木造アパートのメリットとは? 経営のポイントや性能・特徴

カテゴリ
買う  建てる 
タグ
不動産投資  アパート経営  初心者  土地活用 

不動産投資家K

B!

アパートには木造や鉄骨造・RC造などさまざまな構造があります。今回の記事では、そのなかでも木造アパートのメリットやデメリット、入居者目線での特徴などを詳しく紹介します。

ポイント

  1. 木造アパートは、土地の特性を最大限に活用できる
  2. 木造アパートは、初期費用が安く利回りを確保しやすい
  3. 賃料が下がりやすいが、メンテナンス次第では下落を防げる
  4. 近年の木造物件の性能は向上しており、耐震性能も上がっている
目次

木造アパート経営のメリットとは

木造と聞くと、鉄骨造やRC造と比べると性能が劣ってしまうイメージを持っている不動産オーナーもいるかもしれません。しかし、木造アパートは不動産賃貸経営にも、多くのメリットがあります。

設計の自由度が高く、土地の特性を活かすことができる

木造アパートは、設計の自由度が高く、土地の形状や入居者のニーズに応じた建築が可能な点もメリットです。木材は加工性が高く、さまざまな形状に加工が可能です。そのため、多様な形状での建築が可能であり、土地の選択肢も広がります。

鉄骨造やRC造では建築できないような狭小地や変形地でも、木造であれば建築が可能なケースもあります。間取りの自由度も高いため、ターゲットとする入居者に合わせた間取りにすることで、稼働率や家賃の向上も期待できるでしょう。

建築費用が安く初期費用を抑えやすい

木造アパートは、鉄骨造やRC造に比べると、一般的に建築費用が安くなる傾向があります。鉄骨造やRC造に比べると木造は材料費が安いだけでなく、軽量なため地盤改良などにかかるコストを抑えられます。そのため、とくに地盤の弱い土地の工事費では、コストの差は大きくなるといえるでしょう。

賃貸経営において初期投資を抑えられることは大きなメリットです。初期投資を抑えることで、利回りは相対的に高くなりやすく、鉄骨造やRC造に比べると短期間で初期投資を回収できます。ただし、木造建築が得意な会社や鉄骨造が得意な会社など、アパートを建築する会社にもそれぞれに強みがあるため、依頼する会社によっては価格差があまり感じられない可能性もあります。見積もりを複数社から取得したり、依頼する会社の特徴なども把握して比較検討すると良いでしょう。

減価償却期間が短い

木造は法定耐用年数が短く、減価償却費が計上しやすいこともメリットです。

減価償却費とは建物などの固定資産を購入した取得金額を、複数年に分割して費用として計上する仕組みです。分割する年数は建物の法定耐用年数によって決まるため、鉄骨造やRC造よりも法定耐用年数が短い木造のほうが減価償却費を多く計上できます。

減価償却費は会計上の費用として扱われるため、多く計上できればそれだけ所得を圧縮でき、税金を抑える効果があります。

リノベーションしやすい

リフォームやリノベーション、増改築がしやすいことも木造アパートのメリットです。木造には古くからの工法である「在来工法」と、海外で採用されている「2×4(ツーバイフォー)工法」があります。

2×4(ツーバイフォー)工法は、簡単に言うと壁で箱を作るような構造のため、間取りの変更や増改築などのリフォームは難しいのですが、在来工法は設計の自由度が高いのが特徴です。在来工法であれば間取り変更なども容易で、入居者のニーズに合わせたリフォームが可能です。

築年数の経過とともに入居者のターゲットが変わってくる賃貸経営においては、木造の自由度の高さは大きなメリットといえるでしょう。

木造アパート経営のデメリットと対策

ここからは木造アパートのデメリットと、対策について見ていきましょう。

入居者の木造建築に対するイメージ

木造アパートに対して、あまりよいイメージを持っていない方も一定数存在します。鉄骨造やRC造の物件に比べると、木造は遮音性や耐震性に課題のあるイメージが根付いており、木造の物件を避ける方もいるでしょう。

こういった背景もあり、鉄骨造やRC造の物件と比べると、同じ立地であればどうしても木造の方が賃料は安くなります。しかし、木造でも使用する建材や間取りなどの工夫次第で遮音性や耐震性を高めることは可能です。

