建物滅失登記の費用はいくら?相場や手続きの方法

カテゴリ
建てる  制度のこと 
タグ
不動産売却  建築  土地活用 

不動産投資家K

B!

建物滅失登記とは、建物を取り壊したり、火災や災害で失ったりした場合に登記簿に反映させるための手続きです。

建物滅失登記にかかる費用は、自分で行う場合は1,000〜3,000円程度、土地家屋調査士に任せる場合には5万円程度と、誰が手続きを行うかによって費用が大きく異なります。本記事では、相場や手続きの方法について解説します。

ポイント

  1. 建物滅失登記は自分で行うか土地家屋調査士に依頼するかによって費用が異なる
  2. 建物滅失登記は建物の解体後から1カ月以内に行う必要がある
  3. 建物滅失登記を期限内に確実に終わらせるにはプロに任せるのがおすすめ
目次

建物滅失登記の費用

建物滅失登記は、土地家屋調査士に依頼するか、自分で行うかによってかかる費用が大きく異なります。

土地家屋調査士に依頼する

建物滅失登記は土地家屋調査士に代行してもらえます。土地家屋調査士に依頼した場合にかかる費用は5万円程度といわれていますが、以下のように地域によって異なります。

地域 建物滅失登記の平均値
関東 48,628円
中部 48,247円
近畿 47,065円
中国 45,997円
九州 48,882円
北海道 43,065円
東北 49,013円
四国 46,191円

参考:日本土地家屋調査士会連合会 「「令和4年度事務所形態及び報酬に関する実態調査」に基づく各設問の回答報酬額分布図(ブロック別)」

また、建物の規模や所有者と申請者の名義が異なるなど、業務の増減によっても費用が変化します。

なお、建物滅失登記は登記情報の表題に関する登記であるため、土地家屋調査士の業務に該当します。新築住居や不動産取引における登記のように建物の権利に関する登記ではないため、司法書士などのほかの士業では代理申請はできません。

もし建物の所有者が亡くなっている場合には、相続人が申請を行うことも可能です。つまり、建物滅失登記は所有者または土地家屋調査士、所有者が亡くなっている場合に限り相続者も申請できます。

イレギュラーなケースでは追加費用がかかる

建物滅失登記には、さまざまな状況があり、なかには下記のように追加費用がかかる場合があります。

事例 追加費用
①相続発生時に戸籍調査が必要な場合 3〜5万円程度
②解体証明書がない場合 数万円程度
③分合筆による所在変更が必要な場合 1〜2万円程度
④登記上の住所が異なる場合 1〜2万円程度
⑤広大な借地上建物を滅失登記する場合 1〜2万円程度
⑥抵当権が残っている場合 数万円程度

①建物滅失登記は、相続登記をしていなくても相続人から申請することが可能です。その場合、相続発生時に戸籍調査が必要になることがあります。戸籍調査を行った場合には、3〜5万円程度の追加費用がかかります。

②何十年も前に解体したにもかかわらず、建物滅失登記を行っていなかったため解体証明書がない場合は、役所での滅失証明書の取得または上申書の作成が必要です。その場合、調査をするために追加で数万円程度かかります。

③滅失した建物の所在地が分合筆を行っている場合、建物の所在地を特定するため土地の状況によって1〜2万円程度の調査費用がかかることがあります。

④引越しをしている場合など、所有者の登記上の住所と現住所が異なるときは、引っ越し回数によっては住民票や戸籍附票だけでは、住所変更の履歴が証明できません。その場合は、建物の権利証をチェックして調査する必要があり、1〜2万円程度の追加費用がかかります。

⑤借地の上に何棟も建物が建築されている場合には、現地特定調査の範囲が広がるため、1〜2万円程度追加費用が発生することがあります。

⑥滅失した建物に複数の抵当権が残っている場合、抵当権者からの承諾取得や法務局との協議が必要です。その場合は、調査費用に数万円程度追加でかかることがあります。

自分で手続きする

建物滅失登記を自分で行った場合の費用は、1,000〜3,000円です。費用の内訳は、「登記事項証明書」と「地図等情報」のほかに、必要な書類を集めるための交通費やコピー代です。

登記事項証明書を取得するのにかかる費用は、法務局の窓口で申請すると600円、オンライン申請・送付は500円、窓口で交付を受けると480円です。

地図等情報の取得にかかる費用は、法務局の窓口で申請またはオンライン申請・送付は450円、オンライン申請して窓口で交付を受けると430円です。

登記事項証明書と地図等情報の料金は、どちらも収入印紙で支払います。収入印紙は法務局の窓口または郵便局で購入できます。

参考:法務省 登記手数料について

建物滅失登記にかかる登録免許税

登録免許税とは、法務局へ支払う費用です。分筆登記や相続登記など土地や建物に関係する登記手続きに登録免許税がかかるものもありますが、建物滅失登記には登録免許税やその他の税金はかかりません

