土地の分筆登記の費用相場は?必要書類も解説

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相続や売却などで、土地を分筆することも多いです。しかし、初めて分筆をする方であれば、費用相場や必要書類、どこに依頼すればよいかなど、わからないことも多いでしょう。

土地の分筆にかかる費用は、土地の利用状況や境界確定の有無、選ぶ土地家屋調査士によって異なります。今回の記事では土地の分筆費用や、必要書類、手続きの流れについて詳しく紹介します。

ポイント

  1. 土地の分筆費用は境界確定の有無や、土地の状況によって決まる
  2. 分筆の費用は、分筆によってメリットを得られる人が支払うことが多い
  3. 著しく不合理な分け方は、不合理分割とされ分筆できない
目次

分筆登記にかかる費用

土地の分筆登記にかかる費用は安い場合でも数十万、高い場合は100万円を超える場合もあります。土地の形状や隣地との状況によって価格は大きく変わるため、一般的な相場を提示できません。

分筆にかかる費用の内訳について、解説します。

登録免許税

分筆登記を行うと、登録免許税が課税されます。分筆の場合は下記の金額が課税されます。

登録免許税=分筆後の土地の筆数×1,000円

分筆にかかる登録免許税は、数千円と少額です。登録免許税は分筆登記だけでなく、所有権の移転など不動産登記を変更する際に課せられる税金です。日本の不動産は登記されることによって所有権などを主張できます。そのため登記は非常に重要で、登録免許税は登記に関する手数料と考えるとよいでしょう。

境界確定のための調査・測量費用

分筆にあたって境界確定が必要な場合、境界確定に必要な調査や測量の費用がかかります。境界とは隣地との土地の境目のことで、境界が未確定な場合は確定する必要があります。土地の所有権は登記に記録されていますが、実際の土地の境界が曖昧なままでは分筆できません。

そのため境界が未確定の場合は、分筆する際に境界確定を行う必要があります。境界確定の費用は30~80万円程度と幅広く、隣地の所有者の状況や所有者の人数、地形などによってさまざまなケースがあります。

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土地家屋調査士の費用

分筆を行う場合は、土地家屋調査士に依頼します。不動産の登記といえば司法書士のイメージがありますが、分筆は土地家屋調査士が行います。土地家屋調査士の報酬に規定はなく、確定したルールがあるわけではありません。

そのため依頼する事務所によって費用が異なります。単純に分筆するたけであれば10万円程度でおさまることもありますが、境界確定などを行えば80万円程度かかることもあります。土地の面積が広かったり、隣地所有者が複雑だったりすると100万を超えるケースも珍しくありません。土地家屋調査士を選ぶ場合は、複数の事務所から見積をとって比較するとよいでしょう。

分筆登記の費用を支払うのは誰?

分筆登記の費用を誰が支払うかは、明確なルールがありません。必ずしも土地の所有者が支払うわけではなく、分筆する理由によってさまざまなケースがあります。たとえば、売買に伴って不動産を分筆する場合、所有者がどうしても土地の一部を売却したいのであれば、売主が負担するケースが多いでしょう。

一方で買主側がどうしても土地の一部を分筆して買いたい場合であれば、買主側が負担するケースもあります。相続で分筆する場合などは、相続人の代表が負担することもあれば、土地を承継する相続人全員で負担する場合もあります。分筆することでメリットを享受できる人が支払う場合が多いと考えておきましょう。

分筆登記に必要な書類

分筆登記に必要な書類は、次の通りです。

登記申請書 申請者の住所や氏名、登録免許税や申請理由、申請年月日を記載した書類
地積測量図 土地の測量図。地番や土地の所在、面積の計算方法や結果、測量した年月日が記載されている
境界確定資料 境界の確認書・境界の同意書・隣地所有者の筆界確認書など
代理権限証書 代理権を証明するもの(代理人が申請を行う場合)
案内図 現地がわかる資料

土地の分筆を行う場合には、境界が確定していることを確認できる資料が必要です。そのため境界が確定していない土地を分筆するためには、境界確定を行わなければ分筆できません

隣地の状況によっては境界確定に数カ月かかる場合もあるため、時間には余裕を持って行いましょう。

分筆登記の流れ

分筆登記の流れを詳しく見ていきましょう。

土地家屋調査士に依頼

分筆は土地家屋調査士が行うため、まずは土地家屋調査士を決めましょう。土地家屋調査士に頼まず、自力で土地の測量や登記申請を行うことは可能ですが、専門的な知識が必要になるため、経験がなければ難しいでしょう。土地家屋調査士の報酬に明確なルールはないため、報酬や費用は依頼先によって異なります。

依頼する際には複数の土地家屋調査士と面談して、対応や見積を比較するようにしましょう。見積を依頼する際には、地積測量図や境界確認書を持参すると、より正確な見積がわかります。

境界を確認

分筆するためには隣地との境界が明確になっている必要があります。そのため分筆前の土地の境界を確認します。境界確定が行われていれば測量や分筆登記を行いますが、未確定の場合は境界を確定させなければ分筆できません。

境界が確定されているかなどの調査は、土地家屋調査士が行います。調査や情報収集の段階では、依頼者の同席は必要ありません。

確定測量を実施

境界が未確定の場合は、境界を明確にして境界を確定させます。境界を明確にするには分筆する依頼者だけでなく、隣地の所有者にも立ち会ってもらう必要があります。隣地所有者の協力がなければ確定測量ができないため、確定測量の立ち会いを依頼する際には土地家屋調査士に同行して、説明するようにしましょう。

