家賃収入があると年金は減額される?不動産投資による年金への影響を解説

カテゴリ
買う  貸す  お金のこと 
タグ
不動産投資  アパート経営  資産運用 

不動産投資家K

B!

2019年に金融庁が発表した「老後2,000万円問題」によって、老後の生活に不安を感じた人も多いのではないでしょうか。老後に備えた資金形成の方法はさまざまありますが、その選択肢の1つが不動産投資による家賃収入です。

しかし、家賃収入を得ていると年金が減額されるのではないかと疑問に思う方もいるでしょう。

この記事では、家賃収入を得たとき年金にどのような影響があるか、そして家賃収入を得るメリットと注意点を解説します。

ポイント

  1. 年金以外の収入を得ている人のうち、年金が減額されるのは会社勤めなどで厚生年金保険料を納め続けている人のみ
  2. 家賃収入があっても年金は減額されないが、税金を納める必要がある
  3. 家賃収入には生活費の補填以外にもメリットがある
目次

家賃収入は年金支給の停止・減額に影響がある?

老後に向けた資産形成のひとつとして、不動産投資を選択された方もいらっしゃるのではないでしょうか。ただ、60歳をすぎて年金以外の収入を得ていると、年金が減額されるのではないかと不安な方もいるでしょう。家賃収入があると年金が減額されるのかどうか、また、年金が減額される場合の要件を解説します。

年金が減額される仕組み

60歳をすぎて収入を得ている方のうち、次のいずれかに該当する方は、受け取っている給与や賞与など給与所得の額に応じて年金の一部または全額が支給されない場合があります。

  1. 70歳未満で会社に就職し厚生年金保険に加入している
  2. 70歳以上で厚生年金保険の適用事業所に勤めている

この制度は「在職老齢年金制度」といいます。年金を受給していて収入を得ている方全員が、年金を減額されるというわけではありません。高齢者に収入があると年金が減額されるという話は、この制度を誤解してとらえている可能性があります。

また、在職老齢年金制度は、国民年金の加入者にも当てはまりません。対象はあくまで会社勤めで一定の給与所得を受け取っている厚生年金の被保険者のみです。不動産所得である家賃収入は、在職老齢年金制度には該当しないのです。

アルバイトやパートは対象外

年金の減額の対象が厚生年金に加入している方だけのため、厚生年金に加入していないアルバイトやパート、フリーランスで収入を得ている方も年金が減額されることはありません。

在職老齢年金の対象は給与所得であり、家賃収入(不動産所得)をはじめ、株や有価証券の売買(譲渡所得)や配当(配当所得)、自営業やフリーランスで請け負った仕事の収入(事業所得・雑所得)などは対象外です。

このように家賃収入で年金が減額されることはありません。年金を受給しながら得ることができる家賃収入は、老後に備えた収入として効果的な手法だといえるでしょう。

コラム:年金が減らされる収入の基準はいくら?

「在職老齢年金制度」とは、高齢者が働きながら年金を受け取ることができる制度です。この制度の目的は、高齢者の就労意欲を高め、社会参加を促すことです。しかし、この制度には一定のルールがあります。それは、老齢厚生年金の月額と給与収入(総報酬月額相当額)の合計額によって、年金の支給額が変わるということです。

具体的には、老齢厚生年金の月額と給与収入(総報酬月額相当額)の合計額が48万円以下であれば、年金は全額支給されます。しかし、48万円を超えると、超えた分の半分が年金から差し引かれます。例えば、合計額が50万円であれば、2万円の半分である1万円が毎月貰える年金から引かれます。なお、老齢基礎年金はこのルールの対象外で、常に全額支給されます。また、加給年金も全額支給停止になる場合があります。

令和4年4月からは、この制度の基準が見直されました。60歳以上65歳未満の方については、以前よりも緩やかな基準(28万円から47万円)になりました。これは、65歳以上の方と同じ基準です。これにより、60歳以上65歳未満の方も、自分に合った働き方を選びやすくなりました。

