資産運用の土台をつくる「アセットアロケーション」入門
今回から、ファイナンシャルプランナーの水野崇氏のコラムがスタート。不動産投資をはじめ、富裕層が実践する多様な資産運用の実例を交えながら、知っておきたい最新の運用手法や考え方をわかりやすく解説していただきます。 目次 貯蓄から投資へ アセットアロケーションの基本概念 世界有数の機関投資家が実践するアセットアロケーション リスクを抑えたアセットアロケーションに欠かせないオルタナティブ資産 「まとめ」と...
不動産投資家K
条件を満たせば、不動産投資にノンリコースローンを利用できます。返済が困難になっても、責任範囲が対象物件に限定される点がノンリコースローンの特徴です。本記事では、不動産投資におけるノンリコースローンの仕組みだけでなく、利用時に注意しておく点についても解説します。
ノンリコースローン(Non Recourse Loan)とは、特定の不動産価値を責任の上限とするローンのことです。返済が困難になっても、ローンを利用した不動産以外に債権の取り立てが及ばない(非遡及)ため、非遡及型融資と呼ばれることもあります。
ここでは、ノンリコースローンの仕組みや、日本の住宅ローンとの違いなどについて説明します。
ノンリコースローンの仕組みを理解するためには、まず利用される場面の多い不動産証券化について把握しておかなければなりません。不動産証券化とは、土地や建物などの不動産から生じる賃料や売却益を原資に証券を発行し、不動産に流動性や換金性を持たせる仕組みを意味します。
不動産証券化では、まず不動産に投資する企業(オリジネーター)が100%子会社の特定目的会社(SPC:Special Purpose Company)に対して不動産を売却します。SPCとは、不動産保有・管理など限定された目的のために設立する法人のことです。
ノンリコースローンを利用する場合、金融機関は不動産に投資する企業(オリジネーター)ではなく設立されたSPCに対して融資を行いします。そのため、SPCが倒産したとしても、金融機関はオリジネーターに対して責任を追求することができません。
SPCが倒産した場合、株主であるオリジネーターが責任を負う範囲は出資金に対してのみです。金融機関は、対象不動産からの収益や売却代金から滞った返済を回収することになります。
続いて、個人がアパート経営でノンリコースローンを利用するケースを考えてみましょう。
まず、金融機関のノンリコースローンを利用し、アパートを購入します。アパート経営開始後、ノンリコースローンの返済原資となるのが家賃です。
万が一家賃収入が毎月の返済額を下回るようになり、不動産を売却せざるをえなくなったとしても、借主はローン残高と売却額の差額についての責任は問われません。
日本で居住目的の不動産を購入する際に利用する住宅ローンは、リコースローンであることが一般的です。リコースローンを利用して返済が滞った場合、借主は対象不動産だけでなく、他の財産に対してまで責任を追求されるおそれがあります。
つまり、ノンリコースローンは責任が限定されるのに対しリコースローンは限定されない点が主な違いです。ノンリコースが「不動産」に対する融資で、リコースローンが「人」に対する融資ととらえることもできるでしょう。
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米国に比べ、日本ではまだノンリコースローンが普及していません。融資審査において、個人の年収や勤務先といった「個人属性」に重点を置いている点が普及を妨げる理由として考えられます。
融資する際、不動産を適正に評価する能力やリスク回避の判断能力がなければ資金を回収できなくなるおそれがある点も、金融機関がノンリコースローン導入に積極的ではない理由のひとつでしょう。
ノンリコースローンは、三菱UFJ銀行やみずほ銀行、三井住友信託銀行などで取り扱いがあります。ただし、ノンリコースローンの取り扱いがあっても、その多くが法人向けである点に注意が必要です。
「ノンリコース」との表記はありませんが、責任財産限定特約を締結するとの記載がある三井住友銀行の「直担アパートローン(責任財産限定特約型)」は、国内で数少ない個人向けノンリコースローンといえるでしょう。
参考:三菱UFJ銀行 不動産ファイナンス
みずほ銀行 不動産ファイナンス
三井住友信託銀行 不動産ファイナンス業務
不動産投資にあたり、ノンリコースローンを利用すべきか判断できない場合は、メリットとデメリットを比較してみましょう。
借り手はノンリコースローンを利用することで、以下のメリットがあります。
リコースローンの場合は、金融機関が個人の返済能力を中心に審査可否を判断する一方、ノンリコースローンでは物件の収益性に焦点を当てて判断します。審査基準が異なるため、収入が低くリコースローンの審査に通らなかった方でもノンリコースローンでは承認となる可能性がある点がメリットです。
ただし、ノンリコースローンでも個人の属性は勘案されるため、必ずしも審査が通るわけではありません。
ノンリコースローンでは、返済の責任の範囲が限定されます。そのため、万が一返済が困難な状況になったとしても、担保としている不動産以外の財産に対しては、責任を問われない点がメリットです。
