民泊事業のメリット・デメリットとは?開業の流れやポイント

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民泊事業には多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットもあります。開業を検討する際は、事業のプラス面・マイナス面の両方を理解しておくことが大切です。

この記事では、民泊事業のメリット・デメリットに加え、開業までの流れや押さえておきたいポイントを解説します。

ポイント

  1. 民泊とは、戸建てやアパート・マンションなど居住用物件を活用した宿泊サービスのこと
  2. 空き家を活用して収益を得られ、地域貢献や資産価値向上につながるメリットがある
  3. 営業日数の制限や管理負担、トラブル対応などのデメリットもある
目次

民泊とは

民泊とは、戸建て住宅やアパート、マンションなどの居住用物件を活用し、旅行者等に宿泊サービスを提供することです。

2018年6月に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)により、民泊ビジネス参入への障壁が下がり、居住要件や設備要件など一定の基準を満たした物件は届け出などの手続きを行うことで民泊事業を始められるようになりました。

民泊事業は新型コロナウイルス流行の影響により低迷していたものの、インバウンドの需要の回復と拡大を背景に、観光ニーズに対応する宿泊サービスとして再び注目されています。

民泊事業を始めるメリット

民泊事業には、さまざまなメリットがあります。ここでは、物件を所有するオーナーが民泊事業に参入する主なメリットを4つ紹介します。

空き家・空き部屋を活用して収益を得られる

1つ目のメリットは、空き家や空き部屋を有効活用し、新たな収益源を確保できることです。

空き物件を維持するためには、管理費・管理委託料・固定資産税といったランニングコストが発生します。しかし、その空き物件を民泊として有効活用すれば、宿泊料という形で収益を得ることが可能です。

民泊は短期間の宿泊を繰り返すため、繁忙期には賃貸よりも高い収益が見込めるでしょう。運用次第で、維持コストだけかかっていた空き物件を優良な資産に変えられる可能性があります。

少額の初期投資で事業を開始できる

2つ目のメリットは、少額の初期投資で事業を開始できることです。既存の住宅を活用する民泊には、ホテル・旅館業のような大規模な設備投資が不要です。

最低限の家具や家電の手配だけで事業を始められるため、初期費用を抑えやすい傾向があります。

物件の売却を有利に進めやすくなる

3つ目のメリットは、物件の売却を有利に進めやすくなることです。

空き家は経年劣化により資産価値が下がるため、売却が難しいケースがあります。また、賃貸物件として貸し出した場合、入居者がいる間の売却は容易ではありません。

一方、民泊であれば入居者の有無の影響を受けないため、任意のタイミングで売却しやすくなります。

民泊事業の宿泊実績によっては、高収益物件として売り出すことで買い手が付きやすく、早期に売却できる可能性も広がります。

地域への貢献につながる

4つ目のメリットは、地域への貢献につながることです。

コロナ禍を経て、インバウンド需要の高まりが見込まれる中、民泊は観光客の増加による宿泊施設の不足を補い、地域経済を活性化させる存在としての役割が期待されています。

観光案内や体験型アクティビティ、郷土料理の提供といったサービスと組み合わせることで、地域の魅力を発信できます。地元の商店や飲食店の利用促進にもつながるでしょう。

また民泊には、各地で深刻化する空き家問題への対策の1つとしても注目されています。

民泊事業を始めるデメリット

民泊事業には、いくつかのデメリットもあります。ここでは、物件を所有するオーナーが民泊事業に参入する主なデメリットを4つ紹介します。

年間営業日数が制限されている

1つ目のデメリットは、年間営業日数が制限されていることです。

住宅宿泊事業法(民泊新法)では、原則として年間180日までしか営業できないというルールが設けられています。そのため、限られた営業日の稼働率を高める工夫や、営業できない期間の空き家活用などの検討が必要になるでしょう。

ただし、以下の場合は180日を超えて営業することが可能です。

「特区民泊」の認定を受ける

国家戦略特区に指定された区域、かつ特区民泊条例を制定している自治体で、都道府県知事等の認定を受けることで旅館業法の特例「特区民泊」が適用されます。現在(令和7年7月現在)、特区民泊条例を制定しているのは、東京都大田区、大阪府、大阪市、八尾市、寝屋川市、北九州市、新潟市、千葉市です。

簡易宿所の営業許可を取得する

上記の特区以外の地域で180日を超えて営業したい場合、旅館業法に基づき簡易宿所として許可を取得するのが一般的です。取得には構造設備等の基準を満たす必要があり、また、都道府県等による条件が異なる場合があります。