参考:日本年金機構 「在職中の年金(在職老齢年金制度)」

あわせて読みたい

年金は減額されないが、家賃収入には税金がかかる

家賃収入と年金の減額が無関係だとしても、年金とは別の収入を得ていることは間違いありません。

家賃収入は税法上、不動産収入に該当し、所得税と住民税、消費税の課税対象です。ただし所得税は、事業を維持する上で必要な経費を計上することで税額を抑えることはできます。

また、収入の源泉である土地や建物といった不動産には固定資産税や都市計画税を納めなくてはなりません。家賃収入を計画通りに手元に残したいなら、支払うべき税金や会計に関する知識を身につけておく必要があります。

あわせて読みたい

年金を受給しながら家賃収入を得るメリット

年金を受給しながら家賃収入を得ることには、さまざまなメリットがあります。家賃収入は老後の生活を支えるだけでなく、次代に残せる資産形成にもつながるものです。それぞれのメリットについて紹介します。

不労所得になる

家賃収入は、基本的に自分が働かなくても得られる「不労所得」です。

今の日本では60代、70代でも、まだまだ元気に働ける方も多くいらっしゃいますが、だからといっていつまで働けるかは誰にもわかりません。もし会社員なら、病気やケガなどで働けなくなれば収入は途絶えますが、家賃収入ならこのような場合でも収入を得ることができます。

年金の不足をおぎなえる

老後は公的年金以外に、2,000万円が必要という内容の報告書が話題になったことがありました。この話題からもわかるとおり、公的年金だけでの生活は難しいといわれています。

また日本の公的年金は、現役世代が納める保険料から充当される仕組みです。そのため、少子高齢化が進むと将来は、年金給付額が減額される可能性もあります。

そのような状況に備える意味でも、家賃収入は大きなメリットがあります。自分が労働を提供しなくてもよく、また高齢になっても得られる収入です。

物件の管理を業者に委託すれば、事業にまったくタッチしなくても収入が得られ、年金の不足を補えます。iDeCoに加えて私的年金の一つとなるため、安定した老後生活を送りたい方へ、おすすめです。

インフレ対策になる

社会がインフレ傾向にあると、食品を含む生活必需品の価格は上がり続けます。

インフレの状況下では現金の価値が下がり、相対的にモノの価値が上がるため、不動産も価値が上昇し、価格や賃料も上がります。

不動産がインフレに強い理由は、賃料収入(インカムゲイン)と売却益(キャピタルゲイン)の二面性を持ち合わせているからです。キャピタルゲインのみの金(GOLD)などとも違い、物価上昇に依存することなくインフレ対策が取れるのは、収益を得る方法を分散できる不動産ならではの魅力です。

定年退職で得た退職金も、現金として持っているだけではインフレが進めば価値が下がってしまいます。価値のある不動産を所有しておくことは、インフレ対策の有力な選択肢と言えるでしょう。

資産を残せる

不動産は、たとえば自分が死んでしまっても、なくなってしまうことはありません。子どもや孫が相続し、その価値を受け継ぐことができます。

相続人はそのまま家賃収入を得続けることも、売却して代金を受け取ることも可能です。いずれにしても、相続人に大きな価値を残すことができます。

残す資産が現金や株式だと、インフレで目減りしてしまうこともあり得ますが、不動産はインフレの悪影響を受けにくく価値の下がりにくい資産です。家賃収入のために不動産を買うことは、次代に価値のある資産として残せるという大きなメリットがあります。

年金を受給しながら家賃収入を得る際の注意点

年金を受給しながら家賃収入を得る際には、いくつかの注意すべき点があります。もしこれまで、納税に関する申告や届出をしたことがなければ、各種の納税手続きにも初めて携わることになるため、とくに注意が必要です。

ここでは年金を受給しながら家賃収入を得るときの、2つの注意点を解説します。

確定申告が必要になる

原則として家賃収入を得る場合は、確定申告が必要です。確定申告とは、1年間で得た収入から必要経費などを差し引いて所得を算出し、納める税額を計算して税務署に届け出る一連の手続きをいいます。

