によって数値が変わるため、考え方や計算方法を把握しておくことが大切です。

ここでは、利回りの種類と計算方法を解説します。

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表面利回り

表面利回りとは、アパートの購入価格に対する年間の賃料収入の割合です。表面利回りは、維持管理費などの諸経費を考慮しない数値で、以下のように計算します。

表面利回り(%)=年間賃料収入÷アパートの購入価格×100

表面利回りは、物件をざっくりと比較検討する際に役立ちます。一方、諸経費は考慮されていないため、利益率が高くなりがちです。収支計算には実態に近い評価を取り入れたほうがよいため、次に紹介する実質利回りを用いるほうがよいでしょう。

実質利回り

実質利回りとは、年間の諸経費やアパート購入時の諸経費を考慮して算出した利回りです。以下の計算式で算出できます。

実質利回り(%)=(年間賃料収入−アパート経営の諸経費)÷(アパートの購入価格価格+購入時の諸費用 )×100

アパート経営の諸経費・購入時の諸費用の例は、以下のとおりです。

アパート経営の諸経費

● 固定資産税
● 火災保険料
● 建物管理料
● 修繕費
● 水道光熱費

購入時の諸費用 ● 不動産仲介手数料
● 司法書士手数料
● 不動産登記費用
● 金融機関への融資手数料
● 収入印紙代

表面利回りから実際にかかる経費を差し引いて算出する実質利回りは、より物件の収益力の実態に近い数値の把握に役立ちます

キャッシュオンキャッシュ利回り

キャッシュオンキャッシュ利回りとは、ローンを除いた自己資金に対して得られた手取り金額の割合のことです。「自身のお金がどのくらい増えるか」という自己資本に対する利回りを把握できます。

キャッシュオンキャッシュ利回りの計算式は、以下のとおりです。

キャッシュオンキャッシュ利回り(%)=(年間の家賃収入-銀行への返済を含む諸経費)÷自己資金×100

以下の例で、シミュレーションしてみましょう。

  1. 物件価格:6,000万円
  2. ローン:4,000万円
  3. 頭金(自己資金):2,000万円
  4. 諸経費:300万円
  5. 毎年の返済額(利息含む):245万円
  6. 年間の賃料収入:800万円

計算式に当てはめると、キャッシュオンキャッシュ利回りは12.75%となります。

キャッシュオンキャッシュ利回り(%)=(800万円-300万円-245万円)÷2,000万円×100=12.75%

アパート経営を行う際に重要な収支計画書とは

収支計画書とは、事業における収入と支出を長期的にシミュレーションした計画書のことです。アパート経営を始めたり、アパートを建て替えたりする際に作成する必要があります。

ここでは、収支計画書の重要性や記載すべき項目、記入例を紹介します。

収支計画書を作成する理由

収支計画書を作成する主な理由は、「投資判断の材料にする」「金融機関から融資を受けやすくする」の2点です。

収支計画書を作成することによって将来的な収益をシミュレーションできるため、投資判断に役立ちます。また、金融機関からの融資を希望する際、収支計画を提出することで、長期的かつ確実に返済可能な旨をアピールすることが可能です。

収支計画書は物件購入時だけでなく、物件運用中にも見直すことがポイントです。現状所有している賃貸物件の支出で改善できるポイントがないか、適宜見直しを行いましょう。

収支計画書に記載する項目

収支計画書に記載する項目例は、以下のとおりです。

収入 ● 賃料
● 駐車料金
● 礼金
● 更新料
支出 ● 建物・賃貸管理費
● 修繕費
● 各種税金
● 火災保険料
● ローン返済金
収支 ● 月額手取り収入
● 年額手取り収入

