不動産の等価交換の仕組みとは?メリット・デメリット・成功のポイントを解説

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等価交換は、土地の所有者とディベロッパーがそれぞれ「土地」と「建物の建築費」を出資し、その出資比率によって土地と建物の権利を分配する仕組みです。自己資金の負担なく収益資産を建てられるため、リスクを抑えた土地活用ができます。本記事では、等価交換のメリットやデメリット、成功するための注意点を解説します。

ポイント

  1. 等価交換は、土地の一部を手放す対価として建物の一部を得られる
  2. 初期費用がかからないためリスクが低く、相続税対策にもなる
  3. 収益性が高い土地でなければ等価交換が成り立たない
目次

等価交換とは

不動産の等価交換とは、土地の所有者とディベロッパー(不動産開発業者)とで取り交わされる土地開発の手法です。

土地の所有者は土地を、ディベロッパーは建物の建築費をそれぞれ出資し、建物の完成後はお互いの出資比率に応じて土地と建物の所有権を分配します。土地の一部と建物の一部を等価で交換することで、双方ともに土地と建物の所有者になれる点が特徴です。等価交換は、土地を有効活用したい土地所有者と、収益を生むための土地を求めているディベロッパーによる共同事業といえます。

等価交換の仕組み

等価交換は、土地所有者が提供する土地にディベロッパーがマンションやオフィスビルなどを建設して、得られる収益を出資比率に応じて分け合う仕組みです。

まずは、土地所有者が土地をディベロッパーに提供します。ディベロッパーはその土地にマンションを建築します。完成したマンションと土地を、お互いが出資した「土地の価格」と「建築費」の比率で権利を持ち合うことで、マンションから得られる収益を公平に分配できるのです。

たとえば、土地の価格が6億円、マンションの建築費用が4億円の場合、出資比率は土地所有者が60%、ディベロッパーが40%です。

つまり、6億円の土地は、土地所有者が60%の3.6億円分、ディベロッパーが40%の2.4億円分ずつ権利を共有します。同様に、マンションも6:4の割合で建物の権利を共有もしくは区分所有して、得られる収益を分配します。

等価交換のメリット

土地活用したい土地所有者と、収益物件を建設する土地を探しているディベロッパーの双方の目的が合致して進められるのが等価交換です。土地所有者にとっては、土地を提供する代わりに建物の所有権が得られるため、コストをかけずに土地活用できます。

ここからは、土地所有者における等価交換のメリットを5つの視点で解説します。

リスクが小さい

等価交換における最大のメリットは、リスクを最小限に抑えて土地活用できる点です。建物の建築費を負担する必要がないため、ローンによる金利負担や返済が滞るリスクを避けられます。大規模な建物であっても土地所有者の初期費用はゼロです。

土地活用にはある程度の自己資金が必要となるケースが多いですが、等価交換であれば事業リスクが小さいといえるでしょう。

特例による税の優遇措置がある

等価交換は、売却益にかかる税金の優遇措置を使える点もメリットの1つです。

等価交換であっても、土地をディベロッパーに一旦売却する手順を踏むため、その際の売却益には譲渡に係る所得税が課税されます。そこで活用できるのが「立体買い換えの特例」という特例で、正式名称を「既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例」といいます。一定の要件を満たすと、譲渡所得税の支払いを全額先送りにできる制度です。

納税時期を繰り延べするだけの措置のため、等価交換で得た建物の売却時には先送りした分の譲渡所得税を支払わなければなりません。しかし、等価交換時の税負担をなくせる点で、事業を開始するハードルが下がるでしょう。

参考:国税庁 措置法第37条の5《既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例》関係

相続税対策になる

所有している更地の土地に賃貸物件を建てると、相続税の節税に効果的です。

土地を更地で所有している場合、相続税の計算時には土地の評価額そのままが課税対象となります。一方、相続する土地にマンションなどの賃貸物件を建ててあれば「貸家建付地」とみなされ、相続税を算出するもとになる土地の評価額が大きく減額されます。