参考:内閣府国家戦略特区 旅館業法の特例について
民泊制度ポータルサイト 特区民泊について
厚生労働省 民泊サービスを始める皆様へ-簡易宿所営業の許可取得の手引き-

ゲストに物件を汚されたり壊されたりするリスクがある

2つ目のデメリットは、ゲストに物件を汚されたり壊されたりするリスクがあることです。

生活を目的とする賃貸住宅と異なり、滞在日数が少ない民泊では原状回復費などのコストが発生しないことがほとんどです。

しかし、ゲストの利用状況によっては、家具や家電、建物自体が傷むリスクがあります。基本的に、設備の修繕費や交換費用はオーナーが負担する必要があるため、壊れにくい家具を設置する、あらかじめ年間の出費として考慮しておくなどの対策が必要です。

トラブル防止のためには、弁償に関する規約の整備や保険加入、監視カメラ設置などの対策も検討しておくと良いでしょう。

近隣住民から苦情やトラブルが発生することがある

3つ目のデメリットは、近隣住民から寄せられる苦情やトラブルへの対応が必要になる可能性があることです。

不特定多数の利用者が出入りする民泊は、騒音や治安悪化への不安など、近隣住民からの苦情が発生することが珍しくありません。そのため、地域コミュニティとの関係が悪化しないよう、対策や工夫が必要となります。

防音対策やゲストへの注意喚起などでトラブルを予防し、トラブル発生時には迅速に対応する必要があります。近隣住民への事前説明や、定期的なコミュニケーションも重要です。

清掃や管理に手間と時間がかかる

4つ目のデメリットは、清掃や管理に対する手間と時間が生じることです。

宿泊施設である民泊では、予約ごとに清掃やリネン交換が必要です。賃貸に比べて、運営者の負担は大きくなりやすいでしょう。清掃業者に業務を委託することも有効な手段ではありますが、稼働が多い場合、コストがかさむケースがあります。

民泊事業を開業するまでの流れ

民泊事業を開業するまでの基本的な流れは、以下のとおりです。

  実施事項 概要
1 物件選び 民泊を運営できる用途地域で、民泊用物件としての要件を満たした物件を選ぶ
2 工事 必要に応じてリノベーションを行い、宿泊施設としての魅力を高める
3 許可申請・届出 住宅の所在地を管轄する都道府県知事等に、住宅宿泊事業届出書を届け出る(民泊の形態により、申請先や必要な手続きが異なる)
4 営業準備 ゲストを迎えるための準備を行う
【準備の例】
● 宿泊料金の設定
● 利用規約の作成
● インテリア・アメニティの準備
● 多言語対応のウェルカムガイドの作成 など
5 民泊サイトへの登録 SNSや公式サイトでの宣伝だけでなく、民泊サイトも活用する
6 民泊運営開始 年6回、前2か月分の宿泊実績を都道府県知事への報告義務がある
報告内容は下記の通り
● 宿泊日数
● 宿泊者数
● 延べ人数
● 国籍
● 宿泊日
宿泊実績がない月でも必ず報告が必要になります。
報告を怠った場合、行政から指導や勧告、業務改善命令や最悪の場合は事業廃止命令、罰金に処される可能性もあります

民泊事業を始める際に必要な費用

民泊事業への参入を検討している場合、収支のシミュレーションに向けて初期費用を把握しておくことは重要です。

ここでは、民泊事業を始める際に必要な費用について解説します。

物件の購入・工事費用

民泊に適した物件の準備が必要な場合、物件の購入・工事費用がかかります。

民泊に活用する物件は、住宅宿泊事業法(民泊新法)で定められている「居住要件」と「設備要件」を満たさなければなりません

居住要件は、以下3つのうち、いずれかを満たす必要があります。

  1. 実際に人の生活の本拠地として使用されている家屋であること
  2. 入居者を募集している家屋であること
  3. 随時オーナーが居住のために使える家屋であること

これらの条件に当てはまれば、一戸建てか共同住宅かにかかわらず届け出を行うことが可能です。

設備要件は「キッチン・浴室・トイレ・洗面所が備え付けられていること」です。

物件の状態や立地によって、必要費用は大きく異なります。リフォームやリノベーション費用が高額になるケースもあるため、複数の業者に見積もりを依頼して検討しましょう。

消防設備の費用

ここでもっとも注意しなければならない点は、消防設備の設置条件です。民泊は、原則として消防法施行令別表第一の(5)項イ「旅館、ホテル、簡易宿所」に該当し、基本的に事業所の面積に関係なく自動火災報知設備の設置が必要になります。