十分な対策を行い、入居希望者にしっかりとアピールすることで、木造でも賃料低下を防げる可能性があります。

耐用年数が短い・劣化がはやい

耐用年数が短く、劣化が早いことも木造のデメリットの1つです。木造は法定耐用年数が短いため減価償却費を多く計上できますが、劣化が早いという特徴があります。鉄やコンクリートに比べると、木材はどうしても耐久性では劣ります。

しかし、木造物件に限らず、法定耐用年数を過ぎた物件が使えないわけではありません。老朽化リスクを意識しつつ、適宜メンテナンスを行うことで耐震性能や快適な居住性能を保てます。

融資期間が短い

木造アパートを建築する場合、金融機関からの融資期間が短くなってしまう可能性があります。不動産投資物件を建築したり、購入したりする際には、不動産投資用のローンを利用することが一般的ですが、多くの金融機関で融資期間は法定耐用年数までと規定している傾向にあります。

鉄骨造(法定耐用年数:34年)やRC造(法定耐用年数:47年)であれば、30~35年の融資期間が確保できるケースが多いですが、木造の法定耐用年数は22年であるため、融資期間も22年に設定されてしまう可能性があります。融資期間が短くなると、借入できる金額も少なくなってしまいます。

ただし、建物の耐久性を評価する基準である劣化対策等級を取得することで融資期間を延ばせるケースもあります。木造アパートを建築する際には、劣化対策等級の取得を検討しましょう。

木造アパートの性能

木造は鉄骨造やRC造と比べると、構造上どうしても一定の性能差が生じることは否めません。しかし、木造ならではの優れている点も存在します。木造物件の性能の特性について、見ていきましょう。

火災に強い

木造アパートには火災に対する一定の安全性が備わっており、一般的な印象よりも実際の性能は高いといえます。

「木は燃えやすい」というイメージがあるため木造は火災に弱いと思われがちですが、そうではありません。木造の場合は火災の際に、木は表面が炭化し、炭化した層が内部を保護します。そのため、燃え広がる速度が遅く、倒壊には時間がかかります。

一方で鉄は燃えることはなくても、一定温度を超えると急激に強度を失い倒壊してしまいます。鉄を高温で熱すると溶けてしまうことをイメージすればわかりやすいでしょう。

通気性が良い

木造の物件は通気性が高く、カビや結露が発生しにくいという特徴があります。木材は天然の素材であるため、「調湿性」を兼ね備えています。「調湿性」とは、梅雨などの湿気が多い時期には空気中の湿気を吸収して空気を乾燥させ、空気が乾燥する時期には湿気を放出する特性のことです。

木造アパートは、木が保有する本来の特性を活かして、快適な環境を維持することができます。

防音性が低い

木造アパートは、防音性は鉄骨造やRC造に比べると劣っています。周囲の部屋から話し声や歩く音などの生活音が聞こえやすく、騒音トラブルに発展してしまうケースも少なくありません。これは、木造自体が鉄骨や鉄筋コンクリートに比べると、音を伝えやすい特徴があるためです。

しかし、防音性は使用する素材や建材によって改善可能です。遮音材を使用したり、二重窓を設置したりすることで、隣の部屋の話し声やテレビの音などを遮断することができます。

入居者にとっての木造アパート

ここまでオーナー目線で木造アパートのメリットやデメリットを紹介してきましたが、賃貸経営を行うにあたり、入居者の視点も欠かせません。ここからは入居者目線での木造アパートの特徴を紹介していきます。

家賃・管理費が安い

入居者から見た木造アパートのメリットは、賃料や管理費が安い点です。木造は建築コストが安く、さらに建物の階数も低いものが多いため、管理費も比較的安く抑えられます。築年数や立地条件が同じ場合、RC造や鉄骨造の物件に比べて、木造アパートはコストを抑えて住むことができるでしょう。

また、木造アパートは鉄骨造やRC造に比べて、築年数の経過に応じて賃料が下落しやすいという特徴があります。できるだけ安い家賃の部屋を探している方にとっては、木造アパートは魅力的といえるでしょう。