ただし、建物滅失登記をしないままにしていると、手続きを行わない限り建物に固定資産税や都市計画税が課税されます。そのため、建物解体後はすみやかに建物滅失登記の手続きを行いましょう。

建物滅失登記を行うタイミング

不動産登記法によると、滅失登記は所有者または対象建物の登記名義人が建物取り壊し後1カ月以内に行わなければなりません

建物は構造や所有者などがわかるように登記されており、建物を解体した際は登記登録に建物がなくなったことを反映する必要があるためです。

土地家屋調査士に依頼した場合の建物滅失登記完了までの目安は1〜3週間程度です。自分で行うにしても、土地家屋調査士に依頼するにしても、早めに行動しておくことをおすすめします。

参考:e-GOV 不動産登記法

建物滅失登記を行わなかったら

建物の滅失登記を行わなかった場合、以下のようなデメリットが発生します。

  1. 罰金が科される
  2. 建設許可がおりない
  3. 土地の売却ができない
  4. 固定資産税がかかり続ける

それぞれのデメリットについて解説します。

罰金が科される

建物を取り壊したにもかかわらず、1カ月以内に申請を行わなかった場合、10万円以下の過料の支払いを求めることが不動産登記法164条によって定められています。

過料とは、行政上の秩序を保つために違反した者に金銭的な負担を課す制裁です。建物の解体後1カ月をすぎると、いつ過料通知が届いてもおかしくありません。違反対象になる前に、早めに行動しましょう。

参考:e-GOV 不動産登記法

建築許可がおりない

建物を取り壊しても建物滅失登記を行っていない場合、新築を建てようとしても建築許可がおりません。なぜなら、自治体は建物がすでに解体されていることを知らず、建物がある状態とみなされるためです。

建物の新築を建てるときには、あらかじめ市区町村へ建築確認申請を行い、審査を受けて許可を取得します。

しかし、申請した土地に登記上建物があると確認されれば、建築計画に不備があると判断され、許可がおりません。このように、更地を自由に利用できなくなってしまいます。

土地の売却ができない

建物滅失登記が済んでいなければ、土地の売却もできません。登記上の土地と現状が異なる土地として、買主から敬遠されたり、不動産会社からも仲介を断られたりすることもあるでしょう。金融機関から融資を断られる可能性もあります。

ただし、土地売買契約において「特約事項」として売買価格を調整し、買主が建物滅失登記の費用をすべて負担することを売主と買主の両者が合意すれば、例外的に建物滅失登記を行っていない状態でも売買できます

とはいえ、登記上建物が残っている土地は建物滅失登記が済んでいる土地よりも購入したい人が少ないと考えられます。

固定資産税と都市計画税がかかり続ける

建物滅失登記を行わないと、登記上は建物がある状態になっているため固定資産税と都市計画税がかかり続けます。

固定資産税と都市計画税は、1月1日時点での登記を基に請求を行います。建物滅失登記が完了した場合は、翌年の1月1日から課税対象外となり、固定資産税と都市計画税の支払いは必要ありません。

ただし、建物を解体して更地になった場合、住宅地の特例による軽減税の対象外になり、反対に課税額が増えるケースもあります。

建物滅失登記の必要書類と手続きの流れ

ここでは、建物滅失登記を土地家屋調査士に依頼する場合と自分で手続きする場合に分けて、必要書類と手続きの流れを説明します。

土地家屋調査士に依頼する場合

土地家屋調査士に依頼する場合の手続きの流れは、以下のとおりです。

1.
土地家屋調査士に相談する
2.
必要書類を準備する
3.
現地調査を行う
4.
土地家屋調査士が作成した委任状に署名・捺印する
5.
登記完了証・閉鎖事項全部証明書を受領する

土地家屋調査士への相談は、一般的に無料で行えます。申請から完了までは、1〜3週間程度かかりますが、書類の不備や戸籍の収集が必要だった場合には、さらに期間が長くなります。

土地家屋調査士に依頼する場合の必要書類

土地家屋調査士に依頼する場合の必要書類は、以下のとおりです。

  1. 委任状
  2. 住民票
  3. 印鑑証明書

そのほかの書類については、土地家屋調査士が作成してくれます。

自分で手続きする場合

自分で手続きする場合の流れは、以下のとおりです。

1.
管轄の法務局を調べる
2.
建物滅失登記が可能かチェックする
3.
管轄の法務局にて対象の建物の調査を行う
4.
対象の建物の現地調査を行う
5.
必要書類を準備する
6.
登記申請書を作成して法務局へ提出する
7.
登記完了証を受け取る