参考:国税庁 No.4614 貸家建付地の評価

遺産分割をしやすくなる

等価交換でマンションなどの建物を建てると、遺産分割をスムーズに進めやすいメリットがあります。

土地を複数人で相続しようとすると、分割方法で揉めるケースが多いです。分割したとしても有効活用できる広さがあるのか、接道や周辺環境に差はないかなど、全員が納得する土地の分割は困難でしょう。

一方、等価交換で建物を所有していれば、床面積や部屋数で明確に分けられるため、更地のままより遺産分割がしやすくなります。

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専門家に任せられる

等価交換のメリットには、建物の建築工事から賃貸経営までをディベロッパーに任せられる点もあげられます。

大規模な建築物の工事や事業の推進には、専門的な知識や経験が必要です。等価交換であれば、不動産事業の専門家であるディベロッパーと共同で事業を行えます。豊富なノウハウをもつプロが事業をリードしてくれるため、投資資産としての成長に期待が持てるでしょう。

等価交換のデメリット

多くのメリットを持つ等価交換ですが、検討する際には知っておきたいデメリットも存在します。

自社の利益を確保したいディベロッパーとの交渉には、労力を惜しまず対応しなければ納得のいく取り決めに結びつきにくいでしょう。自分だけで所有していた土地を複数人で共有した結果、不都合が生じる場面もあるかもしれません。

等価交換における5つのデメリットを詳しく見ていきましょう。

時間と労力がかかる

等価交換では、「還元床の分配」を決めるのに多くの時間と労力がかかる傾向があります。

完成後の建物は、出資比率に応じた床面積を双方に分配されます。床面積のそれぞれの持ち分が「還元床」です。還元床面積が広いほど収益が増えるため、還元床の分配を決める出資比率はディベロッパーとの間で対立が発生しやすい部分です。

出資比率の話し合いが難航する理由の1つに、適正な土地価格が算出しにくい点があります。不動産鑑定士による評価額も一定ではないため、お互いが主張する土地価格をすり合わせにくいでしょう。

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土地の権利を失う

等価交換のデメリットは、土地全体の所有権を失ってしまう点です。等価交換により土地の権利を一部手放すと、今後は土地の使い方を独断で決められなくなります。先祖代々から受け継がれた土地や思い入れのある土地であれば喪失感もあるでしょう。

ディベロッパーから等価交換を持ちかけられるということは、収益性が高い土地と見込まれているはずです。等価交換以外の方法も検討しながら慎重に判断しましょう。

土地の権利が複雑になる

土地を複数人で共有するため権利が複雑化する点も等価交換のデメリットです。土地の活用方法だけでなく、建物の管理や修繕、売却に関して、土地と建物を所有する人の同意がなければ進められません。

建て替えやリフォームなど将来的な見通しまで考慮して、契約するディベロッパーが意思疎通のスムーズにできるパートナーであるか考える必要があります。

立地が良くないと成立しない

そもそも、等価交換は立地が良い土地でないと成り立ちません。ディベロッパーは、「この土地で事業をしたら利益が出る」と見込まれる土地でしか等価交換を引き受けないため、土地所有者が希望しても等価交換できない可能性もあります。

初期費用なく土地活用ができる等価交換ですが、ディベロッパーにとって魅力的な土地でないと成立しない手法です。

ディベロッパー主導になりやすい

ディベロッパーに事業を任せられる利点がある反面、主導権を握られやすい点がデメリットでもあります。

ディベロッパーの大きな目的は自社の利益を高めることです。ディベロッパーの知見に頼って「すべてお任せ」で進めてしまうと、知らず知らずのうちに土地所有者が得られる利益が少なくなってしまうかもしれません。

どのような建物を建てるのか、どのように分配するのかなど、納得できたうえで話を進めてもらい、疑問や不安があればその都度確認しましょう。主体的な姿勢が主導権を握られないためのポイントです。

等価交換が向いている土地・人

等価交換に向いているのは、「好立地」「面積が広い」といった特徴を持つ土地です。ディベロッパーが「利益を出せる」と判断する土地でないと等価交換が成立しないため、条件の良い土地が適しています。

