資産運用の土台をつくる「アセットアロケーション」入門
今回から、ファイナンシャルプランナーの水野崇氏のコラムがスタート。不動産投資をはじめ、富裕層が実践する多様な資産運用の実例を交えながら、知っておきたい最新の運用手法や考え方をわかりやすく解説していただきます。 目次 貯蓄から投資へ アセットアロケーションの基本概念 世界有数の機関投資家が実践するアセットアロケーション リスクを抑えたアセットアロケーションに欠かせないオルタナティブ資産 「まとめ」と...
不動産投資家K
効果的な資産運用のためには、アセットアロケーションとポートフォリオを正しく理解する必要があります。しかし、そもそもこの2つの違いがよくわからない場合もあるでしょう。本記事では、アセットアロケーションとポートフォリオとの違い、それぞれの観点での資産運用方法などを解説します。
アセットアロケーションとは、「資産配分」と訳される金融用語です。「資産配分」という日本語だけで解釈すると、ポートフォリオと同じなのではないかと判断されるかもしれません。
しかし、アセットアロケーションの「資産」とは「アセットクラス」を意味しています。具体的な資産ではなくて、資産の種類や分類です。
アセットロケーションの一例を紹介しましょう。下の表はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による公的年金積立金の管理、運用の2023年3月末時点でのアセットアロケーションを表したものです。具体的な資産名ではなく、国内債券、外国債券、国内株式、外国株式という分類を表しています。
参考:年金積立金管理運用独立行政法人 「2023年度の運用状況」
アセットクラスは「資産クラス」と記載されることもある言葉で、資産の種類を意味しています。アセットクラスは、投資対象となる資産の種類と、投資対象の国・地域により、大きく2つに分けられます。
主なアセットクラスをまとめたものが、下記の表です。
投資対象の地域に関しては、より細かく、米国・ドイツ・中国など、国別で分ける方法もあります。
投資する資産の種類や地域の比率を決定し、その比率に応じて投資商品を振り分けていくのが、アセットアロケーションの基本的な考え方です。
あわせて読みたい
ポートフォリオとは、英語では「Portfolio」と表記される言葉です。もともとは「絵や写真、地図などの大きな書類を入れるためのカバン」「作品集・写真集・画集」などの意味があり、金融の分野では「投資対象商品の組み合わせ」という意味で使われています。
つまり、投資対象の投資商品の内訳を表します。
アセットアロケーションが、アセットクラスという資産の種類の配分を示すものであるのに対して、ポートフォリオは、投資対象の具体的な商品名の配分を示すものです。つまり、ポートフォリオはより具体的な投資商品の配分と言えます。
それぞれの例を示したのが下記です。
アセットアロケーションでは、国内株式など、アセットクラス別にひとまとめになっていましたが、ポートフォリオでは商品別になっています。インデックス別の配分を示したものも、ポートフォリオです。
資産運用においてアセットアロケーションが重要である主な理由は、2つあります。1つ目は投資対象の配分を決定することで、リスクを分散できること、2つ目は、中長期投資のリターンにおいては、アセットクラスの配分が運用パフォーマンスに大きな影響を与えるからです。
まずリスクの分散から説明しましょう。短期投資であれば、ポートフォリオでもリスクを分散できます。しかし、中長期投資におけるリスク分散については、アセットアロケーションがより効果的と言えるでしょう。
中長期投資における運用パフォーマンスは、個別の銘柄の動向よりも、投資対象の資産の特性に大きな影響を受けるからです。インフレや紛争・自然災害など、予想外の危機が訪れた時に、特性の違う資産を複数持つことで、リスクの分散が期待できます。
たとえば、株式と債券とは逆相関するケースが多いとされています。株式が上がると債券が下がり、株式が下がると債券が上がる傾向があり、不動産やコモディティは、株式や債券の動きに影響されにくいとの見方が一般的です。
リターンに関しても、中長期投資ではアセットアロケーションの影響の大きくなる傾向があるとされています。
あわせて読みたい
効果的な資産運用をするためには、アセットアロケーションを決めてから、ポートフォリオを決めるのが一般的な手順と言えるでしょう。「何を買うか」よりも「どう配分するか」のほうが、投資パフォーマンスにおいて、より影響が大きいとされているからです。
アセットアロケーションの決定フローは、大きく4つに分けられます。