建物滅失登記は、建物があった住所の管轄の法務局でしか手続きが行えません。まずは管轄の法務局がどこなのか調べる必要があります。

管轄の法務局を調べたら建物滅失登記が可能かチェックしましょう。解体した建物が登記されていない場合や相続人が複数いる場合でも、申請は一人でできるため、ほかの相続人が申請している場合には、建物滅失登記を申請する必要はありません。

解体した建物の登記の有無は、固定資産税の納税通知書に同封された課税明細書の家屋番号でチェックできます。家屋番号が記載されていない場合は、未登記の建物である可能性が高いです。

自分で手続きを行う場合、慣れていないと1カ月以上かかる可能性もあるため、スケジュールを調整して早めに行動しましょう。

申請書類に不備がなければ滅失登記が完了し、登記完了証が交付されるとともに、不動産登記簿が閉鎖されます。

また、閉鎖登記事項証明書を取得すると、今後登記情報の取得も可能です。

自分で手続きする場合の必要書類

自分で手続きする場合の必要書類は、以下のとおりです。

  1. 建物滅失登記申請書
  2. 滅失した建物の登記事項証明書
  3. 建物滅失証明書
  4. 解体業者の代表者事項証明書
  5. 解体業者の印鑑証明書
  6. 対象建物周辺の地図

建物滅失登記申請書は、法務局のホームページ(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html#23)からダウンロード可能です。記載例に沿って作成しますが、不動産番号を記載した場合は、住所、家屋番号、構造、床面積、種類の記載を省略できます。建物滅失証明書、代表者事項証明書、印鑑証明書は、解体工事を行う業者が準備します。

必要書類がすべて揃ったら、登記申請書と一緒に法務局へ提出しましょう。郵送・オンライン・法務局の窓口の3つの提出方法がありますが、書類に不備があった場合は法務局の窓口へ出向いて修正する必要があるため、申請に慣れていない場合などは最初から法務局の窓口で提出するのがおすすめです。

郵送で登記完了証の受け取りを希望する場合は、返信用封筒と書留郵便用の切手を必要書類に同封しましょう。

建物滅失登記の手続きはプロに任せるのが安心

前述したように、建物滅失登記は自分で手続きする方法と土地家屋調査士に依頼する方法があります。建物滅失登記は1カ月以内に行うという期限が設けられているものの、用意する書類が多く、自分で手続きする場合には申請者の負担は非常に大きいです。

建物滅失登記は1カ月以内に行わないと、罰金や存在していないにも関わらず固定資産税と都市計画税の発生、土地の活用にも制限がかかるなど、多数のデメリットが生じます。コストはかかりますが、期限内に確実に終わらせるためには、プロに任せるのが安心です。

まとめ

建物滅失登記の費用は、自分で手続きを行う場合は1,000〜3,000円程度、土地家屋調査士に依頼する場合は5万円程度かかります

建物滅失登記は建物の取り壊し後1カ月以内に行うことが不動産登記法により定められており、違反した場合には罰金が課せられることがあります。また、売却が難しくなったり、新築の建築許可がおりなかったりとさまざまな弊害が生じる恐れがあるため、期間内に手続きを済ませなければなりません。

自分で手続きを行う場合には慣れていないと非常に時間がかかることが予想されます。土地家屋調査士に依頼する場合でも、1〜3週間はかかるとされているため、計画立てて手続きを行うことが大切です。建物滅失登記の申請をする場合は、建物を解体したらすぐに手続きするようにしましょう。

監修者

宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、不動産コンサルティングマスター

髙橋 一壽

不動産・建築業界歴20年。アパートの建築請負営業、それに係る土地仲介業務、仕入営業に携わっている。自身でも不動産経営を行っており顧客目線で業務に取り組んでいる。

不動産投資家Kでは無料相談を承っております!

不動産投資家Kとその仲間たちでは、「土地を相続する予定だけど、どうすれば良いか検討している」「管理が大変なので、土地を売却したいと思っている」など、土地・建物のさまざまなご相談を承っております。

あなたやあなたの家族の大切な資産を有効に活用できるよう、お気軽にご相談ください!

関連記事

管理不全空家に指定されるとどうなる? 固定資産税が6倍!?【改正法施行】

実家を相続したものの、活用できず空き家のまま放置している方も多いのではないでしょうか。こうした放置されたままの空き家の対策を強化するために「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が施行され、新たに「管理不全空家」というカテゴリが定義されました。 これにより、今までより影響を受ける空き家の範囲が広くなります。「管理不全空家って?」「罰則はある?」「罰金は?」この記事では、空き家所有...

