アパートを建て替えるタイミングの目安とは?費用や成功のコツ

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所有するアパートの空室率が上がったり、入居者のニーズに変化が見られるようになったりしたら、建て替えのタイミングかもしれません。適切な建て替えは、資産価値向上にもつながります。

本記事では、アパートの建て替えにふさわしい7つのタイミングや、建て替えのメリットとデメリットを解説します。

ポイント

  1. 空室率が増えている場合や築年数が経過している場合はアパートの建て替えを検討する
  2. アパートを建て替えることで空室率改善や資産価値向上につながる
  3. 立退料・解体費用や立退交渉など、費用や手間がかかる
目次

アパート建て替えのタイミング7つ

建て替えとは、すでにある建物を解体した後で、新たに建築することです。オーナーがアパートの建て替えを検討すべきタイミングには、以下の7つがあります。

  1. 1.空室率が増えている
  2. 2.築年数が古い
  3. 3.リフォーム費用が立て続けに発生している
  4. 4.入居者ニーズが変化している
  5. 5.低金利のローンを借りられる
  6. 6.間取りを大きく変更したい
  7. 7.アパートを相続する予定がある

空室率が増えている

間取りや設備が時代のニーズと合わなくなると空室が増えてくる場合があります。古いアパートでも空室率が低ければ建て替えの必要はありませんが、空室率が改善されないのであれば建て替えを考えた方が良いタイミングです。

また、アパートを建て替える場合、現在の入居者と立退交渉をしなければなりません。所有するアパートの空室率が高ければ、入居者が少なく立退交渉の手間も少なくなります。

一般的に、アパートの建て替えを検討すべき空室率の目安は、5割とされています。立退交渉の手間をできるだけ減らしたいのであれば、8割程度で決断するとよいでしょう。

なお、空室率とは所有する不動産の部屋数に対して空室がどの程度あるかを示す指標で、以下の式で算出できます。

空室率=該当物件のうち空室の数÷ 該当物件全体の部屋数 × 100

築年数が古い

法定耐用年数は以下のとおりです。

  1. 木造(住宅用)は22年
  2. 木造モルタル造(住宅用)は20年
  3. 軽量鉄骨造は19年(鉄骨厚さ3mm以下)ないし27年(鉄骨厚さ3mm超4mm以下)

法定耐用年数は実際の耐久年数を示したものではありませんが、多くの構造で法定耐用年数を超える、築20〜30年が建て替えを検討するひとつの目安でしょう。

また、築年数が古いと経年劣化で耐震性や耐久性が弱まり、災害リスクが高まります。耐震性を高める修繕は、リフォームでは対応できない可能性が高いです。

参照:国税庁 耐用年数(建物/建物附属設備) 

リフォーム費用が立て続けに発生

屋根やベランダのリフォームなど大規模な修繕が続くような場合は、アパートの建て替えを検討しましょう。

アパートは、年数の経過とともに劣化していきます。高額な費用を懸念して建て替えをしなかったとしても、老朽化に伴う大規模な修繕が何度も必要になれば、最終的に多大なコストがかかってしまうでしょう。

入居者ニーズが変化している

無料かつ高速のインターネット設備や宅配ボックスを条件にするなど、入居者の物件に対するニーズは年々変化しています。建物のデザインや設備が時代にそぐわなくなってくると空室率が増加にもつながりかねず、アパートの建て替えを検討した方がよいでしょう。

低金利のローンを借りられる

アパートの建て替えには、多額の費用がかかるため、金融機関からの借入れを行うことが一般的です。毎月の支払額を極力抑えられるように、低金利で借りられる時にアパートの建て替えを検討しましょう。

また、新たなローンを組みやすくなるため、既存のローン返済が終了した際もアパートの建て替えを検討するのに良いタイミングです。

間取りを大きく変更したい

物件の築年数が古い場合、間取りが現在の入居者の需要に合っていない可能性があります。アパートの構造によっては、リフォームで対応可能な範囲の間取り変更では追いつかない場合もあります。