ほかにも、たとえば、小規模な物件で民泊を実施する場合、以下の消防用設備の設置が必要です。(民泊における消防用設備の設置について https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/suisin/items/minpaku_leaf_setubi.pdf

  1. 特定小規模施設用自動火災報知設備
  2. 消火器
  3. 誘導灯

消防設備の設置費用の目安は数十万~数百万円程度で、物件の規模や構造によって大きく異なります。

参考:総務省消防庁 民泊における消防法令上の取り扱い等
e-Gov 消防法施行令別表第一
FESC消防設備ナビ 用途別設備の一覧

家具やリネン類の購入費用

ゲストの宿泊対応に備え、家具や家電、シーツ・タオルといったリネン類の購入も必要です。初期費用だけではなく、消耗品の補充や交換が定期的に発生することを見越して予算を確保しておく必要があります。

最低限の備品を購入するだけでも、数十万円程度の費用がかかるでしょう。家具や家電は寿命や破損リスクを考慮し、予備を用意しておくことをおすすめします。

行政への申請手数料

行政への申請手数料も必要です。住宅宿泊事業法(民泊新法)や旅館業法に基づく届け出・許可申請には、所定の手数料が発生します。自治体によって金額が異なるため、物件所在地の情報を確認しておきましょう。

一般的に、届出にかかる手数料は数千円程度です。ただし、申請書類の作成や手続きには時間と手間を要します。

たとえば、特区民泊や旅館業民泊は提出書類が多く手続きも煩雑なため、行政書士などに代行を依頼することも1つの手段です。その場合、30万円程度が相場です。

民泊事業を始める際のポイント

民泊事業を円滑に立ち上げ、安定した運営につなげるためには、入念な事前準備が欠かせません。

ここでは、開業に向けて特に意識しておきたいポイントを3つ紹介します。

立地や物件選びにこだわる

1つ目のポイントは、立地や物件選びにこだわることです。

旅行客のニーズを考慮するとよいでしょう。たとえば、観光地や交通アクセスの良いエリアの民泊は、高い稼働率を期待できます。コンビニや飲食店など周辺環境が充実していれば、ゲストの満足度や物件の資産価値の向上につながります。

必要に応じてリフォームやリノベーションを行う必要があるため、物件の状態も事前に調査しておきましょう。

また、地域の条例も確認が必要です。街づくりの観点から建物の用途に制限が設けられている「用途地域」によっては、民泊を行えないケースがあります。たとえば、旅館業法の許可を取得していない場合、「住宅専用地域」では民泊を実施できません。

建築基準法で定められている、建物の容積率・建ぺい率にも注意する必要があります。

競合調査や集客などマーケティングに力をいれる

2つ目のポイントは、競合調査や集客などマーケティングに力をいれることです。

競合となる周辺の民泊やホテルについて、価格帯やゲストからの評価、プロモーション戦略などを分析し、自分が運営する物件に活かしましょう。

AirbnbなどのOTA(オンライン旅行代理店)を活用した集客や、レビュー対策も有効です。

付加価値となるサービスで差別化する

3つ目のポイントは付加価値となるサービスで差別化することです。ゲストの満足度を高めることで、リピートや高評価レビューにつながります。

サービスの例は、以下のとおりです。

  1. その土地ならではの体験(農業・漁業・伝統芸能・文化体験など)の提供
  2. オーナーから観光情報を案内
  3. ペットとの宿泊が可能
  4. 季節行事のイベントを開催
  5. 地産地消にこだわった食事の提供

日本らしさをアピールできるサービスは、外国人観光客の満足度向上につながりやすいでしょう。

それ以外にもチェックインの方法や室内のクオリティ、緊急時の対応なども評価につながります。

まとめ

民泊は、空き家・空き部屋を活用した収益獲得や地域貢献などのメリットがあります。初期費用を抑えやすいことも魅力です。

一方、営業日数の制限やトラブル対応、清掃管理の手間などが発生するデメリットもあります。メリットだけでなくデメリットを把握したうえで、開業を検討しましょう。

監修者

宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士

久保田 克洋

不動産業界に20年以上従事。賃貸管理を中心に管理受託業務・売買仲介・民泊運営を担った幅広い知識と経験をベースに、現在はプロパティマネジメント・アセットマネジメントを担っている。

監修者

宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

石塚 佳穂

新卒で不動産会社に入社後、一貫して賃貸管理業務に従事。オーナーが所有する物件の価値向上に取り組み、実務経験を積んできた。現在は、セミナーやキャンペーンの企画・立案など、マーケティング業務にも携わっている。

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