課税対象となる譲渡所得(3,000万円特別控除適用後)が6,000万円以下までは、譲渡所得税率が14.21%(所得税率が10.21%%、住民税が4%)になります。10年超所有時の軽減税率を利用することで、長期譲渡所得に適用される税率よりもさらに低い税率で計算することが可能です。
課税対象となる譲渡所得(3,000万円特別控除適用後)が6,000万円を超える場合は、6,000万円を超えた残りの金額に通常の長期譲渡所得税率が適用されます。 たとえば、譲渡所得が1億2,000万円で、3,000万円特別控除と10年超所有時の軽減税率を適用した場合は、以下の計算式で求めます。 まず、3,000万円特別控除を適用した計算式は、以下のとおりです。
課税対象の譲渡所得=譲渡所得-特別控除額
=1億2,000万円-3,000万円
=9,000万円
つづいて、10年超所有時の軽減税率を適用します。
譲渡所得税
=6,000万円×10年超所有時の軽減税率+(課税対象の譲渡所得-6,000万円)×長期譲渡所得軽減税率
=6,000万円×14.21%+(9,000万円-6,000万円)×20.315%=852万6,000円+609万4,500円
=1,462万500円
10年超所有時の軽減税率は、所轄の税務署に譲渡所得の内訳書、売却した居住用家屋やその敷地の登記事項証明書を提出することで申請できます。 なお、マイホーム売却の前日において、マイホームを売却した方の住民票に記載されている住所とマイホームの所在地が異なる場合は、以下のものを用意しましょう。
取得費加算の特例
取得費加算の特例とは、相続した不動産を売却する際に相続税の一部を譲渡所得を計算する際の取得費に加算できる特例です。取得費が増えれば、譲渡所得が少なくなります。つまり、結果的に課税金額が安くなります。 取得費に加算できる金額を求める計算式は、以下のとおりです。
取得費に加算できる金額
=相続税額×相続税の課税価格の計算の基になる譲渡した財産の価額÷(相続税の課税価格+債務控除額)
ただし、この計算式を用いて算出された金額が取得費加算特例を使用しないで計算した譲渡益の金額を超える場合には、その譲渡益相当額になります。譲渡益を求めるには、以下の計算式を使用します。
譲渡益=(土地、建物、株式などを売った金額)-(取得費+譲渡費用)
取得費加算の特例を利用する条件は、以下のとおりです。
- 相続または遺贈により取得した財産である
- 相続時に課された相続税をすでに納税している
- 相続開始日の翌日から3年10カ月以内に売却している
取得費加算の特例は、3,000万円特別控除と同様に確定申告時に申請する必要があります。適用条件を満たしていたとしても、自動的に適用されるわけではないため、手続きを忘れないように気をつけましょう。
特定居住用財産の買換え特例
特定居住用財産の買換え特例とは、所有期間が10年を超えるマンションなどの不動産を売却して新しい住宅を買い換える際に、譲渡益の課税を将来に繰り延べられる特例です。
通常、不動産を売却して売却益が発生した場合は、その分税金がかかります。しかし、特定居住用財産の買換え特例を利用すれば、この売却時には課税されず、次回の売却時に繰り越すことが可能です。
たとえば、1,000万円で購入したマンションを4,000万円で売却し、6,000万円のマイホームに買い換えた場合、通常であれば3,000万円の譲渡益が課税対象になります。しかし、特定居住用財産の買換え特例を利用すれば、売却した年には譲渡益に対する税金を納付しなくて済みます。
支払いが免除されるわけではありませんが、直近の支払額は減るため、現在支払うのが難しいという方におすすめの特例です。
特定居住用財産の買換え特例を利用する条件は、以下のとおりです。
特定居住用財産の買換え特例を利用する条件
- 家族だけではなく自分自身が住んでいる
- 売却時にマンションなどの不動産の所有期間が10年を超えている
- 転居してから3年以内の売却である
- 3,000万円特別控除特例や損益通算及び繰越控除の特例などを直近2年間受けていない
- 売却金額が1億円以下である
- 売却相手が配偶者や親族など特別な関係ではない
- 日本国内にある
買換える不動産の条件は、以下のとおりです。
買換える不動産の条件
- 日本国内にある
- 売却した年の前後1年以内に新しい住居を取得しているまたは取得見込みがある
- 新耐震基準を満たしている
- 床面積が50平方メートル以上かつ土地の面積が500平方メートル以下である
- 耐火建築物以外の中古住宅である場合、建築後年数が25年以内または耐震基準を満たしている
このように、特定居住用財産の買換え特例にはさまざまな条件があるため、適用できるかどうかをあらかじめ確認しましょう。
特定居住用財産の買換え特例は、所轄の税務署で申請できます。申請時には以下の書類を用意する必要があります。
- 譲渡所得の内訳書
- 所有期間が10年を超えることを証明できる登記事項証明書等
- 買換えた資産を取得したことと面積を確認できる登記事項証明書と売買契約書のコピー
- 売却金額が1億円以下であることが分かる売買契約書
また、売却した資産が以下のいずれかに該当することを明らかにする書類の提出も必要です。
- 自分が住んでいるマンションのうち国内にある(所有期間が10年以上)
- 転居などにより住まなくなった日から3年経過する年の12月31日までに売却する
- 自分が住んでいた家屋及びその家屋の敷地や借地権
- 自分が住んでいた家屋が災害により滅失した場合は、その年の1月1日において所有期間が10年を超える家屋の敷地や借地権
多くの書類が必要なため、不安に感じる方や分からない方は、マンションの売却をサポートしてくれた不動産会社に相談するのがおすすめです。
参考:国税庁 「個人の方に係る復興特別所得税のあらまし」
譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例
譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例とは、マンションなどの不動産を売却して損失が出た場合に利用できる特例です。 所有期間が5年を超える不動産を売却して損失が出てしまった場合、不動産を売却した年の給与などそのほかの所得と不動産売却時の損失を合算できます。