たとえば高齢の入居希望者が増えてきたため、バリアフリーを意識した間取りに変更したいと思っても、壁構造を採用したアパートでは、間取り変更をすることは不可能です。

また、家族向けの間取りのアパートを経営していて、周辺に単身者や夫婦のみの世帯が多くなってきた場合は、ワンルームや2人暮らし用の間取りに変更すると空室率が減るかもしれません。

アパートの間取りを大幅に変更したい場合は、建て替えを視野に入れる必要があります。

アパートを相続する予定がある

子どもや孫などにアパートを相続させたい場合も、建て替えを検討することがおすすめです。たとえ現時点では基礎部分などに大きな問題がなくても、経年によるダメージが蓄積し、子どもや孫の世代では建て替えが必要なほどになるおそれもあります。

相続税対策の一環としてアパート経営を行っている場合も、建て替えを検討する意義があります。建て替えの際にアパートローンを組むことで、ローン分は財産額から差し引けるため、相続税評価額を減らすことが可能です。

また、アパートを相続する際の相続税額は、アパートの入居率や空室の状態により変動します。空室率が高いアパートは、建物に対して賃貸されている部分が少なく、自由にできる部分が多くなるため、相続税評価額が高くなりやすい傾向です。

一方、入居率が高いほど建物に対して賃貸で使用されている部分が多いため、相続税評価額は低くなります。アパートを建て替え稼働率を上げることで、節税効果が高まり、相続税対策を強化できます。

アパートを建て替える際の流れ

アパートを建て替える際の全体の流れは以下の通りです。

1
業者や建て替えのプランを選定
2
見積りを確認し、建て替えを決定したら、業者との詳細打ち合わせ
3
借入れを予定している場合は、取引金融機関に相談
4
入居者と立退交渉
5
解体・工事請負契約
6
アパートの取り壊し
7
アパート着工(工事開始)
8
アパート竣工(工事完了)

ここからは、流れの中で特に大切なポイントを紹介します。

業者との打ち合わせから竣工までのポイント

建て替えにおいて業者選びは大変重要です。1社だけでなく、複数の業者に見積もりを依頼した上で、コストや各社の実績を確認することが大切です。

解体工事と建設工事では必要な許可が異なるため、複数の業者に依頼しなければならないこともあります。スムーズに建て替えを進めるためには、建設会社に解体工事会社を紹介してもらう、もしくは解体・建設いずれも可能な業者に依頼することがポイントです。

また、建て替えの資金調達には、民間の金融機関や日本政策金融公庫からの借り入れを利用することが多いと思いますが、あらかじめ、建て替えに伴う収入・支出を理解しておきましょう。

入居者との立ち退き交渉のポイント

借地借家法により、「正当な事由」がない限り賃貸人(オーナー)の都合で賃貸借解約の申し入れをすることはできません。「老朽化による建て替え」は正当な事由として考慮されますが、それだけではなく立退料を支払うことが一般的です。また、原則として、解約の申し入れは契約満了の1年前から6カ月前までに行わなければなりません。

いずれにしても、入居者にも十分納得してもらえるよう、以下のようなスケジュールで立退交渉することが必要です。

1.建て替え開始の6カ月以上前に入居者に解約を申し入れる
2.立退交渉を開始する
3.引っ越し先を斡旋する
4.物件を明け渡してもらう

立退交渉の際には、早めに入居者に伝えること、いつまでに明け渡してもらうか明確に伝えること、入居者に転居先の良い物件を紹介することなどが重要です。

借地借家法 第二十八条 建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件

建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

引用:E-GOV 借地借家法

アパート建て替えにかかる主な費用3つ

アパート建て替えには、主に3つの費用がかかります。

アパートの取り壊し費用(解体費用)

物件の取り壊し費用が必要です。アパートの取り壊し費用(解体費用)は、物件の構造によって異なります

木造やプレハブ造は1坪あたり4万〜5万円、鉄骨造(S造)は1坪あたり6万〜7万円、鉄筋コンクリート造(RC造)は1坪あたり7万〜10万円が相場といわれています。鉄筋コンクリート造は、頑丈で壊しにくいためほかと比べて解体費用が高くなります。

