基本は、「つみたて投資枠」で軸を作り、「成長投資枠」をあとから足す
新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠を同じ口座で併用できます。つみたて投資枠は、長期・積立・分散に向いた商品を積み上げるための枠です。一方、成長投資枠は上場株式やREITも含め、より幅広い商品に使えます。
迷いにくいのは、先につみたて投資枠で運用の軸を固め、そのうえで成長投資枠の役割を考える順番です。まず、何を積み立て、どんな資産配分をベースにするのかを決める。そのうえで、成長投資枠を、積立の軸を厚くするために使うのか、別の役割を加えるために使うのかを考えます。この順番にしておくと、非課税枠を使い切ることや、積み立てること自体が目的になりにくくなります。
分けるべきは商品名ではなく、持たせる役割
ここで誤解しやすいのは、使い分けるなら別の商品を持たなければならない、という発想です。ですが、実際には、両方の枠で買える投資信託やETFもあります。同じ銘柄を両枠で持つこと自体は、必ずしも不自然ではありません。
大切なのは、商品名が同じか違うかではなく、その保有にどんな役割を持たせているかです。つみたて投資枠で積立の軸を作るのか、成長投資枠でその軸を厚くするのか、それとも別の役割を加えるのか。これは、どの資産をどの枠で持つかという資産の置き場所(アセットロケーション)を考える視点でもあります。商品名を分けることと、役割を分けることは同じではありません。
商品を分けても、リスク分散になるとは限らない
さらに気をつけたいのは、商品を分けたつもりでも、中身の値動きがかなり似ているケースです。たとえば、つみたて投資枠で株式型の投資信託を積み立てながら、成長投資枠でも株式比率の高いETFやテーマ型商品を追加すれば、見た目以上に株式偏重になることがあります。商品名が違っても、家計全体で取っているリスクが重なっていれば、分散できているとは言い切れません。
米国株ファンドと全世界株ファンドの重複も、その典型です。別の商品を持っているつもりでも、実態としては米国株の比率がかなり高くなっていることがあります。だからこそ、見るべきなのは商品数ではなく、家計全体の中で何を土台にし、何を上乗せしているのかという資産配分です。
2026年以降は、「買う」より「整える」発想が重要
満額を目指す前に、「どう増やすか」のルールを決めておく
新NISAでは、年間360万円という大きな非課税枠が目を引きます。けれども、2026年以降に大切なのは、枠をどこまで埋めるかより、どんなルールで買付額を増やしていくかを先に決めておくことです。日本証券業協会の2025年調査でも、成長投資枠の平均購入額は94.2万円で、「10万円未満」が20.8%と最も多い一方、「240万円」まで使った人も16.1%いました。使い方にはかなり幅があり、現実には満額一辺倒ではありません。
大切なのは、「枠があるから使う」と考えるのではなく、増やす場面と上限をあらかじめ決めておくことです。ここが曖昧なままだと、相場が上がっても焦り、下がっても迷いやすくなります。差がつくのは、買付額の大きさそのものより、増やし方のルールがあるかどうかです。
参考:日本証券業協会 「新NISA開始後の利用動向に関する調査(調査結果概要)」
制度改正で問われるのは、買い増しより資産配分の見直し
金融庁が2025年12月に公表した「令和8年度税制改正大綱における金融庁関係の主要項目」では、NISAについて、つみたて投資枠の対象年齢見直しに加え、対象株価指数の追加や、対象商品の拡充を含む制度の充実案が示されました。背景には、若年層から高齢層まで、より幅広い世代が自分のライフプランに沿って使いやすい制度へ育てていく考え方があります。もっとも、これは2026年3月時点で既に実施済みという話ではなく、今後の制度充実の方向性を示したものです。
ここで読み違えたくないのは、その意味です。これは単純に「もっと買ってください」という話ではありません。むしろ、より自分に合った形で資産配分を整えやすくするための見直しと受け止めたほうがしっくりきます。
2026年以降に問われるのは、満額まで買付額を増やせるかどうかではなく、値上がりで膨らんだ偏りを整えながら、家計全体でどんな資産配分を目指すのかです。新NISAの非課税枠も、そうした視点で上手に活用していきたいところです。
参考:金融庁 「令和8年度税制改正大綱における金融庁関係の主要項目について」
「まとめ」と次回コラムの案内
新NISAが始まって2年が過ぎた今、問われているのは「何を買うか」だけではありません。つみたて投資枠で土台を作り、成長投資枠に役割を持たせながら、家計の中で投資を位置づけていくこと。さらに、家計全体で目指す資産配分(アセットアロケーション)を定め、その資産を置く口座や枠まで整理すること。そうした視点がそろってはじめて、新NISAの使い方はより明確になります。
実際の利用実態を見ても、新NISAでは、たくさんの商品を持つというより、比較的少数の銘柄を軸に使う傾向がうかがえます。何となく始めるだけでなく、自分に合った配分を考えながら続けていけるかどうかが、これからの分かれ道になりそうです。
次回のコラムでは、「2026年(令和8年度)税制改正大綱」を取り上げます。NISAの制度見直しの方向性も含め、家計や資産形成に関わる主な改正ポイントを整理し、今後の資産形成や家計管理にどう活かしていくべきかを解説します。
執筆者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、宅地建物取引士
水野 崇
水野総合FP事務所代表。東京理科大学理学部卒業。相談、執筆・監修、講演・講師、取材協力、メディア出演など多方面で活躍する独立系ファイナンシャルプランナー。テレビ朝日「グッド!モーニング」、BSテレ東「マネーのまなび」などに出演。NHK土曜ドラマ「3000万」の家計監修を担当。学校法人専門学校東京ビジネス・アカデミー非常勤講師。一般社団法人相続・事業承継コンサルティング協会会員。
<保有資格>1級ファイナンシャル・プランニング技能士|CFP認定者|宅地建物取引士|日本証券アナリスト協会検定会員補|証券外務員1種 ほか
【URL】https://mizunotakashi.com/
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