アパート経営の法人化は不動産の相続対策になる?法人化の流れと注意点
アパート経営の規模が大きくなってくると、相続税対策として法人化を考える人もいるでしょう。個人名義のままでは相続時に多額の相続税が発生したり、相続人間で共有状態になったりするリスクがありますが、法人化によって負担やトラブルを軽減できる可能性があります。 本記事では、アパート経営の法人化が相続対策になる理由や、検討するタイミング、法人化の具体的な流れについて解説します。 ポイント アパート経営の法人化...
不動産投資家K
不動産(土地・家屋)を遺産相続した場合、名義変更だけでなく、相続人の確定や遺産分割、相続税の申告など、さまざまな手続きが必要です。手順を間違えたり対応が遅れたりすると、相続人同士のトラブルや相続登記の遅れ、相続税の申告漏れなどにつながります。
本記事では、不動産の遺産相続に必要な手続きや不動産の分割方法、相続登記の流れなどを解説します。
不動産を遺産相続したときは、相続人の確定から相続税申告まで、段階的な対応が必要です。順序を誤るとトラブルにつながるため、全体の流れを把握して進めることが大切です。
ここでは、不動産の遺産相続における一連の流れを解説します。
相続手続きの最初のステップは、誰が相続人になるのかを正確に確定することです。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を取得し、法律上の相続人を漏れなく特定します。配偶者は常に相続人となり、子がいない場合は親や兄弟姉妹が相続人になるなど、民法で順位が定められています。
相続人の確定が不十分なまま手続きを進めると、あとから新たな相続人が判明し、遺産分割が無効になるおそれもあります。不動産の名義変更や相続税申告にも影響するため、最初に行うべき重要な手続きのひとつです。
次に、被相続人が遺言書を残しているかを確認します。遺言書がある場合、原則としてその内容が優先され、分割内容はそれに従います。ただし、一定の相続人には遺留分が認められており、遺言内容によっては後日調整が必要となることがあります。自筆証書遺言は家庭裁判所での検認が必要です。自筆証書遺言は家庭裁判所での検認が必ただし、法務局の自筆証書遺言保管制度を利用している場合は検認不要です。公正証書遺言も検認は不要です。
遺言書の有無を確認せずに遺産分割協議を行うと、あとになって遺言が見つかった場合、手続きをやり直す必要が生じることがあります。不動産の相続では分割が難しいケースも多く、遺言書の存在は特に重要といえるでしょう。
続いて、相続する財産を確認します。相続不動産は市区町村から送付される固定資産税の納税通知書を確認するか、不動産の権利証(登記済証・登記識別情報)が残っていないかを探してみましょう。市区町村役場では、被相続人がその自治体内で所有していた不動産をまとめた一覧表である「名寄帳」を取得して調べることも可能です。
遺産相続では、プラスの財産だけでなく、借入金や未払金などの債務も引き継ぐことになります。そのため、不動産の評価額や預貯金の残高だけでなく、住宅ローンなど借入金の有無も確認が必要です。
調査を行わずに相続を承認すると、多額の債務を背負う可能性もあります。相続放棄や限定承認を検討する場合は、相続開始があったことを知った時から3カ月以内という期限があるため、早めの調査が重要です。
参考:裁判所 相続の放棄の申述
不動産を相続する際は、その評価額を算出する必要があります。相続税の計算では、原則として建物は固定資産税評価額、土地は路線価をもとに評価しますが、立地や利用状況によっては評価が複雑になる場合もあります。
正確な評価を行わないと、相続税を過少または過大に申告してしまうおそれがあるため、注意が必要です。また、遺産分割協議においても評価額は重要な判断材料となるため、必要に応じて税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。
相続人全員で、誰がどの財産を相続するかを話し合うのが遺産分割協議です。不動産は現金のように分けにくいため、売却して分配する、特定の相続人が取得して代償金を支払うなどの方法が検討されます。