実際には、大型重機を使用する場合や、アパートの階数によっても費用が変わってきますので、あくまでも上記の金額は目安です。

入居者への退去費用

立退料という入居者への退去費用がかかることがあります。

立退料には、慰謝料や引っ越し費用、転居先の敷金・礼金分が含まれます。

一般的に、立退料として、立ち退きを依頼する入居戸数 × 賃料6カ月分の費用がかかるといわれています。

アパートの新築費用

建て替える場合、アパートの新築費用もかかります。新築費用も、解体費用と同様に物件の構造によって異なります

建築費用は、木造で1坪あたり50万〜60万円、鉄骨造(S造)で1坪あたり70万〜100万円、鉄筋コンクリート造(RC造)で1坪あたり80万〜120万円が目安です。

アパートを建て替えるメリット6つ

アパートを建て替える際のメリットを6つ紹介します。

空室率改善・資産価値向上につながる

建て替え後の物件が魅力的であれば、入居希望者が増えます。結果として、空室率の改善につながる点がメリットです。

また、不動産投資を目的としたアパート経営では、最終的にいかに高額で物件を売却できるかという出口戦略も考えておかなければなりません。古くなったアパートを建て替えれば物件の資産価値向上を期待できるため、高額で売却できる可能性がある点もメリットです。

節税やキャッシュフロー改善につながる

アパートの建て替えに伴う相続税評価額の低下や減価償却費の計上により、節税につながる点もメリットです。節税できた分、支出が減るため、キャッシュフロー改善になります。

相続税評価額の低下

賃貸物件は賃貸割合によって、評価額が変わります。アパートの建て替えにより空室率が低下し賃貸割合が増えると、相続税評価額が低下し節税になります。

貸家建付地の価額は以下の式で算出されます。

貸家建付地の価額 =
自用地としての価額-(自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

減価償却費の計上

減価償却とは、設備投資などの費用を法定耐用年数にあわせて配分する会計処理のことです。法定耐用年数を過ぎて減価償却できなくなっていた物件も、建て替えることで新たに減価償却費として経費に計上できます

そのほか、老朽化した建物を建て替えることで、今後発生しうる修繕費を抑えられる点もメリットです。

参照:国税庁 No.4614 貸家建付地の評価

修繕費を抑えることにつながる

アパートを建て替えると、修繕費を抑えられることもメリットです。アパートなどの建物は年数が経過するほど修繕箇所が増え、外壁や設備配管などを修繕することにより費用がかさみます。

建物維持のために修繕をしても、アパートの魅力や価値が劇的に高まることはありません。築年数を重ねることで、徐々に賃料は下がり空室率も高くなる可能性が高いでしょう。

建て替えをすることでアパートの価値を上げることができれば、賃料を上げることができ、さらに修繕費を節約することができます。

災害に強い建物にできる

日本は災害も多く、物件の安全性を重視する入居者も多いでしょう。アパートを建て替えることで、地震・火災などの災害対策を強化できる点もメリットです。

たとえば築年数が50年を超える物件は、現在の耐震基準を満たしておらず、大きな地震の際に損壊や倒壊のおそれがあります。また、防火地域の指定を受ける前に建てられた場合は、防火の基準をクリアしていない可能性もあります。

旧耐震基準で建築された古い建物は、建て替えによって現行の新耐震基準を満たすことが可能です。耐火機能のある素材を使用するなどして、火災に強い物件であることをアピールできる建築仕様にすることも可能です。

近年でも大きな災害は複数発生しており、災害に備える意識は高まっています。地震や火災に強い物件にすることは、入居希望者に対する大きなアピールになります。

アパートを建て替えるデメリット2つ

アパートの建て替えには、以下のような2つのデメリットもあります。

費用と手間がかかる

アパートの建て替えにあたり、立退料・解体費用・新築費用・登記費用(登録免許税と司法書士報酬)・ローン手数料などさまざまな費用がかかる点がデメリットです。また、建て替えた後にかかる保険料も、以前より高額になる可能性があります。

