不動産投資を一棟アパート・マンションで行うメリットとリスクとは?

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不動産投資の中でも本格的な投資手法とされるのが、一棟アパート・マンション投資です。初期費用も必要ですが、不動産投資ローンを活用すれば大きな投資も可能です。

この記事では一棟アパート・マンション投資のメリット・デメリットを詳しく解説します。

ポイント

  1. 一棟アパート・マンション投資は本格的な不動産投資の手法である
  2. 一棟アパート・マンション投資はメリットもリスクもあるので開始には検討を要する
  3. 初心者は利回り以外の条件や大規模補修のタイミングなどを精査したほうがよい
目次

一棟アパート・マンション投資とは?

一棟アパート投資および一棟マンション投資は、どちらも建物を一棟まるごと所有して行う不動産投資の中でも比較的ダイナミックな投資手法です。

ここでは一棟アパート投資と一棟マンション投資に分けて、それぞれの投資手法の概要と特徴についてわかりやすく解説しましょう。

一棟アパート投資

一棟アパート投資とは、数戸から十数戸、場合によって20を超える戸数があるアパートの全体を購入し、各戸を賃貸に使用する投資手法を指します。多くの場合土地付きでの所有です。木造(W造)が多いですが、禁煙では軽量鉄骨造(軽量S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)の物件も近年では増えています。

区分マンション投資と比較されることが多いですが、区分投資の場合は建物全体を所有するのではなく、1戸から数戸だけを所有するところが決定的に違います。一棟アパート投資はリスクも大きくなりますが、リターンも大きく、積極派の投資家に向いています。

一棟マンション投資

一棟マンション投資も一棟まるごと所有する投資手法であり、投資を回収するスキームやメリットとデメリットも基本的には一棟アパート投資と大きな違いはありません

そもそもアパートとマンションの定義上の違いは、実のところ明確ではありません。

あくまで大まかな分類としては、建物の構造で区別されるのが一般的です。アパートと呼ばれる共同住宅は主に木造(W造)や軽量鉄骨造(軽量S造)が多く、2~3階建てが多い傾向にあります。一方、鉄筋コンクリート造(RC造)、重量鉄骨造(重量S造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)で、3階建て以上の共同住宅はマンションと呼ばれるケースが多いです。

関連情報:構造紹介

構造の違いによって税法上の扱いが異なるため節税効果に違いがあることや、戸数規模の違いが投資効率に反映する点などが、投資における違いにあげられるでしょう。

全般的には同じ手法でくくっても問題ないので、ここからは「一棟アパート・マンション投資」として話を進めます。

一棟アパート・マンション投資の5つのメリット

不動産投資の数ある手法の中で、一棟アパート・マンション投資はより本格的な投資手法であり、ビジネス感が強くなります。そんな一棟アパート・マンション投資には、主に以下のような5つのメリットがあります。

  1. 1.投資効率が高い
  2. 2.資産形成のスピードが早い
  3. 3.空室リスクに耐えやすい
  4. 4.経営の自由度が高い
  5. 5.節税効果が高い

個々のメリットを詳しく見ていきましょう。

1.投資効率が高い

投資効率という観点からは、区分マンション投資や駐車場投資など規模の小さいものよりも、圧倒的に優れています。その理由はシンプルで、投資で動かす資金規模が大きくなれば、収益の入り方のスケールも大きくなるからです。

経済学的にいえば「規模の利益」または「スケールメリット」があります。つまり、大規模な資産形成を少ない手間でできるということです。

2.資産形成のスピードが早い

一棟アパート・マンション投資は多くの戸数から賃貸収入が入るため、毎月の収益がかなり高額になります。そのため、資金回収やローンの返済も区分マンション投資に比べて早く進んでいきます。

順調に収益が上がれば繰り上げ返済をして残債をどんどん減らし、ある程度返済が進めば復活した融資枠で次の投資物件の購入にもトライできます。結果として、資産形成はスピーディに進んでいくのです。

