不動産所有者が海外移住する際に必要な準備とは?不動産投資の課題と解決策
海外移住を予定していたり、海外赴任の可能性のある賃貸不動産のオーナーにとって、日本国内の賃貸経営や税務対応は大きな課題となります。入居者対応や家賃管理、家賃収入の確定申告などは現地から直接行うことができないため、管理会社への委託や納税管理人の選任が不可欠です。 本記事では、海外に移住・赴任するオーナーが直面するリスクや対応策を解説し、安心して賃貸経営を続けるためのポイントを紹介します。 ポイント ...
不動産投資家K
「老後2000万円問題」「人生100年時代」などと言われる現代、ある程度のまとまった金額である退職金を手にしても、必ずしも安心できないという方も多いのではないでしょうか。退職金のさまざまな運用方法のうち、多くのメリットを持つ1つが不動産投資です。退職金の運用方法として不動産投資をおすすめする理由と注意点について解説します。
物件はどう見極めればいい?「購入検討チェックリスト」
退職金を受け取ったとき、一度にまとまった金額を手にしてどのように使うべきか戸惑ってしまう方もいるかもしれません。しかし、退職金の使い道は人生を大きく左右するだけに、受け取ってからどうしようかと考え始めるのではなく、あらかじめ慎重に検討しておくのが良いでしょう。
ここでは退職金の4つの使い道について詳しく見ていきましょう。
総務省統計局の「2022年(令和4年)7月〜9月期の家計調査」によると、1ヵ月に費やす生活費は全世帯平均で23万7,456円、2人以上世帯に限れば平均28万5,429円です。この金額を年金だけで賄うことは難しく、退職金を取り崩して生活費に充当する場合もあるでしょう。
しかし、退職金の金額や生活水準は人それぞれで、この先何年分の生活費が必要になるかは誰にもわかりません。退職金がいくら高額に見えても、生活費に充当して、ただ消費していくだけなら、いつか尽きてしまうのは明らかでしょう。
参考:e-Stat 家計調査 家計収支編 総世帯, 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯
退職金の使い道としてよく選択されるのが金融機関への預貯金です。中でも定期預金を利用する方は多いでしょう。定期預金とは、一定期間払い戻しをしないことを前提に、普通預金より高い利息を得ることができる金融商品です。
ただ、近年の利率は非常に低く、たとえば1,000万円以上かつ1年以上でも0.003~0.005%で約4万円と、生活費に充当できる利息ではありません。期間中の払い戻しは原則不可ですが、どうしてもという場合は払い戻しが可能です。ただし、その場合は取り決めよりずっと低い利率が適用されてしまいます。預貯金は安全な運用ではあるものの、退職金を増やすという効果は期待できません。
参考:日本銀行 主要時系列統計データ表(更新日時:2023/09/05 09:00)
つまり、繰り上げ返済すること自体がリスクを生んだり、場合によっては必要なくなる支払いを事前にしてしまったりする可能性があるということです。ローン期間が残り少なくて金利が低ければ、そのまま返済を続けたほうが低リスクだと考えることもできます。
「出るお金を減らす」こととは別に、「増やすために使う」のが投資です。
投資は「専門的な知識がないと難しい」「リスクが大きい」といったネガティブなイメージを抱かれがちです。しかし最近は、スマホで少額から始められる投資サービスもよく見かけるようになりました。投資先が決められないという方には、投資信託という選択肢もあります。
また退職金というまとまった資金を使って不動産を買い、賃貸して収入を得る不動産投資も人気です。利便性や知名度の高いエリアにある高品質の不動産ほど安定した家賃収入を、長期にわたって期待できます。
とはいえ、投資にはリスクがつきものです。リーマンショックのような金融危機や、災害による被害などによって、退職金が目減りしてしまう可能性は十分にあります。しっかりとリスクを認識した上での判断が必要です。
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退職金は、人生でも手にするチャンスの少ない、自由に使うことができる高額資金です。この「まとまった高額資金」というのがポイントで、これまでできなかった数百万円、数千万円といった高額な投資を可能にします。その分、事前の下調べや情報収集を怠れば、被る損失も高額です。とはいえ何もしなければ、退職金が徐々に目減りするのは目に見えています。そのため、できるだけリスクの少ない投資手段が必要です。
たとえば投資先を専門家に委託する「投資信託」は、複数の投資家の資金を複数の投資先に投資するため、比較的リスクが少ない手段といえます。「不動産」という現物を運用する不動産投資も、手元に資産が残る分リスクは少ないといえるでしょう。
株式投資は、投資手段の中でも元本が保証されておらず値動きも激しいため、リスクが高い方法の1つといえますが、一方で、高いリターンが期待できます。また、債権は値動きの幅が小さいため、リスクは低いものの高いリターンは期待できません。