さらに、各種手続きや業者との打ち合わせ、立退交渉など、手間がかかる点もデメリットです。

時間がかかる

物件を取り壊すところから始めるため、リフォームよりも長い期間かかる点もデメリットです。契約する業者や工事の規模によっても異なりますが、一般的にアパート建て替えには約1年という期間を要します。

工事期間は入居者がいないため、家賃収入を全く得られません。生活に支障がないかを十分に検討した上で、工事を進めることが大切です。

アパート建て替えの費用対効果を高めるポイント

アパートを建て替える際の費用対効果を高めるため、重要となるポイントを3つ紹介します。

必要な設備や建材のグレードを検討する

せっかく建て替えるのであれば、充実した設備にしたり優れた仕上げ材を使ったりしたいと考えるオーナーもいるでしょう。たしかに入居者にアピールするため、設備をそろえることは必要ですが、過剰に投資してしまうとコストがかさみます。

不要な設備を削ったり、仕上げ材や建材などのグレードを落としたりすることで建築費用を抑えることが可能です。たとえば単身者用の1Kの間取りの場合、バスルームの追い炊き機能の需要はあまり高くないため、必ずしも導入する必要はありません。

物件の内装・外装で使う仕上げ材に関しても、グレードが高いものは使用を避けましょう。内装のクロスや床材は、一定の期間が経過したら張り替える必要があるため、スタンダードなものを選ぶと将来的な費用削減につながります。高額なものや独特なものを選ぶと、数年後に製造終了となり、同じものを入手できなくなるおそれもあります。

外装はある程度見た目を重視しつつ、費用が安いものを選ぶのがポイントです。複数の建築会社から見積もり・提案をもらって検討しましょう。

ただし、設備や建材のグレードダウンのやりすぎもおすすめできません。入居者が不満を抱く水準まで削減しないよう、注意しましょう。

状況に合わせて建物の戸数や間取りを検討する

建て替えの費用対効果を高めるには、周辺の状況に合わせて戸数や間取りを検討することも重要です。適切な戸数を検討し、必要に応じて規模を縮小することでコストカットにつながるでしょう。

昨今の日本は、単身世帯の割合が増加している傾向にあります。単身者に合わせた間取りや戸数に建て替えるなど、状況に合わせて戸数や間取りを調節することで、建て替えの費用対効果を高められます。

規模の大きな建物は費用が高くなるため、仕様のグレードを下げても予算内に収めるのが難しい場合もあります。ある程度の設備や仕上げは確保しつつ、費用対効果も高めるには、思い切って戸数を減らすのも有効な手です。

土地が余る場合の活用方法や売却について検討する

同じ規模のアパートを建てる場合でも、土地の容積率(敷地面積に対する延床面積の割合)が余っている場合は、より狭い面積の土地でも対応可能なケースがあります。このように土地が余る場合にどうするかを検討しましょう。

敷地内の建物の配棟を見直す、駐車場などに活用する、土地を売却するなどの方法があります。たとえばアパート1戸あたり1台の駐車場があっても駐車場の借り手があまり見込めない場合、建て替えても駐車場は無駄になる可能性が高いため、売却するのもよいでしょう。

地形がいびつで活用しにくい場合、アパート+戸建て賃貸で配分しなおすことで、敷地が有効活用できるようになる例もあります。

売却する場合は、敷地を分筆する必要があることに注意しましょう。分筆とは、土地を分割してあらためて登記をすることであり、敷地の境界を確定させることが必須条件です。

アパート建て替えの際に利用できる補助金・税制優遇

アパートの建て替えで利用できる、国や自治体の補助金や税制優遇の制度を紹介します。適用を受けるには条件を満たす必要があるため、希望する場合はよく確認しておきましょう。

子育てグリーン住宅支援事業

「子育てグリーン住宅支援事業」とは、新築住宅および既存住宅の省エネ化を費用面でサポートし、カーボンニュートラル実現を目指す国の取り組みです。住宅を新築する場合の対象世帯および対象住宅と補助額は、下記のようになっています。