他の事業を営んでいる場合も、ノンリコースローンで返済不能になったことの影響が及ぶことはありません。リコースローンと比べると、申込までの心理的ハードルも低くなるでしょう。
ノンリコースローンは、特に貸し手側にとってリスクを伴う融資です。金融機関はノンリコースローンのリスクを軽減しようとしますから、借り手側にとってのデメリットも存在します。
ノンリコースローンはリコースローンと比べて返済の責任範囲が狭いため、確実に債務を回収できるよう、金融機関は審査基準や条件を厳しくする傾向にあります。例えば、リコースローンよりも借入できる期間が短くなりやすい点はデメリットのひとつと言えます。
また、物件購入時に2〜3割程度の自己資金の拠出を求められることもあります。
金融機関はリスクを考慮するため、ノンリコースローンにはプレミアム分の金利が上乗せされています。リコースローンよりも利息支払い負担が大きい点は、借り手側にとってデメリットです。
なお、実際の金利は各金融機関や借入金額、借入期間によって異なるため、気になる方は取引金融機関に直接お問合せください。
住宅ローンは全国さまざまな金融機関が取り扱っているのに対し、ノンリコースローンの取扱金融機関は大手メガバンクや信託銀行が主で、大部分の地方銀行や信用金庫は仕組みを有していません。また、取引金融機関で取り扱いがあったとしても、投資予定の物件がノンリコースローンの利用条件を満たすとは限りません。
さらに、ノンリコースローンは基本的に法人向けが中心で、個人向けのノンリコースローンが少ない点もデメリットです。
ノンリコースローンには、特有の決まりや制約があります。借入後に返済面で困ることがないように、契約の際には契約書を十分にチェックしておかなければなりません。
契約書をチェックする際、特に重要となるのが責任財産限定特約と制約条項です。
ノンリコース条項とも呼ばれる責任財産限定特約には、返済における責任の範囲について記載されています。具体的には、債務の元金・利息の支払原資が特定の資産に限定されることを示した特約です。
ノンリコースローンかそうでないかは、この特約の有無が肝となるため、契約書に記載のあることを必ず確認するようにしましょう。
制約条項(特約条項)とは、融資を実行する際に債権者と債務者の間で守るべき義務を定めた約束事のことです。コベナンツ条項と呼ばれることもあります。
制約条項に記載される可能性がある具体例のひとつが、担保にした物件を別の抵当権に設定しないという条件です。制約条件は自分が守れる内容なのか、必ず確認するようにしましょう。
ノンリコースローンを取り扱う金融機関は決して多くありません。しかし、2020年に国土交通省が実施した調査によると、金融機関の11.8%が今後ノンリコースローンの商品化を検討中と答えていします。
今後ノンリコースローンを利用できる機会が増える可能性があるため、ここでノンリコース向きの人とノンリコース向きではない人を整理しておきましょう。
リコースローンである日本の住宅ローンの場合、借主の年収や勤務先、社会的な信用度などが審査に多大な影響を与えます。一方、主に対象物件の収益性が重視されるノンリコースローンでは、大企業社員や医師・弁護士、公務員でなくとも物件次第で大きな融資を受けられるため、さまざまな人に向いている融資といえるでしょう。
また、責任範囲を限定できるため、返済できなくなった際のリスクを減らしたいという方にも向いています。
ノンリコースローンは、アパートやマンション、商業施設など投資目的の不動産購入に向けた融資商品です。そのため、自分が住むための物件を購入するためにローンを利用しようと考えている方には向きません。
また、デメリットを考慮すると低金利での融資を希望している方にも向いていないでしょう。利息負担を減らしたい場合は、リコースローンがおすすめです。
ノンリコースローンは、特定の不動産価値を責任の上限とするローンを指します。不動産投資にノンリコースローンを利用すれば、収入が低くても審査に通る可能性がある点や、責任の範囲を限定することで返済不能に陥った場合のリスクを軽減できる点がメリットです。
一方で、取り扱い金融機関が少ない点や、金利が高い傾向にある点がデメリットとして挙げられます。また、今後ノンリコースローンを利用する予定がある方は、責任財産限定特約や制約条項に気をつけて契約するようにしましょう。
監修者
行政書士、損害保険募集人一般資格
リース会社、損保会社を経て、現在は不動産会社のローン管理部に所属。行政書士の資格も有しており、知識と資格を活かし、ファイナンスや行政手続きに関する業務を担っている。趣味は旅行、ドライブ。好きな食べ物は牛刺し。
不動産投資家Kとその仲間たちでは、「土地を相続する予定だけど、どうすれば良いか検討している」「管理が大変なので、土地を売却したいと思っている」「アパートの管理が大変なので、管理委託を検討したい」など、土地・建物のさまざまなご相談を承っております。
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