ほかの所得と不動産売却時の損失を合算することで、合計所得金額がマイナスとなり、所得税の払い過ぎに該当し、翌年の確定申告で所得税の還付を受けることが可能です。
1度の確定申告で控除しきれなかった場合には、翌年以降3年間繰り返し行えます。 譲渡損失の繰越控除の特例を利用する主な条件は、以下のとおりです。
- 売却した土地が居住用の土地である
- 売却するマンションの敷地の面積が500平方メートル以内である
- 売却したと年の以前3年以内に損益通算の適用を受けていない
- 繰越控除を受ける年の所得合計金額が3,000万円以下
- 買主と売主が配偶者や親族などの特別な関係ではない
譲渡損失の繰越控除の特例を受けるには、確定申告が必要です。確定申告時に繰越控除を適用する年分まで連続して確定申告書、年末の住宅借入金などの残高証明書を提出しなければなりません。手続きを忘れないように注意しましょう。
参考:国税庁 「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
マンション売却時の節税ポイント
マンションの売却時にかかる税金を節税する特例は多数あるものの、併用できない特例があることに注意しなければなりません。マンション売却時の節税で気をつけるべきポイントは、以下のとおりです。
- 3,000万円特別控除と住宅ローン控除の併用不可
- 軽減税率と住宅ローン控除の併用不可
- 3,000万円特別控除と軽減税率の特例の併用可
- 3,000万円・軽減税率の特例と買換え特例の併用不可
それぞれのポイントを解説します。
3,000万円特別控除と住宅ローン控除の併用不可
3,000万円特別控除を受けると、以後3年間住宅ローン控除は受けられません。住宅ローン控除とは、住宅ローンを借り入れて購入したマイホームの年末時点の借入残高の最大0.7%を最大13年間控除してくれる制度です。
マンションを売却し、ローンを組んで新しい住居を購入しようと考えている方は、ご注意ください。マンションを売却したときの譲渡所得税よりも新居の住宅ローン控除の減税額の方が大きい場合は、3,000万円特別控除を利用しないという選択もあります。
軽減税率と住宅ローン控除の併用不可
3,000万円特別控除だけでなく、軽減税率も住宅ローンと併用して使うことはできません。マンションを売却して新しい住居をローンを組んで購入しようと考えている場合は、気をつけましょう。
マンションを売却したときの譲渡所得税が新居の住宅ローン控除の減税額を下回る場合は、3,000万円特別控除と同じように、あえて軽減税率を利用しないという選択もあります。
3,000万円特別控除と軽減税率の特例の併用可
3,000万円特別控除と10年超所有時の軽減税率の特例は、併用できます。10年超所有時の軽減税率の特例は、3,000万円特別控除を利用してもなお、譲渡所得税がプラスの場合に使用する特例です。両方の特例を併用することで、節税効果が大きくなることが考えられます。
3,000万円特別控除・軽減税率の特例と買換え特例の併用不可
3,000万円特別控除と軽減税率の特例は、特定居住用財産の買換え特例とも併用できません。 それぞれのメリットとデメリットを比較してみます。 3,000万円特別控除・10年超所有時の軽減税率のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
3,000万円特別控除・10年超所有時の軽減税率のメリット
- 3,000万円を超えるほど利益が出ることは少なく、ほとんどの場合が非課税になる
- 共有名義のマンションなどの不動産を売却した場合は1人3,000万円ずつで合計6,000万円まで控除が受けられる
- 所有期間が短くても特例を受けられる
- 譲渡所得にかかる税金が通常の長期譲渡所得税率よりも低い税率で計算できる
3,000万円特別控除・10年超所有時の軽減税率のデメリット
- 国民健康保険に加入している場合は、売却の翌年1年間の国民健康保険料が値上がりしてしまうことがある
一方、特定居住用財産の買換え特例のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
特定居住用財産の買換え特例のメリット
- 買い換えた不動産を売却しない限りは課税されるタイミングが訪れない
- 売却益が3,000万円を超えていたとしても直近の課税を回避できる
- 課税の繰延べだけでは国民保険料は値上がりしない
特定居住用財産の買換え特例のデリット
- 課税義務が将来に延期されただけで、課税が免除されるわけではない
- 長期的に見ると節税効果があるといえるのか判断が難しい
併用できない特例も多いため、自分にとってどれを利用すると良いかをあらかじめしっかりと考えてから使用することが大切です。うまく特例を利用して大きな節税効果を得ましょう。
まとめ
マンションを売却するときは、「印紙税」「登録免許税」「譲渡所得税」「消費税」がかかります。印紙税と登録免許税はどのような場合でも課税される税金ですが、譲渡所得税や消費税は売却するマンションの条件や金額によっては支払う必要がありません。
税金の納付期限や納付方法は、種類によって異なるため、納税し忘れないように注意しましょう。
また、マンション売却時には、利用できる特例が多数あります。特例をうまく利用することで大きな節税効果を得られるでしょう。ただし、併用できない特例が多かったり、条件を満たしていないと使用できなかったりするため、使用する際にはあらかじめどの特例を使うと節税効果が大きくなるか、併用はできるかなどを確認してから使うようにしましょう。
監修者
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
中川 祐一
現在、不動産会社で建築請負営業と土地・収益物件の仕入れを中心に担当している。これまで約20年間培ってきた、現場に密着した営業経験と建築知識、不動産知識を活かして業務に携わっている。
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