不動産投資は、一般にミドルリスクミドルリターンに近い投資手段といえます。部屋数が複数のアパートなどの場合、複数戸の収入があるので、1戸の空室があってもすぐにリスクとなることはないといえるでしょう。
なにより、毎月安定した現金収入が得られることは大きなメリットです。また、出口戦略までしっかり立てておくことで、売却益も見込むことが出来ます。
株式投資などとは違い、減価償却などで経費として計上できる上に現物資産を持てるという点も魅力的です。リスクとリターンのバランスを考えると、不動産投資は退職金の運用方法の1つといえるでしょう。
不動産投資には、さまざまなメリットがあります。とりわけ退職金で始める不動産投資には、代表的なメリットとして次の5つがあげられます。
不動産投資を続けるためにも、非常に重要な項目ばかりです。しっかり理解して、上手に運用しましょう。
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不動産を買うのであれば、少なくとも数千万円以上の資金が必要です。しかし、退職金が少ないからといって、あきらめることはありません。なぜなら金融機関には、不動産投資のためのローンがあるからです。ローンが利用できれば、高額な購入資金を最初に一括で支払う必要はありません。金融機関からの融資で不動産を購入し、ローン返済を家賃収入から行うという、他人資本を活用した仕組みは不動産投資独自の特徴であり魅力のひとつです。
株式などの自己資金内でおこなう投資は取引に限りがあり大きな資産を一度に持つことが難しく、また、FXや信用取引などのレバレッジをかけた取引にはロスカット(強制決裁)というリスクが発生します。
ただし、不動産投資用ローンと住宅ローンには違いがあるため、利用する際は十分に注意する必要があります。
| 不動産投資用ローン | 住宅ローン | |
|---|---|---|
| 融資の目的 | 不動産賃貸事業 | 住宅購入 |
| 融資金額の上限 | 個人年収の5~8倍程度 | 個人年収の10~20倍が可能 |
| 金利 | 高い | 比較的低い |
| 審査される内容 | 個人の属性+物件の収益性 | 個人の属性が中心 |
不動産投資用ローンは「事業用融資」であり、住宅ローンとは異なります。住宅ローンを利用しているからといって、不動産投資用ローンが利用できるわけではないことをしっかり理解しておきましょう。
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不動産投資で得られるのは、毎月の予想が十分可能な現金収入です。公的年金だけだとぎりぎり生活できる程度だった場合、私設年金として不動産投資で得る定期的な収入があれば安心できるでしょう。 もともと公的年金だけで生活ができる場合でも、不動産投資での収入は、不測の事態の備えにもなります。
一般的に、賃貸契約は数年単位、短くても1年単位で締結されるものです。少なくとも契約期間中の現金収入が見込めます。不動産投資は、収入を得られる期間が長期に渡る安定した事業といえるでしょう。
また、在職老齢年金という、老齢厚生年金が減額される制度に対しても、不動産投資で得られる収入で対策ができます。
在職老齢厚生年金とは、60歳以上で、かつ会社員や公務員として給与を受け取っている場合に、収入に応じて老齢年金が減額されてしまいます。不動産投資での現金収入を備えておくことで、金銭的な面での不安を解消しながら働き続けることができます。
加えて、高齢になれば病気や事故など健康面での心配も大きくなってきます。急病で仕事を続けられなくなってしまったり、長時間働くことが難しくなってしまうときの保険としても不動産投資は有効です。身体的・時間的な拘束がほとんどないため、自身が動けなくても収入を得ることができます。
退職金を現金のまま相続すると、相続税額を計算するための評価額は金額そのままです。しかし、現金を賃貸のための不動産にすると、土地の周囲の路線価や賃貸事業を営んでいる点などが考慮され、評価額は低くなります。
評価額から基礎控除を差し引いた後の金額の割合で決まるのが、相続税額です。評価額が低くなるほど、相続税額も低く抑えられます。
相続税は年々上昇傾向にあるため、今後は今ある退職金にかかる相続税も想定より高額になるかもしれません。そのほかのメリットを加味すれば、不動産投資は退職金の節税対策として十分役立つ投資手法といえるでしょう。
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インフレとは、お金の価値が下がることです。もし退職金を現金のまま持っていれば、インフレが起きると価値は下がってしまいます。
インフレに対抗できるのは、現金などの金融資産ではありません。金や骨董品、そして不動産といった「現物資産」です。
不動産もいわばモノなので、インフレが起きれば価値が上がります。このときに売却すれば、買ったときより高額の資金を得ることが可能です。立地のよい賃貸物件であれば、家賃を上げても空室にはなりにくいでしょう。物件そのものの価値は変わらないのに、相対的な金銭的価値は上がるのです。