木造アパートは賃料だけでなく、初期費用や更新料なども安い傾向にあります。そのため数年単位で見た場合の総額の費用を大幅に抑えられます。

部屋が広い・デッドスペースが少ない

木造は部屋を広くとりやすいことから、自分の生活スタイルに合わせた間取りの物件を選べる点が魅力です。RC造では構造上室内に梁(はり)が多くなってしまう特徴がありますが、木造では柱や梁がそこまで多くないため、空間を広く使いやすく、大きな部屋を確保することができます。

また、鉄骨造などと違って木材は加工しやすいため、さまざまな間取りに柔軟に対応できます。間取りの細かいデッドスペースなども、極力削れる点も木造の特徴といえるでしょう。

木造のアパートでは凹凸が少ない広い部屋が実現できるため、家具選びでも、木造アパートはメリットがあります。凹凸の多い小さな部屋では細かく採寸しなければなりませんが、木造の物件であればそこまで細かく気にすることなく家具を選ぶことができるでしょう。

築浅の物件は性能が向上している

木造といえば、RC造や鉄骨造に比べるとどうしても劣っているイメージをもたれることがありますが、近年では木造アパートの性能も向上しています。木造は軽量なだけでなく、調湿性や断熱性にも優れています。そのため快適な住環境を実現しやすいでしょう。

近年の木造アパートでは、断熱性能を高めるためにウレタンフォームやセルロースファイバーなどの高性能断熱材が導入されています。これにより、冬は暖かく、夏は涼しい室内環境が実現可能です。

また、耐震性についても最新の技術によって性能が向上しています。たとえば、耐震壁や耐震パネルを使用したり、金物工法などを採用したりする方法があります。

このような技術によって地震の揺れに対する耐久力が向上するだけでなく、地震の際に建物の揺れを抑える制振装置などの導入も可能になるため、地震に対しても強く、安心して暮らせるでしょう。

まとめ

木造の強みは、土地の特性を最大限に活用できることです。用途地域の制限や土地の形が悪かったり、道路付けが悪い場所にも、木造であれば器用に建築ができる可能性が高まります。設計の自由度が高く入居者のニーズに応えやすい点は、木造ならではの特徴です。木造の施工性は、投資目線では収益性に変わります。

また、木造アパートは、ほかの構造の物件に比べると建築費が安い点が特徴です。賃貸経営という観点においては、木造物件は初期投資を抑えつつ、利回りが確保できる魅力的な投資物件といえるでしょう。

ただし、メリットの多い木造アパートですが、RC造や鉄骨造に比べると劣化が早いというデメリットもあります。また、木造の物件に対してはよいイメージを持っていない方も一定数存在します。

木造アパートを建築・運用する際には、メリット・デメリットを理解したうえで、最適な物件を選定・建築することが重要です

監修者

杉田 裕蔵

東京を中心に、20年以上アパート・マンション建築賃貸業界に従事。現場に密着した営業経験と建築知識、不動産知識を活かして業務に携わっている。

不動産投資家Kでは無料相談を承っております!

不動産投資家Kとその仲間たちでは、「土地を相続する予定だけど、どうすれば良いか検討している」「管理が大変なので、土地を売却したいと思っている」など、土地・建物のさまざまなご相談を承っております。

あなたやあなたの家族の大切な資産を有効に活用できるよう、お気軽にご相談ください!

関連記事

大家になるには何が必要? アパート経営の流れや注意点、成功のポイント

大家になるために、特別な資格は不要ですが、アパート経営を行う目的や理由を明確にしたり、不動産投資の基本知識を身につけたりする必要はあります。また、どのように資金を調達するかまで考えることも必要です。 この記事では、大家になるにあたってどのような準備が必要なのか、またどのような流れで大家になるかなどについて解説します。将来的に大家になりたい人は、ぜひ最後までご覧ください。 ポイント 大家になるための...

土地信託とは? 仕組みやメリット・デメリット

土地信託とは、土地の所有者が土地を専門家に信託し、管理や運用を任せることで収入を得る仕組みのことです。不動産運用の経験がない方でも始めやすく、自己資金がなくても土地活用ができるのがメリットですが、土地を自由に利用できなくなる、信託報酬が発生するなどのデメリットもあります。 この記事では、土地信託の概要をはじめ、土地信託の流れや主な運用方法などについて解説します。土地信託に興味をお持ちの方は、ぜひ最...