協議内容は遺産分割協議書として書面にまとめ、相続人全員の署名・押印が必要です。合意が成立しない場合は、家庭裁判所での調停や審判に進むこともあります。
不動産を相続した場合、法務局で相続登記を行い、名義を被相続人から相続人へ変更します。相続登記は2024年4月1日から義務化されており、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記しなければなりません。正当な理由なく放置すると過料の対象となる可能性があるため注意が必要です。
登記には戸籍謄本や遺産分割協議書など多くの書類が必要となるため、早めに準備を始めましょう。登記を済ませておくことで、不動産の売却や活用が円滑に行えます。
必要書類の詳細については、後ほど詳しく説明します。
参考:東京法務局 相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)
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不動産を含む遺産が基礎控除の額を超える場合は、相続税の申告と納税が必要です。相続開始があったことを知った日の翌日から、10カ月以内に申告・納税をしなければなりません。期限を過ぎると加算税や延滞税が課されることもあり、早めの対応が重要です。
基礎控除内であれば申告不要ですが、不動産を含む相続では課税対象となるケースも少なくありません。特例や控除を適切に活用することで税負担を軽減できる場合があるため、早めに税額を把握し、難しい場合は専門家への相談も検討するとよいでしょう。なお、「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」などの特例を適用した結果、納税額が0円になる場合でも、特例を受けるための「相続税の申告」自体は必要である点に注意しましょう。
参考:国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
不動産は現金と異なり、そのまま分けることが難しい財産です。そのため相続では、相続人の状況や不動産の性質に応じて、いくつかの分割方法から適切なものを選択する必要があります。
財産の種類や相続人数、納税資金の有無によって最適な方法は変わり、選んだ方法によっては将来のトラブルにつながることもあるため、それぞれの特徴をよく理解して選ぶことが大切です。
ここでは、相続した不動産の分割方法を解説します。
現物分割とは、不動産を売却せず、特定の相続人がそのまま取得する方法です。たとえば、長男が実家の土地と建物を相続するといったケースが該当します。共有名義等、他の相続方法と比較すると手続きが比較的シンプルです。売却を伴わないため、思い出のある不動産を残せる点もメリットです。
「それまで親と一緒に暮らしていた長男が不動産を相続するのは当然と思われる事情がある」「他の相続人は遠方にいて不動産を管理できない」といった事情がある場合に、選ばれやすいでしょう。
ただし、不動産を取得しない相続人との公平性を保つ必要があり、不満が生じる可能性もあります。他に預金や車、株式など多様な財産があり、評価額をもとに分配できる場合に適した分割といえるでしょう。
代償分割は、不動産を1人または一部の相続人が取得し、その代わりに他の相続人へ現金などの代償金を支払う方法です。
たとえば、兄弟2人で評価額5,000万円の実家(土地・建物)を相続するケースを考えてみましょう。兄が実家をそのまま相続し、弟は不動産を取得しない代わりに、兄から2,500万円の代償金を受け取ります。
このように、一人が不動産を承継し、他の相続人に現金などで調整する方法です。不動産を手放さずに済み、共有を避けながら相続人間の公平性も保ちやすいのが特徴です。
ただし、代償金を支払うための資金が必要となるため、十分な資金がない場合は実行が難しいこともあります。代償金の金額を決める際、不動産の評価額の基準をどうするかでトラブルになるケースもあるため、慎重な話し合いが必要です。
換価分割とは、不動産を売却し、その売却代金を相続人で分ける方法です。現金で分配できるため公平性が高く、相続人全員が納得しやすい点がメリットです。
現物分割や代償分割は、相続した不動産の売却を避けたい場合に適している方法ですが、不動産を売却しても問題ないケースでは、換価分割が選ばれやすいでしょう。