対象世帯 対象の住宅 補助額(1戸あたり)
すべての世帯 GX志向型住宅 160万円
子育て世帯など 長期優良住宅 建て替え前住宅などの除却をする場合 100万円
上記以外の場合 80万円
ZDH水準住宅 建て替え前住宅などの除却をする場合 60万円
上記以外の場合 40万円

参考:国土交通省 子育てグリーン住宅支援事業の概要資料

GX志向型住宅と認められるための条件として、断熱などの性能や再生可能エネルギーを除いた一次エネルギーの消費量の削減率などが細かく定められています。

長期優良住宅やZDH水準住宅も基準が決められているため、補助を受けたい場合は対象の住宅として認められる条件をよく確認しましょう。

子育て支援型共同住宅推進事業

「子育て支援型共同住宅推進事業」とは、「子どもの安全確保につながる設備の設置」に対する補助や、「居住者などによる交流を促す施設の設置」に対する補助を行う事業のことです。子どもの事故や犯罪を防止し、子育て期の親同士の交流機会の創出につなげることが目的です。

子どもの安全・安心確保のための設備を導入すると最大で1戸あたり100万円、交流機会創出に向けた設備を導入すると最大で1棟あたり500万円の支援が受けられます。

参考:国土交通省 子育て支援型共同住宅推進事業について

また、窓やベランダからの子どもの転落事故防止のための取り組みも支援しています。バルコニーの手すり・補助錠・窓手すり・室外機の柵などを設置すると、最大で100万円の支援を受けることが可能です。

各自治体の補助金制度

上記2つは国の制度ですが、各自治体でも補助金制度を要している場合があります。ここでは例として東京都と大阪府の補助金制度を紹介します。

東京都の「貸主応援事業(補助金)」は、耐震改修費または住宅設備の改善費の補助金を受けられる制度です。耐震改修費補助金の場合、既存改修型と除却・建て替え型があり、耐震診断費や設計費、工事費などの経費が補助金の対象となります。

住宅改善費に関しては、「バリアフリー改修工事費」やヒートショック対策設備、防犯設備、エアコン、インターネット設備など「安全性の向上に資する付帯設備の設置工事費」が補助の対象です。補助対象経費の1/2の補助を受けられ、上限は1戸あたり50万円です。

参考:東京都住宅政策本部 貸主応援事業(補助金)

大阪府の「建替建設費補助制度」は、築年数の古いアパート・長屋などをアパートやマンションに建て替える場合に補助してもらえる制度です。設計費、解体費、共同施設整備費の1部が補助の対象になります。補助の対象となる地域は、大阪府内の「重点対策地区」となっているため、くわしい場所は事前に確認しておきましょう。

参考:大阪市 建替建設費補助制度(集合住宅への建替え)

アパート建て替えを成功させるための建築会社の選び方

アパートの建て替えを成功に導くには、どの建築会社を選ぶかも重要です。建築会社を選ぶポイントを3つ紹介します。

自分が建て替えの際に重視しているポイントを確認する

まずはアパート建て替えでご自身が重視したいポイントを整理しましょう。整理したポイントに強みを持つ建築会社をピックアップすることにより、候補の数を絞り込めます。

たとえば以下のような考え方があります。

  1. 都心部で建て替える:都心の家づくりや暮らしが得意な会社
  2. コストを抑えたい:リーズナブルな価格で提案してくれる建築会社
  3. 外観やデザインを重視する:おしゃれなデザインやこだわりの素材を提案してくれる建築会社

実績や経験など信頼できる建築会社か確認する

信頼できる建築会社か見極めるには、実績や経験をチェックする必要があります。建築会社のホームページなどを確認し、施工実績や施工事例などを確認して信頼できる建築会社か判断しましょう。

施工実績が乏しい会社を選ぶと、建築トラブルに巻き込まれるリスクが高くなります。実績が少なくてもよい仕事をしてもらえる可能性もありますが、事前に見分けるのは難しいでしょう。