Excelなどのテンプレートの活用はもちろん、手書き作成も可能です。

収支計画書の書き方・作成例

収支計画書の作成例は、以下のとおりです。

  項目 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
収入 (月額) 賃料 600,000 600,000 600,000 600,000 600,000
駐車料金 45,000 45,000 45,000 45,000 45,000
礼金 60,000 0 0 60,000 60,000
更新料 60,000 60,000 60,000 60,000 60,000
収入合計(①) 765,000 705,000 705,000 765,000 765,000
支出 (月額) 建物管理費 33,000 33,000 33,000 33,000 33,000
賃貸管理費 17,000 17,000 17,000 17,000 17,000
修繕積立金 25,000 25,000 25,000 25,000 25,000
固定資産税・都市計画税 31,000 31,000 31,000 31,000 31,000
共益費 (共用電気・水道など) 5,000 5,000 5,000 5,000 5,000
ローン返済金 330,000 330,000 330,000 330,000 330,000
支出合計(②) 441,000 441,000 441,000 441,000 441,000
収支 月額手取り収入 (①−②) 324,000 264,000 264,000 324,000 324,000
年額手取り収入 3,888,000 3,168,000 3,168,000 3,888,000 3,888,000
年額手取り収入 (累計) 3,888,000 7,056,000 10,224,000 14,112,000 18,000,000

アパート経営の収支を計算するうえで特に重要な指標

アパート経営の収支を計算する際、各項目の設定数値によってシミュレーション結果は大きく異なります。

ここでは、アパート経営の収支計算にあたって重視すべき指標や考え方、計算方法などを解説します。

賃料

アパート経営の収支計算で重要な指標の1つが、賃料です。

賃料は周辺物件の平均値をとるのでなく、競合物件の供給状況・成約賃料・物件ごとのスペック(専有面積や付帯設備等)・建物情報など、さまざまな情報をもとにマーケット調査を行ったうえで設定することが重要です。

賃料の設定にあたっては、不動産会社のアドバイスを参考にするケースがほとんどです。会社によって査定方法が異なるため、根拠や実績を確認して判断しましょう。

稼働率

アパート経営の収支計算で重要な指標の2つ目は、稼働率です。

稼働率とは、賃貸物件を運営している総日数のうち、入居(稼働)している総日数の割合のことです。以下の計算式で算出できます。

稼働率(%)=所有物件の各戸の入居日数合計÷(戸数×12カ月)×100

たとえば全12戸のアパートで3戸の解約があり、空室期間が65日間ずつだった場合の稼働率は95.5%です。

(365日×9戸+300日×3戸)÷(365日×全12戸)×100=4,185日÷4,380日×100=95.5%

稼働率を高めるために安易に賃料を下げれば、手元に残る収益が下がってしまいます。一方、賃料の維持にこだわり過ぎても、空室期間の長期化につながります。

賃料の引き下げや設備投資、広告の強化など、バランスを考慮しながら必要に応じた戦略を検討することが大切です

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空室率

アパート経営の収支計算で重要な指標の3つ目は、空室率です。

たとえ新築時に満室であったとしても、その先も常に満室を維持できる保証はありません。長期的には解約による空室も生じる前提で、空室率を設定しておきましょう。

一括借り上げの場合は、空室の有無に関わらず毎月一定額が収入として得られるため、空室率の心配は不要です。ただしエリアのマーケット状況によっては、契約時に定めた更新期間(例えば2年ごとなど)に行われる見直しの際に賃料が下落する可能性があります。周辺の空室率や成約賃料の推移なども考慮しながら、しっかり検討しましょう。

また、物件によっては一般管理(集金代行)で運営するほうが、収支が改善するケースもあります。

修繕費

アパート経営の収支計算で重要な指標の4つ目は、修繕費です。

収支計算の際は、入居者の入れ替え時の原状回復、設備の交換などに必要な費用を見越しておきましょう。大規模修繕についても、初期段階から想定して積み立てておくことがポイントです。

大きな修繕が必要な状態になってから一度に対策するのではなく、都度、小修繕を実施しておくことで、大規模修繕費用を抑えられるケースもあります。日頃の適切なメンテナンスで、突発的な出費を抑えましょう。