空家等対策特別措置法改正の影響と改正の背景を解説【令和5年12月施行】

増加の一途をたどる空き家の対処のため平成27年に施行された空家等対策特別措置法は、行政の処分の対象が放置する危険の高い「特定空家」に集中しているため想定していた効果をあげられない状況に陥っていました。そこで、令和5年12月13日に施行された「改正空家等対策特措法」によって、処分の対象はより幅広い状態の空き家にまで拡大されます。 この改正によって「どんな対応をされるのか?」「罰則や罰金はあるのか?」...

土地を自治体に無償譲渡できる? 手順や必要書類を解説

相続した土地を活用できず、自治体へ寄附できないか考える人もいるでしょう。自治体への寄附も可能ですが、必ずしも引き取ってくれるとは限りません。 本記事では、土地を自治体へ寄附する手順や必要書類、自治体以外へ寄附する方法などを解説します。 ポイント 自治体はどんな土地でも寄附を引き受けてくれるわけではない 認定地緑団体・個人・法人にも土地を寄附または贈与できる 相続した土地を国に引き渡せる相続土地国庫...

60坪は何平米?建てられるアパートや家の広さは?

60坪の土地とはどのくらいの広さなのか、どのくらいの大きさの建物が建てられるのかすぐにピンとこない方もいるかもしれません。60坪の土地があれば、戸建てはもちろんアパートやマンションなどの土地活用も十分可能です。 この記事では、60坪の土地の広さや建てられる建物について解説します。60坪の土地の活用や購入をお考えの方はぜひご覧ください。 ポイント 60坪の土地は約198平米で、平均的な注文住宅の広さ...

建築資材高騰はいつまで続く? 高騰の要因8つを解説【2024年最新】

建築資材の高騰に頭を悩ませている不動産投資家も多いでしょう。建築資材はさまざまな要因で高騰しており、解決もすぐには期待できないため、今後も高騰が続くと予想されます。今回の記事では建築資材高騰の要因や過去の推移、今後の見通しについて解説します。 ポイント 建築資材の高騰は、円安やウッドショックなど主に8つの要因がある 高騰の要因がすぐに解消することは難しく、今後も高騰が続く見込み 不動産投資をする際...

再建築不可物件とは?不動産投資に活用できる?購入前に知っておきたい注意点

再建築不可物件は安く購入できるため、投資用として購入するケースもあるでしょう。再建築不可物件を購入するにあたり、注意点を知りたい方も多いのではないでしょうか。 再建築不可物件は、期待通りの収益を上げにくいです。今回の記事では再建築不可物件の注意点や活用方法について紹介します。 ポイント 再建築不可物件は相場よりも安く購入できる 災害による倒壊などでも再建築できない 接道義務を果たせば再建築できる場...

マンション売却時の税金はいくらかかる?種類や計算方法、節税方法まで

マンションを売却した際にかかる税金は、「印紙税」「登録免許税」「譲渡所得税」「消費税」があります。契約金額や売却による利益によってかかる税金の金額は異なります。 また、マンション売却時にすべての種類の税金がかかるとは限りません。売却するマンションの条件や特例を用いることで支払う必要がない税金もあります。 本記事では、マンション売却時にかかる税金の金額や種類、計算方法、節税方法をご紹介します。 ポイ...

不動産の等価交換の仕組みとは?メリット・デメリット・成功のポイントを解説

等価交換は、土地の所有者とディベロッパーがそれぞれ「土地」と「建物の建築費」を出資し、その出資比率によって土地と建物の権利を分配する仕組みです。自己資金の負担なく収益資産を建てられるため、リスクを抑えた土地活用ができます。本記事では、等価交換のメリットやデメリット、成功するための注意点を解説します。 ポイント 等価交換は、土地の一部を手放す対価として建物の一部を得られる 初期費用がかからないためリ...

建ぺい率の調べ方!計算方法や緩和される条件

建築基準法には、敷地に対する建物の面積比率である「建ぺい率」の数値に関する規定があります。ですので建ぺい率をオーバーした建物は法的に建築することができません。 また、既存の建物を増築・リフォームする場合にも建ぺい率の規定は適用されます。本記事では、建物に関する建ぺい率の計算方法、緩和条件、注意点などを解説しています。 ポイント 建ぺい率とは、建築基準法が定めた敷地面積に対する建築面積の比率 防火・...

容積率の求め方!前面道路による制限や緩和条件も解説

不動産投資において建物の大きさや広さは重要です。ただ建てられる建物の広さは決められているため、それぞれ限度を超えて建てることはできません。この限度の一つが容積率です。 容積率にはいくつもの要素や制限が関わっているため、計算には概要の把握が欠かせません。そこでここでは、容積率を求めるときに必要な要素と計算方法、制限や緩和条件を解説します。 ポイント 土地に建てられる建物は、建ぺい率と容積率によって大...