実績を見極めるには、施工棟数、会社が創業してからの年数などがポイントになります。施工事例に関しては、規模、価格、プランなどをチェックしましょう。

施工棟数は、これまでの累計では現在の状態がわからないこともあります。直近5年程度の棟数も確認できるとよいでしょう。

アフターサービスについて確認する

アパートを建て替えた後のアフターサービスを比較することも非常に重要です。

住宅は完成すれば終わりではなく、入居後に快適に暮らせるようにメンテナンスなどを行う必要があります。万が一、建物に問題が発生した場合でも、迅速に対応してもらえる会社を選ぶようにしましょう。

建築会社はそれぞれ独自のアフターサービスを準備しています。定期的なメンテナンスや24時間365日対応のサポートデスクなど、アフターサービスにどのようなものがあるか確認しておきましょう。

建て替え以外の選択肢

建て替え以外の方法として主に3つの選択肢があります。それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。

買い替えのメリット 買い替えのデメリット
●よりよい条件のアパートに買い替えることにより、収益性の向上につながる
●一定の条件に当てはまると、売却で発生する税金を安くできる
●買い手が見つからない場合がある
●売却後の新たな物件が見つからないケースもある

アパートの立地・規模を見直して、よりよい条件の物件に買い替えると、収益性の向上を期待できます。また、一定条件を満たすと「特定事業用資産の買換え特例」が適用され、売却で発生する税金の負担の軽減が可能です。

ただし、空室が多いなどの理由で買い手が見つからず、売却ができないケースも少なくありません。買い手を見つけるには、空室対策を行い、入居率を上げる必要があります。

また、売却後に物件が見つからないおそれもあるため、どの物件を買うかを事前に検討することも必要です。

買い替え

買い替えは、老朽化したアパートを売却し、その資金を元手にして新たなアパートを建てる方法です。新しい立地や規模で、アパート経営の再スタートができます。

リフォーム

リフォームは、修繕によって老朽化した建物を新築の状態に近くする方法です。性能が低下した機能や設備、建物の内外観を、新築時の状態へ近づけられます。

リフォームのメリット リフォームのデメリット
●建て替えやリノベーションより工期が短い
●費用を安く抑えられる
●アパートに新たな付加価値をつけることはできない
●老朽化が激しい場合はリフォームでは不十分なケースもある

リフォームは比較的工期が短いため、迅速に修繕ができます。費用に関しても、建て替えやリノベーションより安いため、コストを抑えられる点もメリットです。

その一方で、リフォームをしても物件に新たな付加価値は生まれないため、周辺に魅力的な競合物件が多い場合は、リフォームだけでは競合に勝てない場合もあります。また、老朽化が激しい場合、リフォームでは十分に対応しきれないケースもあります。

リノベーション

リノベーションとは改装のことで、間取りや設備を一新させる方法です。リフォームでは変更できなかった部分を改装でき、アパートの価値を高めることもできます。

リノベーションのメリット リノベーションのデメリット
●物件に新たな付加価値をつけられる
●建て替えと比べると費用を抑えられる
●老朽化が著しい場合は十分な効果を得られない
●大規模なリノベーションでは費用がかさむこともある

リノベーションは物件に新たな付加価値が与えられるため、周辺の物件との競争で有利になる可能性が高まります。建て替えと比べれば、少ない費用で最新の機能や設備を備えられます。

ただし、外壁の全面交換や防水処理など大規模な修繕を行う場合、費用が高額になりやすいことにも注意が必要です。

また、老朽化が激しいとリノベーションでも対応が不十分になるおそれもあります。基礎部分などの老朽化が著しい場合は、建物が寿命を迎えているため。建て替えを検討することが必要です。

まとめ

アパートを建て替えする主なタイミングは、「空室率が増えている」「築年数が古い」「リフォーム費用が立て続けに発生している」「入居者ニーズが変化している」「低金利のローンを借りられる」の5つです。アパートを建て替えすることで、空室率改善や節税効果を期待できます。

所有するアパートが古くなってきた方は、費用や一定の期間がかかるというデメリットを考慮しつつ建て替えを検討しましょう。

監修者

魚角 幸正

資格
宅地建物取引士
略歴
大手ハウスメーカーにて従事した後、不動産会社で土地の仕入れに携わる。建築知識と経験を活かした不動産売買にまつわる問題解決を得意としている。

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