また、土地の一部を手放す代わりに建物の一部が得られる特徴から、「低リスクで土地活用したい」「土地の権利を手放しても良い」と考える方に向いているでしょう。

好立地の土地

等価交換には、マンションやオフィスビルの需要が高い好立地な土地が求められます。収益が見込めない土地に建物を建てても、建築費の回収さえも困難になるでしょう。

立地の良い土地の特徴は、人口の多い都市部、駅から近い、周辺環境が良いなどがあげられます。土地の価値が反映された路線価や固定資産税評価額を参考にするのもよいでしょう。

面積の広い土地

比較的大規模な建物が建てられることが多い等価交換では、面積の広い土地が好まれます。ディベロッパーにとっては、土地が広いほど事業の選択肢が増え、収益を上げやすくなるからです。

目安としては、100坪以上の広い土地が等価交換に向いているといわれています。土地面積の広さは、事業の収益性を求める等価交換では重要視されるポイントです。

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低リスクで土地活用したい

初期投資が不要な等価交換は、できるだけ低リスクで土地活用したい方に向いています。土地を出資する代わりに建物の一部を所有できるため、自己資金を持ち出す必要がありません。借入金によるリスクを背負うことなく建物が建てられます。

また、経験豊富なディベロッパーに事業を任せられる点も、大きく失敗するのを防ぐ効果があるでしょう。

土地の権利を手放しても良い

等価交換は、土地の一部を手放さなければなりません。土地全体の活用方法を自分だけの意志で決められなくなり、権利関係が複雑になる可能性も出てきます。思い入れのある土地を取り戻したいと思うようになっても、等価交換で手放した土地の権利を買い戻すのは難しいでしょう。

それらを踏まえたうえで、土地の権利を手放しても良いと割り切れる方に向いているといえます。

等価交換で注意したいこと

等価交換を行うときに注意したい点は以下の2点です。

  1. 信頼できる業者を選定する
  2. 等価交換以外の方法も検討する

自己資金が不要の土地活用として魅力的な等価交換ですが、大規模な建物による長期事業となります。慎重に検討するための判断材料として、信頼できる業者選びと等価交換以外の土地活用方法について、詳しく説明していきます。

信頼できる業者を選定する

長きに渡って事業が続く等価交換を成功させるには、将来的にも信頼し続けられる業者を選定するのが重要です。初期費用がかからないとはいえ、大切な土地の一部を手放すからにはそれなりのリターンがなければ意味がありません。

そのためには、信頼できる業者と手を組み、お互いに収益を確保できる事業を作りあげていく必要があります。信頼できる業者を選定するポイントは以下のとおりです。

  1. 現実的な収益計画や経営プランを明示している
  2. 算定した金額の根拠が明確である
  3. 質問に丁寧に回答してくれる

複数の業者に相談すると比較検討しやすくなります。等価交換を上手に活用するには、業者に任せきりにせずに自ら動いていきましょう。

等価交換以外の方法も検討する

等価交換を検討するときには、等価交換以外の土地活用方法もチェックしておきましょう。等価交換は収益を業者と分け合う分、利回りは低くなる傾向です。等価交換できるほどの好条件な土地であれば、自分で建物を建てて運用したほうが収益面でも税制面でも有利になる可能性もあります。

不動産会社などの外部の知見を活用して、さまざまな土地活用方法を検討していきましょう。

まとめ

等価交換とは、土地の所有者が土地を、ディベロッパーが建物の建築費を出資し合い、その出資比率に合わせて土地と建物を分配する土地活用手法です。

借入のリスクを負うことなくディベロッパーのノウハウを活かした事業経営ができ、相続対策もできる点が等価交換のメリットです。一方で、交渉に時間と労力がかかり、不動産の権利が複雑化するデメリットもあります。

等価交換を行うには信頼できる業者選びが重要です。等価交換以外の可能性も含めて、経験豊富な不動産会社に相談しながら慎重に検討しましょう。

監修者

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

中川 祐一

現在、不動産会社で建築請負営業と土地・収益物件の仕入れを中心に担当している。これまで約20年間培ってきた、現場に密着した営業経験と建築知識、不動産知識を活かして業務に携わっている。

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