年金受給者の場合、下記の要件を満たせば「確定申告不要制度」により申告する必要はありません。

  1. 公的年金などの収入の合計が400万円以下かつ年金などの全部が源泉徴収されている
  2. 公的年金などに係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である

確定申告不要制度もありますが、家賃収入を得ている場合は適用を受けるケースは少ないといえるでしょう。仮に月額家賃5万円の戸建て賃貸で、経費が月あたり3万円かかった場合の年間所得は24万円となり、条件である20万円を超えてしまいます。

基本的には確定申告が必要であると考えていたほうが無難でしょう。

参考:国税庁 「年金所得者に係る確定申告不要制度」

あわせて読みたい

扶養から外れる可能性がある

定年退職後は配偶者や子ども、親族の扶養に入る場合もあるでしょうが、年金と家賃収入の合計が180万円を超えてしまうと、扶養から外れなくてはなりません。そうなると所得の控除金額が減るため、扶養している方の納めるべき所得などの税額が増えてしまいます。

もしこれまで扶養に入っていた場合は、事業を始める前に扶養から外れたときに増える税額を具体的に調べておいたほうがよいでしょう。

あわせて読みたい

まとめ

家賃収入を得られれば、年金だけの老後より豊かな暮らしができます。「年金受給者が収入を得ると減額される」などと聞くこともありますが、それはあくまで一定の給与所得に対してです。

不動産所得である家賃収入は年金の減額と無関係なだけでなく、むしろその不足を補うために有効な資金計画の候補といえます。

ただ、家賃収入を得ることで税金がかかる点や、扶養から外れてしまう可能性があることには注意が必要です。メリットや注意点を正しく理解し、より豊かな老後の生活のために、不動産投資を賢く活用しましょう。

監修者

宅地建物取引士

佐藤 智彦

東京・仙台を中心に、20年以上アパート・マンション建築賃貸業界に従事している。これまで500棟以上の新築アパート・マンションの企画・設計・建築・運営に携わり培ってきたリアルな知見が強み。

不動産投資家Kでは無料相談を承っております!

不動産投資家Kとその仲間たちでは、「資産運用に不動産投資を検討したい」「土地を相続する予定だけど、どうすれば良いか検討している」「管理が大変なので、土地を売却したいと思っている」「アパートの管理が大変なので、管理委託を検討したい」など、土地・建物のさまざまなご相談を承っております。

大切なあなたやあなたの家族の資産を有効に活用出来るよう、お気軽にご相談ください!

関連記事

資産運用の土台をつくる「アセットアロケーション」入門

今回から、ファイナンシャルプランナーの水野崇氏のコラムがスタート。不動産投資をはじめ、富裕層が実践する多様な資産運用の実例を交えながら、知っておきたい最新の運用手法や考え方をわかりやすく解説していただきます。 目次 貯蓄から投資へ アセットアロケーションの基本概念 世界有数の機関投資家が実践するアセットアロケーション リスクを抑えたアセットアロケーションに欠かせないオルタナティブ資産 「まとめ」と...

【2025最新】部屋探しの最新動向は?ニーズの多い設備などトレンドを紹介

入居希望者をより多く集めるため、部屋探しの最新動向やニーズが気になるオーナーの方もいるでしょう。入居希望者のニーズの高い設備を取り入れることで、物件が選ばれる確率を高めることが可能です。 本記事では、各種調査結果をもとにした部屋探しの最新動向や人気の設備ランキング、注力すべき設備を解説します。 ポイント 家賃の平均相場は9万円越えと急上昇している 駅へのアクセスを重視する傾向が強まっている エアコ...

アパート経営の収支シミュレーション!利益を最大化するコツと計算方法

アパート経営者にとって、適切な収支計算は欠かせません。収支計画書を作成し、アパート購入時や物件の運用に役立てましょう。 この記事では、アパートの収支計算における利回りの計算方法や収支計画書の書き方と注意点のほか、利回りを高く維持するポイントも解説します。 ポイント アパート経営の収支計算には「実質利回り」を用いる 賃料・稼働率・空室率・修繕費の目標数値設定は特に重要 物件の立地選び・早期の空室対策...