3.空室リスクに耐えやすい

区分マンション投資の特に初期の場合は、空室になるとダメージが大きいので空室リスクは脅威です。しかし、一棟アパート・マンション投資は初期段階からかなりの戸数を運用しているので、基本的に空室リスクを吸収しやすいといえます。

一部に空きが出てしまっても、一棟の全体としての賃貸経営が順調に回っている限り資金が枯渇することはありません。空室が出た時は、速やかに対応し次の入居者を早く確保することにさえ気をつければ、大きな影響を出さずに経営を続けられるでしょう。

4.経営の自由度が高い

一棟アパート・マンション投資では、賃貸経営を行う上で、オーナーの意志を反映した戦略を実行しやすいといえるでしょう。オーナー自身が決定およびコントロールできる要素が多いため、経営の自由度は高くなります。

区分マンションであれば、自由度は格段に低くなるでしょう。オーナー裁量が及ぶ範囲は所有している戸内のみで、マンション全体の経営判断に自身の意見を反映させることは困難だからです。

自由度が高い一棟投資は、空室率を下げる工夫や賃料アップの施策などを積極的に取り入れることができるので、柔軟な対応で経営のリスクを避けて進むことができます。

5.節税効果が高い

一棟アパート・マンション投資では購入した際の取得代金やその後の必要経費が、そのまま経費計上できるので節税効果が高いです。

また、木造(W造)のアパートの場合は鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨造(S造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)に比べて、減価償却費を大きく計上することができます。賃貸住宅用物件の場合、木造(W造)は耐用年数が22年と他よりも短く、同じ購入費であれば1年あたりに計上できる費用が大きくなるからです。それだけ、所得税・住民税の節税効果も高いといえるでしょう。

一棟アパート・マンション投資の5つのリスク

一棟アパート・マンション投資には前述のようなさまざまなメリットがある一方で、以下のような主に5つのリスクが存在します。

  1. 1.ロケーションの変化に対応しにくい
  2. 2.投資判断が難しい
  3. 3.大規模災害時のダメージが大きい
  4. 4.まとまった自己資金が必要
  5. 5.流動性が低く出口戦略が難しい

個々のリスクに目を向けてみましょう。

1.ロケーションの変化に対応しにくい

一棟アパート・マンション投資は扱う戸数が多い分、周辺地域の環境が変わったことによる需要の変化の影響を受けやすく、対応がしにくいといわれています。

一般的に周辺地域の環境にマイナスの変化があると、それまで需要のあった物件の入居希望者が減少するので注意が必要です。

区分所有の場合、複数のエリアで、物件ごとに間取りなどの条件を散らすことで、ポートフォリオ的にリスク分散することが可能です。

一方、一棟投資ではどの部屋も同じような間取りと設備のことが多く、同じようなタイプの入居者をターゲットとして想定しています。エリア内で大きな変化が起きると、一棟全体の需要が落ち込んでしまうリスクは否めません

2.投資判断が難しい

不動産投資においては、物件があるエリアの賃貸料相場や入居需要を入念にリサーチすることが欠かせません。入居候補者はファミリーなのか単身者なのか、どういった部屋を好み、どのようなライフスタイルなのかなどです。

候補エリアについて充分なリサーチをして、よく吟味しなければ、適切な間取りや設備を判断することはできません。

せっかくそれなりの資金を投入して一棟物件を買っても、中途半端なリサーチでは入居者が集まらず苦しむ結果となってしまうでしょう。投資判断は難しいので、あらゆる情報を精査し、周到に調べて取り組むことが望まれます。個人でリサーチを行う自信がない場合はプロに相談すると良いでしょう。

3.大規模災害時のダメージが大きい

不動産を所有する場合、地震保険や火災保険に入ることになります。万が一被災した場合、保険に入っていても想定以上の自己弁済を強いられることもあるでしょう。一棟アパート・マンションの場合は、その支出規模も大きくなります。