たとえば、相続人がいずれも独立して自宅を所有している長男と長女で、換価分割を選択し、不動産を売却して現金にすれば、公平に分割できます。また、相続税が発生する場合、換価分割にすれば相続税の納付資金を捻出できる点もメリットです。
一方で、不動産の売却に時間がかかる場合や、市場状況によっては想定より低い価格になるリスクもあります。また、売却益に譲渡所得税が課税される可能性がある点にも注意が必要です。
不動産を相続人全員または一部で共有名義とする方法です。一見すると公平な分割に見えますが、将来的に売却や有効活用を行う際には共有者全員の同意が必要となります。意見がまとまらないと不動産が活用できず、トラブルに発展することも少なくないでしょう。
たとえば、共有者の一人が資金を必要とし不動産を手放したいと考えた場合、法律上は自分の持分だけを売却することも可能です。しかし、共有持分のみの購入を希望する第三者は少なく、実際には買い手がつかなかったり価格が下がりやすかったり、実務上難しいことがほとんどです。そのため、他の共有者に持分を買い取ってもらうか、全員で合意して不動産全体の売却を検討するのが現実的です。
また、兄弟姉妹が共有で相続した場合、相続直後は問題がなくても、次の相続で権利関係が複雑化する点に注意が必要です。兄弟姉妹のいずれかが亡くなった場合、その相続人との共有となり、話し合いがより難しくなることもあるでしょう。
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不動産を相続した場合、名義変更のために相続登記を行う必要があります。登記に必要な書類は、共通のものと、相続の方法によって異なるものがあります。
共通の書類は、以下のとおりです。
これ以外に、選んだ遺産相続の方法ごとに必要になる書類があります。事前に必要書類を把握しておくことで、手続きをスムーズに進められるでしょう。
ここでは、相続方法ごとに不動産登記で必要になる書類を紹介します。
遺言による相続で特に必要になる書類は、以下のとおりです。
遺言書に基づいて不動産を相続する場合、遺言書の内容が登記の根拠となります。公正証書遺言であれば原本や謄本、自筆証書遺言の場合は検認済証明書が必要です。遺言執行者がいて申請手続きをする場合には、次の書類を添付します。
これに加え、被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本や、相続人の戸籍・住民票、不動産を取得する人の住民票などを提出します。遺言が明確であれば、遺産分割協議書は不要です。
遺言内容が登記原因証明となり、記載が不明確だと追加書類が必要になることがあるでしょう。
遺産分割協議によって不動産の取得者を決めた場合は、以下の書類が必要です。
遺産分割協議書には相続人全員の署名と実印での押印が求められ、印鑑証明書も添付します。あわせて、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や、相続人全員の戸籍、取得者の住民票などを準備します。書類が多く不備が起きやすいため、よく確認して正確に準備することが重要です。
協議がなく、法定相続分どおりに相続する場合は、以下の書類を用意します。
遺産分割協議書は不要ですが、相続関係を証明する戸籍一式が必要となります。このほか、共通書類である被相続人の戸籍謄本と相続人全員の戸籍、住民票などを提出し、法定相続分に基づいた共有名義で登記します。
相続関係説明図は被相続人と法定相続人の関係を表した家系図のようなもので、提出は任意ですが、相続手続きにおける説明資料として役立ちます。
法定相続による相続登記の手続きは比較的シンプルですが、共有状態となるため、将来の不動産活用を見据えた判断が必要になるでしょう。
不動産の相続手続きは、制度上は相続人本人が行うことも可能です。しかし、実務では不動産の評価や複雑な書類作成、相続人同士の調整など、専門性と手間を要する場面が少なくありません。特に住宅ローンが残っている不動産や、相続人が複数いるケースでは、自力での対応が難しいことも多いでしょう。
ここでは、自分だけで進めるのが難しい理由を具体的に解説します。