賃貸管理手数料の相場は5%!管理会社の選び方と安さだけで選ぶリスク

賃貸経営にかかわる管理業務の委託料である賃貸管理手数料は管理委託先である賃貸管理会社へ支払うこととなり、家賃収入の5%ほどが相場といわれています。安い手数料というだけで賃貸管理会社を選ぶのはリスクがあり、実際に行ってもらえる業務範囲やサービスの質、実績などを踏まえたうえで比較するべきです。 本記事では賃貸管理手数料の相場や、格安な手数料を理由に管理会社を決めるリスク、適切な管理会社を選ぶポイントな...

家賃収入は副業になる?会社に知られる原因や対処法と4つのポイント

副業として不動産投資を検討している会社員の方も多いでしょう。しかし、会社が副業を禁止しており、不動産投資を始めるべきか悩んでいる方も少なくありません。 副業禁止の会社でも、不動産投資は認めてくれるケースが多いです。今回の記事では不動産投資のメリット・デメリットや会社に知られたくない時の対処法などについて紹介します。 \収益物件の購入を検討している方へ!「購入検討チェックリスト」配布中/ 無料ダウン...

不動産投資ローンの借り換えのコツは?メリットやデメリットと注意点

ローンの借り換えとは、現状の借り入れ(ローンの残高)をすべて返済するために、別の金融機関から借り入れる(ローンを組む)ことをいいます。不動産投資において、上手に借り換えを利用すると返済金額を減らせる場合があります。ただし、かえって不利になることもあるので十分な注意が必要です。 ここでは、不動産投資ローンにおける借り換えのしくみや、借り換えが必要となるケース、メリット・デメリットとコツ、手順を解説し...

【2025年最新】建築資材高騰はいつまで続く? 8つの要因と建築費の動向

近年、不動産投資家の頭を悩ませてきた建築資材の高騰。一部資材の価格の高騰は落ち着いてきているものの高止まりの状態、そして円安やエネルギー価格の高騰は依然として続いています。さらに、建設業や物流業をめぐる2024年問題・2025年問題はより深刻な状況となっています。 この記事では、建築資材・建築費高騰の現状や今後の動向について解説します。 ポイント 建築資材の高騰は、円安やウッドショックなど主に8つ...

アパート一棟買いの失敗を防ぐポイント!失敗しやすい人の特徴や対処法

賃貸アパートを一棟購入もしくは新築するアパート一棟買いは、多額の初期費用がかかるために、失敗すると大きな損失を抱えてしまう恐れがあります。失敗を防ぐには、事前の需要調査や資金計画、そして賃貸経営を事業として主体的に取り組むマインドが必要です。 本記事では、アパート一棟買いの失敗理由や失敗しやすい人の特徴を押さえたうえで、失敗を防ぐためのポイントをご紹介します。 ポイント アパート一棟買いは、土地や...

木造アパートの耐用年数が過ぎたら?対処法や寿命を延ばすポイント

木造アパートの耐用年数は、法令では22年と定められています。これを「法定耐用年数」と言い、法定耐用年数が過ぎてしまうと、融資を受けづらくなる、売却が困難になるなど、さまざまなリスクの原因となります。 本記事では、木造アパートの法定耐用年数について解説します。 ポイント 木造アパートの法定耐用年数は22年 法定耐用年数が過ぎた木造アパートは税金が高くなる、売却の難易度が高くなるなど、さまざまなリスク...

アパート経営の利回りの計算方法や目安は?理想の利回りを把握しよう

アパート経営において、利回りは重要な指標のひとつです。ただし、指標として正しく活用するためには、利回りの意味や計算方法を把握しておく必要があるでしょう。 この記事ではアパート経営の利回りの種類や計算方法、理想の利回りや最低ラインなどについて解説します。 ポイント 利回りは、計算方法によって表面利回り・実質利回り・想定利回りなど複数ある アパート経営において利回りは重要だが、単純な利回りの高さではな...