特に地震に伴う液状化現象は厄介です。基礎工事の時点で対策していない限り、液状化による土地の劣化を防ぐことは難しいでしょう。いったん液状化現象が起きてしまうと、そのエリア全体の賃貸料相場に影響が出ることもあります。

相場が大きく下がってしまう場合、区分投資に比べて一棟投資のほうが、ダメージが大きくなりがちです。 リスクを抑えるためにも、購入前にはしっかりとハザードマップなどの確認を行い、適切な防災対策を施しましょう。

4.まとまった自己資金が必要

不動産投資を始める際は、おおむね物件価格の15~30%の自己資金を準備するのが妥当とされています。言い変えれば、自己資金の額によって、どのレベルの投資物件を取得できるかが絞られてきます。

一棟アパート・マンションを取得する場合に妥当な自己資金は500万〜2,000万円程度です。区分マンションなら100万円の自己資金でも開始できる場合もあるため、一棟アパート・マンション投資の資金的なハードルはかなり高めといえるでしょう。

5.流動性が低く出口戦略が難しい

一棟アパート・マンション投資は投資額が高額なため買い手がつきにくく、売買の流動性は低くなります。容易に売却できないリスクがあり、出口戦略が難しいといえるでしょう。

また、売り出してから売却までの期間が長くかかるので、資金回収までの期間も長くなるおそれがあります。売却で得られる資金を別の投資に向けたいと考えていても、思う通りに売却できなければ投資機会を逃すことになるでしょう。

一棟アパート・マンション投資初心者の注意点

一棟アパート・マンション投資の初心者の方にとって、とりわけ注意しておいたほうがよい項目が2つあります。それぞれを見ていきましょう。

利回りだけで選ばずあらゆる要素を精査する

一棟投資のためにマンションやアパートを選ぶ際に、利回りの高さだけで選ぶのは要注意です。土地値の安いエリアや郊外物件は、利回りが高く出やすい傾向にあります。

想定利回りが理想論すぎる場合は、判断材料にはなりません。本当にその利回りが実現できる空室率の低さがあるのか、これから入る入居者は果たしてその賃貸料で納得するのかなど、あらゆる要素を冷静に検討する必要があるでしょう。

一方で、都区部を含む首都圏は、土地の価格が高いため相対的に利回りは低くなります。

一見旨味が少ないように思えても、実はすぐに空室が埋まり、堅実に安定収入が得られるという物件も多く見られます。確実に資産形成につながりそうかという視点で物件を選びましょう。

すぐに多額の修繕費用がかからないか確認する

一棟投資用の物件を選ぶ際には、早急に修繕の必要があることをあえて伏せているようなケースではないか、よく確認することが非常に重要です。たちまち修繕費用が多額にかかる物件を買ってしまうと、運転資金が手元に残りにくくなります。

雨漏りの兆候がある物件を買ってしまうと、結構な修繕費がかかって利益が出にくくなります。とはいえ、修繕状況はなかなか自分で調べるのは困難なため、紹介してくれる不動産投資会社の営業担当に確認してみましょう。もちろん自分の目で物件を見学に行くことが基本です。

不動産投資に修繕費はつきものです。事業計画を立てる際には、同時に長期修繕計画も作成しましょう。きたる修繕の時のために修繕積立を行っておくと良いでしょう。また、前向きに考えれば、修繕の際にリノベーションを行うことで、物件価値を上げられる可能性を秘めていることも不動産投資の魅力です。

まとめ

一棟アパート・マンション投資は不動産投資の中でも、本格的なビジネスの趣があり、実際に戦略的に成功すれば大きな利益を得られる投資手法です。それだけにリスクも大きいので、投資の知識を積極的に学び、慎重な物件選びをしなければなりません。

不動産投資を検討している皆さんはここで紹介した情報も参考に、一棟アパート・マンション投資も選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。

監修者

魚角 幸正

資格
宅地建物取引士
略歴
大手ハウスメーカーにて従事した後、不動産会社で土地の仕入れに携わる。建築知識と経験を活かした不動産売買にまつわる問題解決を得意としている。

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