とくに時間がかかるのがこの確定測量で、長い場合には6カ月以上かかる場合もあります。隣地の所有権を持っている人が民間か役所かによっても、かかる費用やスケジュール感が異なます。隣地の所有者が民間の場合を民民境界、役所の場合を官民境界といい、官民境界の場合は時間がかかりコストも高い傾向があります。

法務局へ登記申請

確定測量が終了したら、法務局へ分筆の登記申請を行います。登記申請を行うことで登記簿謄本に記載されている面積と、分筆の際に作成した確定測量図が一致し、正式に分筆が完了します。

分筆登記にかかる期間

分筆登記にかかる期間は、隣地との境界確定の有無によって大きく変わります。境界確定ができている場合は、最短で1~2週間で完了する場合もあります。一方、境界確定ができていない場合は、境界確定をするために6カ月以上かかる場合もあるでしょう

分筆登記の申請だけであれば1~2週間程度で完了するため、境界確定に要する時間が分筆登記の時間に直結します。隣地所有者の数や、民間か役所かによって境界確定に関する期間は変わるため、余裕を持ったスケジュールを組んでおきましょう。

土地の分筆ができないケース

土地の状態によっては分筆ができない場合があります。土地の面積が極端に狭かったり、隣地との境界確定ができていなかったりする場合は分筆できません。ほかにも、著しく不合理な分け方も、分筆できません。分筆ができないそれぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。

0.01㎡未満になる分け方の場合

土地の面積が0.01㎡未満になるような分筆はできません。登記できる土地の最小単位は「1平方メートルの100分の1(0.01㎡)」です。0.01㎡未満の数値は切り捨てられるため、仮に0.0099㎡の土地があった場合、登記簿には0,00㎡と記載されます。土地の最小単位を下回るような分筆はできないため、注意しましょう。

また、地域によっては地区計画で最低敷地面積が定められている場合があります。たとえば、渋谷区恵比寿3丁目の最低敷地面積は120㎡と定められており、120㎡を下回ってしまうと建物が建築できません。建物が建築できない土地は、売却する際にも評価が下がってしまうため分筆の際には注意しましょう。

参考:渋谷区 土地利用調整条例

隣地との境界が確認できない場合

土地を分筆するためには隣地との境界が確定している必要があります。そのため境界が確定していない場合は、分筆登記はできません。境界が確定していない土地を分筆するためには、隣地所有者と合意して境界確定を行いましょう。

しかし、必ずしも境界の確定が行えるわけではなく、隣地所有者が行方不明や相続で所有者がわからない場合もあります。また、所有者が判明していても、折り合いがつかず境界の確定に合意が得られないこともあるでしょう。

さまざまな事情で境界確定ができない場合は、筆界特定制度を活用しましょう。筆界特定制度とは、土地の所有者の申請に基づいて法務局が筆界の確定をしてくれる制度です。法務局にいる筆界特定登記官が外部専門家の集まりである、筆界調査委員の意見を踏まえて筆界の位置を確認します。

筆界特定制度は平成17年にできた制度で、それまでは境界確定訴訟をおこす必要がありました。しかし、訴訟では判決がでるまでには時間もコストもかかるため、売却や分筆も思うようにできませんでした。筆界特定制度ができたことにより、短期間・低コストで筆界確定が行えるようになりました。

不合理分割の場合

不合理分割に該当する場合も、分筆できません。不合理分割とは土地の分け方が著しく不合理な分割のことで、意図的に評価を下げて税金対策を行うようなケースが該当します。

たとえば下記のような土地があったとします。

この場合の評価額は、「土地A:200㎡×前面路線価5万円=1,000万円」、「土地B:200㎡×前面路線価20万円=4,000万円」、合計で5,000万円となります。

仮にこの土地を、下記のように分筆したとします。

この場合の評価は「土地A:380㎡×前面路線価5万円=1,900万円」、「土地:B20㎡×前面路線価20万円=400万円」、合計で2,300万円と大幅に評価が下がります。このように不合理な分割では、分筆できません。

他にも国税庁では不合理分割に該当するケースとして、次のような事例を紹介しています。

このような分筆は、Aの土地は利用できず現実の利用状況を無視した分割といえ、不合理分割に該当します。

Bの土地が無道路地になってしまうため、不合理分割に該当します。

このケースではBの土地が無道路地になるだけでなく、Aも不整形地となるため、不合理分割に該当します。

無道路地ではありませんが、AおよびBともに不整形地になり、不合理分割とされます。

Aが奥行短小な使いにくい土地になるだけでなく、Bが無道路地になるため不合理分割とされます。

Bの土地は間口狭小であり、接道義務を果たしていません。無道路地土地を創出してしまうため、不合理分割に該当します。

出典:国税庁 宅地の評価単位-不合理分割(1)

不合理分割に該当するケースは少なくありません。不整形地の場合や、土地の評価が下がってしまう可能性がある場合などは、土地家屋調査士に相談しましょう。

まとめ

分筆とは一筆の土地を複数の筆に分割することをいいます。売却や相続など、土地を分筆するケースは多いでしょう。分筆する場合は土地家屋調査士に依頼をして、測量などを行いますが、境界が確定していない土地は分筆できません

隣地の所有者が不明などで境界確定ができない場合は、筆界確定制度を活用するとよいでしょう。ほかにも0.01㎡未満の分筆や、不合理分割の場合も分筆できません。また分筆にかかる費用は土地や隣地の状況によって大きく変わります。とくに土地家屋調査士への報酬に決められたルールはないため、複数の土地家屋調査士から見積りをとることと、価格だけでなく対応の良さも比較するようにしてみてください。

監修者

宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

冨岡 道博

建築不動産業界に25年間以上従事。仕入・開発・販売・請負は500棟以上の実績あり。現場に密着した営業経験と建築知識、不動産知識を活かして業務に携わっている。

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