不動産の遺産相続では、多数の公的書類を揃えなければなりません。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式、相続人全員の戸籍や住民票、不動産の固定資産評価証明書など、取得先は市区町村や法務局など多岐にわたります。
さらに、自治体ごとに請求方法や書式が異なる場合もあり、慣れていない人にとっては大きな負担です。書類に少しでも漏れや不備があると手続きが進まず、再取得が必要になることもあります。
仕事や家事などと並行してこれらを進めるのは時間的にも精神的にも負担が大きく、途中で行き詰まってしまうケースも少なくありません。
遺産分割協議書や相続登記の申請書類は、形式だけ整えればよいものではありません。文言の一語一句が法的効力に影響するため、誤った表現を使うと登記が認められなかったり、後日のトラブルにつながったりする可能性があります。
遺留分の考慮や、相続税の特例適用を考えた内容にしなければならない場合もあります。法務局から補正を求められた際には、指摘内容を正しく理解し修正しなければならず、専門知識がないと対応が難しい場面も少なくありません。書類作成は、想像以上にハードルが高い工程といえます。
遺産相続の手続きでは、相続人全員の合意が前提となる場面が多々あります。しかし、兄弟姉妹と疎遠になっている、不仲で話し合いが進まない、連絡が取れない相続人がいるといったケースでは、当事者同士での調整は難しくなるでしょう。
感情的な対立が深まると、話し合い自体が成り立たなくなることもあります。
こうした場合、第三者である専門家を介することで、冷静かつ公平な立場から調整を進めることができ、手続きと話し合いを円滑に進めやすいでしょう。
相続登記は、相続した不動産の名義を正式に変更するための重要な手続きです。一般的には、不動産の内容を特定し、登録免許税を納付したうえで、法務局に申請する流れで進みます。
相続登記は義務化されており、放置すると過料の対象となる可能性があるため、早めの対応が大切です。
共有名義にするか、売却を前提とするかによって手順が変わる場合もあるため、計画的に必要書類を整えて進めましょう。
ここでは、相続登記の一連の手順を解説します。
最初に行うのが、登記事項証明書(登記簿謄本)の取得です。ここで土地や建物の地番、家屋番号、所有者、持分割合などを確認します。住宅ローンなどが残っている場合は、抵当権の有無も把握できるでしょう。
付属建物があるかどうかも含め、正確な不動産情報を確認することで、遺産分割協議書や登記申請書を作成する際の基礎資料となります。
内容を誤ると登記申請が受理されないため、慎重な確認が必要です。
登録免許税とは、不動産登記などの行政手続きを行う際に国に納める税金です。相続による名義変更であっても、原則として課税されます。税額は、不動産の固定資産評価額の0.4%です。
市区町村で取得する固定資産税評価証明書に記載されている固定資産税評価額をもとに、税額を計算します。計算式は、以下のとおりです。
固定資産税評価額 × 税率(0.4%)= 登録免許税額[
※固定資産税評価額は、土地と建物の評価額を合算したうえで、1,000円未満を切り捨て
※登録免許税の計算後、100円未満を切り捨て
※最低税額は1,000円
書面で登記申請を行う場合、登録免許税は次のいずれかの方法で納付します。
オンラインで相続登記を申請した場合は、登記申請と同時に電子納付が可能です。
複数の土地の相続登記を一括申請する場合は登録免許税が抑えられるケースもあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
参考:国税庁 No.7191 登録免許税の税額表
必要書類がすべて揃ったら、管轄の法務局で相続登記の申請を行います。ここでいう管轄とは申請者の住所ではなく、相続対象となる土地や建物の所在地を管轄する法務局を指します。
提出方法は、窓口への持参、郵送、オンライン申請の3つです。相続登記はオンライン申請も可能ですが、戸籍謄本等の添付書面は別途、法務局へ郵送または持参して提出する必要があるため、オンラインだけで完結しないのが一般的です。
申請後、書類に不備があれば法務局から補正の連絡が入るため、指示に従って対応しましょう。
