【不動産鑑定士が解説】利回りとは?

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不動産鑑定士(公認会計士・税理士)の冨田と申します。「不動産投資家Kとその仲間たち」では、さまざまな地域の地価動向分析の記事を執筆しております。

私の記事をご覧になっている方は、不動産投資を考えておられる方も多いかと思います。そこで、今回はそのような方に向けて、そもそも利回りとは何ぞや…ということを説明したいと思います。

利回りとは

不動産投資をするということは、まず「一定の価格を払って賃貸物件たる元本としての不動産」すなわち、「投資収益物件」を購入して貴方自身がその賃貸物件にオーナー(賃貸人)になり、賃借人から家賃を得て元本を回収し、うまくいけば元本以上を回収して利潤を得ることになります。

と、いうことは、「元本」たる価格に対して、「家賃に基づく儲け(純収益と言います) 」の割合が高ければ高いほど、賃貸経営的には有利ということになります。

ここで、一点、注意したいのは「家賃」と、「家賃に基づく儲け」は違う点です。なぜなら、賃貸人は回収した家賃から、賃貸物件の固定資産税・都市計画税や修繕費、賃貸管理業者に対する報酬等の「その賃貸物件に関する経費等」を支払う必要があるので、「家賃に基づく儲け」は「家賃」から「その賃貸物件に関する経費等」を差し引いた額になるからです。

そして、「元本」に対する「家賃に基づく儲け」の比率が、「どの程度のペースで回収ができ、儲かるか」の指標となります。

この比率が不動産業界でいうところの「還元利回り」と言われるものになります。

さまざまな種類の利回り

還元利回り

ここで、より専門的に書くと、その「家賃に基づく儲け」が標準的なものと見做して、これが便宜的に永久に続くと見做して投資採算価値を計算する場合の比率を一般的には「還元利回り」と言います。なお、この場合の「儲けを還元利回りで割り返して得た価格」を直接還元法(永久還元法)による収益価格と言います。

ただし、実は収益還元法以外にも投資採算価値を把握する手法があります。

最終還元利回り

将来、退去など何らかの理由で儲けが変動することが予想される場合は、変動が予測される期間まではその前提での儲けを割り引いた額で計算し、その変動が予測される時点よりも後についてだけ、その後に永久に続くと見做して投資採算価値を計算する方法もあります。

この手法をDCF法というのですが、この場合の「後についての期間の比率」の還元利回りを「最終還元利回り」と言います。

不動産鑑定士が収益物件を鑑定評価する際には、直接還元法(永久還元法)の他、このDCF法が適用されている場合があります。不動産鑑定士の鑑定評価を見る機会がもしあれば、そのような視点でご覧いただくのも一案でしょう。

表面利回り

また、経費等を差し引く前の単なる「家賃」と「元本」の比率を「表面利回り」と言います。

表面利回りは、純粋な稼ぎに対する割合ではありませんので、実際には家賃に対する経費が異常に高いために儲からない場合もある等、厳密に言えばこれを不動産投資の指標にすることは問題がないとは言えなくもありません。そして、それゆえに不動産鑑定の世界では、表面利回りを何ら補正をせずに使うことは基本的にはタブーで還元利回りを用いて鑑定評価額を決定します。

しかし、細かい経費等の分析をせずに実際の家賃と元本としての価格の比率を簡単に算出できるため、不動産鑑定を経ない不動産市場の現場では表面利回りが多用されています。

つまり、この表面利回りや還元利回りの動向を見て、その数値が下がっていけば、「家賃」もしくは「家賃に基づく儲け」に対する元本たる価格が上昇していることを示しますから、「投資物件も上昇している」ことの示唆となります。

ですので、不動産投資の指標として厳密に活用できるかどうかという側面はあるものの、このような示唆を得られることもあり、地価動向の記事では利回りの動向も考察していますので、ぜひ合わせてご覧ください。(今回の説明は、一部、それらの記事と同様の内容を含んでおりますがご容赦ください。)

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執筆者

不動産鑑定士・公認会計士・税理士

冨田 建

慶應義塾中等部・高校・大学卒業。大学在学中に当時の不動産鑑定士2次試験合格、卒業後に当時の公認会計士2次試験合格。大手監査法人・ 不動産鑑定業者を経て、独立。全国43都道府県で不動産鑑定業務を経験する傍ら、相続税関連や固定資産税還付請求等の不動産関連の税務業務、ネット記事等の寄稿や講演等を行う。特にYahoo!Japan様の個人オーサーとして専門記事や各種ニュースへの専門家コメントを定期的に執筆しており、令和4年1月には鬼怒川温泉の記事で、毎月の個人オーサーの中でも得に優れた記事を表彰する月刊MVAを受賞。令和3年8月には自身二冊目の著書「不動産評価のしくみがわかる本」(同文舘出版)を上梓し、令和4年に増刷。令和5年春、不動産の売却や相続等の税金について解説した「図解でわかる 土地・建物の税金と評価」(日本実業出版社)を上梓。

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