1つ目は、投資の目的、運用期間、現金資産の中のどれくらいの金額を、運用資産に振り分けるかを決定することです。
余剰資産を振り分けるのが理想ですが、運用資産に多く回したいケースも出てくるでしょう。目的、リスク、リターンなどを考慮しながら、配分を決定します。
2つ目は、何種類のアセットクラスに投資するのかを決めます。複数の種類を選ぶことで、リスクの分散効果を期待できるでしょう。
3つ目は、アセットクラスの運用傾向の確認です。ウェブ上にある無料の資産配分ツールを使って、過去の動向を調べるといいでしょう。
4つ目は、アセットクラスの決定です。相関関係の低い資産を組み合わせるのがポイントです。1つ目から3つ目までに挙げた要素を考慮し、自身にあった適切な配分を決定します。
アセットアロケーションを決める際には、自分がどれくらいのリスクまでならば許容できるかを把握し、決めておくことが大切です。投資では、基本的にはリスクとリターンとは表裏の関係にあります。
リスクの許容度が大きくなると、期待できるリターンも大きくなる傾向があり、リスクの許容度が小さくなると、期待できるリターンも小さくなる傾向があると言えるでしょう。
自身のライフステージの確認も大きなポイントです。一般的には年齢が若いほど、資産運用の期間の長くなる傾向があるため、積極的な資産運用をしやすいと言えるでしょう。
20~30代ならば、リスクの高いアセットクラスの選択も視野に入れられます。
年齢を重ねるほどに、安定したアセットクラスの配分比率を高めていくのが、オーソドックスな考え方です。
定年の近い層や現役を引退している層は、債券などの低リスクとされている資産の配分を高めるのが、合理的な判断と言えるでしょう。
アセットクラスの配分を決める際には、資産運用の目的を確認することも必要です。投資の目的は、リタイア後の資金・住宅購入の頭金・教育費・起業資金・海外旅行費用など、人それぞれでしょう。
どれくらいの期間までに、どれくらいのリターンを目指したいかによっても、アセットクラスの配分は変わります。リターンとリスクとは表裏の関係にあるため、前述したリスク許容度との兼ね合いを考慮し、配分を決定することが必要です。
世界情勢や景気動向、金融政策など、大きな視点からの考察をまじえて、アセットクラスの配分を検討することも必要でしょう。アセットクラスによって、世界の動きや経済の動きに影響を受けやすい・受けにくいという特性の違いがあるからです。
ただし、世界情勢や景気動向を考慮する場合は、予測に基づいた判断となるため、予測と逆の結果になった場合には、損失を被る可能性もあることも念頭に置く必要があります。
あわせて読みたい
ポートフォリオの決定フローは、アセットアロケーションの決定フローと多くの部分で重なっています。アセットアロケーションのアセットクラスの配分が決まったら、その配分に合わせて、ポーフォリオの具体的な商品を決定するのが基本です。
注意しなければならないのは、ポートフォリオは1度決定したら、それで終わりではないことです。保有している株式や債券は、価格が変動するため、当初の設定からの比率の変化が想定されます。
年に1回くらいのペースで、当初設定した比率にリバランスすることが必要です。
あわせて読みたい
アセットアロケーションとは、投資対象の資産の種類を配分することです。ポートフォリオと混同されるケースもありますが、アセットアロケーションは資産の種類の配分、ポートフォリオは資産の固有銘柄の配分という違いがあります。
投資パフォーマンスでは、アセットアロケーションの影響が大きいとされているため、一般的に、先にアセットアロケーションを決め、その配分に当てはめながら、ポートフォリオを決めていくという流れが推奨されます。
アセットアロケーションを決める際には、リスクの許容度合い、ライフステージ、投資目的などを考慮しなければなりません。そして、それぞれの状況に合った適切なアセットアロケーションとポートフォリオの決定が重要です。
監修者
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
現在、不動産会社で建築請負営業と土地・収益物件の仕入れを中心に担当している。これまで約20年間培ってきた、現場に密着した営業経験と建築知識、不動産知識を活かして業務に携わっている。
不動産投資家Kとその仲間たちでは、「土地を相続する予定だけど、どうすれば良いか検討している」「管理が大変なので、土地を売却したいと思っている」など、土地・建物のさまざまなご相談を承っております。
あなたやあなたの家族の大切な資産を有効に活用できるよう、お気軽にご相談ください!