申請内容に不備がなく、法務局での審査が終わると登記手続きが完了し、新しい名義人に対して「登記識別情報通知」が交付されます。登記識別情報通知は従来の登記済権利証に代わるもので、書面ではなく通知(番号)として交付され、再発行ができない点に注意が必要です。
不動産を相続した場合、相続税の計算では現金のように実勢価格を用いるのではなく、一定の評価基準に基づいて課税価格を算出します。土地は主に路線価、建物は固定資産税評価額が基礎となり、自宅か賃貸用かによって評価や特例の適用が変わります。
一方で、相続税には基礎控除が設けられており、相続財産の総額が控除内に収まれば申告や納税が不要となるケースも少なくありません。早い段階で評価額と税額の見通しを立てておくことが、円滑な相続手続きにつながります。
ここでは、土地と建物、および賃貸に出している場合の相続税について解説します。
土地の相続税評価は、宅地の場合、国税庁が公表する路線価を用いる「路線価方式」を中心に、路線価が定められていない地域は「倍率方式」で算出します。
路線価方式とは、道路に面する土地について、1平方メートルあたりの評価額を基準に土地の価値を算定する方法です。道路ごとに「路線価」と呼ばれる評価額が定められており、その数値をもとに、以下の計算式で土地の相続税評価額を算出します。
相続税評価額=路線価×各種補正率×土地面積[
路線価に土地の面積を掛けたうえで、奥行や形状、不整形地、間口の狭さなどに応じた各種補正を加えて評価額を算出します。評価は一律ではなく、同じ地域でも土地の条件によって税額が変わる点が特徴です。
また、被相続人が居住していた自宅の敷地などの要件に該当するときは「小規模宅地等の特例」を適用できる場合があり、適用されると、一定面積までの自宅土地などの相続税評価額が最大で80%減額できます。たとえば、5,000万円の評価額の土地であれば1,000万円になるため、大きな節税効果があります。土地のみが対象の特例であり、建物は対象となりません。
この特例は相続税の負担を大きく左右するため、適用可否の判断が重要です。
建物の相続税評価額は、原則として固定資産税評価額と同額です。ただし、建物の構造・用途の違いや、相続開始時の利用状況などによって、相続税評価額の算定方法は異なります。
たとえば、建物を賃貸に出している場合は借家権割合が考慮され、評価額が下がる仕組みになっています。
また、相続が発生する前に増改築を行っている建物は、その内容が固定資産税評価額に反映されていない場合があります。固定資産税の評価替えが原則として3年に1度であるためです。このようなケースでは、増改築による価値の増加分を固定資産税評価額に加算して評価する必要があり、通常とは異なる方法で算定することになります。
賃貸用の不動産を相続する場合、土地は「貸家建付地」、建物は「借家」として評価され、借地権割合・借家権割合・賃貸割合を考慮して、土地と建物それぞれに減額が適用されます。 これは、第三者に貸していることで自由に処分や利用ができない点が考慮されるためです。
相続税の面では、賃貸物件は貸家・貸家建付地として評価が下がるため、節税効果が期待できます。一方で、相続人は賃貸経営に伴う権利だけでなく義務も引き継ぐことになります。税負担は軽減される反面、空室による収入減少のリスクや物件管理の手間、家賃収入に対する確定申告などが必要になる点には注意が必要です。
不動産の相続税を計算する際は、相続財産全体の評価額を把握し、基礎控除を差し引いたうえで、法定相続分に応じて税率を適用します。
特に不動産は評価方法や特例の有無によって税額が大きく変わるため、計算方法を理解しておくことが重要です。
相続税の基本的な計算式は、次のとおりです。
課税遺産総額 = 相続財産の評価額合計 − 基礎控除
基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。
計算のあと、課税遺産総額を法定相続分で分け、それぞれに相続税率を掛けて税額を算出し、合算したものが相続税の総額となります。
たとえば、相続人が配偶者と子ども1人の計2人、不動産の評価額が6,000万円だったとします。この場合、基礎控除は「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」です。