退職金は不動産として運用する方が、現金として持っているよりもインフレに強いのは間違いありません。つまり、インフレ傾向が強いほど、現金として持っていることが高リスクだといえるでしょう。
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退職金をもとに不動産投資を始めることにはメリットがあるとはいえ、ただ始めればよいわけではありません。会社組織が営む「事業」と同様、不動産投資につきまとうリスクを十分理解し、上手に避けることが重要です。
ここでは退職金で不動産投資を始める際、注意すべき点を5つ解説します。
どのような事業も、最初から最後まで順風満帆というわけではありません。むしろ「いつ何が起こるかわからない」「どれほど備えても大きな損害を被る可能性はゼロではない」と考えるべきでしょう。そのようなとき、頼りになるのは「蓄え」です。
いくら退職金と同じ額の不動産がありローンの手続きが面倒だとしても、すべての蓄えを使って一括購入してしまうことは賢明ではありません。不動産賃貸事業では、修繕費の出費や空室による収入減などがいつ起こるかわかりません。
余裕のない物件購入や無理のある事業計画を立てて不動産投資を始めてしまうと、まさに「退職金破産」という状況に陥りかねません。
どうしても一括で購入したければ、「突然の出費があっても、今の生活水準が維持できる程度の価格」の不動産の中から選ぶようにしましょう。その際には、退職金も含めたすべての蓄えを考慮してください。
不動産投資は、所有する不動産を賃貸に利用することで家賃収入を得るビジネスです。つまり、借りる人である「賃借人」がいなければ、収入は得られません。
たとえば6戸の部屋があるアパートを、1戸あたり7万円の家賃で賃貸し、コスト25万円/月の場合、満室であれば17万円/月が手元に残ります。しかし2戸の空室が発生すると、家賃収入は28万円となり、コストが変わらなければ手元には3万円しか残りません。
投資する不動産が一戸建てや区分マンションだと、問題はさらに大きくなります。空室はそのまま収入ゼロとなるからです。不動産投資において、空室率の高さは、ハイリスクといえます。投資する不動産を選ぶ際は、空室が発生しない要件を満たしているかどうかをよく確認する必要があるでしょう。
当初は新築でも、当然年月とともに建物が古くなると傷みも激しくなり、大規模な修繕が必要になります。大規模修繕の費用がいくらかかるか、あらかじめ計画して貯めておくことが大切です。傷みの程度によってはリフォームや建て替えが必要になるかもしれません。その場合、金額はかかるものの、物件の価値があがり家賃のアップにつながることもあるかもしれません。しかし、かかった費用を回収しようと家賃をアップしても金額によっては空室の原因となり、収入ダウンにつながる危険もあります。
修繕は大規模になるほど、その後の事業の在り方までを考慮し、慎重に判断することが重要です。
企業が一括して不動産を借り上げ、入居者に転貸することを「サブリース」といいます。サブリースには、空室状況に合わせて賃料が変動する「パススルー型」と、空室が発生しても定額の賃料が支払われる「家賃保証型」があります。
家賃保証型サブリースは空室にかかわらず収入が得られるため、一見好条件のように思えます。しかし契約によっては次のようなトラブルの原因となるため、注意が必要です。
このようなトラブルを避けるには、契約書を隅々まで理解することが大切です。好条件であるほど、慎重に検討する必要があるでしょう。
なお、サブリースではなく一般管理で運用を始めるとしても、不動産投資で大切なことは変わりません。立地や長期的な入居需要見込み、競合物件と比較した賃料設定など、長期的な不動産経営を見据えて検討しましょう。
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不動産投資ローンは長期間で組むことを想定しているため、資産状況だけでなく、年齢や健康状態、勤務状況なども考慮されます。そのため、退職金を得てから行おうとすると、ローン審査に通りづらくなる可能性があります。
退職して時間や資産に余裕ができてから、というよりも、退職前から退職金を見越した資産運用を検討し、プロに相談することをおすすめします。
平均寿命が延びることは、退職後の生活資金がさらに必要となることを意味します。ある程度の退職金があっても、そのまま持っているだけでは増えることはありません。
不動産投資は、家賃設定や物件選びに十分な知識と注意が必要となりますが、ローンが利用できたり節税対策になったりというメリットもあり、比較的リスクが少ない投資手法の1つといえるでしょう。
ただし、退職金という貴重な資源を費やすからには、自身でしっかりとメリット・デメリットを把握し、リスクをいかに抑えるか、慎重に判断することが大切です。
監修者
宅地建物取引士
東京・仙台を中心に、20年以上アパート・マンション建築賃貸業界に従事している。これまで500棟以上の新築アパート・マンションの企画・設計・建築・運営に携わり培ってきたリアルな知見が強み。
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