資金なしで土地活用をする方法4選!少額で始められる方法も紹介

所有している土地を有効活用したいけれど、「多額の初期費用がかかるのではないか」と不安に感じている人も多いのではないでしょうか。実は、まとまった資金なしでも、所有している土地を活用して利益を得られる方法はいくつかあります。ただし、そのリスクや注意点はしっかり確認しておく必要があります。 本記事では、資金なし・少額で土地活用を始める方法や注意点、土地活用が可能な土地の条件について解説します。 ポイント...

東京でアパート経営を行うメリットと注意点

東京でのアパート経営は、賃貸需要の高さや家賃水準の高さといったメリットがある一方で、地価や建築費の高さ、利回りの低さといった課題もあります。 本記事では、東京ならではの特性を踏まえ、アパート経営のメリットと注意点をわかりやすく解説します。 ポイント 東京でのアパート経営は安定した賃貸需要と高い家賃収入が見込める 東京でアパート経営する際は、地価の高さや利回りの低さ、税金の高さに注意が必要 東京のア...

不動産所有者が海外移住する際に必要な準備とは?不動産投資の課題と解決策

海外移住を予定していたり、海外赴任の可能性のある賃貸不動産のオーナーにとって、日本国内の賃貸経営や税務対応は大きな課題となります。入居者対応や家賃管理、家賃収入の確定申告などは現地から直接行うことができないため、管理会社への委託や納税管理人の選任が不可欠です。 本記事では、海外に移住・赴任するオーナーが直面するリスクや対応策を解説し、安心して賃貸経営を続けるためのポイントを紹介します。 ポイント ...

富裕層の投資戦略に学ぶ|どのように資産を守りながら安定的に資産を伸ばすか

「富裕層の投資戦略」と聞くと、多くの人が「特別な金融商品」や「限られたネットワーク内での情報交換」を想像するかもしれません。しかし、実際に長年にわたって資産を守り増やしてきた富裕層を観察すると、その答えは意外とシンプルです。 『どのように資産を守りながら安定的に資産を伸ばすか』 この問いを軸に投資戦略を組み立てているのです。 ここで注目すべきは、日本の富裕層が一様ではないという点です。資産形成の経...

資産価値とは?価値の高い不動産の条件や維持するポイント

資産価値とは、現金や不動産、株式などの資産が持つ経済的な価値を指し、不動産の場合は土地や建物の市場での取引価格や評価額で表されるのが一般的です。不動産の資産価値は立地条件や築年数、建物の状態など多くの要素で左右されるため、適切な管理や市場動向の把握によって維持・向上させることが可能です。 本記事では、資産価値の概要や価値の高い土地・建物の条件、維持するために必要なことを解説します。 ポイント 不動...

賃貸物件の入居率と稼働率の違いは?計算方法や活用場面

賃貸経営において入居率と稼働率は、どちらも空室状況や収益性を測るために重要な指標です。入居率はある時点にどれだけ部屋が埋まっているかを示すのに対し、稼働率は一定期間のうち実際に稼働していた割合を表すといった違いがあります。 本記事では、入居率と稼働率の違いやそれぞれが果たす役割、活用場面などをわかりやすく解説します。 ポイント 入居率とはある時点の入居状況、稼働率は一定期間の入居状況を示す指標であ...

不動産経営で入居率を上げる12の方法!すぐに実践したい具体的な空室対策

入居率を上げることで、賃貸経営の安定と収益確保に直結します。集客戦略の見直しや人気設備の導入、管理体制の見直しといった対策を総合的に行うことで、空室リスクを抑え、安定した入居率の実現が可能です。 本記事では、不動産経営で入居率を上げる12の方法を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。 ポイント 入居率を上げる方法を考えるには、課題を分析することが重要となる 入居率を上げるためには、集客に向けた戦...

土地の相続税はいくらになる?評価額の計算方法、特例・控除、申告方法まで

土地を相続した場合、相続税がいくら課せられるのか分からない方もいるでしょう。土地の相続税率は相続する土地の価値によって大きく異なりますが、かなり高額になるケースもあります。しかし、土地活用や特例、控除を使用して節税できることもあります。 本記事では、土地の相続税の計算方法、節税・特例の活用、申告方法をご紹介いたします。 ポイント 土地の相続税率は10〜55% 土地の相続税は土地活用や特例・控除を使...