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アパート経営で利回りを高く維持するポイント

何の対策も講じないままアパート経営を続けた場合、利回りの低下を招く恐れがあります。

ここでは、アパート経営者が押さえておきたい、高利回りを保つポイントを紹介します。

物件の立地を選ぶ際は長期的な視点で考える

アパート経営で空室リスクを避け、利回りを高く維持するためには、長期的な視点から物件の立地を選ぶことが大切です

具体的には、以下のポイントをチェックしておきましょう。

  1. 交通機関へのアクセスがよいか
  2. 近隣に病院やスーパーが充実しているか
  3. 地域の人口が減少していないか
  4. 現在または将来的に再開発の予定はあるか

アパート経営は数十年にわたって続く点を考慮し、長期的な需要が見込める立地の物件を選びましょう。

購入時に満室の場合でも、長期入居者が退去して原状回復費用や次の入居者募集にかかる費用が多く発生する可能性があります。

入居者が退去することを想定して購入を検討しましょう。

空室対策を早い段階で行う

早い段階から空室対策を行うことも、高い利回りを維持するポイントの1つです。

空室の有無は、アパート経営の収入に大きく影響します。想定する入居者層を定めたうえで、「ターゲットに合ったデザインにする」「Wi-Fi環境の整備や浴室乾燥機の取り付けといったオプションをつける」などの対策を講じましょう。

ターゲットのニーズにあわせた独自性のあるアパートは物件価値が高まるため、空室リスクを抑え、高利回りを維持しやすくなります。

投資設備の費用とどれだけ賃料を上昇、もしくは下落させないことが可能か、何年で回収が可能か、を考慮しながら検討しましょう。

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需要の変化にあわせた施策を行う

高い利回りを維持するためには、需要の変化にあわせた施策を行うことを意識しましょう。

アパート経営を続ける中で需要は移り変わり、入居者からの「物件の選ばれやすさ」も変化していくものです。

たとえばコロナ禍を経て、在宅ワークやテレワークの浸透が浸透し、宅配需要も増している近年では、インターネット環境の整備や宅配ボックスの設置などへのニーズが高まっています。犯罪対策として、モニター付きインターホンの設備を重視する人も増えている傾向があります。

既存物件の場合は賃料を下落させないためにも、需要に応じた施策を検討しましょう。

税金対策を行う

不動産所得にかかる税金対策を行うことも大切です。

所得税や住民税は、所得金額に対して課税されます。また、不動産所得は、年間の収入から必要経費を引いた額で算出されます。不動産所得への課税額を少しでも軽減するために、経費は漏れなく計上しましょう。

不動産所得が多い場合、法人化して法人税を納めるほうが、合計の支払い税額が少なくなる可能性があります。アパート経営が軌道に乗り、不動産所得が大きくなった際は、法人化も検討してみるとよいでしょう。

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まとめ

アパートの収支計算における利回りは、実質利回りを重視するとよいでしょう。物件購入時には収支計画書を作成し、物件運用中にも見直すことが大切です。収支計算の際は、特に賃料・稼働率・空室率・修繕費の数値設定に気をつける必要があります。

オーナー様それぞれのアパート経営があります、保有期間が短期や長期で期中の運用は変わっていきます。長期的な視野でみる場合、需要の変化にあわせた施策も求められます。入居者のニーズを見極めた適切な対応で、入居率を上げることはもちろん、オーナー様が求める賃貸経営を見つけるために運用中もアパートの収支計画を行ってまいりましょう。

監修者

宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士

長谷川 憲一

20年以上にわたり不動産業界に従事。中古物件の仕入れ販売、賃貸管理業務、マンスリーマンション事業の立ち上げ、リーシング事業の立ち上げなどに携わる。現在は、幅広い経験と知識を生かし、プロパティマネジメント・アセットマネジメントを担っている。

監修者

宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士

久保田 克洋

不動産業界に20年以上従事。賃貸管理を中心に管理受託業務・売買仲介・民泊運営を担った幅広い知識と経験をベースに、現在はプロパティマネジメント・アセットマネジメントを担っている。

不動産投資家Kでは無料相談を承っております!

不動産投資家Kとその仲間たちでは、「土地を相続する予定だけど、どうすれば良いか検討している」「管理が大変なので、土地を売却したいと思っている」など、土地・建物のさまざまなご相談を承っております。

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