課税遺産総額は、「6,000万円−4,200万円=1,800万円」となります。この1,800万円を法定相続分(配偶者2分の1、子ども2分の1)で分けると、それぞれの相続額は900万円です。
900万円に該当する相続税率(10%)を掛けると、各人の税額は90万円となり、相続税の合計は180万円になります。配偶者には「配偶者の税額軽減」があり、法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額までは相続税がかからないため、実際に納付する相続税は子どもの90万円のみです。
注意が必要なのは、これらの特例を適用して「納税額が0円」になったとしても、特例の適用を受けるためには税務署への申告が必須であるという点です。申告を怠ると特例が認められず、本来の高い税率で課税されるリスクがあるため、必ず期限内に手続きを行いましょう。
これはあくまで基本的な計算例です。実際には、不動産が自宅用であれば「小規模宅地等の特例」により土地評価額が最大80%減額されるケースもあります。
なお、相続した不動産を将来的に売却する予定がある場合は注意が必要です。相続税だけで判断するのではなく、売却時にかかる譲渡所得税や住民税まで含めた「トータルの税負担」を考慮しなければなりません。相続税評価額と実際の売却価格には差が出ることも多く、目先の相続税を抑えても、結果的に手取り額は減る場合があります。
不動産の相続税は、計算式自体はシンプルですが、評価方法や特例の選択によって結果が大きく左右されるため、早い段階で評価額と税額の目安を把握することが大切です。
相続後の活用や売却まで見据えた総合的な判断を行いましょう。
参考:国税庁 No.4152 相続税の計算
不動産を相続したあとは、そのまま保有し続けるのか、売却して現金化するのか、あるいは賃貸などで活用するのかを検討する必要があります。
選択を誤ると、共有状態によるトラブルや維持管理の負担、納税資金の不足といった問題が生じることもあります。相続人の人数や関係性、相続税の支払い、将来の管理負担を総合的に考慮したうえで、最適な活用方法を選びましょう。
ここでは、遺産相続した不動産の活用方法について、売却と有効活用に分けて解説します。
相続した不動産を売却する方法は、換価分割が可能となり、相続人全員に公平に分配しやすい点がメリットです。現金化することで相続税の納税資金を確保しやすく、共有名義による将来的なトラブルを回避できます。
また、一定の要件を満たす場合には、相続した空き家を売却する際の特別控除が適用され、譲渡所得税の負担を軽減できる可能性もあります。
一方で、売却価格は市場環境や売却時期によって大きく左右されるため、時期を考慮せずに手放すと、想定より手取りが少なくなることもあるため注意が必要です。
相続した不動産が立地条件に恵まれている場合や、建物の状態が良好な場合には、賃貸住宅や店舗、駐車場として有効活用する選択肢もあります。
賃貸経営を行えば、継続的な家賃収入を得られるため、長期的な資産形成につながる可能性があるでしょう。また、賃貸経営だけでなく、月極駐車場やトランクルームなど、初期投資を抑えた活用方法も検討できます。
ただし、これら有効活用には空室リスクや修繕費、管理の手間といった負担も発生します。相続人が複数いる場合は、運営方針や収益分配について事前に取り決めておく必要もあるでしょう。
不動産の遺産相続には、相続人の確定や財産の調査、遺産分割の協議、相続登記、相続税の申告など、順を追って進めるべき手続きが数多くあります。なかでも相続登記は義務化されているため、後回しにせず、早めに対応することが重要です。
手続きの内容によっては自分で対応することも可能ですが、相続関係が複雑な場合や不安がある場合は、専門家に相談することで、より円滑に進められます。全体の流れを把握し、計画的に相続手続きを行いましょう。
監修者
宅地建物取引士
東京・仙台を中心に、20年以上アパート・マンション建築賃貸業界に従事している。これまで500棟以上の新築アパート・マンションの企画・設計・建築・運営に携わり培ってきたリアルな知見が強み。
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