今回から、ファイナンシャルプランナーの水野崇氏のコラムがスタート。不動産投資をはじめ、富裕層が実践する多様な資産運用の実例を交えながら、知っておきたい最新の運用手法や考え方をわかりやすく解説していただきます。 目次 貯蓄から投資へ アセットアロケーションの基本概念 世界有数の機関投資家が実践するアセットアロケーション リスクを抑えたアセットアロケーションに欠かせないオルタナティブ資産 「まとめ」と...
アパート経営者にとって、適切な収支計算は欠かせません。収支計画書を作成し、アパート購入時や物件の運用に役立てましょう。 この記事では、アパートの収支計算における利回りの計算方法や収支計画書の書き方と注意点のほか、利回りを高く維持するポイントも解説します。 ポイント アパート経営の収支計算には「実質利回り」を用いる 賃料・稼働率・空室率・修繕費の目標数値設定は特に重要 物件の立地選び・早期の空室対策...
賃貸経営にかかわる管理業務の委託料である賃貸管理手数料は管理委託先である賃貸管理会社へ支払うこととなり、家賃収入の5%ほどが相場といわれています。安い手数料というだけで賃貸管理会社を選ぶのはリスクがあり、実際に行ってもらえる業務範囲やサービスの質、実績などを踏まえたうえで比較するべきです。 本記事では賃貸管理手数料の相場や、格安な手数料を理由に管理会社を決めるリスク、適切な管理会社を選ぶポイントな...
副業として不動産投資を検討している会社員の方も多いでしょう。しかし、会社が副業を禁止しており、不動産投資を始めるべきか悩んでいる方も少なくありません。 副業禁止の会社でも、不動産投資は認めてくれるケースが多いです。今回の記事では不動産投資のメリット・デメリットや会社に知られたくない時の対処法などについて紹介します。 \収益物件の購入を検討している方へ!「購入検討チェックリスト」配布中/ 無料ダウン...
亡くなった親の土地を相続した場合の、名義変更手続きをご存知ですか?実は、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。 義務化前に取得している場合も対象のため、いまもまだ後回しにしている方も亡くなった親の土地の名義変更方法について理解しておきましょう。 ポイント 2024年4月から相続登記の申請が義務化されたため、亡くなった親の土地の名義変更が必要 名義変更には登録免許税や司法書士への報酬がか...
賃貸アパートを一棟購入もしくは新築するアパート一棟買いは、多額の初期費用がかかるために、失敗すると大きな損失を抱えてしまう恐れがあります。失敗を防ぐには、事前の需要調査や資金計画、そして賃貸経営を事業として主体的に取り組むマインドが必要です。 本記事では、アパート一棟買いの失敗理由や失敗しやすい人の特徴を押さえたうえで、失敗を防ぐためのポイントをご紹介します。 ポイント アパート一棟買いは、土地や...
木造アパートの耐用年数は、法令では22年と定められています。これを「法定耐用年数」と言い、法定耐用年数が過ぎてしまうと、融資を受けづらくなる、売却が困難になるなど、さまざまなリスクの原因となります。 本記事では、木造アパートの法定耐用年数について解説します。 ポイント 木造アパートの法定耐用年数は22年 法定耐用年数が過ぎた木造アパートは税金が高くなる、売却の難易度が高くなるなど、さまざまなリスク...
アパート経営において、利回りは重要な指標のひとつです。ただし、指標として正しく活用するためには、利回りの意味や計算方法を把握しておく必要があるでしょう。 この記事ではアパート経営の利回りの種類や計算方法、理想の利回りや最低ラインなどについて解説します。 ポイント 利回りは、計算方法によって表面利回り・実質利回り・想定利回りなど複数ある アパート経営において利回りは重要だが、単純な利回りの高さではな...
投資効率の指標として利回りが重視されますが、利回りはどれくらいあれば良いのでしょうか。 不動産投資において利回りは重要ですが、ほかの指標も参考にする必要があります。今回の記事では利回りの種類や目安について、詳しく紹介します。 ポイント 利回りとは投下した資本に対するリターンを数値化したもの 不動産投資における利回りは条件によって変わる 利回りだけではわからないリスクもあるため、利回りだけで判断しな...
相続対策の一環で不動産の購入を考えている方も多いでしょう。しかし、不動産を買うといっても多くの物件があり、どのような物件を買えばよいか悩んでしまいます。 相続対策での不動産は、賃貸用の物件が効果的です。今回の記事では相続税対策で不動産を活用する意味や、具体的な活用方法について詳しく紹介していきます。 ポイント 相続税対策には、賃貸用不動産の購入が効果的 賃貸用不動産を購入する際には、節税効果だけで...